step5_(恋人編:アカギ)
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「あれ、もしかしてアカギさん?」
このパターン、少し前にも遭遇した気がする…と
そう思いながらアカギは後ろを振り向いた。
アカギさんといっしょ11
「あ…。」
「やっぱり!」
「坂崎さん。」
「こんにちは!」
「どうも。」
前回とほぼ同じ台詞から会話が開始されたが、場面は前回と全く異なる。
少し前に夜の繁華街で遭遇した時とは違い、今回は昼間の市街でばったり遭遇を果たしたアカギと美心。
(※「アカギさんといっしょ10」参照)
今回は連れ合った友人もいないようで、美心は一人でアカギと話すべく近付いてきた。
「何だかこの間も同じようなシーンありましたね…。」
「そうだね。」
「アカギさん、今日はお休みなんですか?」
「うん、まぁ…。」
「私も休みで、今日は一人で買い物に。」
「そうなんだ。」
「アカギさんは?」
「別に何も……暇だったから…ブラブラしようかと…。」
否、本当は繁華街の雀荘をほぼ網羅し、やや出禁気味な雰囲気を感じたため、
暫く場所を変えてみようと思い、散歩がてらに見て回っていたアカギ…。
(ちなみにアカギ自体は雰囲気を感じ取りつつも気にしていないが、南郷や安岡が居心地の悪さからそう提案したのであるが…。)
暇だったからというのは間違っていないが、目的が無いワケではない…という感じである。
本音を言えば、どうせ明るい市街地をブラつくのであればyouと一緒に歩きたかったのだが、
休みの兼ね合いでそうはいかなかった…という状況だ。
さて、そんな、本当に暇だったから散歩していた様子に間違いなさそうなアカギを見て、美心はというと…。
「私、アカギさんに会ったら謝ろうと思ってたんで、会えてちょうど良かったです!」
「え?何で?」
思いもよらない美心の発言。
何故かアカギに謝罪したかったという謎の言葉に、流石のアカギも頭に疑問符を浮かべる。
「ここ何度か、youちゃんがお休みの日に私の買い物に付き合ってもらっちゃってたから…折角お休みなのに2人で過ごす時間を私が奪っちゃったみたいで反省してたんです。」
「ハハ、そんなこと気にしてたの?」
「気にしますよぉ~!」
「坂崎さんと遊んだ日はいつも「楽しかった」って自慢してくるよ。」
「そうなんですか?嬉しいな。」
「オレは2人が楽しいんなら全然いいと思うよ。youのこと、また誘ってあげて。」
「アカギさん……じー~ん……人間できてる~!」
アカギの言葉に、美心は「懐が深い!器が大きい!」と感嘆するが、
それはあくまでもyouが出掛ける相手が女性だからである…。
特に美心は自分もその存在を知り得ており、
人となりに於いても好感を抱いている相手なので、youにとって文句無しの親友だと認識している故の事。
これがひとたび男に挿げ替えられれば、丸一日通してyouと向き合って説教すること待ったなしかもしれない…。
「そういうワケで、アカギさんには謝りたいと思ってたんですけど……そんな嬉しい事言われたら、またyouちゃんのこと遊びに誘っちゃいそう。」
「いいと思うよ。オレは近くに住んでるし……夜にでも一目会えれば。」
「キャァアア!!何その素敵な台詞~!!美心もカイジ君に言ってもらいたいぃい!!」
「・・・。」
「はっ!ごめんなさい!つい発狂を…。」
「発狂…。」
「アカギさん、本当にyouちゃんとの時間大事にしてるんですね。」
「…まぁね。」
「ご馳走様です!一親友としてすっごく嬉しかったので、アカギさんにお礼!……いいこと教えてあげますね!」
「いいこと・・・?」
「多分……youちゃんは自分から言わないと思うから……。」
「?」
美心の意味深な言葉に再び不思議そうな表情をしていると、
彼女はニコニコと先日出掛けた際の話をアカギにし始めた。
「この間、youちゃんと一緒に買い物に行った時…一緒に下着を買ったんですよ。」
「そうなんだ?」
「それで…youちゃん最後まで2つの候補で悩んでて。」
「・・・。」
「好きな色の可愛いのと、あともう1つ…。」
「もう一つ…?」
「うふふ…そう、もう一つ。推しカラー!」
「おしからー?なにそれ。」
「えっ、伝わらない?推しのイメージカラーですよ……つまり、アカギさんのイメージの色。」
「え?オレ?」
「はい!」
美心の言う単語が途中で分からなくなったこともあり、アカギは自分で自分を指さして尋ねる。
「よく分からないんだけど…。」
「youちゃん、アカギさんの好きな色とか好みのデザインが全然分からないから、って……自分の中でのアカギさんのイメージで選んでました。」
「そう、なの…。」
「ふふ……好きな色の方が可愛くて好みだけど……折角だから今回はアカギさんのイメージにしよう……って。」
「・・・。」
「アカギさんも勿論ですけど、youちゃんも実はアカギさんのことを想ってるってことです。相思相愛ですね、羨ましいんだぞ!」
「成程、そういうこと……分かった。教えてくれてありがとう、坂崎さん。」
「いつものyouちゃんの感じと違うのを着てたら、きっとそれですよ!」
ウフフ、と暫し悪戯っぽく笑った後、突如美心の携帯が鳴った様子。
ディスプレイを確認して、画面を操作する様子だと電話ではないようで、恐らくはメッセージのようだった。
彼女はそれにちゃちゃっと小慣れた様子で返信をすると、アカギを見上げて「すみません」と一言。
「うちのママとパパがこっちに来て合流する予定だったんですけど、今着いたって連絡でした。」
「そっか、じゃあここまでだな。」
「はいっ、引き留めちゃってすみませんでした!」
「いや全然。こっちこそ、色々ありがとう。耳寄りな情報も併せて。」
「こういう機会、なかなか無いですからね……あ、youちゃんにはナイショですよ?これは美心からアカギさんへのご褒美みたいなモノですから!!」
「勿論。」
「よかった!それじゃぁ!またそのうち、皆でお出掛けしましょうね!」
「ああ、それじゃあ。」
アカギが小さく挨拶の手を上げると、美心は嬉しそうに「失礼しまーす!」と、ブンブン手を振りながら人混みの中へと消えていった。
彼女の背中が完全に見えなくなったところで、アカギは手を下ろしてくるりと反対を向く。
「(なるほど、ね…。)」
先程までは周囲の建物で雀荘やその他楽しめそうな遊技場の看板を探すことに集中していたが、
今やそんなことは二の次で、今しがた美心から得た情報を整理する方が面白い…と、意識は脳内に集中しているアカギ…。
「(坂崎さんと出掛けた休みが先週の頭で、そっから今日までの間youとはシてないから…。)」
あとはどうしたら美心の言う例の下着を確認できるのか…と。
しょうもないと言えばしょうもない話なのだが、知人(南郷と安岡)のオッサンの為に雀荘を探す事より、
自分の恋人が自分を想って選んだという下着を見る方法を考える方が遥かに有意義なワケで…。
歩きながらも雀荘探しは気もそぞろ…色々と思考を巡らせながらブラブラ歩いて、
結局、新しい場所は開拓できぬまま家路に着くことになったのだった…。
・
・
・
・
ガチャ、と202号のドアが開いた夕刻過ぎ。
独り暮らしの家主の帰宅だというのに、家に入ってすぐさま聞こえる「おかえり」の声。
「アカギさん、来てたんですか?」
「うん、休みだったから。」
「(休みだったから人の家に上がり込んでいる理由にはならないのだが…まぁ、いいけど…。)」
「フフ…言いたいことは分かるよ……けどまぁ、オレもさっき帰ってきたとこ。この時間だし、youが帰ってくるだろうから、こっちで待ってようと思ってさ。」
「そうなんですか。」
「うん、今日はちょっと出掛けててね……ああ、途中で偶然坂崎さんに会ったよ。」
「えっ、美心ちゃんと?!……何話したんですか~?」
少しだけ驚いた後、ぱっと明るい顔になったのは恐らくyouが彼女を好きだからだろう。
どんな話をしたのか…と、興味津々で聞いてくるが、
特に深い話はしていない上、美心から教えてもらった嬉しい話を本人にするわけにもいかず…。
「街で何してたかとか、普通の話だよ。」
「美心ちゃんはお買い物かな……アカギさんは何してたんですか?」
「特に何も…暇だったからブラブラ散歩してた。」
「・・・目的もなく…?」
「・・・そうだけど…。」
「・・・。」
「何?」
「いやぁ……夜ならまだしも、アカギさんが目的なく昼間に一人で賑やかな市街地行くイメージ無くて…。」
「そう?」
「てっきり、新しい狩場でも探しに行ってたのかと、あはは。」
「(・・・意外と鋭いな。)」
冗談交じりとはいえ、アカギに何らか不純な目的があって昼間の市街地に行ったのではないかと予想したyou。
アカギの生態をよく把握していると言ったところだろうか…。
youの予想に関心しつつ、コホンと小さな咳払いをして話題を変えてきた。
「you、明日って休みだったよな?」
「え、あ、はい!お休みですよ。アカギさんも?」
「うん。だからさ、今日はちょっと……今から出掛けない?外で飯食おうよ、何でもいいよ、奢るから。」
「えぇ?今から…??」
帰宅直後のyouにしてみると、ゆっくり家で過ごしたい気持ちもあったが、
夕飯をこれから作るのも少し…いや、大分億劫ということもあり、アカギの提案に乗ることにした。
「うーん……アカギさんお腹空いてる?汗流して、着替えなおして、ちょっとゆっくり準備してからだと、有難いんだけど…。」
「いいよ全然。」
「じゃぁ、出掛けようかな……準備しまーす。」
準備する時間を多めにくれるのであれば出掛ける、とアカギに告げ、アカギもまたその条件を飲む。
ゆっくり準備して構わない、と許可をもらえたことで、彼女は荷物を置いて、出掛ける準備をし始める。
それからリビングで寛ぐアカギと話をしながら、自室や洗面所などを行き来しながら準備し、
帰宅から約小一時間ほど経過した頃、シャワーを浴びて、着替えたり、改めてメイクをし直したりして、準備を完了させたyouがソファに寝転ぶアカギの後ろから声を掛けた。
「お待たせしました、アカギさん。」
「早かったね、もう準備できたの?」
「はい、お陰様で。」
「改めて出掛ける準備させて悪かったな。」
「いえ、それは別に……わたしが帰宅後のHP削られてヨレヨレな状態で行くのが嫌だったからですし…。」
「だとしてもさ、外に連れ出すのはオレの我儘だし。」
「いえ、全然問題ないですよ?夕飯作らなくていいのは有難いですし、アカギさんとも出掛けたいし……イヤだったらそう言いますしね。」
「そう・・・ね、you、ちょっと来て……いや、オレが行く。」
「?」
どうせ今から出るので自分が立ち上がると宣言し、アカギはソファから降りてyouの元へ。
観察するように上から下までじっと彼女を見つめ、うん、と真顔で頷く。
「どうかしました?」
「いや……可愛いなと思って。」
「は、は?」
「削られたHPを1時間掛けて回復させた努力の甲斐あって、さ。」
「な、なんですかそれ…。」
「ちゃんと可愛くなってるよ。いつも普通に可愛いけど。」
「な、何かよく分からないし、アカギさんに言われると何か凄く照れるけど……とりあえず、ありがとうございます??」
「フフ……じゃ、行こうか。」
褒め言葉を吐いた割には、あっさりと後ろを向き、玄関へと向かうアカギ。
彼の行動はいつも基本的に突飛な発言や行動も多いため、youもそこまで気にせずに後ろに付いて外へ出た。
それから、何を食べたいとか、どの方面へ向かうかなどを歩きながら話し合うが、
どちらかと言うと食べたいものを決めた後、アカギがそれとなく場所を誘導したような感じとなった。
結果、夜に大人で賑わう繁華街と、煌びやかな市街地のちょうど中間地点の辺りにやってきた2人。
勿論、その立地なので、有名な店や美味しい店が多数並んでいるため、全くもって不足も無く…。
多少並びはしたものの、2人で決めた希望の店で夕飯を摂り、ここで正解だった!と舌鼓を打った。
そうして、夕食を終えた後のこと…。
「ふぁー!お腹いっぱい!すっごく美味しかったです…!」
「急に連れ出して申し訳なかったと思ったけど、その様子じゃ結果的に良かったって事で取っていいみたいだな。」
「勿論です!連れ出してくれてありがとうございました、アカギさん!」
「クク……そこまで言われるとはね。」
「じゃぁ、お家帰りますか。」
と、そう言って家への道を歩き出したyou…。
しかし、それはすぐにアカギに腕を掴まれたところで制止を余儀なくされた。
「…アカギさん??」
「ちょっと、まだ寄りたいところがあるんだけど。」
「雀荘ですか?」
「何で、youがいるのに行かないよ。」
「じゃぁ……え、何処…?」
「オレそんなに雀荘ばっか行ってるイメージなの?」
「え、違うんですか?」
「・・・どうだろう…違うと言いたいけど、違わないかもしれない…。」
「めちゃくちゃ自覚してるじゃないですか…。」
「でも、youといる時は別でしょ(連れて行っきたいと思ったことはあるけど)。」
「じゃぁ、何処に行きたいんですか?」
「どっか、その辺でいいんだけど…。」
「あ、トイレですか?お店の借ります?」
「違う。」
終いにはyouのすっとぼけた的外れの(しかもちょっと下品)考察にイラっとしたのか、
アカギは彼女の手をするりと絡め取り、問答無用で引いて歩き出す…。
「あ、あわ!アカギさん?!」
「ちょっともう黙って付いてきて。」
「…は、はい…。」
ぐいぐいと手を引かれ、夜なのに昼間のように明るい繁華街の方へと歩き始めるアカギ…。
youは女性ということもあり、夜に一人ではこういった場所に来る機会も少ないためか、
うきうきと楽しそうに周囲を見回しながらアカギと手を繋いで歩いていく…。
数分歩いた頃、少しだけ裏通りに入ったことで人混みやその喧騒が落ち着いてくると、
立ち並ぶ店も少しだけ表通りとは構えが違ってくる…。
背の高めなビルにいくつか複合で入った、こだわりの店や隠れた名店などが多数…。
そういったビルをキョロキョロと見定めながら、アカギが目的地を示した。
「ここでいいか……入るよ。」
「え?あ、はい!」
アカギが選んで入店したのは、所謂オーセンティックバー。
シックな内装に、控えめな音響と照明。
そこまで広くない程よいスペースに、何組かのカップルや男性がカウンターやテーブル席でお洒落なグラスを傾けている。
「来たかったのって、バーだったんだ…。」
「まぁね…(別に酒が飲みたいワケじゃないけど…)。」
「頻繁に来る機会も無いので、とても嬉しいです!!」
「そう、良かった。」
アカギの予定としては、バーで飲む事自体はこの「後」へのつなぎのようなものではあったが、
予想外に嬉しそうに喜ぶ彼女を見ると、自分の選択が間違っていなかったのだと確信できた。
カウンターのバーテンダーに促された席につき、注文を取る。
「you、何にする?」
「ええと、わたしよく分からないので…。」
「お酒強くはないけど、普通に飲めるよね?ワインとか大丈夫?」
「あ、はい……どっかん!とキツめなお酒でなければ…。」
「ちょっとクセあるけど、頼んで欲しいのはシェリーとかかな。飲めなかったらオレが飲むし。」
「灰〇哀ちゃんですね?!」
「ごめん、誰それ。」
「すみません、アカギさんに通じるワケないですよね……全然、それでいいです!名前で決めちゃいます。」
「そう、じゃあ頼むね。」
そう言ってアカギはバーテンダーに声を掛け、シェリーを少し甘めになるよう依頼し、自身は「とりあえず」と、ジントニックを注文した。
混雑もしていなかったため、注文を受けたバーテンダーはすぐに依頼されたよう丁寧にカクテルを作り始める。
「素敵なお店ですねぇ、よく来られるんですか?」
「いや、大分前に…安岡さん達と何度か来たかもだけど……今日は食事した店から近かったから思い出して適当に入っただけ。」
「ふーーーん……そっか。」
「……なに?」
「ん?」
「何か言いたげじゃない。」
「いえ、別に……。」
「言った方がスッキリするよ。」
「それもそうですね……じゃあお尋ねですけど…安岡さんと、どなたと来られたのかな~って。南郷さんじゃないから、ちょっと気になった。」
「何で南郷さんじゃないって思ったの?」
「だって、アカギさん、南郷さんの名前は省かないもん。だから安岡さんが先に来る時は南郷さんはいないので、「安岡さん達」って複数系になると、必然、南郷さん以外の誰かな~って、疑問が湧いてしまうワケです。わたしの中で。」
「ヘェ、すごいじゃない……当たってる。」
「わーい、正解!……じゃなくて!」
自分の人間関係をどう伝えているのか、自分では無意識であったが、
その辺りは今までの付き合いで、聞き手であるyouの方が使い分けをよく熟知、考察していたということが分かり、アカギは珍しく感嘆した目で彼女を見つめる。
対して、彼女は目的が「安岡さん以外の面子」を聞くことなので、話をはぐらかすな、と頬を膨らませる。
そんなタイミングでバーテンダーが注文の品を出してきたので、話をいったん中断し、youはきちんと「ありがとうございます」と礼を述べた。
「とりあえず乾杯。」
「あ、ずるい……うう、とりあえず乾杯です。」
グラスを当てることはせず、乾杯は挨拶だけ。
折角丁寧に作ってもらったので…と、ひとまずは先にカクテルを飲む事にしたyou。
「ん……確かに普段飲むお酒より度数高いですね……でも飲めます。」
「そう、良かった。」
「アカギさんはこういうとこだと何杯くらい飲まれるんですか?」
「さぁ……気分次第だから……だいたい3杯から5杯くらいじゃない?」
「5杯は無理かも…。」
「無理しないで、酔いつぶれたら背中に負ぶって帰る事になるよ?」
「それはイヤ。」
「ハハ、冗談だよ。」
実際には恐らくタクシーを使うのだが、本当に酔い潰れたyouを背負って繁華街を歩く自分の姿を想像してクスクスと笑うアカギ。
「あ、忘れるとこでした……結局、さっきの安岡さん達って…。」
「あんまり言いたくなかったけど、まぁ、仕方ないか…。」
「む…。」
「お察しの通りだと思うけど、安岡さんが行くお店の女の子とかの事だね。ごく稀にだったけど。」
「やっぱり…。」
「だいぶ前だよ、youとも勿論付き合ってない頃のさ。」
「それはそうでしょうけども…。」
「本当に極々稀だよ、寧ろ付いてくるなって毎回安岡さんが女の子達に言ってたくらいだし。」
「え、どうして?」
「オレが一緒だと、安岡さんの近くに女の子来ないからって。」
「確かに…。」
仮に自分が水商売に携わる人間だったとして、安岡とアカギのどちらに声を掛けたいかと言われると、
性格や性質を知らず、年齢と顔だけで判断すれば断然アカギの方に軍配が上がるだろう…と失礼ながらyouも思った。
妙に納得してしまって、安岡には申し訳なく思ったが、
そのお陰もあって、アカギが安岡と共に女性とお酒や会話を楽しんでいたという嫉妬心はかなり和らぐ…。
「ふふ、安岡さんには申し訳ないけど、ちょっと面白かったかも。」
「安岡さんも南郷さんもyouとの事は知ってるから、今後はそういう店には多分呼ばれないと思うし、仮に呼ばれても行かないから、心配しないでよ。」
「別に……ストレス発散の目的もあるでしょうから、行ってもいいと思いますよ……ちょっと…かなり、イヤだけど…。」
「行かないって。」
「無理しなくても…。」
「youはオレに女の子と一緒にいてほしいの?」
「いてほしくないですけど…?」
「だよね?じゃあそう言えばいいのに。」
「だって……そういう束縛って、窮屈でしょ…アカギさん…。」
「え、大歓迎じゃない?」
「え?」
「え?」
いつも自由気ままに我が道を生きるアカギの性格を考え、行動を制限するような発言や行為は不快感を抱くのではないか、とyouは言う。
しかしながら、当の本人は別段気にしないどころか、寧ろ束縛してくれて構わないと発言するため、
youはビックリしてアカギに何故?と問うた。
「何故大歓迎…?」
「だっていつも言ってるじゃない、you以外は要らないんだって。お店でお酒飲みたかったらyou連れてくるし、話を聞いてほしければそういうお店じゃなくて家帰ってyouに話するよ。」
「うーん…でも、わたしだと、そういうお店の方みたいに聞き上手じゃないかもですし…。」
「確かにね、気分良くしてくれながら話を聞いてくれるのは彼女たちのスキルだし、だからこそ皆金払ってでも店に行くんだから……それは確かにそう。」
「でしょ?」
「でも、オレはそれ、求めてないから。」
「あ…。」
「オレが欲しいのはyouと飯食ったり、その日あったことを話したりする・・・そういう、あったかい時間だから。」
「アカギさん…。」
「ぬるま湯みたいで刺激が無いとか、ちょっとむず痒いって思うんだけど……新鮮なんだよな、そういうの……オレはそれ、youと一緒にいる時しか感じられないんだ。でも、新鮮じゃなくなっても、多分ずっと……youとだけはそうしていたい。」
「…何だか、わたしと真逆ですねぇ。」
「真逆?」
「わたしはアカギさんといると、落ち着かないです……心がざわざわしますから。」
「ハハッ、なんだざわざわって……うんまぁ……何となく、分かるけどな。」
「真逆なのに……不思議ですね。」
「真逆だからじゃない?」
「え?」
「だって、磁石だって逆だからくっつくじゃない。」
「おお、なるほど…。」
「何だっけ、オレがSでyouがMみたいな…?」
「Nですね。……わざとでしょ!!」
「クク…さぁね。」
くつくつと楽しそうに笑いながら、グラスを空けたアカギは自然にバーテンダーに声を掛けて新しいドリンクを頼む。
囁くような声だったため、アカギが何を頼んだのか分からなかったyou。
暫く待って、ドリンクが届いた際にアカギに尋ねてみる…。
「何を頼まれたんですか?」
「これ?これは"オールドファッションド"ってバーボンウイスキーベースの酒。」
「名前からしてお洒落ですね。」
「これは前に銀二さんと来た時にオススメで教えてもらった。」
「銀さん……バー…似合う…!!」
「(エグい仕事っぷりに反して)渋くて品があるからな、あの人。」
「ですね。」
「そういえば知ってる?「カクテル言葉」って。カクテルに込められた意味があるんだって。」
「そうなんですか、ますますお洒落ですね……"オールドファッションド"、それは何て意味なんですか?」
「【我が道を行く】。」
「・・・。」
「またまた何か言いたげじゃない。」
「いや……うん、そうだなって。」
「他にもいくつかお店の子に教えてもらったけど……覚えてるのはちょっとだけだな…。」
「何だ、カクテル言葉は銀さんじゃなくて女の子に教えてもらったんですか。」
「"オールドファッションド"だけは銀二さんだけどね。やっぱりお酒の話とかは職業柄彼女ら詳しくてさ。でも、為になることもあった。」
「為になること??」
「知らないで頼んだ酒にとんでもない意味があって、知ってる水商売の女と飲んでる時に誤解されるかもしれないから気を付けてとか、そういうの教えてもらったから役立った時もあるし…。」
「そうなんだ、凄い世界…。」
「でも、イチイチ気にして飲むのも面倒だから、一人か、気の知れたヤツと行くのがいいって結論に至った。」
「あはは、それは確かにそうかもですね。」
夜の街を熟知しているアカギならではの話に、終始面白そうに耳を傾けるyou。
そんな様子で会話をしながら、ようやくyouが1杯目を飲み終えた。
「お酒、空いたけど…まだいけそう?」
「あ、はい。でもわたしは2杯でいいかも。」
「そう、じゃあオレも次で終いだな。何にする……って、分かんないか。」
「分かんないです。なにか、アカギさんチョイスで決めてもらえますか?」
「ちょっと強めでもいい?」
「量が少なければ。」
「分かった。」
それならいいのがあるよ、とふわりと笑んでから、アカギはバーテンダーに最後の注文をする。
アカギが「いいのがある」とまで言うカクテルとは…とわくわくしながら待つと、
2人のコースターの上にバーテンダーがスマートに「xyzカクテルでございます」と、カクテルグラスを置く…。
半透明な乳白色をベースに、照明の影響か、本来の色か惑うような薄く柔らかな黄色が特徴的で、
アカギの選択にしては思いがけず「可愛い」と思うカクテルだと、youは思った。
「可愛い色ですねぇ。」
「可愛いのかはよく分かんないけど…。」
「こちらも、何か意味があって頼んだんですか?」
「"xyz"って、名前の通り「これで終わり」や「これ以上のものはない」って、最後の意味なんだって。youは知らないから、バーのセオリー通りに頼んでみると面白いかなと思ってさ。」
「(「xyz」なんてシティー〇ンターしか思い浮かばない…。)」
「何か漫画でも出てくるとか…。」
「(やっぱそうじゃん…。)」
「あとは……まぁ、これは後でいいか。」
「?」
ふいに言いかけた言葉を飲み込んだ様子のアカギ。
youはそれを少しだけ不思議に思いつつも、出してもらったカクテルの味が早く知りたくて「いただきます」とグラスを傾けた。
「わ、おいしい…。」
「そう、良かったね。」
「アカギさん……また一緒に来たいです。」
「うん、そうしよう。」
落ち着いたバーの雰囲気がそうさせるのか、youが素直な感想を述べれば、
アカギもからかうこともなく素直に綺麗な笑みを返した。
そうして、多くはない会話の中で、少しずつグラスが透明になっていき、
最後に思い出したようにyouはアカギに礼を述べる…。
「あと、今更ですけど、今日は色々とありがとうございました。ご飯来てよかった。」
「どういたしまして。」
「これで一日の締めって、素敵な時間です…。」
「…締めにはしないつもりなんだけど?」
「ん?」
「そろそろ次、行こうか。」
「え?次…?」
たった2杯ではあるが、強めのお酒を体内に取り込んでいるため、
これ以上のアルコール摂取はできれば控えたいと、youはハシゴ酒を拒否しようとしたのだが、
アカギは彼女のグラスが空いたのを確認して、会計をしに行ったので話が途切れてしまった。
帰宅の意思を伝えようと、ひとまずアカギと共に外へ出てから、話題を切り出す…。
「あの、アカギさん……わたし、今日はもう更なるハシゴ酒はちょっと…。」
「ハシゴ酒…?」
「違います?もう帰ります?それなら…。」
「いや、お酒はもう飲むつもりないけど…。」
「あ、そうなんですね!よかった…!」
「ホテルに行こうかと。」
「よくなかったわ!」
弱々しく帰宅の意思を伝えた矢先、強めにツッコミを入れることになるyouであった…。
一瞬、周囲に他に人がいなくて良かったと心底安堵したのは言うまでもないだろう。
「あ、アカギさん……今日はもう帰りましょうよ。」
「折角いい雰囲気になってるのに?」
「うっ…。」
美味しく食事をして、お洒落なバーでお酒を楽しみ、強めのアルコールで気分がふわふわと良くなっているこの状況で?と…。
そういう意味であるということは言われなくても、自分がそうなので分かってしまうyou。
「オレ、今凄く気分がいいんだよね。」
「は、はぁ…?」
「だから、帰ってもいいけど……多分高揚してるから福本荘中に聞こえるくらいyouのこと啼かせると思うけど、いい?」
「よくないよ!!イヤだよ!」
「じゃぁ、一緒にホテル行ってくれる?」
「いや……でも…それは……それは…。」
「さっき言ってくれたじゃない【今夜はあなたにすべてを捧げます】って。」
「いや、言ってませんが?!」
幻聴ではないですか?!というか、アカギの方が自分より酔っているのでは…と焦るyouに、
アカギはクスクスと笑いながら彼女に「いや、言ってたよ」と断言するので、更に混乱を来してしまう…。
「シェリー頼んでくれたじゃない。」
「え、最初のヤツですか?……………ハッ!ま、まさか!!」
「クク……察しの通り。」
「か、カクテル言葉…ッ?!」
「あれ飲んでるyou見て、ずっと「この後抱きたい」って思ってた。」
「な、な…な!!」
「もう、家まで我慢できそうにないからさ、ホテル行こ。」
「あ、アカギさん…。」
「you、お願い。」
「うっ…うう………その顔ずるい…!」
提案の内容とは裏腹に、目を細めて大変穏やかな笑みを浮かべるアカギ。
微塵も厭らしさを感じさせないその表情に、矢張りyouは折れてしまう…。
結局youが「分かりました」と言うより先に、観念した様子を察して「ありがとう」と告げ、すぐに彼女の手を取ると、
嬉々としてアカギは夜の繁華街を更に奥へと進んでいった。
流石に夜に賑わう繁華街ともあって、俗にいうラブホテルもそこかしこに乱立されているので、特に迷うことも長く探し続けることも無く…。
先程のバーと何ら変わりなく、アカギの判断で適当に選んだビル型のホテルに入室することとなった。
「うう…結局流されてしまった…。」
「youだって本当は外で食べることになった時点で、ちょっとこうなるかもって思ってたんじゃない?」
「お、思ってますんよ?!」
「(どっち?)……まぁ、どっちでもいいけど。」
どうせすぐに答えは出るから…と、アカギはくつくつ笑いながら部屋のベッドに寝転がる。
部屋にはアカギがそのように寝転がっても余裕のあるキングサイズのベッドがドン、と中央に設置されているが、
ベッドはそれ以外に無いため、youも少し困った顔をしつつ、そこに腰を下ろす…。
「(アカギさんこのまま寝ないかな…。)」
「ヤバいね、このまま目を閉じたら寝ちゃいそう。」
「(いいぞ、寝ろ!寝るんだ赤木しげる!!)」
「寝ちまないうちに、ヤる事やっとかないとな。」
「げっ?!」
アカギがそのまま寝てくれることを祈っていたyouの願いは通じず…。
彼はその場ですぐに「よいしょ」と起き上がり、ベッドに腰かけている彼女の肩を後ろから指でトントンとつつく…。
切実に振り向きたくなかったが、この状況でそうもいかず…。
youは超絶スローモーションでアカギを振り返った…。
「な……なんでございましょう…。」
「you、服脱いで。」
「この上なくストレート!!」
「脱がないなら脱がせるまで…。」
「ちょ、ちょっとアカギさ…!!」
言うや否や、ぐいぐいとyouの上着に手を掛けてくるアカギ。
真っ先に上着が脱がされたところで、服が伸びるから止めてくれ!と、伝えてみるがあまり効果はない様子…。
「あああ、アカギさんっ!あのっ、シャワーを浴び(長く入ってそのうちに寝てもらい)たいなー…とか…」
「必要ないでしょ、だってyou、出掛ける前にシャワー浴びてたし。」
「ソウデシタネ…。」
「だから、ね……youの服、脱がせていい?」
「ちょっ…ま!」
「待たない。」
ベッドに腰掛けていたyouの身体をベッドの上に引き上げて押し倒し、
逃げられないよう馬乗りになって彼女の服に手を掛けるアカギ…。
運良く……否、運悪く、youが出掛ける前に着替えたのは前開きのボタンシャツ。
まるで鼻歌でも歌い出すような勢いで、アカギはその長い指で器用に小さなボタンを上から順番に外していく…。
「あ…アカギさ…。」
「・・・ふーん……オレってこういうイメージなんだ?」
「な…何?」
シャツのボタンを全て外し、前を全開に開帳させると、当然ばっちり視界に映るyouの下着。
見慣れない、彼女のいつも選ぶような下着のイメージではないそれは、美心の言っていたソレであるとすぐにアカギは察した。
おまけにその新しい下着をおろして今着ているということは、期待したかどうかは分からないが、
今日こういった流れになることを予感していたということでもあるワケで…。
アカギがソレを見て楽しげに呟いた言葉に、少しだけ不思議そうな顔をしたが、それをかき消すように質問が追随された。
「you、その下着……新しく買った?」
「え、何で…?」
「いや、あまり見ない感じだったからさ。」
「え、うん……これはついこの間、美心ちゃんと出掛けた時に買ったの。」
「……いつものyouのチョイスとちょっと違うよね、色とか……デザインとか…。」
「え、と……これは、その…。」
「好みが変わった?」
「好みというか……えっと…。」
極々自然なアカギの質問に、何故か追い詰められたように焦り、紅潮した顔で言葉を噤むyou。
彼女がそうなっている理由を美心からもらった情報でバッチリ知り得ているアカギは、
不自然にニヤけてしまいそうな顔を必死で隠し、平静を装いながら彼女を追い詰める…。
「どうしたの……急に言い淀んで…。」
「え、ええと…。」
「もしかして……オレに何か言えない隠し事?」
「いえ、そんな!」
「どっちにしても何か理由あるみたいだし、聞きたいんだけど…?」
「逆に、どうして……これ、気になったんですか?」
「そうきたか…。」
「だ、だって何か……やたら食いつくなと思って……ただ気まぐれで買ったかも、なのに。」
「youの好み、割と熟知してると思ってるからさ、逸脱してたら気になる。何か理由があるのかな、って。」
「は、把握されているのか…。」
「you、好みも凡……分かりやすいしね。」
「今凡夫って言った。」
「言ってない言ってない。」
おっと失言…とばかりに、否定した後口を膨らませて続く言葉を飲み込むアカギ。
このまま話がはぐらかされてしまいそうな気がしたため、手法を変えてシンプルに尋ねてみることにする…。
「何となくいつもと違うの、それって結局理由ある?ない?」
「ある…。」
「やっぱりあるんだ?気になる、教えてよ。」
「これは……わたしが…。」
「うん?」
今までずっと詰問されている間、兎に角アカギと目を合わせないようキョロキョロと視線を定めずにいたyouだったが、とうとう観念したらしい…。
大変困ったような表情で、アカギを見上げ、視線を離さずにその理由を口にする…。
「わたしが…アカギさんのこと分からなくて……知らないから、選んだの。」
「…どういうこと?」
「アカギさんの好きな色、とか……好みとか、分かってなくて、知らないなって。」
「・・・。」
「アカギさん、好きな色って何色?」
「youに似合う色は全部好きだよ、youが好きな色も好き。」
「アカギさん自身は?」
「…別に、無いかも。ああ、でも何か派手で変な色は微妙かも…。」
「ど、どんな色……ビビットカラーとかかな…?」
「好きってわけじゃないけど、服とかは暗めの色とかシンプルな色しか着ないな。」
「ユニク〇カラーかぁ。じゃぁ、好みの柄とか、デザインとか…。」
「それって下着?それなら簡単じゃない、youが着てれば何でも好きだよ。透けてたり、穴が開いてるのも大歓迎なんだけど?」
「変態、そんなの着ません。」
「あらら…。」
困った表情が一変、ジト目で訝しげにアカギを見つめることとなる。
「ゴメンごめん……オレ、あんまりこれと言って自分が「好き」ってモノや感覚が無くてさ……興味が無いというか…。」
「着れればいい、使えればいい、食べれればいい……みたいな?」
「まぁ、そんな感じ。」
「じゃぁ、予め好みを尋ねてもこういう結果になったのか……そっか……。」
「ん?」
ハァっと溜息のような安堵のような小さな息を吐き、youは困ったように笑いながらアカギに事情を話す…。
「これね……アカギさんの好みが分からなかったから、わたしが思うアカギさんのイメージで色とか、デザインとか…選んだやつなんです。」
「…そうなの?」
知っているのに、素知らぬふりでしれっと驚いた表情を浮かべる演技派のアカギ…。
全く気付いていないyouは更に言葉を続けていく…。
「自己満足のために買ったものなので……言うつもりなんて微塵もなかったんですけど…。」
「気付いて良かった……教えてくれてありがと、凄く嬉しい。」
「透けてたり、穴が開いてるのはイヤですけど……そのうちアカギさんに選んでもらおうかな。」
「そのうち?クク……冗談。そんな嬉しいハナシ、乗らないワケないじゃない……明日にでも選びに行くって。」
「お…驚きの行動力……何て不純な動機…。」
「嬉しい事言うyouが悪い。」
そう言ってyouの額に軽く口付けるアカギ。
唇を離すと、すぐさま少し身体をずらして彼女のスカートに手を掛ける…。
「あ、アカギさん…!」」
「折角だからスカート脱いで下も見せてよ……ていうか見るけど…。」
「わ、あ?!」
こちらも上着と同様に難なくスルリと腰から脱がせ、あれよあれよという間にyouの装備品は下着のみとなってしまった。
まじまじとその姿を見つめ、アカギは満足そうに笑って1度大きく頷く…。
「うん、いいんじゃない?」
「うう…何が。」
「え、youが選んだ下着、似合ってるからさ、いいなと思って……オレのこと思ってくれたってだけでも嬉しいけど。」
「う……。」
「違うの?」
「…違わないです。」
選んだ理由を自白したのだから、ここで嘘を吐いても仕方がない。
youは素直にアカギの言葉を肯定し、一呼吸した後、穏やかに微笑む。
その反応が愛しくて、アカギは眼下のyouを思いっきり抱きしめた…。
「知ってる。全部知ってる、何もかも、分かってる。」
「え…?」
「だからオレ、最後にバーであれを2人分頼んだんだからさ。」
「え、と……『xyz』?」
「そうだよ。」
「「これで終わり」って、だから最後に頼んだって…。」
「他にもあるの。」
「意味…ですか?何て…。」
「ナイショ……どうせネットで調べられるんだ、明日でいいじゃない。」
「でも…わたしは今、アカギさんの口から聞きたいです…。」
youのその言葉に、アカギは身体を離して身体を起こす。
同時に、腕をゆるく掴んで、youに起き上がることを促すと、
彼女はそれを察して起き上がり、ベッドの上で2人向かい合う…。
「そう……じゃぁ、youがオレの服全部脱がせてくれたら教えてあげる。」
「もうっ……!」
「どうする…?」
「……約束ですよ?」
そう言って、頬を膨らませ、恥ずかしそうにしながらも、
youは迷いなくアカギのシャツに手を伸ばすのであった。
最後は2人で
【永遠にあなたのもの】と
込められた言葉で誓いあっただけの日
(ほ、本当にアカギさんも行くんですか…?)
(うん、行くよ?)
(恥ずかしくないんですか?その、だ、男性が下着売り場に行くって…!)
(そりゃ一人でウロついてたらマズいだろうけど……youの傍にいれば問題ないだろ?)
(も、問題ないわけではないんじゃ…。)
(つべこべ言わずにさっさと行く。黒い際どい紐みたいなやつと、何か白いレースのやつにしてよ。)
(雑だけど言いたいことが適格過ぎる!!!)
(ああ、でもyouの好きな色のヤツもいいな。)
(めちゃくちゃ選ぶじゃん!!)
(確かに……オレ、自分はどうでもいいけど、youに関わる案件なら好みがポンポン出てくるな……ハハッ。)
(ハハッ……じゃないッツ!!!)
words from:yu-a
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