step3_(日常編:アカギ)
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「わぁ、懐かしい!」
それは掃除の途中で見つかったもの
アカギさんとわたし11
「これは修学旅行の写真かな…。」
「スカートの長さといい、髪型といい、完璧な模範生だな…。」
居間のテーブルに散らばる彼女の子どもの頃の写真。
1枚手に取り眺めていたyouの背後から、
写真を覗きこんだアカギが感心したように言った…。
「ギャァ!ああ、アカギさん!?い、何時の間に…。」
「たった今。」
「脅かさないでくださいよ……。」
「インターホンは鳴らしてないけど入ってくる時に呼び掛けた。返事無かったけど…。」
「それはすみません……そんなに夢中になってたんですね、わたし。」
「アルバム?」
「実家にあるようなちゃんとしたものじゃないですけど……こっちに来る時に何枚か持って来てたみたいです。」
「みたいです…?」
「すっかり忘れてたみたいで……今日、掃除をしててたまたま見つけたんです。」
「……見ていい?」
「えー…どうしようかな、何か恥ずかしいです……。」
「クク……ちょっと失礼。」
「あぁ!?」
ドカリとyouの横に腰を下ろし、散らばる写真に手を伸ばすアカギ…。
別段おかしな写真も無いため、多少の羞恥心は目を瞑る事にし、
彼女は席を立ってアカギの為にお茶の用意を始めた…。
キッチンで飲み物を用意し、アカギに差し出すと
彼は「ありがとう」とだけ口に出し、飲み物には手を伸ばさなかった。
それ程までに彼女の写真に集中しているようだ…。
「you、これ何歳くらい?」
「それは……多分中学2年くらいなので13とか14とかかな??」
「ふーん……こっちは高校?」
「はい。」
取り上げた1枚の写真には高校生の姿のyouと男の子が一人映っていた。
「これは学校の友達?」
「友達というか……。」
「・・・。」
「先輩ですね。」
「・・・。」
「先輩の卒業式のです……憧れの先輩だったので、一緒に写真をお願いしたんです…懐かしい。」
「憧れ、ねぇ。」
「スポーツ万能で成績優秀、ズバ抜けてかっこいいという人ではないのですよ。ただ、凄く穏やかで優しい人でした。」
「・・・。」
写真を見る限り、品行方正そうなその男性は、
凡そ自分とはかけ離れた性格なのだろうと…アカギが察するには有り余った。
そう考えると、成程、彼女が自分の起こす行動や発言に毎度毎回戸惑ったり首を傾げるのも頷ける。
とどのつまり(今更言うまでもないが)、違うのだ。本質が。
だからと言って、youを諦めるなどということは絶対にありえない話なのだが、
それでも改めて彼女の好みのタイプが自分とは真反対であることに多少のショックは受けてしまうもので…。
「youはこういう男が好みなんだな。」
「え?」
「穏やかで優しい、品行方正で他人を思いやれる模範生って感じか?」
「そうですねぇ、でも好みというワケではない気もします。先輩は尊敬という点での憧れが強かったので。」
「そうなの?」
「だと思います。」
「ふーん、じゃぁyouの好きな男ってどんなの?」
思いがけず、写真の男性は本当に「憧れの先輩」というだけのポジションだったようだ。
気にはなるが、惚れた相手の過去の恋愛遍歴など知りたくないので、
そこは深く尋ねることはしないのだが
ただ、やはり彼女の話しぶりから見ると、その後恋人になったり何だりということは無いようだ。
「好きな…男性…。」
「ああ。」
「DVしない人。」
「まぁ、そうだろうな…。」
「そのくらい?」
「随分寛大だな…。」
「んー、というか急に言われても思いつかないというか…。じゃぁ反対に聞きますけど、アカギさんは?」
「オレはyouが好きだから。」
「ああ、何かすみません……大分参考にならない…。」
がっくりと首を落として、軽く溜息を吐いた。
だがしかし、よくよく考えてみると自分も同じことだと彼女は気付く。
すぐにパッと顔を上げて「そうですよ!」とアカギに向かって言った。
「わたしもきっと同じです!」
「?」
「好きになった人が好みのタイプになる!」
「ベタなヤツか…。」
「自分で言いますかそれ……まぁ、そのベタなヤツです。」
「つまらん。」
「つまらんて……あ、でも…ことアカギさんに関して言うと、タイプって括りにははまりそうにないですよね。」
「・・・。」
「アカギさんみたいな人を好きになったら本当に大変だろうな…。」
「何ソレ悪かったね…面倒な性格してて。」
「あ、そういうことじゃなくて…!」
「?」
「わたしが知ってるだけでも、クールだったりドライだったり、でもたまに凄く優しかったり、意地悪だったり……驚かされたり、色々あるんだもん。」
「・・・。」
「一生一緒にいても「新しい一面」が尽きないんじゃないかって。」
「何かと思えばそういうこと……クク……さぁ、どうだろうね。」
「アカギさんはこんなに複雑怪奇なのに、わたしの性質なんてすぐ見通されて終わりなんだろうなぁ。」
「そうかもね。アンタは分かりやすいから…。」
「もう!言い返せないけどっ…。」
「でも…。」
「?」
ふいに、伸ばされた大きな掌がyouの頬に添えられる。
youが考え出した答えは思いのほかアカギを嬉しくさせたようで、
珍しく邪気の無い、綺麗な笑みを彼女に向けた。
「たとえ本質が理解できたとしても、youの紡ぐ言葉はずっとオレの心を捕らえて放さない気がする。」
「ことば…?」
「『好き』とか『嫌い』とかトクベツなのじゃなくて……何でもない時の、本当にありふれた瞬間に届けてくれる、そういう言葉。」
「よく分からないです…。」
「クク……無自覚なら尚のこと……オレはアンタを好きでい続けるだろうね。」
「????」
「まぁ、そういうこと。」
「ど…どういうこと…?」
「フフ…。」
それからずっと含み笑いを続けるアカギと、ずっと首を横に傾げるyouの姿が居間にあった。
最終的にアカギはyouに理解させることはせず、
写真を眺めながら昔話を繰り広げ、結構な時間が経過してしまった…。
「あ、もうそろそろ夕飯の準備しないと。」
「もうそんな時間か…。」
「ふふ、今度はアカギさんの昔の写真を見せてくださいね。」
「持ってるワケないだろ……オレが、写真なんて…。」
「え?!いやでも無いってことはないでしょう……1枚2枚くらい…。」
「無い。証明写真くらい。」
「嘘…。」
「本当。」
驚愕の事実。
確かに写真など自ら進んで撮ったり撮られたりはしないだろうとは思ったが、
それでも齢二十歳にもなる青年が過去1枚も写真を撮っていないとは、驚きも去る事ながら、不安になる…。
彼の過去について、詳しく尋ねる機会は無かったが、
これは尋ねて良いものなのだろうか、失礼に思われないだろうかと躊躇してしまう。
そんなyouの気持ちを察してか、アカギは彼女の頭をポンポンと撫でると「悪かったな」と、軽く謝った。
恐らくは変な空気を作ってしまったことと、余計な気を遣わせてしまったことを言っているのだろう。
しかし、youからしてみると、それは自分の所為に思うわけで…。
首をブンブンと振った後、涙目でアカギを見上げた。
「今度、一緒に写真撮りましょうよ。」
「いいよ。」
「この際2人で証明写真でもプリクラでも良いですからっ!」
「それは嫌だ…。」
カメラ以外の媒体については即答で拒否した。
だが証明写真の個室で密着できるならそれはそれで良いかもしれない、などと邪な考えを巡らせるアカギであった…。
「そういえば…。」
「え?」
「一度だけ…撮った気がするな…写真。」
「ほ、本当ですか?!」
「中学の時……南郷さんが…。」
「南郷さんGJッツ!!!」
「(そうか……オレにもあったんだな、写真の…思い出。)」
「それで、その写真は??」
「うーん……?」
「まさか失くし……た?」
「いや、家のどっかにあると思うけど……あ、いや…持ってる。」
「え?今?」
「確か何処かに仕舞うってのが面倒で財布か何かに折り曲げて入れた気が……あった。」
それはアカギの記憶通り、財布のカード入れ部分に大雑把に折り曲げて入れられていた。
もう大分長い事開いていないのか、折られた外面は汚れに汚れている。
しかし、いざ写真を開いてみると中身は綺麗なもので、
そこにはちゃんと、年若い赤木しげるの姿が映されていた。
今と変わらない真っ白な髪に、まだほんの少し幼さの残る顔立ちと身長。
学校の制服だろう、黒いインナーの上から半袖のシャツを着た中学時代のアカギ。
目の前にいる彼をそのまま幼くした姿なので、
何と言うか、とても…絵になる綺麗な男の子だ。
「…かっ……かわいいです…//」
「こんな背低かったんだな…。」
「超かわいいです…//」
「どこで撮ったんだこれ…。」
「すごく可愛いです…!//」
「・・・可愛いしか言ってなくない?」
「だってだって!こんな…可愛い男の子……い、今と同じだけど全然違う!」
「どっちだよ。」
「素直そうです…カワイイ…。」
「素直……ではなかったと思う。どっかのじーさんに鬼子呼ばわりされてたし。」
「アカギくんていうか、いや、しげるくんって感じです!」
「いや、オレ赤木だし、しげるなんだけど…。」
「かわいいです、しげるくん…//」
「・・・・。」
まるでアイドルの生写真を眺めるかの如く、
少年時代のアカギの写真をうっとりと見つめるyou。
アカギははぁーっと盛大な溜息を吐き、
目の前のyouの写真の方へと手を伸ばしたのだが…。
はた…と、脳内に思い浮かんだアイディア。
次の瞬間にはニッと口角を上げ、未だ現実の彼を見返らぬyouに声を掛けた。
「you。」
「はい~?」
「その頃のオレに会いたいか?」
「え?!」
「会いたい?」
「そりゃぁ……会えるもんなら会いたいですよ!かわいいですもん、しげるくん!!」
「そう……じゃぁ、会わせてあげようか?」
「ええっ?!何言ってるんですか!会えるワケないじゃないですか…。」
「会えるよ。」
「もしかして……アカギさんの親戚にそっくりなお子様が…!?」
「フフ……残念。親戚なんて疎遠、寧ろ皆無…。」
「疎遠…皆無……?じゃぁ、どうやって……。」
「それはさ…。」
「!!!?」
言うが早いか、あっという間にアカギはyouを組み敷いた。
まさかの展開に目をギョッと丸くすれば、
ニヤリと不敵な笑みを浮かべたアカギが馬乗りになり、顔を近付けてくる…。
「あ、あかぎさ…ん……こ、これは一体何の真似ですか?」
「しげるくんに会うための儀式。」
「儀式って!儀式って!!」
「まぁ、儀式っていうか…。」
「っ…!!//」
「オレとの子どもができたら、きっと会えるよ。」
「変態ッツ!!//」
「でも会いたいって言ったのはyouじゃない。」
「言ったけど!他の方法を希望します!」
「ない。」
「はっ!そ、そうですよ!女の子が生まれるかもしれませんし?!」
「それはそれで……オレは小さい頃のyouに会いたいし。」
「だぁああ!通用しなかったーーー!!」
「初めてだし、優しくする。」
「ていうか良いって言ってないいいい!!//」
全力でアカギを押し返そうとするものの、
男女の力の差は歴然で、アカギの身体がビクともしない。
勿論、無理矢理襲う気など毛頭無いのだが、
折角この体勢にもっていけたのだし、存分に彼女をからかい、
口付けるくらいはしてやろうと口角を上げるアカギなのであった…。
そこまで「会いたい」なんて
連呼されれば、
ソノ気にもなる
後日…。
(南郷さん、しげるくんの写真のデータ…ネガありますかッツ!?)
(youちゃん、どうしたの急に?!)
(あの中学生くらいのアカギさんの写真ですっ!)
(あー!何か昔撮ったなそういえば……何処仕舞ったっけ…。)
(持てる力を総動員で記憶を呼び覚ましてください!お願いします!)
(うーーん……ごめん、やっぱ思い出せない。)
(うう…そんな…。)
(捨ててはいないと思うし、見つけたら教えるよ。)
(はい!是非お願いしますっ!!是非ぃっ!)
(でも、何でまた急にアカギの昔の写真なんて…。)
(この間見せていただいたんです!!もうすっごく可愛くて!可愛くてッツ!!)
(確かにその辺の子どもとは違う感じだったけど……おじさん、ヤツの性格知ってるだけに素直に可愛いと言いきれないよ…。)
(いえ、しげるくんはきっと良い子です……あんなに可愛いんですもん!)
(ちょ、youちゃん!?戻っておいで!!)
(ハッ!わたしったら今何を……妄想で意見を押し通した…?!)
(そんなに衝撃的だったんだね…。)
(そうなんです……思いがけずすっごく可愛かったから…。)
(ハハッ、それならいっそアカギと結婚して子どもつくっちゃえば?)
(・・・え。)
(ほら、だってアカギ、youちゃんのこと大好きだろ?)
(・・・は。)
(性格あんなんだけど、youちゃんのことはすごく大事にしてるみたいだし…。)
(な、南郷さん…南郷さんまで……な……南郷さんのバカーーーッツ!!///)
(えええええ?!!)
words from:yu-a
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