step3_(日常編:アカギ)
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そういえば……最近アカギさん来ないな。」
自宅で白米を口にし
噛み砕いた後
そう呟いた。
アカギさんとわたし15
アカギと夕飯を共にするようになってからは、
3日以上一人で夕飯を食べる日が続くことが、あまりなくなっていたyou。
1日2日くらい見ないことはよくあるのだが、
(だいたい博打しているらしいことも知っている)
3日以上会わない日はなかなか無く、
今回に至ってはアカギと会わない期間…それが今日でもう2週間程になる。
朝も夕も前を通ったが、201号に帰ってきている気配すら無い。
「流石に心配かも…。」
ぽつりと呟き、最後に味噌汁を啜って食事を終える。
綺麗に手を合わせて「ごちそうさまでした」と言葉にして、食器を片す為にキッチンへと赴く。
水道の水を出し、食器を洗いながら悶々と考えるのはアカギのこと。
怪我をしていないだろうか
「無茶するからなぁ…。」
食事や睡眠は摂っているのだろうか
「健康管理に無頓着だし…。」
食器を洗い終え、大きな溜息を吐く。
一言で言ってしまえば「心配」ということなのだが、
じわりじわりと…それだけでないのでは、という理由が心に侵食してくる。
もしかして出て行ったのではないか
「…風来坊だからなぁ。」
誰か他に傍にいたい相手が現れたのではないか
「寧ろ元から…そういう関係の相手がいたのかもしれないなぁ。」
「いるわけないでしょ。」
「そうかなぁ……でも、アカギさん何だかんだでめちゃくちゃモテるから、本当に引く手数多ですし…。」
「オレはyouしか要らないんだってば。」
「ああ、何か幻聴まで聞こえてきた……何気にいい声してるからずっと聞いていたくなるんだよね…アカギさんの声って。」
「ヘェ、そんな風に思ってくれてたんだ。」
「・・・。」
「よ。」
「?!!?」
食器を拭き上げようと布巾を握りしめたまま、
今更ながらに独り言への返答があったことに気付いたyou。
ボーっとしていて気付かなかった気配も、
今ではハッキリと自分の背後に感じられる。
最終的に恐る恐る、ゆっくりとした動作で、同じ角度で後ろを振り返れば、
知った香りと見覚えのある胸板が視界に入った。
更にギギギ…と、潤滑油の足りていないブリキのオモチャのような動作で顔を上に上げると、
一般的には珍しい、だが彼女には見慣れた白髪の男が其処に在り、彼は聞き慣れた低い声で「ただいま」という言葉を放った。
「あ……あか…。」
「ああ、やっぱyouに会うと帰ってきたって感じがするな。」
「っどこいっ?!なに?!おかえ…?!!アカギさんッ?!」
「何処行ってたの?何してたの?そんなことよりまずおかえりかな?ってアカギさん!……そんな感じ?」
驚き過ぎて質問過多になったyouの意を見事に汲み取るアカギ。
まさにその通りと、youは何度もコクコクと首を縦に振った。
「ゴメンごめん、ちょっと駆り出されてさ…。」
「ま、また……ギャンブルですか…?」
「うん。いきなり新幹線乗せられて他県で勝負とか言われるし。時既に遅しみたいな。」
「ほぼ拉致じゃないですか…。」
「うん。だから流石にムカついて、相手の組は勿論だけど依頼されたトコからも報酬ふんだくってやった。その後憂さ晴らしにそこでパーッと遊んで、今帰ってきた。」
「憂さ晴らしでパーッと…。」
「でもダメだね、やっぱyouがいないと。」
そう言って、彼はハーーっと珍しく疲労の色が見られる深い溜息を吐き、
同時に正面からyouの身体を抱きすくめた。
「あ…アカギさん…!//」
「一人で美味いモン食っても美味いけど美味くなかったし。」
「い、意味不明です。」
「立ち寄った飲み屋で全員に飲み代奢ってみても騒いで楽しんでるのは周りだけで、オレ全然楽しくなかったし。」
「そんなことしたんですか?!」
「まぁ、泡銭(あぶくぜに)だしね。」
「そんな考えでパッと使えちゃうのはアカギさんくらいですよ…。」
「フフ……でも、そうやってパッと使うんならyouを呼べばよかったと思った、切実に。」
「わたしですか??」
「うん。」
「どうして。」
「美味いモン食うのも、一緒に騒ぐのも、高い旅館やらホテルに泊まるのも、youとがいいって思った。」
「はぁ…。」
「だから、数週間の間にオレは改めて気付いたワケだ。」
「気付いた?何に??」
「youと一緒にいたいって。」
「っ…!」
「本当は1ツキくらいブラブラしようと思ってたけど無理……会いたくて、帰ってきた。」
「アカギさん…。」
「ただいま、you。」
「お…おかえりなさい。」
「・・・。」
いつものように「ただいま」と「おかえり」の挨拶を交わしたのだが、
何故かアカギはyouの顔を懐疑的な目でじっと見つめたまま首を斜めに傾げる…。
「な、何でしょう…?」
「いや……何かぎこちないな、って。」
「そっ、そう…?久しぶりだから…??」
「・・・。」
「・・・。」
youとしては、少しブランクが空いたことで突然現れるアカギに驚き、いつもの調子で話せていないくらいの感覚だったのだが、アカギはどうも納得がいっていない様子。
今度はyouが首を斜めに傾げていると、先程とは打って変わって少し…いや、かなり温度の低い声で問いかけられた。
「もしかして……男でもできた?」
「は?」
「1ツキも留守にしてないってのに……まさかとは思うけど…?」
「まさかも何も…!そんなこと無いし、そんな相手いませんけど!?」
誤解するまでもない!と、全力で首を左右にブンブンと振るyou。
その反応と最初の素っ頓狂な「は?」という言葉で凡そ自分の考えが間違っていたことは察したアカギだったが、
彼女の反応が思ったより面白かったようで、このまま誤解したフリを続行することに決める…。
「カイジさん…?それとも零かな…ああ、銀二サンあたり、結構怪しいね。」
「なっ、なっ…?!」
「銀二サンと張り合うのは結構骨折れるかもだけど……他の奴らなら全力で奪い返す所存。」
「何の覚悟ですか?!!」
「だから、カイジさんは可哀そうだね……youと付き合うことになった所為でオレからの無限借金地獄が決定するんだから…。」
「カイジくん不憫過ぎる!!!!」
「で、誰?」
「はい?!」
「誰と付き合うことになったの。」
「いや、だからいませんって!誰ともそんな関係になってないですって!!」
「・・・本当に?」
「本当です!」
「・・・本当?」
「本当!」
「・・・。」
最後は沈黙し、ようやく信じてくれたか…?と、いうような様子のアカギだったが、全ては仕組まれた押し問答…。
アカギはyouをジリジリと壁際に追いやり、自身の目的を遂行すべく発言する。
「…証拠は?」
「え。」
「誰とも付き合ってない証拠、あるの?」
「証拠!!?証拠って……あ!」
「相手に「私達付き合ってないですよね?」って電話するのはナシね。」
「何で!」
「相手と口裏合わせるように約束してるかもしれないし、そもそもオレの知らない相手じゃ本当のこと分かりようないじゃない。」
「あ、そっか…。」
確かに…と納得するyou。
では、どうやって信じてもらえばいいのか…。
うーん、と唸って彼女は考え込む...。
すると、その条件…(というより当初の目的)をアカギが提示する。
「もし誰とも付き合ってないなら、オレにキスしてよ。」
「どうして?!何で!?」
「できないなら、相手がいると見做す。」
「はぁっ?!」
youの性格からして、自分の気持を偽って恋人以外の相手ととキスするよりも、
正直に本当のことを打ち明ける方が誠実と考える人種であることを理解しているアカギ。
とどのつまり、該当する相手がいなければ行きつく先は自分へのキス…という至ってシンプルな回答となるはずなのだ。
などと、斜に構えていたアカギだったが…。
「っ…。」
「え……。」
まさかの涙である。
「っ…ごめ、なさ……泣くつもりは全然…っ!」
「いや、え……何で、謝るの。」
確かに泣くとは思わなかったものの、泣く程に追い詰めてしまったというなら、非は明らかに自分にあるだろうとアカギは言う。
youはやんわり首を左右に振って「違うんです」と小さく呟いた。
「こんなの、アカギさんがこんな風に意地悪するの…いつものことなのに、たった数週間で免疫落ちちゃってるみたいで緊張して……それが悲しかったり、でもまたこんなやり取りがまたできて嬉しくて…今とっても心の中がカオス状態、です。」
「ああ…(そういう…)。」
つまるところ全ては「アカギがいなくて寂しかった」ということを示唆しているに他ならず…。
流石のアカギもこれは予想外だったようで、いつものように「あらら…」と、零した後、
youが泣いて俯いているのをいいことに、思わず口元を緩ませるのだった。
「何だ、オレがyouを疑ってないって分かってたんだ。」
「分かり、ますよ…。」
「残念。折角頑張って誘導してキスする口実作ったのに。」
「その情熱と頑張りは他のところに向けてくださいよ…。」
「オレが頑張るのはyouに関してだけだから…。」
「仕事とかギャンブルとか…あるでしょ、色々…。」
「仕事は情熱注ぐ価値ないと思ってるし、博打って頑張ったら死ぬやつだから…。」
「えぇー…。」
「だから、youにだけ。いつも近付きたいってオレが頑張るのは。」
「うぅ…。」
最後に少しだけyouの目尻に滲んだ涙がアカギの長い指で拭い取られる。
そうして俯く要因を取り払い、アカギが一言彼女の名を呼ぶと、
少し赤くなった鼻をスン、と鳴らして、youはアカギを見上げた。
「you。」
「・・・。」
「騙そうとして悪かった。」
「はい、反省してください。」
「ん……でさ。」
「?」
「まぁ、仕方ないからキスは諦めるんだけど、もし誰とも付き合ってないなら、youの方からオレに抱き着いてくれない?それで手を打つよ。」
「えぇー…それまだやりますかぁ…?」
「…じゃぁ言い方を変えよう。」
「ん?」
「もし今、オレが帰ってきて嬉しいって思ってくれてるなら、youの方からオレに抱き着いてくれない?」
「ぐっ……そ、それは卑怯ですよ!」
「どうとでも。」
「何かもう…とても悔しい…っ。」
「おいで。」
「~~っ!!」
至近距離で壁に追い詰められて逃げられないというのも勿論あるのだが、
それを抜きにしても本心からアカギが帰ってきてくれて嬉しく思う自分に嘘は吐けないようで…。
youは悔しそうな顔を一瞬したものの、大きく溜息を吐いた後、
自分に対して呆れたように笑いながら、両手を広げて待つアカギの胸に身体を預けた。
「you。」
「はい?」
「…今度こそ、ただいま。」
「おかえりなさい、アカギさん。」
そう言葉を交わせば、まるで随分長い間離れていたような感覚に陥るほど、離れがたい気持ちになる2人…。
もう少し、あと少しを繰り返して結局食事をせず帰宅していたアカギのお腹が鳴るまで抱き合ってしまうのだった…。
そんなに想ってくれてるなら
もうオレでいいじゃないって思うんだけど…?
(ごめんなさい、アカギさんご飯まだだったんですね!向こうで少し待ってて、準備しますんで!)
(え、オレ、飯よりyouにくっついてたいんだけど…。)
(だめ!今ならご飯あまり冷めてないんで!レンジ1分で美味しく食べれますんで!)
(・・・わかった。)
((ああああああ危なかった!あのままだと多分アカギさんのこと…!))
(そういう理性的なところも落とし甲斐ある理由…。)
(え?)
(何でもないよ。)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*