step3_(日常編:アカギ)
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目に飛び込んできたのは
ちょっとだけ不思議な光景
アカギさんとわたし14
「それじゃぁ、アカギさん…お疲れ様でした!」
「ああ。」
「また明日!」と、手を振って爽やかな笑顔でその場を離れていく青年と…いつもの見慣れた白髪長身の青年、赤木しげる。
暫く手を振って去っていく青年を見ていたアカギが、自分も岐路に着こうと反対側を向いた…。
「!……you…。」
「どうも!アカギさん。」
「珍しいね。こんなトコで何してんの?普段あまりこの辺には来ないでしょ?」
「ええ。わたしは遊びと買い物の帰り!今日、美心ちゃんも休みで…2人で街で遊んでたんです。で、夕飯の買い物をして帰ってる途中にアカギさんを発見…という感じです。」
「成程ね…。」
「アカギさんは?さっきの人…失礼ですがアカギさんにしては珍しく毛色の違うと言いますか…何だか爽やかな雰囲気の方でしたけど…。」
「ああ、治ね。」
「あっ!前からチラホラ話題に出てきた方ですよね、アカギさんのお友達の……ご挨拶できればよかったな。」
もう角を曲がってしまい、その姿が見えなくなった…青年の通った道を見遣るyou。
「まぁ、そのうち…機会があれば紹介するよ。」
「麻雀のお友達なんですか?」
「友達というか……職場の同僚。」
「しょ……しょくば……?!」
「何驚いてんの。」
「あ……アカギさんって働いてたんですか?!!」
「・・・。」
その反応は失礼だと理解していながらも、目を見開くだけでは彼女の心境は納得できなかったようだ。
驚愕の事実に最早顔面を蒼くするyou…。
しかしながら、そのリアクションに対し、アカギは別段怒ることもなく…。
ごく自然に「ククク…」と含み笑いを零し、口を開く。
「まぁ、想定内の反応だよね。」
「すっ、すみません…。」
「ちなみにそこが職場。」
「ココなんですか?!」
更にビックリするわ!と、アカギの指差した先にある町工場を見て驚くyou。
「な、何かの工場ですか?」
「クク…さぁ、何の工場だろうねェ…。」
「あ…アカギさんが言う冗談は心臓に悪いので嫌いです…っ!!」
「あらら、冗談って分かったんだ…残念。まぁ、ただのおもちゃ製造の町工場だよ。薄給だけど意外と真面目に働いてるんだぜ?これでも正社員だし。」
「い、意外過ぎます…!!」
「まぁ、その給料は大体博打の種銭なんだけど…。」
「まぁ、想定内の反応ですよね。」
「フフ…。」
「・・・。」
いずれにせよ、アカギがちゃんとした職に就いており(一時的なものかもしれないが)、
今まで接してきた中で出された金が全て博打で得たものではない…という事実は、
少なくとも彼女の中で彼の好感度が上がる要因にはなった。
ただ、それは自分の心の中でそう思ったというだけで、
実際に口を突いて出たのはただただ、彼女の本心であった。
「アカギさんっていつも南郷さんやカイジくん達と雀荘とかにいるから…てっきり麻雀で生活資金を得ているのかと…。」
「他の博打もしてるよ。」
「いや、そこはできれば違う感じで否定してほしかった…。」
「まぁ、でも……意外とちゃんとしてただろ?」
「はい……意外過ぎますが…ちゃんとしてました…。」
「安心して嫁に来れるね。」
「行きませんよ!!八割方不安しかないわ!!!」
「あらら。」
いつものようにyouはアカギの軽口を流すが、
当のアカギ本人は如何せん常に本気でyouを自分のものにしたいと思っているため、
少し拗ねたような声色でちょっとだけ彼女の罪悪感を突いた。
「そんなに否定しなくてもいいじゃない…。」
「う…っ……す、すみません…。」
「確かに、この先もちゃんと同じトコで働くかどうかは分からないけどね。」
「もうっ!!」
「フフ…。別の所で働くかもしれないし、もっと『楽しい事』があればそっちで稼ぐかもしれない。」
「またそんな不穏な事を言う…。」
最早大きな溜息でも出しそうな勢いで、youが怪訝そうな目をアカギに向ける…。
彼女が今、どんな表情で自分を見つめているのか大体察しがついているアカギは
視線を合わせないままクスリと笑みを浮かべて「でもさ」と、やんわり反意語を口にした。
「ま、どんな道を歩いたとしても……youのことはちゃんと守るつもりだよ。」
「っ…!//」
「さて、そろそろ帰ろうか。」
「ハッ…!そういえば色々と驚き過ぎて一歩も動いていなかった…!」
「今日のご飯、なに?」
「えっと…今日は……って…!!」
「・・・?」
「何でナチュラルに一緒に食べる感じになってるんですか!」と、声を荒げようと思ったyouだったが、
「どうした?」と、ごく自然に不思議そうな顔をするアカギと視線を合わせて口を噤んだ。
それは相手がアカギであっても、カイジであっても零であっても…。
それ以外の誰であろうと、何かを頑張った人に対して冷たい態度は取れない…ある種、彼女らしい判断だった。
一日の仕事を終えたアカギに対し、怒りではなく労いの態度を見せたいと…。
「ふ…普通に色々具材入れる鍋とミルフィーユ鍋みたいなの……どっちがいいですか…?」
「あー……普通の鍋かな。」
「じゃぁ、そうしますか。」
「ミルフィーユ鍋ってことは豚?」
「ん、あと一応鶏も買ってます。」
「いいね、鶏鍋、水炊きだ。」
「そうですねぇ~。」
「腹減ってきた。」
「じゃぁ、早く帰りましょうか。」
「ああ。」
そう言って2人して道を歩き出す…。
ふと、思い出したようにyouが立ち止まり、アカギに呼び掛けた。
「あ、アカギさん!」
「ん?」
どうしたの?と、後ろを振り向く…。
西日に照らされ、少しオレンジ色にも見えるアカギの髪が形容し難いほど綺麗で、youは思わず息を呑む…。
それでも…いつまでも見惚れているワケにもいかないので、一歩、踏み出して彼女はアカギの隣に並んだ。
夕日に背を向け、帰り道の先を見据えたままでyouは唇を開く…。
「お仕事……お疲れ様でした。」
「うん……ありがと。」
想い人のあたたかな言葉に、思わず口元が緩む。
普段ほとんど無表情なアカギだが、そんな理由で大変珍しくふんわりとした笑みを浮かべていると、
それをそっとyouは盗み見てしまい、再び見惚れて立ち止まってしまうのであった。
『アカギ』さん
本当に
お疲れ様でした。
(そうだ、折角なら「お仕事お疲れ様でした、アナタ」とか言ってみてよ。)
(言いませんよ!!)
(じゃぁ「お風呂にする、ご飯にする、それとも…」ってヤツ。)
(お鍋。ご飯一択ですよねー!アカギさんお腹空いてますもんねー?)
(youが食べたい。)
(それは却下です。)
(意外とケチなんだな…you。)
(ケチって!!そ、そういうんじゃないですよね、これ!!)
(一生懸命仕事したんだけど…もっと労いの言葉とかさぁ…。)
(ぐっ……。)
(「お仕事お疲れ様でした、アナタ」…無い?)
(お……)
(お?)
(おつ……お疲れ様でした…し…しげるさん…っ…//)
(・・・え。)
(もう日が暮れます!帰りますよ!!!///)
(あー……ヤバい、これ、本気で嬉しいな。)
words from:yu-a
『アカギ』完結記念
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