step5_(恋人編:アカギ)
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「youちゃん、ごめん~!おまたせ~!!」
少女漫画でよく見るような台詞と共に現れたのは、勿論親友の美心だった。
アカギさんといっしょ4
「大丈夫、わたしもさっき来たところだから。5分も経ってないよ。」
「本当?よかった…でも待たせちゃったのは事実だから、ごめんね。」
「ううん、全然。」
時計を確認しても待ち合わせの時間ぴったりといったところ。
それでも相手を気遣って感謝や謝罪の言葉をきちんと送ってくれるのが坂崎美心という女性。
名は体を表すとはこのこと、と思うと同時に、そんな彼女と友達になれて本当に良かったと感じた瞬間だった。
「あっ、そろそろ予約しといた時間だ!行こう、youちゃん!」
「本当だ!行こう行こう!」
「カラオケ久しぶりだから楽しみ~!」
「ふふ、わたしも。美心ちゃんと行けるの楽しみだった!」
「フリータイムにしたから、存分に歌おうねっ!!」
「うん!」
いつも2人で買い物に出掛けることが多く、夕飯は一緒に食べて帰ることもあるのだが、
美心の両親がとても彼女を大事にしているため、門限があったり、それを過ぎる場合はきちんと連絡しないと、怒涛の確認コールが掛かってきたりするため、
実は、なかなか夜遅くまで頻繁には共に過ごせなかったりしている。
可能であれば買い物の後夕飯を食べ、その後夜にカラオケなどで遊んで帰る…という理想形が彼女たちにはあるようだが、なかなか実現が難しい。
それ故、今回は買い物ではなくカラオケだけをメインに遊ぶ予定を立てた…という状況。
そういうわけで、美心がウェブで予約を取ったカラオケに入店し、自動認証の機器の手続きを経て指定の部屋に入った2人。
「さぁ~、何を歌おうかな…。」
「美心、楽しみ過ぎて歌う曲ケータイにメモとってきちゃったんだぞっ!」
そんな様子で、パネル式のリモコンを操作し、自分の歌いたい曲をほぼほぼ交互に入れていく。
合間合間でフリードリンクを取りに行くなどして、2人は楽しく数時間を歌って過ごした…。
そうしてある程度自分の歌いたい曲を歌い切り、次は何を入れようかと、リモコンをポチポチとタップする時間がやってきた…。
「あ、そういえばyouちゃん…アカギさんとはどう?」
「え?どうって…?」
「美心に前教えてくれたでしょ「お付き合いすることになった」って!あれからなかなかお話聞けなかったけど……実際お付き合いしてみて、どう?」
「いや…付き合う前と特に何も変わらない感じだけど…。」
「え、か、変わらないの…?」
「か、変わらないよ?」
「デートとかしてる?!」
「うん、2人で出かけたりはしてるけど。」
「よ、良かった……ほ、他には?」
「えぇっ、ほ、他……えーっと…。」
人差し指を顎に当て、うーんと唸るyou。
しばし悩んで、思いついたことを口に出す。
「アカギさんが(主に雀荘から)早めに帰ってくるときはご飯を一緒に食べたり、とか?」
「きゃー!素敵、何かもう夫婦みたいなんだぞっ!羨ましい…美心もいつかはカイ……くんと…キャー!」
アカギと一緒に家で食事をするのは付き合いを始める前からのルーティンのようになっていたため、youにとっては特に特別感は無いのだが、
頻繁に好きな相手と食事をすることは美心にとっては憧れのシチュエーションだったようで、両頬に手を当ててキャーキャーと少女のような反応を示す。
「じゃぁじゃぁっ、キスとか!」
「えっと……一応…。」
「きゃぁあっ!そうだよね、アカギさんだもんね……じゃぁ勿論、エッチもしてるんだ?」
「ブフーーッ!!」
「キャー、だ、大丈夫!?」
美心の質問に、ドリンクバーのお茶を飲んでいたyouは盛大に吹き出した。
「ごめん!」と謝りながら置いてあった布巾でテーブルを拭き、美心にも飛び散っていないかを尋ねる。
彼女から「私は大丈夫」との返答を聞き、安堵したのち、自分で持ってきたハンカチで口元を拭った。
「ゴホッ…ぐ……ぐふ。」
「えーっと……その反応だと……まだ、してないのね?」
「そ…ソウデスケド…。」
「し、信じられなーい!え、だってあのアカギさんでしょ?彼、youちゃんが好きになるずーっと前からyouちゃんの事が好きだったでしょ?てっきりもうやっちゃってるかと思った…っていうか何なら付き合う前からそういう感じになってるかと……キャッ!美心ったらそんな想像…はしたない!ごめんね!」
「は、はは……いや、アカギさんは意外にも紳士というか……わたしの反応が面白いからなのか、そういうこと茶化して言ってくる時もあるけど……無理矢理とか、そういうことはされてないよ…。」
「え……それ……面白がってるんじゃないと思うけど…。」
「え?」
「だってだって、男は狼なんだぞっ?!ひとたびそういう雰囲気になったら理性なんて絶対持たないって!(漫画とかドラマで言ってた!)」
「そ、そうなのかな…。」
「そうだよ!温泉の時だって海行った時だって美心、思ってたんだけど、アカギさんって絶対いつもyouちゃんのことそういう目でも見てたハズだもん……なのに…。」
「じゃあ、アカギさんって……鋼…いや鉄の理性をお持ちなのね…やっぱ凄いな。」
「違う!!いや、それもあるかもだけどぉっ!!!」
「え、ち、違うの?」
矢張りアカギの精神力は常人とは異なるのだなぁ…などと感心したように感想を述べたところ、
美心はガタっと立ち上がり、珍しく、憤りを含んだ大きな声で「違う」と指摘してきた。
そんな彼女の思わぬ感情の爆発にyouが驚きの目を向けると、
ハッと我に返ったように「ご、ごめんね」と謝罪しながら、その場に再び着席する…。
「そうじゃなくて……それってyouちゃんがめちゃくちゃアカギさんに大事にされてるってことだと思う…。」
「え…。」
「だって……確かにお付き合いする前は理性で我慢してたかもだけど……恋人になって、しばらく経つのに、お誘いでyouちゃんが嫌がる素振りを見せたら引いてくれるってことでしょ?」
「嫌がる……うーん…そうなのかな…別に嫌がっては……恥ずかしい、というか…。」
「結果的に断ってたらアカギさん的には同じなんじゃない?」
「そ、そっか…。」
「その時、アカギさん不機嫌になったり嫌な顔したり、怒ったりするの?youちゃんのさっきの話を聞いてる限りはアカギさん、そんな反応しないんじゃない?」
「うん……しない。」
「こ、こういうの友達に言うのもアレかと思うんだけど……youちゃん……アカギさんの優しさと理性に甘えすぎなんだぞっ!」
「あ、アカギさんの優しさと理性に…!?」
「そうだよ!」
ぐっと両拳を握りしめ、美心は可愛くもぷんすかyouを叱る。
勿論、お互いのペースというものが個々にあるだろうが、普通であれば、恋人という立場になって好き合っていれば、ある程度経過したところで
合意の元に性交渉を行うであろうから、アカギの提案や誘いは至極真っ当であり、決してからかい半分で茶化しているわけではないだろうこと…。
更に言うなれば、その至極真っ当な話を持ち掛けた際に誤解され、流されたと分かった時点で多くのパートナーは八割がた負のオーラで圧を掛けるところ、
アカギは嫌な顔1つせず寛容な反応でその場の雰囲気を悪くしないよう見逃してくれているだろうこと…。
などなど…。
彼女の意見は大変的を得ており、事実、アカギの心情を代弁していると言っても過言ではなかった。
「い、言われてみれば……。」
「もうっ、鈍感だなぁ!そんな鈍感なのに、めちゃくちゃ大事にして、愛されてるから、本当に羨ましいんだぞっ!」
「・・・な、何か申し訳なくなってきた…かも。」
「あ、ご、ゴメン!youちゃんがそういうことするのが怖かったり、嫌っていう場合もあるから、申し訳ないって思うのはちょっと違うかもだけど……でも、もしアカギさんに対してちょっとでも身を委ねたいって思う気持ちがあれば、今度はちょっとだけ、youちゃんからも歩み寄ってみたらいいんじゃないかな。」
「うん……まずは大事にしてくれてることに「ありがとう」って言ってみるね…。」
「うん、それがいいと思う!それに……。」
「それに?」
「あんまり長いこと待たせると悪いお邪魔虫がくっ付くかもしれないんだぞっ!アカギさん、カイジくんに負けず劣らずイケメンなんだし、きっとモテモテだと思うし……アカギさんにその気は無くても……なんだぞっ、気を付けなきゃ!」
ビシィっと人差し指をyouに向け「心の浮気は無くても、体の浮気はあり得るかも!」とズバリ指摘する。
アカギがモテるということは理解しており、また美心の指摘通りの件を懸念している事もしっかり自覚していたため、
youは目から鱗が落ちるといった様子で、感極まって声を上げた。
「み、美心様~~!!恋愛の女神様ー!!」
「うむ、恋の相談ならいつでも聞くがよいぞ・・・なんちゃって☆」
てへぺろ☆と、茶目っ気満開でポージングを取る美心…。
何故か分からないが、全てに於いて美心だから許される気がするyouであった…。
・
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・
「・・・という事があったのです。」
「ふーーーーーん。」
「ふーんって……そんな他人事のように…。」
ただいま午後11時。
美心とのカラオケデートを終えて帰宅後、これまた雀荘から帰ってきたアカギと一緒に夕飯を摂った後、
テレビを見たり、風呂に入ったり、歯磨きをしたりと、寝る準備をほとんど整えた後に余った時間…。
勿論、一から十まで全てを事細かに伝えたわけではないが、要点をまとめてyouは美心との会話ををアカギに話した…。
「それで?youはどう思ったの?」
「どう……って……あの……ていうかアカギさん、何か怒ってます…よ、ね…?」
「うん、まぁ……怒るっていうか……呆れてるっていうか……やっぱ怒ってるかもな。」
「えっ?!」
どっちだ?と一瞬考えたものの、どちらにしても美心との会話内容はアカギの何らかの琴線に触れることとなったようだ。
オロオロするyouを見て、アカギはこれまでにないくらいの深い溜息を吐いて、彼女の鼻をムギュっと摘まんだ。
「youのバカ。」
「んがっ!」
パッと手を放して鼻を開放すると、アカギはジト目でyouを睨み、不機嫌な理由を話し出す…。
「どうして無関係な坂崎さんが分かるのに、アンタが分かってないんだよって。」
「そ、それは……はい、大変申し訳ございません…です…。」
「まぁ、最後に言ってた浮気云々だけ、そこだけは彼女、間違ってるけどな。」
「間違い?」
「ずっと言い続けてるだろ、オレはyouしか要らないんだ。それは心も体も同じこと……仮令(たとえ)体が飢えたとしても、別の誰かは欲しくない。そんなもので補っても、そんなのじゃ……オレは1ミリも満たされない。」
「アカギさん…。」
「でもそれ以外、概ね坂崎さんの推察通りだよ。」
「う……はい……。」
「難しいね、大事にするって……踏み込み過ぎて壊れるのは一瞬だし、距離を測りあぐねても気持ちが離れていくんなら……下手な博打よりよっぽど先読みが困難だ……フフ。」
「アカギさんは……ずっと先読みして、大事にしてくれる努力をしてくれてたんですね……ありがとうございます…。」
「(努力、ねぇ…)さぁ、どうだろうな・・・まぁ、努力したかは分からないけど、大分かなり滅茶苦茶相当我慢はしてるな……現在進行形で。」
「(めちゃくちゃ根に持ってるーー!!)」
アカギの場合、出会ってからそう時間も経たずにyouを好きになってしまったこともあり、
一括りに「我慢」という表現を使うのであれば、その禁欲期間はとても長くなるワケで…。
明らかに今まで辛酸を嘗めてきた想い……否、最早恨みのようなものを込めた声色でそう言い放った。
そうすると流石にyouも申し訳ないやらいたたまれないやらの感情が沸き上がり、
しょんぼりと眉尻を下げて「ごめんなさい」と小さく呟いた。
「あの……わたし、努力します。」
「何を?」
「アカギさんの気持ち……というか希求に応えられるように…。」
「有難いけど……それはちょっと違うんじゃない?」
こういうのは「努力する」っていうのはどうかと思う、とアカギ。
「こういうのはさ、努力して応えてもらうんじゃなくて、ただ自然と自分が求めた時に「応えたい」って思って受け入れてほしいヤツだと思うんだけど?まぁ、好きなら応えろって言うヤツもいるかもだけど……。」
「えー……えっと…。」
「だからyouも「頑張る」とか「努力する」とか言わなくていい…、というか今の話なら言ってほしくないな。」
「じゃ、じゃあそれまでずっと待ってくれるって言うんですか?!」
「まぁ、仕方ないんじゃない?それこそ、youをその気にさせられないオレの努力不足、とどのつまり魅力が無いって事だろうし?」
「(いやそれは無いでしょ…)」
それが本心かどうかは分からないが、アカギは自分に魅力が足りないからなどとのたまう。
普段からアカギと過ごして、付き合う前からもずっとその魅力的なオーラは感じており、その存在自体や
掛けられる言葉、行為に対して性的な意味で翻弄されてきた場面は少なくない。
ふいにその時遭遇したシーンが多数…サーッと脳内で映像として流れ、youは思わず口籠って顔を頬を赤く染めた。
「どうした?」
「いえ、はい……何でもありません…。」
「そう?まぁ、そういうことだから……youの方がさ…。」
「?」
「オレの事欲しいって思ったら、その時応えてよ。」
そっと身体を動かして、耳元でアカギはそう囁く。
今正にそういった過去の出来事を思い返していたyouにとっては更なる追加攻撃に他ならない。
「っ…!」
「待ってる。」
最後に、耳まで真っ赤に染まった恋人を見て満足気に笑うと、その頭をポンポンと軽く叩き、
アカギは「おやすみ」と声を掛けて自分の部屋へと戻っていくのだった…。
予感?
あるに決まってるじゃない。
(はぁ……アカギさんが自分の部屋に帰ってくれて助かった……あのまま泊まってくとか言われたらもう……。)
(ククク……とか思って安心してんだろうな、あいつ。)
words from:yu-a
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