step4_(告白編)
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『アカギさんとわたし告白編1』の続き
「迎え、来たみたい。行こうか。」
「はっ、はいっ!!」
そうして赴くのは明らかに場違いな勝負のステージ。
アカギさんとわたし告白編1.5
「アカギ…!お前……どうして…その娘…!」
「見たいって言うから連れてきた。別に問題ないでしょ。」
先日、約束を取り交わした通り、アカギを迎えに来た男達。
事前に対局の日の連絡を彼等にもらっていたアカギは
youが望む通り、きちんとその日程を伝えていた…。
そうして今日、youはアカギと共に勝負の場へと赴くために付いてきたのだが、
大体の予想通り、組員達は、一般人の彼女が堅気ではない者達が待つ場所へ行くということに驚き、動揺を見せる。
「そりゃこっちは構わんが…先方に確認を……っていうか、行く場所分かってるのか?!組関係の奴等がいるとこだぞ?!そもそも何するか分かってるのか?!」
「それアンタらが言うんだ…。」
「いや、そうかもしれんが…。」
「全部覚悟の上で付いてきたいんだって。」
「な、なんでまたそんな…普通、関わらないだろ…変わってるんだな。」
「普通…そう、普通は来ないかもね。でも、そういう奴なんだよ……『自分の所為で』オレが行く事になったって思ってるんだって。」
「うっ……!」
クククと、笑いながらも、心は全く笑っていないことは一目瞭然だった。
とどのつまり、自分達が彼女を拉致してアカギを勝負の場に引き摺り出したことに自責の念を感じていて、
関わりたくなくとも、怖いと思っていようとも、勝負を見届けることが自分の償い
(youにとっては『けじめ』なのだが)だと思っているから、アカギに付いてきたということで…。
更に付け加えるなら、アカギも心の中では彼女が危ない場所に赴く事を良くは思っていないことも決定的…。
全ては自分達が原因だと気付けば、それ以上何も言及できなくなる組員らであった…。
「見学のことは到着して確認する。まぁ、今日は向こうの組長も直々に顔を出すことは無いそうだから……問題ないだろう。」
「頼みますよ。」
「あ、ああ…。」
了承の言葉を聞き、アカギは何食わぬ顔で黒塗りの高級車へと乗り込んだ。
瞬きを繰り返して立ち尽くすyouに、先日彼女を拉致した男が声を掛ける。
「この前は悪かったな…怖い思いをさせて……って、今もか……。」
「い、いえ!大丈夫…とは言えませんが…今はアカギさんがいるので…多分、大丈夫です…。」
初対面の時より恐怖心が薄れているのは、
アカギが近くにいるからという理由だけではないようだ。
その理由はすぐに男の口から告げられることとなる。
「こういう職業だからな……目的を達するまでは人を怖がらせて言う事きかせるのが仕事みたいなモンなんだ…悪かった。」
「い、いえ……怖かったですし怖いですけど……そんなお言葉をいただけるとちょっと安心します。」
「ある意味で嬢ちゃんが今日来てくれて良かったのかもな…。」
「え…?」
「アンタは真っ当な世界に生きる人間だ。本来なら関わる必要の無かった世界を見せてしまったから……こっちもちょっと心苦しかったんだよ。」
「・・・。」
「二度と会う事は無いだろうと思ってたから、こうやって怖がらせることを前提にしないで話せる機会に恵まれたのは幸いだ。」
「え…?」
「もやもやしてたからな……「悪かった」って謝れてスッキリしたよ。ありがとな。」
「…こちらこそ…今日はムリを言ってしまってすみません…でも、よろしくお願いします。」
組員の男の印象が変わった理由が分かり安堵すると同時に、youはぺこっと綺麗に一礼する。
youの礼儀正しさに好印象を抱いたのか、ふっと笑みを浮かべながら男はアカギ側の車のドアを閉めた。
次いで、反対側の後部シートにyouを案内がてら、今日の勝負に関しての話をし始める…。
「今日は組の傘下の上下を決める大事な勝負でな……普通は功績順なんだろうが、親(トップ)が昔気質(かたぎ)の考えを持ってる方でな…。」
「昔気質…ですか?」
「ああ、今時珍しく博打で優劣決めろって方針なんだよ…。」
「昔はどこも博打でそういうことを決められてたんですか?驚きです…。」
「ハハ…まぁ、色々だ……それで昔は何処の組も強い代打ちを抱えてたんだが…あ、代打ち分かるか?」
「えっと、各勝負に於いて専門の…というかお強い方の力を借りるということでしょうか…?」
「まぁ、そんなモンだ。今回は麻雀だから、その道では右に出るヤツはいねェって話でアカギに白羽の矢が立った。」
「そうなんですか!?アカギさんってそんなに強いんだ……ビックリ。」
「嬢ちゃん、アカギの女なのに知らなかったのか!?俺はそっちの方がビックリだよ!!」
「あ、アカギさんの女ではないです!!//」
「恋人じゃないって……冗談じゃなかったのか。」
「前にそう言ったじゃないですか……。」
「まさかそんな……だったらあんなに……アンタ……相当惚れられてんだな…。」
「はぁ??」
「いや、アンタを拉致した日だよ…ああそうか、アンタ外に出てたから知らないのか…。」
「お手洗いに行ってた時ですね……何かあったんですか?」
「何かあったなんてモンじゃねぇよ……。」
車のバックエリアあたりで立ち止まり、くるりとyouを振り向く組員。
その時の様子を思い出したのか、若干顔色が悪くなっている。
「アイツ、組を潰すって言いやがったんだよ……それがまた冗談に思えなくてな。」
「えぇっ?!でもそんなこと…無理ですよね?!」
「勿論、普通に考えりゃ不可能だが、ことアカギに於いては組一つ潰しかねないんだよこれが…。」
「?!!?」
「どれだけ高レートな勝負事でも勝ち上がり、組一つ潰せるくらいの巨額の金を手にできる男…それが赤木しげる…。」
「あばばばば!!」
「そんなこんなで…噂じゃ連戦連勝、無敗神話を打ち立ててるってハナシだ。」
「アカギさんが?!」
「知らないのかよ!!」
「知りませんよ!!」
「お前らの関係って何なんだ!!」
「お隣さん…。」
「嘘だろ!!!」
「本当ですッ!!」
「いや、ただの隣人助けるためにヤクザの呼び出しに応じて「今度アイツを巻き込んだら、どんな手を使ってでもアンタらの組を潰す」とか言わないだろ!!」
「そ…そんなこと……言ったんですか……アカギさん…。」
冗談かと思っていた事はどうやら本当だったようで、
実際耳にした言葉を言われたことで、思わず驚きで言葉が詰まる…。
「言った。怪我させてないか、何も酷い事をしていないか、してたら今ここでここにいる全員の息の根止めるってな。」
「っ…!」
「まぁ、そこはできるできないの話はさておき、こっちはアカギに代打ちを引き受けてもらう必要があったからな……アンタをもう二度と巻き込まないって条件で渋々承諾してもらったワケだ。」
「・・・。」
「俺らの組はどうしてもこの勝負には勝つ必要があったからな……まぁ、まぁ、女を出汁に引き入れるなんてセコい手だと思ったし、実際こんなに上手くいくとは思ってなかった。」
「・・・。」
「だから、アンタはそれだけアカギに惚れられてるってコトだ。」
「そんなことは…。」
「そうじゃなきゃアカギもアンタも今日、ここにいないだろ?」
「・・・。」
「後はアカギが勝ってくれれば、それでもう全て終わり。俺が言うのもなんだが、アンタの為に受けた勝負…ちゃんと見届けてやってくれ。」
「・・・はい。」
色々とyouとアカギは迷惑を被っているが、
最終的に雇用者は代打ちを勝たせるまでは大いなる味方なのだと、彼は言う。
本当は凄く気になったが、折角謝罪をして和解したところもあり、
負けてしまった場合のことを聞くのは野暮に思えたため、そこは口を噤むyouであった。
それから男は車のドアをyouのために開閉してやり、自分は前の助手席に入り込んだ。
全員車に乗り込んだところで、運転席にスタンバイしていた組員が車を発進させ、
勝負の舞台である古ぼけたマンションの一角へと到着した。
「この部屋だ。」
「旅館や料亭じゃないんですね…。」
「公共の場にゾロゾロ俺らみたいな人種が集まったらマズいからな…うちの組が借りてるトコだ。」
「(何のために…とは聞かない方が良さそう…。)」
「じゃぁ、アカギと嬢ちゃんはここでちょっと待っててくれ。相手に話をつけてくる。」
「は、はい!」
youがそう返事をすると、組の男たちは部屋へ入って行った。
すると、すぐにその場に残されたアカギが、youを見下ろして声を掛ける。
「あんなに怖がってたのに随分仲良くなったじゃない…車の外でなに話してそうなったんだか。」
「な、仲良くというか……どうして怖かったかって理由が少し分かったから、かな?」
「ふーーん?」
「な、何ですか??」
「ついにはヤクザにも気に入られるんだね、アンタ。」
「どうしてそうなった…。」
「嘘うそ、冗談だよ。」
「これでも凄く緊張してるんです……あんまりからかうと泣きますよ?」
「そう、じゃぁ泣いちゃいなよ。オレはyouの泣いてる顔も好きだよ。」
「悪趣味……絶対泣かない!」
「あらら…。」
ぷいっと、youがアカギから顔を背けたと同時に玄関のドアが開いた。
「相手方に確認して、見学を許可してもらった。2人とも上がってくれ。」
「は、はい!おじゃましますっ!」
返事はしたものの、実際にはアカギの後ろにヒヨコのように付いていく感じでyouは部屋へと入室を果たした。
実際中に入ってみると、本当に普通の集合住宅の間取りそのままで、
さほど長くもない廊下を抜ければ、すぐにリビングにたどり着いた。
「っ…!!」
「・・・。」
リビングに入るなり、youの目に飛び込んできたのは
スーツ、サングラスの強面の男性らで、youは思わずビクッと肩を震わせアカギにしがみ付いた。
「す…すいません…何か反射的に…。」
「フフ……別にいいよ。」
既に其処には雀卓が用意されており、3人がアカギを待つ状態で着席していた。
アカギが空いている席に着席すると、必然的にyouは取り残された形となり、
邪魔をしないためにも後ろへ下がり、共にやってきた組員の男の横へ付いた。
「大丈夫かい、嬢ちゃん。」
「あ、はい……何とか…。」
「茶でも淹れるか?」
「い、いえ!お構いなく!!」
「そうかい。……じゃぁ、皆さん、ぼちぼち始めましょうか。」
男の言葉に、自陣営だけでなく相手の組員と打ち手も頷く。
ついに、債を振って勝負の幕が上がった。
・
・
・
それからの勝負はあっという間の出来事だった…。
相手方は昔ながらの手法に則って組の優劣を決めることに飽いているのか、
やる気もそこそこくらいのようで、雇った代打ちも組でお抱えという者ではなかったようだ。
勿論、代打ちに関してはこちらサイドの組にも言えることなのだが…。
ただ、youを拉致し、実しやかに囁かれている噂に縋ってまでアカギを見つけ出し、引き入れたことを考えると、
のし上がりたいというハングリー精神からして相手とは全く覚悟が違う。
その根底がある限り、代打ちを補佐するために入った組員の勝ちへの執念も勝敗の起因となりうるワケで…。
アカギを補佐するこちらサイドの組員の打ち回しも、相手サイドを完全に凌駕していたのだ。
二重三重にこちらが上手となった上に、
代打ちの役者としてもアカギが圧倒的に格上。
とどのつまり、負けうる要素が皆無だった。
「終わってみると凄い点差だな…しかし、すげェ打ち手だなぁ…お前んトコの組のかい?」
「いえ、フリーでして……すんなり雇われてくれるとコッチも楽でよかったんですが……今日の為に無理言って引き入れてきたんです。」
「そうかい……まぁ、これだけの打ち手なら抱え込んで何かの決め事の時に連れ出したくなるわな……。」
勝負後、youたちとやってきた組の男と、勝敗の見届け人として親の組からやってきたであろう幹部の男がそんな話を繰り広げる。
幹部の男が勝負に関して「結果は組長に報告しておく」と対戦相手の組員に告げると、
相手方は各々驚きや戸惑い、残念そうな表情を浮かべて部屋を去っていった。
そして・・・
「アカギさん!」
「おまたせ、you。」
「よく分かりませんが、よく分かりませんがお疲れさまでした!」
「ああ、youも待ち長かったろ。お疲れ。」
「いえ、わたしは見てるだけでしたし……あの、勝ったんですよね!おめでとうございます!」
「フフ…ありがと。」
「アカギさんが無事でよかったです…!」
「それって身体のパーツのこと?それとも金のこと?」
「どっちもです…!」
「ハハ…だから言ったろ、大丈夫だって。」
「・・・はい!」
席を立ったアカギにyouが駆け寄り、労いの言葉を掛ける。
アカギはその言葉を受け入れ、youの頭をポンポンと撫でた。
勝負が無事に終わり、あとはもう帰宅するだけ…。
やっと帰れるという安堵からyouには自然と笑みが零れていたのだが、
背後から掛けられた低い声にビクッと肩を震わせ、小動物のようにアカギの背後へと反射的に隠れた。
「アカギって言ったかい、兄さん。」
「ああ。」
「ダントツのトップ上がりおめでとう……まぁ、アンタにしたら当然のことなんだろうが…。」
「・・・。」
「うちの傘下の……弟分らが無茶言ったらしいが、すまなかったな。ウチは組長がどうにもアナログで愉快犯なところがあってな。」
「聞いてるよ。じゃなきゃ今時麻雀でアレコレ決めたりしないってのも。」
「フフ……まぁ、でもウチの組の決め事なんでな。」
「まぁ、口を挟むつもりも無いけどな。」
「こういう場は慣れっこいかい?その齢で本当に肝が据わった男だな…。」
「別に…。」
「ところで兄さん、アンタ今フリーってことだが、ウチの組の博打打ちになる気はないか?今時勝負事なんて機会は早々無いが、偶の機会でもアンタなら絶対ウチの組長が気に入るハズなんだが…。」
「悪いけど…。」
「…ま、そう言うと思ったよ。アンタ見たまんま、面倒くさがりな風来坊って感じだもんな。」
「察してもらえると有難い。」
「ああ、悪かったな引き止めて。」
ハナからアカギの説得は無理だと理解していたようで、
くつくつと笑い、幹部の男は「じゃぁな」と言葉を残して部屋を去った。
その場に残されたアカギに、雇った組の男が声を掛ける…。
「今日は世話になった。あれだけ完勝してくれると感謝以外の言葉が無いな…。」
「別に、アンタらからの労いの言葉は要らない。オレは自分の打ちたいように打っただけ…。」
「お前の気持ちがどうあれ、その闘牌でうちの組が勝利したことに違いない。」
「・・・。」
「約束の報酬だが…。」
「要らない。」
「え?」
アカギの言葉に組の男達のみならずyouまでが思わず目を見開いた。
「な、何で?ど、どうしてだ?!」
「他に希望するものがある。」
「希望するもの…?一体…それは…。」
「今後のハナシ。」
「こ、今後???」
「今回みたいな状況下……オレはどうにでも立ち回れる。だが、コイツはそうじゃない。」
「ああ……そういうことか。」
アカギの言う「コイツ」というのは、まごう事無くyouのことであり、
きょとんと首を傾げているのは当の本人のみで、周囲の人間はアカギが何を言わんとしているのかすんなり理解できたようだ。
つまり、今後もアカギを呼び出す為に利用されそうになることを未然に防ぐ範囲を広げるため…。
そして、自分達の組以外も同じ手を使おうとした場合、それを牽制してほしいということ。
「見掛けたら助けてやって。」
「分かった。」
「それだけ保障してくれれば、報酬は要らないよ。」
「お安い御用だ。うちの組の系列で連携取れてるトコには言っておく。」
「じゃぁ、オレはもう行くよ。」
「お、おい!だからって報酬……本当に何も要らないってのか??!」
「ええ。」
「だが、こっちもそういうワケには…。」
「はぁ……面倒くさい。分かった、じゃぁアンタのポケットマネーでいい、2万円ちょうだい。」
「に、二万円???」
「うん。」
ワケが分からないというように頭に大量の疑問符を浮かべる男を見て、
子どものようにコクンと首を縦に振って自分の言葉を再度肯定するアカギ…。
理解できないながらも、男は自分の財布を取り出し、
その場でアカギに一万円札を2枚手渡した。
「ありがと。」
「な、何するんだ??」
「ん?オレの報酬とyouへの詫び料だよ。一万円ずつ。」
「んなっ?!!」
「折り紙でも折ると思ったの?」
「んなわけあるか!たったそれっぽっちでいいのかって聞いてんだよ!」
「構いませんよ。」
「な、な…!!」
「じゃぁ、そろそろ帰らせてもらうかな……「報酬」ももらったことだし、帰りに何か美味しいものでも食って帰ろうよ、you?」
そう言ってふっとyouを見て笑みを浮かべるアカギ。
唖然として立ち尽くしている男達と、アカギを交互に見て、
youもアカギに満面の笑みを向け「ハイ!」と返事を返した…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「ちゃんとオレのこと信じてた?」
「信じてましたよ!」
「フフ…どーだか。」
「ほっ、本当ですよ!本当にほんと!」
「ふーん?」
「あ、疑ってるな?」
「クク……そんなことないけど…。」
帰り道、組員らに送ってもらうことはせず、
公共の交通機関を使いながら家路に着く2人…。
勝負に挑む前にした約束が守れたかと問うアカギに、
youは「守れた」と言うものの、半信半疑なのかアカギは軽くあしらう様に笑う。
「ちゃんと、アカギさんのこと信じてましたよ。」
「・・・。」
「アカギさんが大丈夫って言ったら本当に大丈夫なんだって、知ってるから。」
「ヘェ…。」
「わたしが知ってるアカギさんは意地悪はするけど……そういうことでは嘘吐かない人です。」
「意外だな……youの口からそんな言葉が聞けるとは。」
「ふふ……わたしだってアカギさんのこと、ちゃんと見てるんですよ?」
「そりゃ嬉しいね。」
「ちゃーんとスマートに勝っちゃうの。カッコ悪く負けたりしないって。」
「そりゃぁ…何というか……。」
「というのはちょっと誇張表現かな。負けることがカッコ悪いワケじゃないですしね。」
「you。」
「ん?」
ふいに、歩みを止めたアカギにyouも立ち止まり、彼を振り返る。
「今回だけじゃ済まないかもしれない。」
「え…。」
「頻度は少ないけど、今日みたいな場で打つ事もある。」
「・・・。」
「でも、その影響がとうとうyouにまで及んで、正直驚いたんだけど…。」
「うん…。」
「だから、もしかしたらまた…。」
「アカギさん。」
「?」
「その時はまた、ご面倒かと思いますが……お迎えをお願いしてもいいですか?」
巻き込まれることを「しょうがないなぁ」という気持ちで構えています、と彼女は笑う。
「享受すると決めたでしょ?」と、アカギを立てる言葉に置き換えて伝える。
そしてアカギは、どれだけ自分を受け入れてくれるのか、と…どうしようもなく嬉しくなる。
人通りの無い小道で、アカギはyouの腕を引き、その身体を抱きしめた。
「面倒じゃない。迎えに行く。」
「・・・はい。」
「you。」
「はい?」
緩やかに身体を離し、アカギはyouと視線を合わせる…。
「オレはこんなんだけど、youを大事に想う気持ちは本物だ。」
「は…。」
「あと、自分で言うのもアレだけど…大分面倒な類の人種だとも自覚してる…。」
「そうですね。」
「あらら……随分キッパリだね。」
「いや、でも…アカギさん自身が言ったし。」
「それもそうだな…。」
「うん。」
「……それでも、変わらず隣にいてくれるか?」
アカギの表情を見る限り、youがどう答えるかなど分かりきっているようで、
youもまた、アカギがそう思っているであろうことをその表情で理解しているようだった。
視線を合わせ、ふわりと笑って彼女は頷く。
「アカギさんこそ……勝手に一人でどっか行ったらダメですよ?」
「ククク……。」
「??」
「案外束縛が激しいんだな、youは。」
「んなっ?!//」
「けどまぁ、youになら飼われてみるのも面白い。どちらか言うと飼いたいところだけど…。」
「何を仰っているのか分かりません。」
「結局のところ、離れられないってハナシでしょ。オレも、youも。お互いに。」
「そう……なのかな…。」
「離れられないよ。youは。オレから。」
「え、な、なんで…??」
「オレが離さないから。」
「!!」
言うが早いか、少し離した互いの身体が再び近付き、
刹那のうちにゼロ距離となった。
突然降りてきたアカギの顔は避ける暇もなく、
しかもがっちりホールドされているため、youは降ってきたキスを受け入れるほかない。
何度も重ねてではなく、一度だけの口付けだったが、
少しだけ長く思えるような、そんなキス。
最後に名残惜しそうに唇が離れると、アカギを見上げるyouの瞳が揺れ動く。
「…そんな目で見られると…一回じゃ済まなくなるだろ…。」
「ま、またそういうこと言う…//」
「しかし…アレだな…。」
「?」
「ここが家だったら間違いなく押し倒してた。」
「ブッ!!?」
「あのさ、そういうことだから、飯食って帰るって言ったけど……もう家に帰ろうか。」
「わ、わたし美味しいご飯食べて帰りたいなぁ~~??」
「・・・。」
「あ、お疲れ様会も兼ねて…ね?ね??」
「ふーーーん。そこまで功労を労(ねぎら)うならyouがその身で癒してよ。」
「あ、そういうこと言うんだ?つまり今回の件のわたしの精神的苦痛は無視ですか?ねぇ?」
「チッ…。」
「ふふ、じゃぁ、2人のお疲れ様会ってことで!」
「ハイハイ。じゃぁ、何が食べたいの?」
「うーん……アカギさんは?」
「you。」
「あ!そういえば駅前に新しいイタリアンのお店できてましたよね!そこにしませんか?」
「(この女……帰ったら覚えてろよ…。)」
ポン!と手を叩いて、夕飯はイタリアンのコースにしましょう!と目を輝かせるyou。
いつもの事とはいえ、主張を見事にスルーされたアカギはじわじわ怒りを覚えたのだが、
彼女の嬉々とした表情を見て、ひとたび手を引かれて名前を呼ばれれば、
やはりこれまたいつものように毒気を抜かれて口角を上げてしまうのだった。
たとえこの先
どんな事があろうと
気持ちは揺らがない
(イタリアン美味しかったー!また来たい!)
(よかったな。)
(はいっ!ああ、コース料理なんてちょっと贅沢でしたねー!ああ、しばらく食べれないなぁ…。)
(贅沢ねェ……ちゃんとした報酬もらってたらあのコース何千回行けたんだか…。)
(なん…だと…?!なんぜんかい……?!)
(・・・え?うん。)
(ちょっと待って…ゾッとしました………アカギさんそんなレートで戦ってたんですか…?)
(うん。)
(そ、それなのにあんなに平然と?)
(うん?・・・うん。)
(やっぱりアカギさんって……人間じゃないんじゃ…!!)
(失礼だな……生物学上これでも歴とした人間だよ。)
(ユーアヒューマン!!)
(別領域からの引用はやめなさい。)
(すいません。ちょっと驚いて…。)
(まぁ…別にいいけど……いや、よくないな。よくない。)
(アカギさん…?)
(you、帰るぞ。)
(え、あ、はい…。)
(家に帰ったら証明してやる。)
(えーっと……何を?)
(オレがちゃんと人間だってことを。)
(凄く嫌な予感………あの……どうやって…証明されるんですか?)
(ククク……そんなの当然……youに身をもって全部確かめてもらうしかないだろ?)
(う、疑ってない!信じますって……ユーアヒューマン!!ユーアヒューマンだッツ…!!)
(だからそれはやめなさい。)
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*