step X_(番外編)
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とある夜半のこと…。
起きたら布団がぐっしょり濡れていた。
しげるくんとわたし
一瞬「え…この歳で漏らし…」と蒼褪めるyou。
恐る恐る布団を少しだけ捲ると、眼下には見慣れた白髪。
また勝手に家に侵入して布団まで入ってきたな…と、呆れるような、苛立ちのような感情で
「ちょっとアカギさん!」と名を呼ぶと、小さく「ぅう…」と具合の悪そうな唸り声を吐き出して、白髪が蠢く。
あまり動向に変化が無いため、youは大きく布団を捲り上げたのだが、
そこでとてつもない違和感に襲われる…というか、違和感の塊がそこには在った。
「え、あ……アカギさ、ん?」
「う…ぅ…。」
ベッドの上で顔を伏せ、少し身を屈めて蹲るその姿の違和感その1……全身がぐっしょりと濡れている事。
しかし、濡れているのは彼だけで、自分は全く無事のよう。
(ちなみに夜中の粗相でなくて激的に安心したのは言うまでもない)
まるで服のまま海かプールに飛び込んだか、土砂降りの雨に長時間打たれ続けたくらいの濡れっぷり。
様子はともあれ、磯の香りが強烈に漂ったため、これは海水ではないかと確信するに至る。
そして、その2、服への違和感…。
就寝中で常夜灯の明かりのため、色は定かではないが、
眼下の彼はまるで先程まで起きていたかのような服装で、白い半袖のカッターシャツをきっちりベルトで締めたパンツの中にinしている。
流石のアカギも、いつも布団に潜り込んで来る時にはほぼほぼ就寝モードのため、
Tシャツやスウェットなど、ラフな格好なので、今の様子は普通に考えておかしいのである。
そして3つ目……というかこれが一番大きな違和感かもしれない。
小さいのだ。
全体的に、身体が…。
ハッキリとした身長をアカギに尋ねたことはないものの、普段一緒に過ごす限りでは
少なくとも175cm以上は雄にある……youの感覚ではあるが大体178~180cm程だろうという推測だ。
それなのに、今ベッドで自分の隣で蹲っている姿を見る限りでは大分コンパクトなようで…。
半袖のシャツから伸びている腕など、自分と変わらないかそれより細いのではないかと思う程…。
これは、今横にいるこれはアカギではない別人なのではないか…と。
最終的にyouが脳内で叩き出した答えはそういうものだった。
再び恐る恐る、今度はその肩を少し揺さぶって名前を呼んでみる…。
「あ……アカギさん、だよね?」
「うぅっ…。」
「と、とりあえず電気を…!」
布団を捲ったことで呻き声が少し大きく聞こえ、随分と苦しそうなものであることが分かったため、
様子を確認するためにも…と、youは部屋の電気を点けた。
パッと部屋が明るくなり、蹲っていたアカギ(?)の全容を確認し、youは絶句する。
白いカッターシャツ
きっちりとベルトで締められた真っ黒なズボン
「(これ……学生服だ!!)」
濡れている為、インナーの黒いシャツが透けて分かり辛くはあるが、
それは明らかに男子中学生などが主に着用する学ランの夏服のよう…。
何故学生が自分のベッドの中にいるのか…という大いなる疑問を抱いたところで、
その思考を遮るように目の前の学生らしき人物が大きく咳き込む。
「げほっ……ゲホ!っ……ゴホッ…!!」
「だ、大丈夫?!」
「かはっ…!!」
苦しそうに咳き込み出したため、youはベッドに駆け寄り、その背中を摩ってやることに…。
何度か咽た後、ビシャっと口から水…否、海水を吐き出し、呼吸が次第に落ち着いていく…。
「はーっ……はぁー…。」
「だ、大丈夫…?」
「っ……ここ、は…。」
今までは半信半疑だったが、声を聞いた瞬間にその主が少年だということが分かった。
そして、その少年が顔を上げ、youを顔を合わせた際に彼女の思考は停止した。
「ここ、どこ……アンタ、誰…?」
「!!!」
「もしかして……オレ、死んだ?」
「あ、あ…!」
「じゃ、おねーさん天使?いやでも、オレみたいなのが天国行けるワケないよな……ゲホ。」
「しっ、し……しげ…!!」
「まぁいいさ、ここが天国だろうと地獄だろうと……オレはオレのまま、やりたいようにやるだけのこと…。」
「しげるくんっ?!!!」
「?!!」
突然の大声に、ビクッと肩を跳ねさせる白髪の少年…。
「アンタ……何でオレの名前…。」
「うそ、本当に?!本当にしげるくんなの?!え?!アカギさんは?!アカギさんはいないんですか?!」
「はぁ…?オレが赤木でしげるだけど…?」
「いや、そうかもだけどそうじゃなくって…!」
「ていうかココ本当にどこ?」
「わ、わたしの家…デス…。」
「結局、アンタ誰なの?何でオレのこと知ってんの。」
「わ、わたしはyou……えっと、しげるくんのことは写真で知ったの。」
「写真?オレ生まれて此の方写真なんて一度も撮ったことないんだけど。」
「そ、そんな……だって南郷さんが撮った写真だって……見せてもらったのに。」
「ナンゴー?ナンゴーって誰?」
「えっ?!」
以前、隣人であるアカギと昔の写真の話をした際に見せてもらった彼の少年時代の写真…。
そこに映っていた、かつてのアカギの姿をした少年が目の前で自分と対面し、動いて、喋っている…。
(※「アカギさんとわたし11」参照)
しかし、彼は写真など撮ったことなどなく、しかも南郷という人物すら知らないという。
確かに、アカギと南郷がいつからの知り合いだったのかはyouにも詳しくは分からないが、それにしても話が進まず…。
二進も三進も行かない状態になってしまい、視線を右に左に…そんなパニック状態を体現するyouの様子を見て、しげること赤木少年はハァ…と大きく溜息を吐いた。
「ちょっと落ち着いてよ、アンタ……じゃなくてyouさん。」
「はっ、はい…!!」
「ココがアンタの家なら、オレが不法侵入者ってことだ。だからとりあえずオレの方から状況を話すね。」
「よ、よろしく…。」
ずぶ濡れの状態で、他人の家の布団に入り込んでいたというイレギュラーな事態であるにも関わらず、
彼は至って冷静に状況判断に取り組むよう説明を始める…。
「オレは赤木しげる。今日は台風の中チ…。」
「?」
「…えっと、近所に住んでる叔父に煙草を届けに行ったら、すげー酔っ払ってて、台風なのに無理矢理夜釣りに連れて行かれてさ。危ないから帰ろうって掴み合いで問答している最中に波に飲まれちゃって……気付いたらここにいた。」
「えぇええ?!何それ!!」
「(流石に無理があったか…。)」
実は「嵐の日に不良グループと断崖絶壁でチキンランしてて、そのままノーブレーキで海に突っ込んで、気付いたらここにいました」が正解なのだが、
流石にそこまでのイレギュラーかつアブノーマルな話をするわけにもいかず(そもそもしても信じてもらえないだろうと判断)…。
しげるはギリギリ思いつく範囲の、それでもかなり苦しい捏造をyouに話したワケなのだが…。
「酷い叔父さんね……しげるくん、怪我はない?」
「え、あ……ああ、無いね、無事みたい。」
「そう、良かった……って、良くない!ちょっと待ってて、すぐお風呂湧かすから!あと、着替え準備するね!」
「はぁ…。」
しげるがココにいる原因は分からずとも、経緯と現在の彼の状況は判明したため、
そういうことなら!と、急にテキパキと動き出すyou。
先程までのパニックとオドオドした様子が嘘のように、自分の為に動き回ってくれる彼女を見て、
最初は呆気に取られたものの、次第にくすっと笑みが零れる。
youはすぐにリビングの電気を点けると、風呂場へ向かい、沸かすスイッチを押す。
同時に大判のタオルをバスルームの棚から取り出し、部屋に戻ってきた。
「はい、しげるくん……とりあえずタオルで身体拭いて。今から着れる服探すから、ちょっと待っててね。」
「…どうも。」
手渡された柔軟剤が程よく効いたタオルに顔を埋めれば、洗剤の良い匂いが鼻腔を擽る。
しげるは暫く目を閉じてその感触と香りを堪能した後、ゆっくりと身体を拭き始めた。
そしてyouはというと、今度はクローゼットからゴソゴソと服を漁り、彼が着れそうな服を探し始める…。
「うーん、女物ばっかり……あ、そうだ、ライブのTシャツならちょっと大きめで男女関係ないから大丈夫かも。あとはスウェット…。」
暫く悩みながら、これなら着れそうという服を引っ張り出し、youはしげるの元へとやって来る。
「はい、しげるくん、ごめんねあまりちょうどいい感じの服が無くて……これ、シャツとパンツ、今着てるの洗濯して乾くまで、これを繋ぎで着てて。」
「わざわざ、どうも……。」
youがしげるに服を手渡そうとしたところで、沸かし返し完了の音が家に響いた。
「あ、ちょうどよかった!お風呂湧いたみたい、着替える前に入ってきて、しげるくん。お風呂入ってる間に下着だけ手洗いしてドライヤーで乾かしておくから。」
「いいの?わざわざアンタがそんな…。」
「パンツ履かないで服着るの違和感あるでしょ?」
「それはそうだけど…。」
「はい、じゃあお風呂こっちね。」
そう言ってyouはしげるを立たせると、濡れた靴下だけを脱がせてバスルームへと案内した。
「シャンプーとかボディーソープは勝手に使っちゃっていいからね、あとしっかり温まってきて。」
「うん、ありがと。」
「しげるくんがお風呂入った後、ここで洗濯機掛けたり、下着洗ったり乾かしたりするから、お風呂場越しで恥ずかしいかもしれないけど……ごめんね。」
「オレ別に恥ずかしくないけど……何なら一緒に入ったっていい。」
「そそそ、そんな!漂う犯罪臭!ダメ、絶対!」
「クク……いい大人が何照れてんだか……まぁ、ちょっと残念だけど一人で入るよ。」
「(ちょっと残念って…ちょっと残念って!!)」
「なに?オレが着替えるとこ見たいの?youのスケベ。」
「み、み、見ませんッツ!!」
バターーーン!!と、勢い良く風呂場のドアを閉め、外に避難するyou。
先程からの口数少なく冷静な少年が一転…。
恐らくは今までの会話の全てでほとんど性格を把握されてしまったのだろう、
容赦なくyouをからかい始めたしげる少年…。
「(何あれ何あれ何だあれーーッツ!!外見天使なのに中身がそっくりそのままアカギさんみたいなんだけど!?!)」
見ての通り…というか寧ろ本人も言っていた通り「アカギさんみたい」ではなく、赤木しげる本人なのである…。
「(そ、そもそも何でしげるくんが此処にいるのよ…しげるくんは昔のアカギさんで…アカギさんはもう大人なので、しげるくんには会うことができないハズなのに…でも、実際いるのは何で~!?)」
そこからは一人で大忙し…。
頭で混乱をきたしながらも、しげるがバスルームに入った後で濡れた服やベッドシーツを洗濯機にかけ、下着を手洗いし、ドライヤーで乾かす…。
洗面所でやるべきことが完了したら、アカギや南郷に片っ端から電話を掛けるという作業。
だがしかし、誰にも繋がらない…。
スマホのメッセージで連絡が欲しいと送ってみたが既読すら付かない…。
そうこうしている間にしげるが濡れたままの髪で風呂から上がってきたため、ドライヤーで乾かしてやり、
乾かし終えたその直後、彼が盛大にお腹の虫を鳴かせたので
大急ぎで余ったおかずやご飯を温めて、テーブルで待つしげるに提供する…と、慌ただしい時間を何とかかんとか駆け抜けた。
「はぁ、はぁ……た、たいしたものじゃないけど……よかったら食べて。」
「大丈夫…?オレが風呂入ってる間に何があってそんな疲れたか知らないけど、とりあえず有難くいただくよ…。」
「どうぞ…。」
「何か…こんなまともな飯食うの久しぶり……。」
「そうなの…?」
「ん……美味しい…。」
「そう、しげるくんの口に合って良かった。」
「フフ……youはいい嫁さんになるね。」
「ふふ、ありがとー、しげるくんは素直で可愛いね。」
「お世辞をそのままとっちゃうあたり、youの方が素直で可愛いんじゃない?」
「おっ、お世辞だったの!?ひ、ひどい……。」
「ククク……冗談だよ、本当に美味いし。」
「もう!」
もぐもぐとご飯を美味しそうに食べるしげる少年は小動物のようで可愛く思えて、
率直な感想で「可愛い」と称してしまったのだが、矢張り中身は全く可愛くはない様子…。
それはそうと…そんなしげるの食事の様子を見ていたyouが、ふと思い出したように語りだす…。
「そういえば、しげるくんは今いくつ?」
「13。」
「やっぱり…。」
「何がやっぱりなの?」
「お隣に住んでる「赤木しげる」さん、わたしの友達なんだけど……しげるくん、その人から見せてもらった昔の写真にそっくりなの。」
「他人の空似じゃない?」
「そうかもしれないけど…だとしても、どうしてしげるくんはわたしのベッドにいたんだろう…。」
「さぁね……あ、ご飯おかわりしていい?」
「流石食べ盛り……うん、まだあるよ。ちょっと待ってて。」
しげるから茶碗を受け取り、キッチンへと入っていくyou。
暫くおかずだけを食べていると、ふいに同じテーブルの上に置いてある黒い物体が気になり、彼は箸を置いてそれを手に取った。
「何これ…。」
追加のほかほかご飯をよそって戻ってきたyouが、しげるに茶碗を渡すと、
彼はすぐにその黒い物体は何かと尋ねてきた。
「ねぇ、you…これ何?」
「それは携帯だけど…。」
「けーたい?」
「携帯電話、今はスマホっていうかな…。」
「スマホ……ふーん、聞いたことねェな。」
「えぇっ?!そ、そうなの…?見たこともない?」
「ない。」
「携帯電話だよ?あと、写真が取れたり、音楽聞けたり、ゲームできたり……。」
「この黒いのだけで?」
「そうだよ?」
「へェ……そんな凄い機械があるんだ?」
「・・・しげるくん、今年何年だっけ?」
「今年?今年は…。」
そこで、しげるの口から放たれた今年の西暦にyouは目を見張ることとなった。
「しげるくん……落ち着いて聞いてほしいんだけど……今って西暦20xx年なんだよね。」
「・・・。」
そう言って壁に掛けられたカレンダーを徐に指差すyou。
「やっぱりしげるくんは、わたしのお隣の「赤木しげる」さんの……昔の姿なんじゃないかな…とか、ここにタイムスリップしてきたんじゃ…とか、もしかしたら全部夢じゃないか、とかそんな…荒唐無稽な推測を…してしまう…の、ですが…。」
「ふーん……。」
「ふーんって!?」
「や、実感無ねェなって。」
「そ、そうだよね……わたしもだけど…。」
「そんな今にも頭が破裂しそうな顔しなくてもいいじゃない、どうせなるようにしかならないんだし?」
「(いや達観し過ぎでは?!)」
と、脳内で思ったツッコミを口に出そうとしたのだが、確かにしげるの言う通り、
彼がタイムスリップしてきたにしろ、大きなアカギがしげるに戻ってしまったにせよ、
それ以外のそっくりさんばりの赤の他人が超常現象的に布団の中に現れたにせよ、
現状何も分からないし、変わらない上どうこうしようが無いワケで…。
言いかけたツッコミを嚥下し「そだね…」と小さく肯定するに留めておくのだった…。
「あ、そういえばこれ……洗濯機掛ける前にポケットのものを出したら入ってたんだ……返しておくね。」
「ああ、財布…と、生徒手帳か…。」
「どっちもずぶ濡れだったから、乾いたらシワシワになっちゃうね…。」
「構わない、お札は皺になろうが使えるし、生徒手帳なんて元から持ってなくたっていいんだし。」
「(いやダメだろ…)」
「何かいいたげだね。」
「ううん、何でも…。」
「まぁ、いいけど……あ、ごちそうさま。飯、本当に美味かった。ありがとう。」
「どういたしまして。」
そう両手を合掌させ、食器をyouと一緒に片付けるしげる。
「自分が食った分の洗い物くらい自分でするよ」と、キッチンで少量の皿を洗う作業を行ってくれた。
今まで数時間しかしげるとは会話していないが、そんな少ない時間でもハッキリ思うこと…。
この物言い、この考え方…。
絶対に彼は赤の他人のそっくりさんなどではない…「赤木しげる」その人である、と。
人知れずyouがそう確信したところで、洗濯機の停止音が家に響いた。
「あ、洗濯終わったみたい……乾燥機は無いからランドリー行かなきゃ…。」
「オレも一緒に行く。」
「しげるくんは家にいていいよ?」
「何言ってんの、こんな暗いのに…。」
「あ、そういえば夜でしたね…。」
確かに、コインランドリーは近場にあるとはいえ、こんな夜中に女一人で出歩くのは気が引ける…。
気は引けるのだが……。
チラと、しげるを見ると、Tシャツはまだ良いとしても、スウェットの丈が流石に中学生……。
腰は紐を縛っているので問題無いが、下を折り曲げて引き摺り気味なのでちょっと危なっかしい。
少し悩んだが、youは早めに行動を…と、ランドリーに行くことを決めた。
「やっぱり行っとこうかな…どうせ明日休みだし、遅くなっても大丈夫…。」
「そう…?」
「ごめんね、しげるくん…付いてきてくれる?」
「当然だろ、一人で行かせない。」
「ふふ、頼もしいなぁ…ありがとう。」
声は少し高いものの、自分に対する気遣いや物言いなどはいつも(大人)のアカギと変わらないので、
ギャップを感じながらも子どもであるその容姿に絆され、自分でも無意識のうちにいつも以上のリップサービスで感謝の言葉を述べてしまうyouなのであった。
それからyouはサンダルをしげるに貸出して、2人で近所のコインランドリーへと赴き、
制服の乾燥を待つ間、色々な話をして時間を過ごす…。
「そういえば、大人のオレ(?)って……今何してんの?」
「今?お仕事の事?それとも「今」何してるかってこと?」
「んー……両方かな。」
「お仕事は工場勤務だって言ってたよ。副業も色々やってるみたいだけど…。」
「副業ねェ…。」
「今何してるかは……さっき確認したくて電話したんだけど、折り返しが無くて…今もかな、メッセ―ジも未読みたい。会ってみたい?」
「いや、微塵も。寧ろ絶対会いたくないくらい。」
「そ、そうなんだ?」
「自分相手に絶対面白がって命がけの博打し始める……オレがオレだから分かる。これは確信。それでもし死んじゃったらどっちもオレかもだし、ゲームオーバーだからさ、会いたくないかな。」
「た、確かに…!!そういうことしそう…。」
「だから、今どこで何してるか知らないけど、会うのは避けたい。」
「そ、そうだね……多分この時間だと雀荘とかじゃないかなと思うんだよね……勝負してたら携帯も見ないだろうし……だから、深夜に戻るか、もしくは朝方まで戻らないか…。」
「雀荘……オレ、麻雀すんの?」
「しげるくんは麻雀しないの?」
「しない。ルールも知らない。」
「そうなんだ!意外…!!」
「何で?」
「んー…わたしもよく知らないんだけど、アカギさんってギャンブル凄く強いんだって。」
「へー。」
「中でも麻雀が好きで、すっごく強いって皆言うんだよね……。」
「麻雀…ねェ。」
アカギの代名詞とも言える麻雀を、彼はルールさえ知らないと言う…。
そうなると、彼は「赤木しげる」の過去の姿ではない…?という考えが2人の頭を過るが、
麻雀を知らないのはこれから知るのかもしれない…とも思い至る。
「そういえば、さっき生徒手帳で見たけど、しげるくんの通ってる〇〇中学校って、給食?お弁当?」
「え、いきなり何……給食だけど………けど、楽しくないからサボり気味…。」
「だめだよ、学校行かなくちゃ……でも気持ちは分かる!テスト嫌だよね!!」
「いや、テストは嫌とかないよ。逆にそれが高得点なら教師共も何も言えない…。」
「そ、そう…。」
余計な事を言わなければ良かった……自分の恥を晒し、ちょっと後悔するyouであった…。
「ええと、じゃぁ、しげるくんは何して遊ぶのが好きなの?」
「チキン……じゃなくて喧…でもなくて、うーん…強いて言えばカードゲーム?」
「あー、遊戯王的な?」
「何それ、カードってトランプだけど……ポーカーとか、ブラックジャックとか、ダウト?」
「なるほど。」
トランプゲームなら健全な遊びだとは思うものの、
ババ抜きや大富豪、神経衰弱…など、凡そ一般的な中学生が遊ぶようなラインナップではなく、
ほぼ全てギャンブルで採用されているものばかりのチョイスは中学生としてどうなのだろう…。
更に言うなれば、トランプより先に出そうとして「チキン(ラン)…」と「喧(嘩)」が気になってしまう。
youは首をブンブンと横に振り、それ以上は深く聞くな!と自分に言い聞かせた…。
そうやって話しているとあっという間に時間は流れ、制服の乾燥が完了する。
乾燥機から制服を回収し、帰り道でも2人で色々話をしながら福本荘へと向かう…その道中。
「そういえばさ、youは大人のオレ(?)とどうやって出会ったの?」
「福本荘だよ。」
「さっきの家?」
「そう、アカギさんは元々そこの201号にお住まいで、隣の202号にわたしが引っ越してきたの。」
「へー。」
「菓子折り持って挨拶に行った時に、初めて知り合ったかな……あの時は本当に…本当に…。」
「ん?」
「な、何でもない…。」
まさか「菓子折り持って挨拶に行った際に逆に食われそうになって本当に恐怖しました」とは13歳の少年には言えず…。
youは当時の事を思い出し、苦しい表情で苦笑いするのであった…。
さて、コインランドリーからそこまで距離もなく、そんな短めの会話を終えるところで福本荘へと帰り着く。
福本荘に入る前、何故か近くの電柱をしげるがじっと見ており、youが声を掛ける…。
「しげるくん、何してるの?」
「いや、ちょっとね……電柱番号をさ、覚えておこうと思って。」
「何で電柱番号?」
「住所は地番変更で名前や番地が変わるかもしれないだろ、だから、電柱番号。」
「よく分からないけど、福本荘の事言ってる?」
「そうだけどそうじゃない……youってばニブいね。」
「?」
「オレが言いたいのは………っくしゅん!!」
「あぁっ!しげるくん、早く家に帰ろう!!」
話している最中に一度全身をブルリと振るわせて大きなくしゃみをしたしげる少年。
海に飲まれた後、お風呂で温まったとはいえ、その後また夜風に当たったことで冷えてしまったのではないかと…。
youは慌ててしげるの手を取り、部屋に戻った。
・
・
・
・
「そんなに心配しないでよ、寒気も全然無いし、髪もyouが乾かしてくれたから湯冷めもしてない。」
「本当に…?ならいいんだけど…。」
「それより、乾いてすぐに悪いんだけど……制服に着替えてもいい?」
「もう今日はこのままスウェットで寝た方が良くない?」
「逆にさ、今日は制服を着ておこうと思って。」
「なぜ?」
「もしかしたら、戻るかもしれない…オレの元の場所。その時、海だったら足引きずるような服じゃ溺れ死ぬかもしれない。」
「そ、そっか……明日もしげるくんが此処にいれば、その時サイズの合う服を買いに行けばいいしね…。」
そういうことであれば……と、youは先程ランドリーで乾かしてきたばかりの制服を取り出し、アイロンを掛け始めた。
「わざわざアイロン掛けなくてもいいのに…。」
「だってあんまりくしゃくしゃだから……。」
「でも、着て寝たらまたくしゃくしゃになるし、もし海に戻ったら意味なくない?」
「うーん……それはそうなんだけど……それに、ざっと掛けてるだけだからそんな大変じゃないし。」
「アイロンとか、掛けた事無いから分からねェな…。」
「それに……折角だから写真と同じしげるくんが見たいなと思って…。」
「何それ、どんな理由…。」
「はい、できたー。」
簡単にざっとアイロンを掛けたとはいうが、ランドリーの乾燥機でくっしゃくしゃになっていた時と比べると見違える程綺麗な状態。
「まぁ、とりあえず、わざわざありがとね」と感謝を述べ、粗熱が取れた後、しげるはその場で制服に着替えた。
そして、しげるが着替え終えるや否や、youはその姿をまじまじと見た後、目をキラキラさせて拍手する。
「なんで拍手。」
「すっごい感動……制服の…本物のしげるくんだぁ…。」
「偽物っていんの…。」
「実はわたしね、写真でアカギさんの昔の写真……まぁ、今のしげるくんなんだけど、それを見て本当に可愛いなって思って!!」
「オレ、可愛いって言われてもあんまり嬉しくないんだけど…。」
「ごめんね……でもね、本当にモデルみたいに綺麗な男の子だなーって思って、無理なんだけど、ずっと会いたかったんだ。」
「そこまで…?」
「うん!ネガとか…兎に角元のデータ持ってるであろう南郷さんにしげるくんの写真が欲しいから、持てる記憶力を総動員して探してってお願いした……見つからなかったみたいだけど……しかしわたしは諦めない…。」
「滅茶苦茶必死じゃん。」
「それくらい可愛いんだよ……しげるくんは…。」
「オレここにいるのに、youの中の写真のオレが偶像過ぎてヤバくない?」
「自覚はあります…っ!」
「んで、どうなの……写真じゃない、しげると会ってみて。」
「ちょっと思ってた感じとは違うけど、可愛いなって思うよ。飯美味しいって言ってくれたり、素直に髪を乾かさせてくれたりしたしげるくんは、とっても可愛かった。」
「思ってた感じと違うって?」
「もっとこう……素直で純粋で可愛いと思ってた……目とかアカギさんと違って凄く澄んでて綺麗だし…。」
「大人のオレ(?)って濁った汚い目でもしてんの?」
別段今の自分がyouの言うように素直で純粋で綺麗な目をしているとは思っていないしげるだが、
流石に自分の将来の姿かもしれないので、濁った眼は嫌だ…と、そこは少し気になる様子。
「いやぁ……そうではないけど……世の中の酸いも甘いも噛み分けてきた、猛者の目というか……雄味が強いっていうか……ギラギラしてるっていうか…。」
「それ多分youにだけじゃない?」
「え、何で?そんなことないでしょ…。」
「(成程ね…。)」
「でもアカギさんってね、冷たいように見えて実は多分凄く優しいというか……意外と困ってる人ほっとけないみたい。そういうところ狡いなって思っちゃうし、態度はさて置き、逆に見習わないとなって思う。」
「優しい…(オレが…)?」
「うん。あと、破天荒に見えてちゃんと目上の人に敬語使ったり、振舞いとか、所作とか…そういうの凄く綺麗なんだよね……多分色んな経験してきて、若いのにしっかり自分の在り方というか……アイデンティティ持ってる感じ。それが良くも悪くも態度に出るのかな…って。」
「youはさ……オレのこと、よく見ててよく知ってるんだね。」
「そうかな…?でも、アカギさんの方が何故かわたしのことよく知ってるよ?教えてもない情報とか…時々怖くなるくらい知ってる。」
「…フゥン、そうなの。」
「っていうか、アカギさんの話になっちゃったね、ゴメン。」
「いいよ、面白かったし……とりあえず死んだ魚の目だとか、沼みたいに濁った目とかじゃなくて良かった。」
「そ、それは怖いよ…。」
「だってさ……ふぁ…ぁ…。」
「あら…。」
会話のキャッチボールはしげるの大きな欠伸によって、いったんの終わりを見せる…。
さて、ここで困ったことが1つ…。
そう、本日はベッドが海水で濡れに濡れており、使用ができなくなっているという事…。
「そうだった……ベッドが濡れてるんだった…!」
「オレはその辺の床に転がって寝るから大丈夫。」
「そういうワケには…。」
言いながら、てきぱきと来客用布団の準備を始めるyou。
「ソファはクッションを枕代わりにして、あとは…」と、簡易的ながら寝床の準備が整える。
「明日か明後日には乾くだろうから、今日はソファを使いましょ。しげるくんはソファで寝て。」
「youは?」
「わたしはその下で寝るから。」
「逆でしょ、youがソファ。」
「しげるくんは一応お客様だし…しげるくんがソファ。」
「くどい。」
「もう、しげるくん……ほら立って…。」
「ああ、もう…!」
お互い引かずにソファを譲り合い合戦を繰り広げていたしげるとyouだったが、
いい加減煩わしくなったのと、まだ中学生ながらも、自分に良くしてくれた女性にはきつい思いをしてほしくないのとで、最終的にしげるがキレた…。
いや、キレたのも勿論あるのだが、彼女の甲斐甲斐しさに青い衝動が爆発したと言うべきか…。
彼はyouの身体をソファに突き飛ばし、彼女が起き上がる隙を与えず、自分も彼女の上に馬乗りになる…。
「だったら2人で1つになっちゃえば良くない?」
「しししししげるくんんん?!!」
「だってyou、大人のオレと付き合ってるんでしょ?」
「つつ付き合ってませんよ?!」
「だって、オレのこと理解してて、びっくり。オレ以上によく知ってるみたい。それって好きだからじゃないの?」
「そ、それはどうでしょうかね!!」
「もし付き合ってないとしても、大人のオレはyouが好きでしょ、絶対。オレ欲しいと思ったら何が何でも手に入れるよう動くから、多分youのこと好きって言ってるんじゃない?」
「え・・・しげるくんて…アカギさんなんだね…。」
「いやだからオレ赤木しげるなんだって。」
しげるが、もし自分が…と言ったアカギの形容がそっくりそのまま間違っておらず、
驚いたyouは改めて「しげる=アカギ」の図式を口にする。
「とどのつまり、そういう事……でしょ?」
「う…。」
「オレもyouのこと、好きだよ。」
「はぁっ?!」
「世話焼きのお姉さんって、自分では思ってたかもしれないけど……オレにはそうは見えなかった。」
「いや、だって年齢的に!」
「年齢なんて、関係ねェな。そんな常識、そんな合理性じゃ、オレは縛れないよ。」
「いや、でも…。」
「ここに来てからyouがずっとオレだけのために忙しなく動いてくれてるの見てさ、youがやってくれる事全部に、youの心がこもってた。オレにはそれが嬉しかったんだよ……だから、オレ、もうyouが好き。」
「し、しげるくん……ちょ…っ!」
「不合理に身を委ねちゃいなよ、you。」
突然の告白に困惑するyouを他所に、しげるは顔を近付けて耳元で囁く…。
そのまま彼女のシャツの中に手を差し入れ、双丘の片方をやわやわと揉み始めるので、
youは顔を真っ赤にしてしげるの胸板にてを置き、身体を離すよう力を込めた…。
「っ…ぁ、だめ!しげるく…!」
「フフ……背徳的だね、でも大丈夫。だってどうせ遺伝子は(多分)同じなんだし。」
「しし、しげるくんっ!!何言ってるの!!」
「付き合ってないならさ、オレとシちゃうと大人のオレに嫉妬されちゃうかもね。」
「きっ、許容してないよ?!現在進行形で!!」
「でも、you……オレの事好きでしょ?ずっと可愛いって言ってくれてたし。」
「それは顔だけ!」
「何それ、今更……つれないな……分かった、じゃあ顔だけじゃなく身体も好きになってもらう。」
「ギャー―!何それ!普通中身でしょ!!」
「うん、だから中身(精子)だよ?」
「ひ…っ…!!」
ニヤリと笑った顔は少年の其れではなく、雄の顔…。
最近の青少年は性に関して早熟など、そんな話を聞くこともあるが、
そもそも彼、しげるは「最近」の青少年ではないはず……。
昨年までランドセルを背負っていたとは到底思えない程の色気で持って、自分を酔わせに掛かってくる悪魔…。
首筋に唇を寄せ、ちゅ…とわざとリップ音を立てて彼女の羞恥心を更に引き出そうとする。
「だ、だれか助け…あ、アカギさ…!」
「へぇ………困ったらオレのこと…呼んでくれるんだね。」
「!!」
「やっぱり、オレのこと好きなんだ?」
「あ、あわわ…ちが…。」
「フフ……。」
「しっ、しげるくんダメ!本当に……!」
「その顔、すごくそそる…。」
「~~~ッ痛っ!!あ、アカギさん、助けっ…!」
鎖骨の辺りにビリっと小さな痛みを感じて、ぎゅっと目を瞑り、
youは、窮地に陥った際に一番自分を救い出してくれそうな相手の名前を無意識に何度も呼んでしまう…。
このままでは、自分の中の理想のしげるくんが壊れてしまう、とか…。
もし致してしまった場合、自分が未成年への淫行罪で逮捕されてしまう、とか…。
そもそも自分はこんな状況でこんな事をしたくない…と…。
目を瞑りながらも目頭が熱くなり、涙が溢れてきてしまう…。
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「you、you!」
「助けて、あか……・・ぎ…さん?」
「大丈夫か、you?」
何度も自分の名を呼ばれ身体を揺さぶられたことで、ハッと目を開けば、
先程まで自分に覆いかぶさっていた少年の姿はどこにも無く…。
代わりに、ソファの横で心配そうに自分を見つめるアカギが其処にはいた。
「アカギさん……?」
「うん?」
「しげるくんじゃなくて、アカギさん…?」
「何言ってんの?オレの名前忘れた?」
「赤木…しげる…。」
「そうだよ。」
「しげるくんじゃなくて?」
「しげるくんですけど、アンタ一度もそんな呼び方したことないでしょ。」
「アカギさん…ですよね?」
「寝ぼけてる?ああ、寝ぼけてんのか……そうか。」
「すみません、ちょっと……いや、凄く…パニックで……っん?!」
何を思ったか、目覚まし代わりに…と、アカギはyouの両頬をガッチリ掴んで口付けた。
「んんん~~!!!」と数秒唸った後、パッと唇を離され、激昂するyou…。
「いきなり何すんですかアンタ!!」
「いや、目覚めるかと思って。」
「そんなんで目覚め……目覚めましたね……アカギさんだ。」
「おかえり、you。」
「た、ただいま…。」
そういう行動と言葉の遣り取りに、ようやっと自分の知る現実に戻ってきたのだと認識し、
先程からの恐怖からの解放で感極まったyouは泣きながらアカギに抱き着いてしまう…。
思わぬ彼女の行為に一瞬目を丸くしたものの、アカギはすぐに「フフ…」と嬉しそうに尋ねる。
「何、怖い夢でも見てたの?」
「怖いっていうか……途中からあらぬ方向にいったっていうか……ぐす…。」
「まぁ、夢ってそんなモノだからな。」
「ですよね……本当、夢で良かった…だってあんなの、わたしの理想のしげるくんじゃないですもん。」
「はぁ?」
何故突如として普段呼びもしない自分の下の名前が出てくるのか、と…頭に疑問符を浮かべるアカギ。
それはそうと、思い出したことを彼女に尋ねることにした。
「ああ、ところで、何度か電話した?その時、南郷さんと安岡さんと麻雀打ってたから全然気付かなかった、ゴメン。終わって見てみたら全員に着信と「折り返しほしい」ってメッセージ入ってたから、ビックリしたんだけど…。」
「・・・え。」
「気付いてオレが代表してすぐ折り返したけど、今度はyouが電話出なかったから、心配になってバタバタ帰ってきた。」
「うそ、ちょ……ちょっと待って…!!」
アカギの言葉にサーっと顔が蒼褪める…。
youはバッとアカギから身体を離し、転げ落ちる勢いでソファを降りてテーブルに置いてある携帯に駆け寄る…。
携帯の中身を確認すると、自分が皆に発信した履歴と、アカギからの着信の履歴…。
メッセージも確認したが、同じ状況であった。
「夢じゃ……無かった…?」
ヨロヨロと力無くソファへと戻り、そこにストン…と、腰を落とす…。
「よく分からないけど、youが無事なら良かった。」
「す、すみません……お騒がせしました…。」
「ん?」
「?」
「you、これ…どうしたの?」
「どれ?」
「首のところ……これ、虫刺されじゃないよな……これは……一体…どういう、こと…?」
「え、何……アカギさんどうしたの、急にめちゃくちゃ怖いんですけど。」
「どうもこうも……やっぱり全然無事じゃないじゃん……誰?」
「え、だれ?!誰とは?」
「誰に襲われた?」
「え、何が?何のこと?」
「誰がアンタを無理矢理襲ったの。」
「えぇえ?!」
「だからオレ達にあんなに着信………間に合わなくてごめん、怖かったよな…。」
「そして今度は急に泣きそうに?!」
「ごめんな、you………オレがきっちり上書きしてやるから…。」
「ちょっと待って、それは何かおかしい!待ってアカギさ……!!」
これは何のデジャヴだ!?と、再びソファに組み敷かれたyou…。
奇しくも、彼の少年期の姿であったしげると同じく、首筋に唇を寄せると、
そこから容赦なく首周りの至る所をきつく吸い上げ、キスマークを付けていくアカギ…。
最終的に唇を離された時には、消えるまでハイネックばかりを着ないとダメなくらい痕を付けられてしまったyou…。
その後、服を脱ぎだしたアカギを見て、半泣き……否、もうガチで泣き喚きながら事の経緯をアカギに説明するが、荒唐無稽な話のため完全には信じてもらえず…。
その日から約1ツキ以上、監視の名目で毎日休みなくアカギがyouの家に上がり込むのであった…。
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ある嵐の夜…。
「雀荘……みどり…。」
場末の雀荘に迷い込んだ一人の少年。
それまでの短い人生をいやが応にも人に想像することを強いる真白な髪、
その目の奥は底なしの闇
彼の名はアカギ。
・
・
・
「ボウズ、年はいくつだ?」
「クク……成程、アンタが「ナンゴーさん」、ね。」
「?」
ああ、こうやって麻雀を知り
この男性と出会ったオレは
いつかアンタに会うためにあの電柱を探すんだろうね
束の間の邂逅は
夢か 現か 幻か
(本当なんです!本当にしげるくんだったんです!しげるくんがわたしのベッドで寝てて!)
(証拠もないのにどうやって信じろと。)
(嘘じゃないのに~!そしてじりじりにじり寄ってこないで!)
(youがオレから逃げようとするからだろ。)
(証拠…かどうかは分かりませんが、テストの成績は良かったはずです!しげるくんが言ってました!「学校は楽しくないからサボり気味だけど、テストが高得点なら教師共も何も言えない」って!)
(!!)
(その顔、合ってますね!?あとは……カードゲームは遊戯王よりトランプ派!ポーカーとか、ブラックジャックとか、ダウトとか……何故か大人向けというか…凡そ普通の中学生がしなさそうなヤツですね……。)
(それは……判断が微妙なラインだな…。)
(くぅっ……じゃあ、とっておき!アカギさんの母校は〇〇中学!!)
(マジか…………え、何で知ってんの。)
(生徒手帳で拝見しました。)
(・・・。)
(信じていただけましたか?本当にしげるくんに会ったんですよ、わたし…!!)
(・・・成程…これは信じざるを得ない…ってか。)
(でしょ、でしょう?!)
(ん?)
(…ん?)
(オイ、ってことはアンタ……ガキの頃のオレに襲われそうになったのか?)
(はっ……!)
(成程そういうこと……クク……「しげるくん」は可愛かったか?)
(っ…!)
(何だっけ「素直そうで可愛い」?写真見て確かそんなこと言ってたよな、アンタ。)
(どうだったの?)
(天使なのは外見だけで、中身は悪漢でした…。)
(クク……三つ子の魂百までってね。人はそんなに変わらない…。)
words from:yu-a
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