step5_(恋人編:アカギ)
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今度、どっかで連休とか取れない?」
と、おおよそアカギらしくない質問に
彼女は大いに目を丸くした。
アカギさんといっしょ7
「連休…ですか?」
「そ。ちょっとね、例によって例のごとく泡銭が手に入ったんで……youを連れてどっか行きたいなと思ってさ。これはただのオレの我儘だから、金のことは気にしなくていい、休みだけ取れるモンかな、と思って。」
「そ、それって……旅行ってことですか…?」
「そう考えてもらっていい。どこか行きたいとこある?何か食べたいものとか、見たい場所とか…。」
「わ、わたしはアカギさんといっしょならどこでもいいので…。」
「ハハ…。」
「な、何ですかその乾いた笑いは…。」
「いや…ちょっとね。」
「?」
「(「付き合う」って何だ?とか思ってたけど、最高だな。)」
アカギとしては恋人になるとハッキリ告げなくても、(主に自分が)楽しくyouと過ごせればそれでいいと思っていた節があったのだが、
実際お互いの関係性と想いの認識にズレがなくなってからのyouから飛び出す言葉の数々が何とも幸福と愉悦を感じさせるため、最近しみじみと関係性が変化して良かったと思うようになっていた。
「それで、休みって取れそう?」
「えっと……いつでもいいなら、来月頭のこの日とこの日は連休で、特になにも予定ないですよ。」
youはそう言いながらカレンダーを指さして日付をアカギに伝える。
「分かった、じゃあその日にしようか。」
「はい。」
「行きたいとこ、本当にないの?」
「うーん……(夢の国とかUS●とかすっごく行きたいけど、アカギさんが楽しそうにしているイメージが微塵も湧かない……どうしよう)」
「遠慮せず言ってよ。」
「あっ!別に場所はどこでもいいんですけど、温泉!温泉とか…!」
「ん、いいんじゃない。」
「(月並みな意見になってしまった…まぁ、いいか。)」
そう言ってyouの提案をまるっと肯定するアカギ。
こまかな場所や宿泊などに関して、アカギが手配するとは思えなかったのだが、
意外や意外…その件に関しては自分に任せてほしい、と彼の方から打診があった。
「え、お、お任せして良いんですか?」
「うん。どうせなら美味いもん食いたいし贅沢したいから。」
「どういう意味ですか??」
「youに任せると泊まるとことかケチケチしそう…。」
「庶民的ってそんなに悪い事なの!!?」
「ハハ…いや、正しいと思うよ。」
しかし「泡銭は基本使い切る」そこは譲れない…と、アカギ…。
結局、若干の不安を感じながらもyouはその旅行の手配を彼に任せることにした(というかなった)。
・
・
・
・
そして当日…。
「美味しい!」
「良かったな。」
目的地に到着し、旅館のチェックインを済ませた2人は、
日本情緒豊かで、静けさや品のある温泉街を見て回り、休憩がてらに古民家カフェに立ち寄っていた。
「やっぱりこういう温泉街だと和テイストのお店が多いので、スイーツも必然「和」ですよね~。」
「そうなの?」
「ん、最近は和洋折衷なスイーツも増えてますけどね。」
「ふーん。」
「アカギさんはコーヒーだけで良かったんですか?」
「ああ。」
「一口いります?」
「オレはいいよ。」
「お前が食ってるのを見るだけで口の中が甘い」と笑うアカギ。
それに対して「でもこれ結構甘さ控えめですよ」と見当違いな返事をするので、
それは更にアカギの口角を自然に上げさせることとなった。
「もう少しこの辺り見て回ったら部屋に戻ろうか。」
「そうですね、温泉も入るから食事早めにお願いしたって言ってましたよね?」
「ああ、7時くらいって伝えてる。」
「うんうん、それまでにはこの和栗と抹茶のスイーツも消化しているはず!」
「あぁ、そう。」
フンス!と鼻息荒く、意志強そうに拳を握るyouとは裏腹に、そんな彼女を見て
出された皿は最初から最後まで完食する気満々なのだろうな…とアカギは若干遠い目をするのであった。
そんなこんなで小休止ののち、ブラブラと散歩がてら街を歩いて回り、本日の宿に再び戻ってきた。
老舗旅館ならではの広く落ち着いた和室には大きなテーブルと座椅子。
奥には先程散策してきた温泉街が見渡せる広縁があり、youが部屋の備品の茶器でお茶を淹れるまでアカギはそこで寛ぐことにした。
「アカギさん、お茶入れましたよ。」
「ああ、ありがと。」
テーブルに向かい合って座り、お茶を飲む。
口いっぱいにフワリと玉露の良い香りが広がり、備品も一流品のものを準備してあることがしっかりと分かる。
「わ、お茶美味しい~…。」
「ああ。」
「ふふ、何か修学旅行みたいですね。」
「修学旅行?分からねぇな、そういうのは……行ったことないから。」
「えぇっ?!!」
「そんなに驚く事?」
「お、お、驚きますよ…普通に!」
「普通、ね……悪いけど、そういう普通の感覚てのがオレには理解できないんでね。」
「うーん……そうですか……あ、でもそっか、風邪や病気とかご家庭の事情で休む子もいますしね。」
「いや、オレのは…(そういうんじゃないと思うんだけど、まぁいいか。)」
「でも…ビックリしましたけど、よく考えれば嬉しいかもしれません…。」
「嬉しい?何が…?」
アカギの問いかけに、youは小さく「ん?」と呟いた後、
子どもがわくわくするかのように楽しそうな表情を浮かべて、彼にこう告げた。
「だって、アカギさんと修学旅行体験してるみたいなので……嬉しいなって。」
「は…。」
「アカギさん初の修学旅行、楽しみましょう!」
「フフ、何かと思えば…そういうことね……。」
「まくら投げとかしちゃいます?」
「何それ、しないよそんな事……。」
「えー、修学旅行といえば恋バナと枕投げでは?」
「知らないって。」
「そうなんですー!」
「そもそもオレは修学旅行って思ってないし。」
「えー…。」
「まぁ、でも……誰かと一緒に純粋に旅行するなんて確かに初めての事……オレもyouと一緒に来れた事は嬉しいよ。」
「はいっ!」
結果的に修学旅行とは認めない、とアカギは断定したものの、
同じくらい新鮮な気持ちでここに来ているのだということが分かったため、youも喜んで納得するのであった。
その後はyouが、それこそ自分の修学旅行の体験談を話したり、
アカギはアカギで博打の為に寄った土地の話などをして旅行談義に花を咲かせた。
様々話をしていると、気付けば食事の時間。
前菜にメイン、〆のご飯ものに至るまで、全てが高級料亭さながらの料理の数々に舌鼓を打つ。
余談ではあるが、1品1品の料理に対してyouが大変なリアクションを取るので、アカギとしてはそちらも併せて面白美味しく食べることができた様子だった。
「ご馳走様でした……はぁ、もう……なんて言うか……全てに於いて、はちゃめちゃに贅沢をしました…!」
「ククク……それは、連れてきた甲斐があったな。」
「もうちょっと休憩したら大浴場のお風呂入ってきますね~。」
「お好きにどうぞ。」
「アカギさんは?もうお風呂入りますか??」
「オレもyouと同じタイミングで行くよ。」
「了解です~。あ、今のうち歯磨きして来よう。」
歯磨きをし、小一時間ほど休憩してから、2人は部屋を出て大浴場へと向かった。
部屋にもヒノキ張りの豪華な風呂があるのだが、露天ではないことや、広いお風呂を求めてのことだった。
「わたし、髪を乾かしたり、色々と時間が掛かると思うんで、アカギさんが鍵持っててください。先に戻ってていいですからね。」
「いいよ、待ってる。」
「えー…まぁ、本当、待ち長かったら戻っててください。」
最後にもう一度「絶対時間掛かるんで!」と言い切り、
youは、きっちりと男女に分かれた「女」の字の暖簾を潜っていった。
実際、大浴場の様々な種類の浴槽や露天を満喫し、本日歩き回ってむくんでしまった脚を念入りにマッサージしたり、
髪を乾かし、スキンケア…色々とやることがあり、youが女湯の暖簾を再び潜り戻ってきた時には結構な時間が経過してしまっていた。
「(アカギさん、流石にもう部屋に戻ってるよね…。)」
そう思いながらも、念のために大浴場に至る前に設けてある共用の休憩スペースを手前から奥までサッと見渡す。
手前の談話用の椅子には年配の夫婦が数組着席しており、奥には高級そうなマッサージチェアが数台備え付けられている様子。
そのマッサージチェアは数台稼働しているようだったが、その使用者の中にどうにも見覚えのある白髪が目に入る。
近付いて確認してみれば、やはり該当の人物に間違いはなかった。
「アカギさん、戻ってなかったんですか。」
「戻ろうかと思ったけど、ちょうど良くこれが目に入ってさ。自由に使って良さそうだったから…。」
「お待たせしてしまってすみません、まだマッサージチェア使われます?」
「いや、部屋に戻ろう。」
そう言って立ち上がり、歩き出す。
youもアカギの後に続いて休憩スペースを出て、2人で部屋へと戻った。
・
・
・
・
部屋のカギを開けると、テーブルが片付けられており、パリッと皴無く伸びたシーツと寝心地の良さそうな布団が綺麗に2つ敷かれていた。
「仲居さんもうお布団敷いてくれたんですね!アカギさんどっちに寝ますか?」
「youが寝る方。」
「・・・。」
「冗談だよ、どっちでもいい。」
「じゃあ、わたしこっち。」
バフっと右の布団にダイブして、綺麗に敷かれた布団を少し乱すyou。
しかしすぐに起き上がると、明日の分の荷物の整理をし始めた。
「今ダイブして分かった…ご飯食べて歯磨きしてお風呂入ってお布団……目閉じたら寝るヤツだ。先に荷物まとめとこう…。」
「はは、意外と分析できてるな、自分のこと。」
「アカギさんもそうした方がいいですよ……布団に腰下ろしたら絶対寝ちゃうから。」
明日着る予定の服を荷物鞄の横に準備して、youは自分が寝ると選択した布団の上に戻る。
「youと一緒にしないで……オレは寝ないよ、ていうか寝れるワケない…。」
「え?どうして?」
アカギはというと、そのすぐ近くに腰を下ろして徐にyouの頬に手を差し伸べる。
きちんとドライヤーを掛けて整えた髪がサラリとアカギの指の隙間を通った。
「アカギさん…?」
「・・・。」
アカギの手が顔の半分をすっぽり包むように、何度か頬を行き来するので、
youは少しくすぐったそうに「どうしたんですか?」と困ったように眉を八の字に寄せて笑みを作る。
「あの…?」
「寝れるワケないだろ……風呂上りだぞ、お前…。」
「お風呂で目が覚めたって事ですか?」
「本当に馬鹿なの、youは…。」
「んなっ!?」
アカギはパッと頬から手を放したかと思えば、トン…とyouの軽く肩を突き飛ばした。
当然布団の上に背中から倒れるyou。
するとすぐに、天井の電球を遮って眼前にアカギの顔が現れる。
「あ…あかぎさ…。」
「興奮して眠れないって意味。」
「こっ!?」
湯上りで上気した頬や首筋に触れた時に感じた普段より高い体温…。
傍に寄れば漂ってくる、保湿のために髪に付けたヘアオイルなどの香りなどなど…要素を挙げれば限りなく…。
温泉宿に浴衣という特殊な条件もそうさせている要因の一つなのかもしれないが、兎に角それら全てが性的欲求を掻き立てるのだとアカギは言う…。
「オレの言ってること、分かる?」
「わ……分かってしまいます、ね…。」
「・・・。」
「・・・。」
「you…。」
「は、はい…!」
「…キスしたい……でも多分、したら止まらない。だから、youが決めて。」
「わ……わたし…。」
自覚しないようにしていたが、youもまた、艶っぽい湯上りのアカギに心拍数は上がっていたワケで…。
アカギがそう感じたように、自分もそうだと伝えようとしたのだが…。
「わたしも……アカギさんに…っ。」
「!?」
アカギの目が見開かれたのは、眼下のyouの目から思いがけずポロリと涙が零れ落ちたから。
「ぇえ?!な、え?ど、どうして…??」
自分自身でも何故涙が出るのか理解できていないらしく、youは言葉にならない困惑の声をいくつも上げながら、手で涙を無理矢理に拭う…。
アカギはフゥ…と呆れや嫌気というものではない小さな息を吐き、彼女の背に手を入れ、身体を起こして抱きしめた。
背中をポンポンと軽く叩き「大丈夫か?」と優しく声を掛け、泣き止ませる。
「ううう……すみまぜんん…なにこれ、意味分からない…。」
「オレは何となく分かるから、大丈夫……いいよ、オレももう落ち着いた。」
「アカギさんん…。」
「うん。」
「うう……ごめんなさい…。」
「いいって。」
「すきですぅう…。」
「知ってる。」
「っ……ぅ…。」
まるで子どもをあやすようにずっと背中を撫でたり、ポンポンと叩いたり…。
アカギがらしくない程優しいので、それもあって余計に涙が止まらなくなるyou…。
伝わる体温と心地よい手つきを感じ、目を閉じて泣いているといつの間にかそのまま眠ってしまった。
「泣き疲れて眠っちまうとか……ガキか……まぁ、そういう透明なトコロがどうにも好きなんだけどな…。」
自分で眠ると宣言した右の布団の上で眠りこけてしまったため、
アカギは「やれやれ」と軽く笑いながら左の布団を捲って、そちらに彼女を寝かせた。
彼女が涙を流した理由をアカギは「葛藤」との一言に限ると理解していた。
純粋に受け入れたい気持ちと、あらゆる方面からの羞恥心とがせめぎ合ってのことだろうと。
言われてみればそれもその通り、彼女の心は出会ってから常に不安定で、
「お隣さん」から「気になる人」になったのは早かったかもしれないが、そこから先…。
つまり「気になる人」から「好きな人」としてはっきり天秤を傾けたのはつい最近のことなので、
その期間をシンプルに「友達」と名付けるのであれば、今まで友人だった相手に全てを曝け出す事は普通であれば誰だって葛藤もするだろう、と。
基本的にとことんyouには甘いと自分で理解しているアカギは、享受する気持ちを訴えてくれただけでひとまず良しとたのだが…。
さて、まだ寝るまでにはかなり早い時間だがどうするかと、結局そこだけは悩むこととなってしまった。
再び風呂に入るのは違うし、彼女が横でスヤスヤ寝ている隣でマッサージを頼むのも無しである。
となると密かに考えていたこの旅行のもう一つの目的である「旅打ち」で、市街地に麻雀を打ちに行くことなのだが、
これはyouにちゃんと断りを入れていくべきだと思うので、こちらも断念。
結局、何処にも行かずにyouの寝顔を眺めて過ごすことで時間を潰した。
小一時間後…。
「んぅ……。」
「あ、起きた?」
「アカギさ…ん?」
「おはよう。」
「え……えぇ?!」
ガバッと盛大に起き上がり、大きくあたりを見回す。
「もう朝?!もう朝なんですか?!」
「ううん、今は……10時だ、夜の10時。」
「す、すみませんわたし……寝ちゃった…。」
「構わない。寧ろ気持ちよく寝てたから起きなくてもよかったのに。」
「(もしかしてヨダレとか垂れてた…?)」
アカギの視線が他の方向を向いている隙にゴシゴシと浴衣の袖で拭ってみたが、そこは問題ないようでホッと安堵する。
ゆっくりと布団から出たところで、再度しっかりアカギの姿を見たのだが違和感を感じて小首を傾げるyou。
少し考えて、その違和感の正解が分かった。
何故か先程まで宿の浴衣を着ていたはずなのに、今は私服に戻っているのだ。
「さて……youも起きたし…。」
「?」
「ちょっと出てくる。」
「え?で、出る?出掛けるってことですか?」
「そう。」
「こ、こんな時間から……どこに…??」
「ちょっと散歩がてら…。」
宿の周囲を夜に散策するのであれば自分も一緒に行きたいと申し出ようとしたyouだったが、
アカギの言う散歩がてらに行く場所は全く見当違いの場所だったとすぐに分かることとなる…。
「いつもと違う環境で打ってこようかと思って。」
「は?」
「市街地の雀荘行ってくるね。」
「え、本気ですか?」
「うん。ああ、でもすぐ帰ってくるよ、タクシー使うし、ある程度のところで引き上げてくるから。」
「えっ、っと……。」
「じゃ、行ってきます。」
「い……いってらっしゃい…??」
寝ぼけている状態で冷静な判断が難しい…というのもあるのだろうが、
それにしても2人で旅行に来ていて、雀荘へ赴くのは普通のことなのだろうか?否、普通ではないはず…。
だがしかし、先程アカギの誘いを受けられなかった自分にも大いに問題はあるわけで、
このまま一緒の部屋に2人でいてもアカギに苦しい思いをさせるだけになってしまうため、それならば彼が旅を楽しめるよう雀荘へ行かせるべきである。
そのため、ドアへと向かうアカギの背にゆるっと手を振ろうとしたのだが…。
「……you?」
見送る為に手を振ろうと伸ばした手は、その思考とは裏腹に自分でも気付かないうちに歩き出そうとするアカギのズボンの裾を掴んでいた。
当然、歩みをせき止められたアカギはそれに気付いて彼女を振り向く…。
「あの……や…やっぱり、ダメです。」
「・・・雀荘に行くの、ダメ?」
「ダメっていうか……ダメだし……だめ、ですし……いやです…。」
「・・・。」
立ち止まるアカギを下から文字通り上目遣いで見ているyouの、その目が言葉を増やす度に潤んでいく。
「涙腺が決壊する」の名の通り、大粒の涙が両目から溢れ出し、
それでも最後に伝えたい気持ちだけはと、言葉を詰まらせながらも言い切る。
「イヤです……い、一緒にいてください、アカギさ……んっ…!」
刹那、アカギが急にしゃがみ込んだかと思えば、間髪入れずに腕を引かれて抱きしめられる。
一瞬だけ視線がかち合った後、まるで磁石のように唇が重なった。
それはいつものように軽いものではなく、しっとりと濃厚なもの。
恐らく、そういう類のキスになるであろうとお互い予感はあり、
アカギは口内で逃げ行くyouの舌を追いかけ、絡め取る。
何度か息継ぎのために唇を重ねたり、離したり…。
最後、唇を離した代わりにお互いの額をコツンと合わせ、やっと空気を肺に取り込んだ。
「っは…。」
「ふ…っ……you…。」
「ごめんなさいアカギさん、わたしやっぱり……。」
「うん。」
「アカギさんのものになりたいです…。」
「うん、………分かった。」
「アカギさんのこと、全部好きになりたい…。」
「うん…。」
「アカギさんに抱きしめられたいです……。」
youが本日もう何度目か分からない涙を流し、アカギはそれを指先で拭って、再び唇に軽く口付ける。
「それってこういう状態の意味?それとも……youの全部、もらっていいってこと?」
「全部です、全部……ぜんぶあげるから…だからアカギさん……雀荘、今日はいかないで…。」
「行かないよ。てかこの状況で行くわけない…。」
アカギの言葉を聞き、何度か瞬きをしたのち、youは最後にゆっくり目を閉じて再びゆっくりと眼前の恋人の顔を視界に映した。
ふっと微かに微笑んで、アカギは小さく口を開く。
「you……しつこいようだけど、最後に1つだけ確認していい?」
「…はい?」
「どっちの布団で寝る?」
「……アカギさんが…寝る方…。」
「・・・。」
クスっと小さく笑いを零し、アカギはyouと反対側の布団を捲り上げ、そこに座す。
返事が無いため、急に不安になったyouが眉根を寄せ、浴衣の首元の襟をきゅっと掴みながら訴える。
「あの……もしかしてダメだったり…。」
「まさか。」
「えっと、じゃぁ…。」
「こっち来てよ、オレはずっと………ずっとyouのこと待ってた。」
「っ……はい!お待たせしてすみませんでした。」
それは、今から身体を重ねるというにはあまりに朗々とした、いつもの2人のやり取り。
youがアカギの元に移動して、その体に抱き着けば、
彼は「待たせすぎ」と、皮肉を一言告げて彼女の首筋に口付けた。
それは、キミをすべて知ることができる日
→全て知りたい?
(んぅ…う……朝…?)
(おはよ。)
(お……おはよう…ございます…。)
(腰、大丈夫?出先だし…大分気にはしたつもりだったんだけど…。)
(えっと……うん、大丈夫そう、かな?うん!!おお!大丈夫ぽい!)
(良かった。)
(アカギさんっ!)
(?なに、どうしたの?)
(今日は何処に寄って帰りますか?意外と動けそうなんで甘味処ちょっとハシゴしたいんですけど!)
(・・・。)
(アカギさん?)
(いや、何でもない。いいよ、好きなところ行って。)
(ありがとうございます!!ちょっと昨日見たマップで良さ気なところがいくつかあってですね…。)
((この女……家帰って絶対ェ抱き潰す!!倍プッシュどころの話じゃねェ…。))
(アカギさん、聞いてます??)
(ああ、ゴメン…何でもない、何でもない……とりあえず、覚悟だけお願い。)
(え?!何の?!)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*