step5_(恋人編:アカギ)
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「たまにはアカギさんの部屋で過ごしてみませんか?」
という提案を気紛れにしてみたものの…
既に若干後悔しているのはヤツがいたからである。
アカギさんといっしょ13
「聞いてない、聞いてない、玄関開けて2秒でGがいるとか聞いてない!」
「何処の家だって出るだろ、ゴキブリぐらい……youの家にだって…。」
「ワーー!!聞きたくない!とにかく退治を!殺虫スプレーをををを!!」
「そんなもの…うちには無いよ。」
「じゃあどうするって言うんですか!素手で掴めとでも?!イヤです!でも絶対逃がさない!」
「(凄いテンションだな…)ハァ……ちょっと待って。」
youの言葉の通り、アカギの家である201号の玄関を開いたと同時に視界に入ってきた「G」の通り名で御馴染みの害虫。
動く素振りは今のところないため、ここで仕留めたい!とyouが半泣きで訴え、現在意気込んでいるところ…。
アカギは今まで履いていたスニーカーを手に持ち、家に上がるとその靴底をダァアアン!!と床に向けて振り下ろした。
「ん、仕留めた」と、靴の裏をまじまじと確認するアカギ……を見て絶句するyou。
アカギの家には履物が2足あり、1つが今履いていた(片方武器になった)スニーカーと、ちょっと玄関に出たりする際に活用できる簡易的なスリッパ。
アカギはスリッパの方を履いて外に出ると、カイジの家の前で靴の底にへばり付いたその死骸をトントンと地面に叩いて落とし、家に戻ってきた。
「あ、アカギさん…死骸、ちゃんと綺麗に落としました?」
「大丈夫ダイジョーブ、ちゃんと(カイジさんの家の前に)捨ててきた。」
「綺麗に落としたならいいんですけど…。」
「ウン。」
「?」
どこか無機質に返事をするアカギを不思議に思ったものの、ひとまず部屋へ入室は果たせそうなのでやっと安堵するyou。
それから、廊下に残ったGの残骸の後処理をして、アカギ家のリビングへと入ったのだが…。
「わぁ……相変わらず何も無い…。」
「最初からそう言ったじゃない…「オレん家何にも無いよ」って。」
「そうなんですけど……ていうかまずは…。」
「……布団でも敷く?」
「お掃除ですね。」
昼間から何考えてんだ、と……youはアカギの発言を無視。
というのも、入ってみて分かったがこの男…恐らくあまり部屋の掃除をしていない。
廊下もそうだったが、若干足元に埃が溜まっていたりと、チラホラそういう箇所があり、気になっていた。
「(朝仕事に出掛けて、夕方に雀荘行って、夜戻って服だけ取って、わたしの家に来るからだな…。)」
「どうしたの、you?」
「自分の家くらい掃除しましょうよ!」
「だって……ほぼ家にいないのに…面倒くさい…。」
「それでもです!こんな生活感が無いと……流石に怖くなっちゃう…。」
「なんで?」
「アカギさん……フラッとどっか行っちゃって、そのまま戻らないんじゃないかって……。」
「まさか……どっかに行くにしても今はもう、一緒に連れてくって。」
「…じゃあ、今まではやっぱり……一人で行こうと…?」
「いや、前はyouがどんだけ拒否して嫌がっても無理矢理攫って行こうかと思ってたけど?」
「え…怖…。」
独りで去る未来もあったのかという問いに「そうだったかもね…」などと切な気な表情で言われるとばかり思っていたyou…。
冗談かもしれないが、予想外のとんでもアブノーマルな拉致監禁返答を真顔で返され、率直に恐怖を覚えるのであった…。
「と、とりあえずそういうことです!わたしもアカギさんがちゃんと201号にいてくれるって安心したいので、せめて掃除して生活感出しましょう!」
「もういっそこの部屋解約してよくない?ていうか寧ろ2人でもうちょっと広いところに引っ越しするのもアリというか……隣のマンションとかさ。」
「平山さんと一条くんがいるから、それはそれで楽しいかも……いやいや、ダメ!高いもん!払えない!そもそも分譲だし!!賃貸部屋もあるかもだけど…。」
「??要は金があればいいんだろ?」
「・・・チガウ、ソウジャナイ…。」
何を困っているんだ?とばかりに腕を組んで不思議そうにするアカギに、
youは一括で買えればいいとか、そういう話ではない、常識的な話だ、と指摘する。
「わたしは福本荘が気に入ってますし、今のところここ以上に住みたい物件は無いと思うので……引っ越しは考えてないです。」
「じゃあせめてベッドだけでも大きいのに買い換えたら?いや、そうか……なるほど、そういう手があったか。」
「?」
「オレの家にデカいベッド買えばいいのか。」
「何でベッドだけ……それ以外の家具もあった方がいいのでは?」
「youと寝るベッド以外要らない。」
「ああ、成程そういう……………不純過ぎません?」
「youが寝に来るんなら、これはもう……ちゃんと掃除しないとな。」
「あの…。」
「オレの家に掃除道具って無いから、今からちょっくら大家に借りてくる。」
「ちょっと…。」
「あ、来週の休みにでも家具屋行こうね。」
「ちょっとアカギさ・・・!」
喋りながら、玄関へと向かっていたアカギは、そのままバタン!とドアを閉めて大家の遠藤宅へ向かった。
掃除する理由と目的を自身で定め、自己完結させたアカギに、youは暫し沈黙…。
そののち「動機が不純過ぎるんですってば」と、彼が出て行ったドアに向かって言葉を発するのであった…。
そんなアカギの動機は何であれ、掃除に関してやる気が出てくれたことはありがたい、と。
youも自分の家に戻って自宅にある雑巾や掃除機などを取りに戻った。
暫くして掃除用品のセットを手にしたアカギも戻り、2人で床を掃いたり拭いたり、掃除機を掛けたり…。
キッチンなど、使わずに埃を被ってしまっている場所を綺麗に拭き上げていく。
途中、youの家に戻って簡単にお昼を摂ってからもアカギ家の掃除は続く…。
掃除する箇所は多かったものの、元々アカギの家にはほぼ家具やその他の置物や道具なども無いワケで…。
障害物となるものが皆無のため、このままいけば夕方前にはほぼ家の全ての場所の掃除が完了する状態となった。
最後に残されたアカギ自身の部屋にも例によって例の如く何も置いてあるものが無いため、
掃除機と拭き掃除だけで十分だと認識する2人。
「家中掃除したのに1日掛からず終わっちゃった……ある意味便利な生活ですね、物が無いって。」
「布団と鞄1つあれば十分…。」
「普通はそれ足りなさ過ぎるんですって。」
「あー…でも、ココに来てからはちょっと長いし、流石に押入の中に1つだけ服のとは別の収納ケースを買ったよ。」
「へぇ、何を入れてらっしゃるんですか?」
「さぁ。」
「さ、さぁって……自分で入れたんでしょ?」
「うん。でも、何入れたか覚えてない……。」
「そ、そんな適当な…。」
何のために一体何を収納したのか…。
逆に気になってしょうがないので、それを見ていいか尋ねたところ、
「別にいいけど…」と、アカギは布団が収納されている押入の下段から、ごくごく一般的な中型サイズのシックな黒色収納ケースを取り出した。
「これだけど。」
「開けていいですか?気になるから開けますね。」
「どうぞ?」
収納ケースの中身を引き出すと、そこにはそんなに多くは物は入っておらず…。
例えていうなら、おもちゃ箱を先に購入して、そこに購入したおもちゃをどんどん貯め始めたような様子の状態。
ぜんぜん箱いっぱいにはなっておらず、少し漁ればすぐに底が見えるくらいの量だった。
「何か、めちゃくちゃ雑多に入って……これ、シャツじゃないですか?着ればいいの……に…。」
「お前ならそれ、外で着れるか?」
「いや……ちょっと、無理かもです…。」
「だろ。」
「だからここに眠って…。」
「ああ。」
youがケースから引っ張り出した1枚の柄シャツ。
ベースは紫で、それだけであればアカギもよくそんな色のシャツを着ているため、違和感は無いのだが、
じっと見ると、鮮やかな緑で無数の流れ星が柄としてプリンティングされているのだ…。
アカギのイメージとかけ離れたそのどうにも愉快極まりないシャツは、一体どこで入手することになったのか…。
経緯が気になる…という目でじっとアカギを見つめると、それを察したよう…。
「それ、南郷さんに貰ったんだよね。」
「え、南郷さんがこんな愉快……珍みょ……やかましい……な、流れ星のシャツを?」
「言い淀むフリして言いたい事全部言ったな?」
珍しくアカギがツッコむという珍事…。
だがしかし、そこまで割と気になる柄ではあるのだ…確かに。
故に、アカギも「まぁいいけど」とyouの反応を肯定し、話を続ける。
「オレ13くらいの時に南郷さんと知り合ったんだけど、それから暫く…6年くらいか?全然会ってなかったんだよな。それで、久ぶりに会って……シャツはその時貰ったんだけど、13歳の中坊ならいざ知らず…流石に着れないでしょ、って。」
「南郷さんの中では少年の頃のアカギさんと再会した感覚だったのかもですね。」
「そうかもね、フフ……どっか抜けてんだよな、あのオッサン。」
「でも、気に掛けて服とか買ってくれるの、親戚のおじさんみたい。南郷さん、優しいですよね。」
「そうだね。」
「いただいたものだから、着れないけど捨てずに持ってたんですね。」
「そうみたい。見て思い出した。」
youはシャツを綺麗に折りたたみ、自分の横にそっと置いてから、次のアイテムに手を伸ばした…。
「んー…これは……何ですか?綺麗……パワーストーン??」
「え、何それ……怖、知らない。オレのじゃない。」
「え、やだ!何ですかそれ、コレ誰の何?!」
「ちょっと見せて。」
次にyouが取り出したのは角が丸くカットされた、厚みのある透明で小さな長方形の物体。
指で摘まめる程の大きさなので、youは水晶か何かのパワーストーンと思ったのだが、
まさかのアカギ本人が「そんなもの知らない」と発言。
知らないものが家の中にあること自体、ちょっと躊躇してしまうので、ざわざわした空気がその場に漂う…。
「水晶かと思ったんですけど……出所の分からないパワーストーンとか恐怖でしかない…。」
「水晶……?いやこれ、ガラスじゃない?」
「ガラス…?」
「ガラス……あ。」
「何、なんか思い当たりました?!安全なヤツですかそれ?!」
「これ、多分"白(ハク)"だ…。」
「はく?」
「麻雀牌……とりわけ特殊なガラス牌だな。」
「へェ~!!そんなものが…。」
「何でだろうね、鷲巣と打った時にポケット入ったのかもね。」
「あ、出所も分かったんですね。」
「今度返しとく。」
恐らく、そんなことをすれば「今更返しても遅いわぁぁあ!!!」と罵声が飛び、
お得意の杖攻撃が見舞われること待った無しなのだが、
恐らく鷲巣の反応がとても面白いと予想されるので、敢えて返そうと考えるアカギなのであった…。
その後も、平山から戦利品代わりに奪い取ったブランド物のサングラスや、
カイジが「これで勘弁してくれ」と金の代わりに渡してきたよく分からない店の割引券など、
武蔵坊弁慶の獲物狩りばりに博奕の対戦者からの戦利品がポンポン出てきて、若干引き気味でそのエピソードを聞いていたyou。
「別に欲しいワケじゃないけど、それが相手の大事な物だったら奪い返しに来てくれるかもしれないじゃない?」
「その結果収納ボックス行きって…奪われた相手がいたたまれないッ。」
「物が増えるし飽きたから、そういうの割とすぐ辞めたけどね。」
「ですね、それがよろしいかと……戦利品ももうぼちぼち終わりかな…底がもう見えて……あれ?」
「ん?」
ほぼほぼ全ての中身を見終わり、後は出したものを戻して片付けるだけ…と、
黒色の収納ケースの底を最後に今一度確認したyouが疑問の声を上げる。
「ここ、ちょっと浮いてますね……これ底じゃなくて中敷きみたいになって…下に何か…。」
「(あ、やば。)」
「アカギさん、これ下に何か…。」
「you、後ろ!」
「えっ?」
「ゴキブリ。」
「ウソ、うそうそ、全部ちゃんと掃除したじゃない!イヤ!!!」
「(嘘だけど…。)」
急に背後に現れたという「G」に驚き、バッと後ろを振り返るも、そこには何もおらず…。
「い、いませんけど!」
「オカシイね……確かにいたんだけど……逃げたかな。」
「さっ、探しましょう!!そういえばこの部屋は掃除がまだでしたね!!」
「そうだね、これ片付けて掃除終わらせようか。」
「了解です!」
そう言うや否や、今まで出した思い出(というより大半が戦利品)の品をテキパキと素早く元の収納ボックスに戻していくyou。
その様子をすぐ近くで見ていたアカギは内心大きく安堵の息を吐いた。
なぜならば…。
「(危なかった……中敷き捲られてたらアレを見られてたわ。)」
少し前に持ち出して一度youに見られたことがあったが、その時は結局それが本物かどうかは有耶無耶になったもの…。
その昔、(本人いわく)ちょっとやんちゃをしたがる時期に、なんやかんやあってヤの付くご職業の方から入手した拳銃…。
「不良グループとの抗争の際にちょっとパァニと撃って使っただけで、今は弾は入ってないから安心して」なんて言おうものなら、
彼女はその場で卒倒するか、悩みに悩んで数日間知恵熱を出すかもしれない…。
半信半疑でありつつも、最終的に自分の言葉を信じて飲み込んでくれるかもしれないが、
どちらにしても、彼女には知られたくない案件であることには変わりない。
かくして、アカギはギリギリのところで「G」にかこつけ、彼女の意識を収納ボックスの中身から切り離すことに成功したのだった…。
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「うーん……最後まで掃除したけど、結局いませんでしたね…。」
「見間違いだったのかも。まぁ、もし見掛けたら駆除しとくし……今日で家が綺麗になったからいなくなるかも。」
「そうですね、そうだといいな。」
「まぁ、何はなくとも……終わったな。」
「はいっ、全行程完了です!お疲れ様でした!!」
「あー疲れた……もう今日は何もしたくない。」
「わたしもです……ご飯も作りたくなーい!」
「居酒屋にでも行こうか、冷えたビール飲みたい。」
「いいですね…。」
「一休みして行こうか。」
「賛成です~しばらくはこの綺麗になった畳の上でゴロゴロしたい…。」
「フフ……お疲れさん。」
その場でゴロリと横になったyou…。
アカギはクスリと笑って、彼女を労う様にその髪を一撫でした。
それから一時間程休憩をし、2人は話していた通りにお疲れ様の打ち上げで居酒屋へ…。
珍しくガヤガヤと賑やかな場所での夕飯だったが、周囲の雰囲気が既に活気に満ちており、
楽しげな雰囲気で食事を摂ることができた2人だった。
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数日後…。
共に休日が重なった日。
アカギが行きたいとのことで、本当に家具屋に行くことになったyou…。
しかも、一般的に民間人がよく行くであろうお値段以上の品質…でお馴染みのホームセンターなどではなく、
本格的な品質の代物を扱うような家具屋に……だ。
真っ先にベッドのコーナーへ向かい、いくつか展示品を見て回っていると、
そのコーナーの担当営業らしき初老の男性が声を掛けてきた。
「ベッドをお探しで?」
「ん、ああ。」
「サイズやスプリングの硬さなどのご希望はございますか?」
「サイズは……2人で寝てちょっとだけ余裕があるくらい。」
「でしたらクイーンサイズ……ちょうどこのベッドがそのサイズですが…。」
「あー…ちょっとデカいかも。」
確かに実際見てみると、自分たちの住まう福本荘の自室には少し大きい様子…。
アカギがクイーンサイズのベッドを直に見て大きいと判断したため、営業の男性は「では…」と、
少し移動した先にあるセミダブルのベッドを紹介する。
「こちらは1サイズ下のセミダブルです。」
「ああ、いいねこれ……サイズはこれでいいと思う。」
「あとはベッドの高さや硬さ、金額など…ご希望などでご案内できますが…。」
「寝返りとか寝相が悪くて動いても、あまり動かなくて音が近所迷惑にならなくて、高級ホテル並みに寝心地が最高なヤツ。値段は気にしない。」
「成程、なかなか具体的でいらっしゃる……でしたら…。」
男性の案内で案内されたのは明らかに雰囲気の異なるエリアのベッド。
ソファやデスク、ベッドなどでもハイランクの家具だけ特別ラグジュアリーな雰囲気のコーナーが設けられていたりするが、
2人が案内されたのは正にそんなコーナー…。
いつものことながら、そんな場所に案内され、とんでもない値段の商品の案内を受けても全く意に介さず飄々と説明を聞くアカギ…。
と、固まった笑みを浮かべながら内心冷や汗ダラダラ…営業トークが耳の右から左へ抜けていき、一切内容が入ってこない程緊張するyou…。
「どうぞ、お試しになられてください。」
「だってさ、you。ちょっと寝てみてよ。」
「いやいやいや、無理無理むりです!恐れ多い!!」
「でも寝なきゃ分からないじゃない。」
「じゃあ、ああ、アカギさんのベッドなんだし、アカギさんが試してください!」
「いいから、試す。」
「ちょっ!」
そう言ってyouの両肩を掴み、ベッドの上に着席させる。
着席させた後も暫く両肩を掴んだままなので、youは動けず…結局一度暫く着席してしまえば、もう観念するより他は無く…。
youは「うう…」と唸りながらも、渋々靴を脱いでベッドに横になって寝心地を確かめる羽目になるのであった…。
「どう?」
「き、緊張してあんまり分からない……けど、高級ホテルのベッドみたいなのは確か…です……わたしのベッドとはえらい違い…。」
「フゥン、なるほどね……うん、それだけでも価値はある…。」
「え?」
「すみません、じゃぁこれのセミダブル?ってサイズをください。」
そのコーナーにもいくつかベッドはあったものの、恐らくアカギが購入を決めたベッドが一番高価な様子…。
これには営業の男性もニッコリ…。
すぐに支払いと配送の手続きのため、受付のテーブル席へと案内された。
配送の申し込み用紙を持ってくるからと、男性が席を外したところでyouが恐る恐るアカギに尋ねる…。
「ああ、アカギさん……本当に買うんですか?あのベッド!」
「うん。」
「だって、だってアレ、セミダブルとはいえ凄い値段じゃないですか…!」
「凄い値段の凄いいいベッドを買うためにここ数日で頑張って稼いだんだよ、オレの努力と実力をyouは褒めてくれてもいい…。」
「ちなみにお仕事で?」
「・・・(代打ちの)お仕事ですよ。」
「・・・怪しい…。」
「まぁ、副業ってヤツだな。」
「副業、ですか…。」
アカギのそれは大変アブノーマルな副業であるのだが、以前、アカギが銀二や森田から教わって、スマートフォンで株やFXの資産運用も行っていることを知っているため、
(※「アカギさんとわたし16」参照)
youは少し疑いながらも、そういうことかな…?と、見事アカギの言葉のミスリードに引っかかってしまうのであった。
そもそも、ベッドはアカギの家に置く家具であるし、資金もアカギ自身が出すため、元から口を出す権利すらないと理解しているため、何か物申したくても、物申せない……というのが実際の本音でもある。
そうこうyouが葛藤している間に、営業の男性が戻り、購入の手続きが進められる。
配送の予約を取った後、なんと現金一括で代金を支払いし(youは目を背けた)、2人は家路に着くこととなった…。
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数日後、アカギの家にベッドが届いたということで、その日の夜に早速お邪魔することになったのだが…。
「っ……何これ凄い……流石に高いだけあって最高のベッドですね……すぐ寝れちゃいそう…。」
「you、気に入った?」
「寧ろ気に入らないなんて人いないんじゃないですか?」
「よかったよかった。」
「わたしじゃなくてアカギさんが気に入らないと…。」
「オレは布団でも何でもいい……このベッドにしたのは、youが気に入ると思ったから。」
「なんで…わたし?」
「youが毎日このベッドで寝たいって思ってくれないとダメだからさ。」
「・・・。」
「どう?毎日ここで寝たい?」
「う・・・。」
アカギがそうやって顔を覗き込んで尋ねると、少し悔しそうにyouはコクリと頷く。
「正直……毎日寝たいです…。」
「ハハ、よかった……はい、じゃあこれ…遅くなったけど、渡しとく。」
「これ…。」
「オレん家の合鍵。ああ、大家の管理してるスペアじゃなくて、新しく作ってもらったヤツだから。」
「え、わざわざ……作って…?」
「オレの家、何も無いけど……youさえよければ夜はいつもこのベッドに寝に来てよ。」
「う、う……魅力的すぎる…。」
何せ最高級品のベッドである…。
今までの何も無いアカギの家ならいざ知らず…。
今やそれ1つだけで訪問する価値があることになったアカギ家…。
「合鍵、受け取ってくれる?」
「あ、ありがたく頂戴いたします…。」
「フフ…良かった。」
youは現金で図々しいとは思いつつも、ありがたくアカギから合鍵を頂戴することにするのだった…。
ベッドから離れ自分のバッグの元へ向かい、預かった合鍵を自分の家の鍵と一緒に仕舞うyouの姿を眺めながら、満足そうに笑むアカギ。
再びベッドに戻ってきたところで「ああ、そうだ」とアカギが口を開く…。
「あと、いっぱい動いてもあんまりギシギシ音がしないんだって、このベッド。」
「はぁ?」
「横はyouの部屋だから気にしなくていいとして、下の階に迷惑掛からないから安心してセックスできるね。」
「なっ、なっ…な…!?」
「つまり、そういう事。」
「アカっ……っきゃ?!」
それはもうごく自然に、強くも弱くもない力でトン…とアカギはyouの肩を押した。
勿論、その行為自体に驚いたことは確かなのだが、それ以上に驚いたのは、背中がマットレスに付いた時の物理的な衝撃だった…。
強く反発するワケでも、深く沈むでもなく、体ごとふんわりと包んで着地させるような感覚…。
これは、このベッドとアカギは色々と…本格的に色々な意味でヤバい……そう悟るyou…。
「早速、ベッドのポテンシャルを試してみないとな。」
「そ、それはつまり…。」
「今日はちょっと激しめに攻めるから、youもいっぱい腰振って。」
「下品!!」
「あらら……そう、じゃあ………合鍵とこのベッド、返品する?」
どこかの誰かが「失う悲しみは得る喜びよりも深い」と人間の本質を謳っていたが、それは正しくその通りのようで…。
自宅の物とを比べて、背中で感じる心地よいマットレスと随分と広いこのベッドの貴重さと有難味…。
重ねて、恋人が自分の為にわざわざ作ってくれた合鍵の意味とその価値…。
好いた相手に抱かれることを拒否すれば、それらが失われてしまうとなれば、彼女が取る選択肢はどうあっても必然1つだけなのである。
「か、返さない……どっちも欲しいです。」
「クク……いいね、欲張りなyouも好きだよ。」
まぁ、そうなると思ってはいたが、実際言葉にすると「欲張り」というのはそそるものがある…と、笑うアカギ。
まるで手の中にベッドと合鍵が入っているかのようにしっかりと胸の前で手を握っているyouに軽く口付け、少しだけ捲れ上がったスカートの中に手を差し入れた…。
掃除って大事だな、と
あらゆる方面で思った。
(そういえば、ベッドのサイズなんですけど…。)
(ん?)
(この部屋にクイーンサイズは大きいって思ってたんですけど、クイーンサイズでも十分入りますね。)
(入るのは寸法で分かってたけど、こっちのサイズの方がいいと思ったから。)
(そうなんですか?まぁ、でも…あんまり大きすぎても搬入とか掃除が大変か…。)
(いや、そういうんじゃなくて…。)
(??)
(あんまり広いと、youにくっつけないだろ。)
(え。)
(オレが手伸ばしたら、すぐ抱き寄せれる距離にいてほしい。)
(・・・っ?!)
words from:yu-a
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