step X_(番外編)
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これは一体どういうことだ。
アカギさんとわたし(番外編)
「ん…you…。」
「・・・。」
それは彼にとって日常的な行動だった。
夕刻過ぎに想い人でありお隣さんであるyouの家に勝手に上がり込み、
夕飯を共にした後、彼女が嫌がろうともそのまま部屋に泊まっていく…。
確か昨日も文句を言われながらも彼女を引きずり込んで寝入った…。
はずだったのだが…。
「ん…?」
「・・・。」
抱きしめようと伸ばした自分の腕と、
彼女との体にかなりの隙間が空いていることに気付いたアカギ。
寝ぼけながらもその違和感に目を開けた…。
「・・・え?」
「・・・。」
其処には自分の横で寝ていたはずのyouの姿はなく、
一人の小さな女の子がスヤスヤと眠っている…。
一気に覚醒したアカギは何度も瞬きを繰り返し、
頭に疑問符だけをいくつも浮かべた。
「え、なに……どういうこと?」
「んぅ。」
「youは…?」
上半身を起こして部屋中を見渡すも、彼女の姿はない。
すると、アカギが起き上がったことでベッドが動いたためか、
隣で眠っていた少女の目がうっすらと開き、アカギを捉えた。
「おにいちゃん、だぁれ?」
「!!」
「?」
「えっと……アカギ。赤木しげる。君は?」
「you!よんさい!」
「・・・ウソだろ。」
「ほんとだよ??」
「・・・。」
アカギは思わず手を額に当ててこの非現実的な状況を整理する。
あくまでも予想、仮定の話だが、
目の前にいる自分をyouだと言った少女は、アカギの知るyou本人で、
原理は分からないが幼い頃の姿に戻ってしまっているのではないか、と。
ただ、それはあまりにもベタな話なので、
とりあえず夢だろうと決めつけて行動することにした。
ひとまず自分の頬を抓ってみたり、彼女の頭をポンポンと撫でて、その髪に触れてみる。
いつものように触れている髪とは違い、とても細くてキューティクルが最大限に発揮された子ども独特の髪。
「すげぇ(リアルだな。)」
「んー?」
「ああ、ゴメンごめん……ところでyouはどうしてココにいたんだ?」
「よくわからない。」
「オレのこと、怖くないのか?」
「・・・。」
そんな奇妙な質問をしたのも、アカギなりに理由あってのことだった。
普段、子どもと触れ合う機会も無い上に、
子どもの頃に大人に良く接してもらった記憶もあまり無いアカギ…。
大人である自分が子どもと接して一番困ることを考えると、
それは紛れもなく「警戒されること」と「泣かれること」だと考えた彼は、
怖がらずに自分と会話を続けてくれるかどうかの確認として「自分を恐れていないか」と尋ねた。
どのような答えになるか、と珍しくアカギは固唾を飲んで幼い少女の顔色を窺ったのだが、心配は稀有だったようだ。
「こわくない。」
「そうか…そりゃよかった。」
「おにいちゃんのこと、しらないけど…こわくないよ。なんでだろう。」
「さぁ、何でだろうな。いつもは怖いのか?」
「うん。しらないひとだもん。」
「そうだよな。」
「でも、おにいちゃんはしらないけど、しってるきがするから、なんかこわくない。」
「・・・。」
それはつまり、大人だった時のyouの記憶が残っているということなのだろうか…とアカギは考える。
「おにいちゃんは、このいえのひと?」
「まぁ、そんなところだ。」
「そっかー。」
「・・・。」
4、5歳といえばまだ幼稚園や保育園くらいの子ども。
本来であれば、自分のおかれた状況の把握より先に
両親の存在を心配するはずなのだが、何故か彼女の口からその問いは出ない。
まるでその概念が今は省かれているかのように。
こちらから尋ねてみるべきかという考えも過ったが、
それがきっかけで泣かれたり不安になられても困るし、
所詮夢なのだから、と思うに留めておいた。
「腹減ったな……朝飯でも食うか。」
「youもおなかすいた。」
「じゃぁ、そろそろ起きるか…。」
「うん、おはようだね、おにいちゃん。」
「ああ、おはよう。」
「おにいちゃん、もういっかい、なまえおしえて?」
「しげるだよ。赤木しげる。」
「ありがとう、しげるおにいちゃん!」
「っ……!」
成程、それでもう一度名前を教えてくれなどと言ったのかと、
考えるより先に、邪気の無い素直な考えと笑みに胸が貫かれる。
「クソかわいいんだけど…。」
ただでさえ笑うだけで花のように可愛い女児の上、
それが想い人本人が幼くなった姿だと思えば尚の事。
アカギは口元を押さえながら、youの頭を二、三度撫でると
そのまま朝食を作るためにキッチンへと向かった。
他人様の家の冷蔵庫は勝手に開いてはいけないと知りつつも、
(幼い)you本人の為でもあるし、それに夢なのだから…と、迷いなくオープンする。
朝から凝ったものを作る必要は無いだろうと思い、適当に材料を見繕う。
卵とベーコンと食パンで自分は十分。
さて4歳の子どもはどのくらい食べるのか…と、アカギは首を傾げる。
そんな様子の彼に子どものyouが声を掛けた。
「しげるおにいちゃん。」
「ああ、youも起きたの?寝ててよかったのに……ってお前…服。」
「おっきい。」
「みたいだな。」
来ていた服はyouのパジャマなのだが、ズボンの部分は恐らくベッドで既に脱いできたようで、
ダブついた上着のみの姿でアカギの後ろに立っていた。
アカギはパタンと冷蔵庫を閉じると、どうしたものかと思案する。
「ひとます探すしかねェな……シャツくらいなら何とか着れるだろ。」
「どこにあるの?」
「・・・探すか。」
「うん!」
朝食の用意を中断し、アカギはいったんyouと共に寝室へと戻った。
クローゼットを開き、洋服箪笥を上から順に開けていくと、
一段目はシャツなどのトップス、二段目は重ね着用のカーディガンなど…と、
きちんと整頓されて収納されていることが分かった。
「にしても服が多い……女って大変なんだな。」
「かわいいふくばっかりだね。」
「ん、そうだな。」
「これ、しげるおにいちゃんの?」
「…オレが着ると思うか?」
「おもわない。」
「これは……youが大きくなったら着るんだよ。」
「えっ!ほんと?」
「ああ。」
「わぁ……にあうかなぁ?!」
「ああ、きっと似合うよ。」
「たのしみ!はやくおっきくなりたいな!」
「youは大きくなったら何になりたいんだ?」
「しらゆきひめっ!!」
「ブッフッツ!!//」
アカギの何気ない質問に、カッと目を見開いて答えたyou。
両拳をぎゅっと握って、彼女は白雪姫になりたい理由を熱弁し始めた。
「あのね!しらゆきひめ、すごいの!うさぎとかリスとかとおはなしできるの!」
「そうなんだ。」
「そうなの!それでね、ことりとうたうの!」
「ヘェ、そうなの…。」
「それでね、おようふくかわいいの!ドレスなの!」
「くっ…//」
将来の夢が花屋でもケーキ屋でも結果は変わらないのだが、
兎に角子どもならではの澄んだ眼差しと、純粋な夢が眩しいやら可愛いやら…。
鼻息荒く、目をキラキラ輝かせて語るyouがあまりに愛らしく、
思わずその場に崩れ落ちて口元を押さえるアカギ…。
「だいじょうぶ?」
「ああ、問題ない。」
「しげるおにいちゃん、おなかすいた。」
「そうだったな……とりあえず洋服はこれでいいか。」
首元や袖などは少し大きいかもしれないが、丈を考えると1枚の大きめのワンピースとして着れるだろう。
そう考えて引き出しから1枚の小さ目のシャツを取り出し、youに手渡す。
「着替えたら朝飯にしよう。」
「うん!」
「パンとシリアルとっちがいい?」
「しりあるってなに?」
「あー……コーンフレーク?みたいな。」
「コーンフレークがいい!」
「分かった。用意しとくから、着替えたらおいで。」
「はーい!」
youの元気の良い返事にふっと笑みを浮かべ、アカギはキッチンへと戻っていった。
リビングのテーブルにyouの分のシリアルと牛乳を用意し、
自分の分のベーコンエッグを作っていると、着替えを終えたyouが部屋から出てきた。
「いいにおいする。」
「ベーコンエッグ。youも食べるか?」
「ちょっとほしい。」
「じゃぁ、オレのを分けてあげる。」
「やったー!」
「you、火を使ってるから危ないよ。テーブルで待ってて。」
「はーい!」
トテトテと、小さな足音を立ててキッチンから離れていくyou。
一つひとつの言葉や所作があまりにも可愛らしく、
らしくもなく自然と笑みを浮かべてしまう。
「確かに、youがいないのは困るんだが…。」
あの小さなyouがいるのは悪くない。
寧ろ可愛い。許される。
そんな思いがふわふわ浮かんでしまう。
気付けば少し焦げたベーコンエッグができあがってしまっていた。
「おまたせ。」
「あさごはん!」
「牛乳これくらいでいい?」
「うん!ありがとう!」
「じゃぁ、いただきます。」
「いただきます!」
小さな手をパン!と合わせて、シリアルを食べ始めるyou。
途中、アカギが小さく分けたベーコンエッグを雛鳥のように食べ、
ずっと「おいしい」と連呼している姿がまた可愛かった。
それからは服もないので外に連れ出すわけにもいかないため、
部屋の中でトランプなどのゲームをしたり、
絵を描きたいというyouに紙とペンを渡して絵を描かせ、
自分はソファでそれを眺めたりと、昼過ぎまでゆっくりとした時間を過ごした。
そうこうしていると、昼食ののち、youが眠いと言い出し、
子どもなので昼寝の時間ということだろうと踏んだアカギが、ベッドへと彼女を連れていくことになった。
「しげるおにいちゃんもいっしょにねようよ。」
「オレも?」
「うん。」
「オレはいいよ。」
「でも、いっしょがいい。」
「あー何だその……ほら、寝るのは白雪姫の役目だろ?」
「…そっか!」
「ああ、だから寝るのはyouだけ。」
「じゃぁじゃぁ、youがおきるとき、おうじさまがいるのかなぁ。」
「王子様ねぇ…。」
「ねぇ、いるかな?」
「ん……いい子にしてたら、きっと王子様が起こしてくれるよ。」
「ほんと!?」
「本当。」
「あ!うーん、でも……youはおうじさまより、しげるおにいちゃんのほうがいいな。」
「え…。」
カサ…と、恥ずかしそうに布団を口元まで引き上げて、視線だけアカギを見上げるyou。
「しげるおにいちゃんが…おうじさまだったらいいのに。」
「ハハ、オレが王子様?」
「うん。」
「元に戻っても言ってほしいね、その台詞。」
「??」
「何でもないよ。けど、なんでまたオレなんか…。」
「だってしげるおにいちゃん、トランプつよいんだもん。」
「トランプ?」
「うん、ばばぬき。わたし、いっかいもかてなかった。」
「(you顔に出てんだもん……めっちゃ可愛いかったけど…。)」
「つよくて、かっこいいもん。」
「ありがと。」
「ねぇ、しげるおにいちゃん。」
「ん?」
「youのおうじさまに、なって?」
「ッ…!!」
あまりにも可愛らし過ぎる仕草と言葉…。
胸の疼きに耐えられず、ニヤケ顔をうち隠すために
アカギは本日何度目か分からない口元に手を当てる行為を行った…。
しかしながら、そこは流石、赤木しげる…。
数秒後にはいつもと変わらぬポーカーフェイスと平常心を取り戻し、youの髪を優しく撫でた。
「youがオレを選んでくれるなら、オレはいつだってyouの王子様になるよ。」
「ほんと!!?」
「ああ。」
「やくそくだよ?!」
「ああ、約束だ。」
「うれしい…。」
アカギの享受に熱冷め遣らぬかと思いきや、逆にそれで安心してしまったらしい…。
うとうとし始め、まだアカギと話していたいというyou本人の意思とは裏腹に瞼が徐々に降りてくる。
「うー…。」
「元々眠かったもんな、そろそろ寝なよ。」
「うん……おやすみなさい、しげるおにいちゃん……。」
「おやすみ、you。」
すぐにスーっと小さな寝息が耳に届き、彼女が眠りについたことが分かった。
さて、これからどうするか。
服や下着を買いに行くか、しかし、何の伝言もせずに彼女一人を置き去りにするのもよろしくない気がする。
youを見つめて、そんなことを思い悩んでいたが、
愛らしい寝顔を見ていると次第に何もかもがどうでもよくなってくる…。
仕舞いには考えるのを中止し、ただ彼女の寝顔を見てまったりと時間を過ごし始めてしまうアカギ…。
「寝顔がマジで天使なんだけど…。」
ベッドサイドに腰を下ろして、まじまじと顔を覗きこむ。
何をするでもなく、ただ寝顔を見守っていると徐々に眠気が伝染してきた…。
そして、夕飯は彼女に何を食べさせようかという考えを最後にアカギの意識は途切れた…。
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「ん…you…。」
「・・・。」
それは彼にとって日常的な行動だった。
夕刻過ぎに想い人でありお隣さんであるyouの家に勝手に上がり込み、
夕飯を共にした後、彼女が嫌がろうともそのまま部屋に泊まっていく…。
確か昨日も文句を言われながらも彼女を引きずり込んで寝入った…。
そして、目覚めたら幼い姿のyouがいるという、長い夢を見た。
「ん…。」
「・・・。」
伸ばした自分の腕に隙間は空く事なく、彼女の身体を包み込む。
夢で抱いた違和感を感じる事無く、寝惚けながらもその目を開いた。
目の前には自分の腕を枕代わりにして眠る想い人。
その姿は小さな雛鳥ではなく、自分が好きになったままの、あるべき姿。
彼女が幼くなったあの事件はやはり夢であったのだと理解するも、
あまりにもリアルだったその感覚が未だ薄れず、少し戸惑う。
それでもホッと安心しているのは、抱きとめている彼女の身体がありのまま、ちゃんとそこにあるからだろう…。
『しげるおにいちゃんが…おうじさまだったらいいのに。』
交わした言葉を思い出し、夢だったにもかかわらず自然と顔が綻んでしまう。
そう、全て夢だったのだが…。
「you…。」
「んぅ…。」
未だ目覚めない眼前の想い人にゆるやかに口付ける…。
数秒間ののち、そっと唇を離せば、閉じられていた瞳がうっすらと開かれた。
「あ…かぎさ……?」
「おはよう、白雪姫。」
「・・・はぁ?」
「ちゃんと王子様のキスで目覚めるんだな。」
「な………何言ってるんですか?!//」
「よかったね、ちゃんとなれたじゃない白雪姫。」
「??!!」
「夢だったんでしょ、将来の。」
「なっ、なっ……何?!何で知ってるの?!何?なんで?!//」
アカギとしては寝惚けている彼女にはこんな話しはすんなり頭に入っていかず、
スルーされるだけだと思っていたのだが、アカギの言葉にまさかの動揺を見せるyou。
顔を真っ赤にして「アルバム?どこから?!誰から?!」と慌てふためいている。
「あらら……あれは…夢じゃなかったの…?」
「夢でしたけど!今考えると夢じゃないっていうか!その!//」
「・・・。」
勿論、アカギの言う「夢」とyouの言う「夢」は同じ言葉で全く異なる意味を言っているのだが、youはそれを知る由もなく…。
最終的に、アカギの恰好の餌食となるのだった…。
「フフ…いいじゃない、子どもらしく可愛い夢で。」
「うう…恥ずかしい!//」
「ああ、そんなことを考えるyouは子どもの頃さぞ可愛かったんだろうね。」
「え?いや、普通の子どもでしたよ…。」
「いいや…きっと尋常じゃないくらい可愛いよ…。」
「あ、アカギさん?どうしたんですか急に…。」
「うん、今ね……凄く子どもの頃のyouに会いたい気分。」
「いや、何言ってるんですかムリに決まってるでしょ…。」
「朝食を2人で……いや、youと一緒に3人で食べてさ…その後トランプしたりすんの。」
「アカギさーーん!!?」
「それで昼寝の時に……ッツ!」
「うん、大分オカシイぞ!アカギさん戻ってきて!!」
「you………子ども産んで。女の子。」
「だ……誰か助けてェエエエ!!!」
何が彼をそうさせたのかさっぱり理解できないyouは、
ギラついたアカギの目に身動きが取れなくなる。
早朝から響いたyouの悲鳴に、隣人のカイジと零が光の如く現れたのだが、それまた別のハナシ…。
夢なんだけど
あの可愛さは
反則でしょ…。
(…それで子どもがほしいなんてことに?)
(凄かったんだぜ……夢だったけどすげー可愛かった。)
(夢ですからね。)
(でも、本当にリアルで…髪とか、肌とか。触った感じがさ。)
(でも夢ですからね。)
(…youさ、洋服箪笥1段目ってシャツ?)
(え?な、何でそんなこと…。)
(2段目ってカーディガンみたいな上着?)
(な、何で知ってるの?!見たの?!//)
(夢で。)
(ほ、他に何も見てないよね…?)
(いや、だから夢だって…。)
(ねぇ!見てないよね?!!//)
(見てないよ……下着とか。)
(嘘でしょ!?//)
(本当に見てない。見つければよかったと後悔している…。)
(最低…。)
(冗談だよ……下着だけ見ても面白くないし。)
(ですよね、安心しました……アカギさんがそういうの無頓着で…。)
(着てるyouあっての下着だろ…。)
(前言撤回ッ!!)
words from:yu-a
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