step3_(日常編:アカギ)
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初めてこんなに
動揺をしました
アカギさんとわたし9
「ほーんと、赤木くんってカッコいいよねぇ…ね、彼女とかいるの?」
「いや…。」
「うっそー、じゃぁ私立候補してもいい?」
「ハハ…こんな風来坊気取りのどこがいいんだか……。」
「えー、全部だよぉ~!」
にぎわう夜の市街地、目の前を横切った光景にyouは目を見開いた。
視線の先には福本荘の隣人(であり狂人)であるアカギ。
彼の普段の格好とは真逆の、きらびやかな服に身を包んだ女性に腕を組まれて歩いている。
「(あわわ、あああアカギさん……と、彼女??)」
これはとんでもないところを見てしまった、とあたふたし始めたyou。
何故かは分からないが出くわすのはまずいような気がして、慌ててその場から駆け出した。
別段用事も無く、家路に着くだけの状況下だったyouは特に行き着く目的地も思いつかず
ただただ頭を混乱させながら走り続けた…。
「…っは……はぁ、はぁ…!」
息切れするまで走り、立ち止まる…。
気付けば、よからぬ界隈に入り込んでしまっていた。
見た目にはカラフルなネオンが眩く輝く夜の裏通り…。
一人でも、誰かと共にでも足を踏み入れないであろう場所。
youは狭い道の中心で頭上を見上げて息を呑んだ。
「(い…いつのまにこんなところにぃい?!!)」
困惑し、硬直。
そんな彼女の後ろから、右から、左から声が掛けられる。
「キミ可愛いねぇ、ウチで働かない?たった数時間でたっくさん稼げるよ!」
「え?!」
「お姉さんお疲れだねー!うちのクラブで癒されない?ほら、そこに看板でしょ、皆イケメンだし優しいよー!?」
「いや、あの!」
「お姉ちゃん、うちの店の方が…!」
女性が紛れ込むのは珍しいからか、次々と呼び込みの男達がyouの周りを囲んでいく。
早々に去ろうと「すいません」と断るものの、騒がし過ぎて相手に言葉が伝わらない。
矢継ぎ早に質問され、困り果てて不安と恐怖で泣きそうになったところで、
youの細い腕を大きな手が力強く掴んだ。
「っ……!!?」
「you…!」
「あ…アカギさ……っ!」
見知った顔に安堵したのか、思わず涙が零れ落ちた。
youの腕から一瞬手を離し、すぐに手を取って走り出す。
群がる烏合の衆をぐんぐんと引き離し、2人はネオン街を抜けた。
「はぁ…はぁ…。」
「・・・。」
息一つ乱れていないアカギとは打って変わって、
引き続きダッシュすることとなったyouは息継ぎもままならない様子。
大きな深呼吸を何度も何度も繰り返し、ようやく落ち着いた頃
アカギが自販機で買った飲み物を手渡し「大丈夫か?」と問い掛けた。
「ふぁ……な…ナントカ……。」
「そう。」
「あの……。」
「ん?」
「あ……ありがとうございまし…たっ…!」
「・・・。」
「さっきのと…あと、このお茶も。」
膝に両手を付き、youは屈んだ姿勢でアカギを見上げる。
「何でまたあんなトコロにいたの。」
「え…?」
「こんな遅くに…女一人であんな場所……何で行ったの。」
言葉の端にどこか怒りを含んだアカギの声…。
youは一瞬肩を跳ねさせながらも、それに答える。
「友達と…遊んでて…遅くなりました…。」
「友達、ね…。で、何であんなトコに?」
「それは……走って、逃げ込んで、気付いたら…いました。」
「ヘェ……誰から逃げてたの?」
「え。」
「ん?」
「・・・。」
「誰?」
「な……ななな内緒ですっ!!//」
「そりゃ残念。」
「うー…ほ、ほら、もう帰りましょう!」
「クク…。」
「何がおかしいんです…?」
「いや、そっちが言わないなら、誤解されないようにオレから言わなきゃいけないってワケだ?」
「は・・・?」
ふ、と不敵な笑みを浮かべてyouを見下ろすアカギ…。
困惑した表情を浮かべる彼女に「見たでしょ」と一言。
「え…?」
「さっき、裏通りに入る前。オレを見つけたんだろ?」
「あ、え・・・。」
「女といるトコ。」
「ぶっ!!」
「you、キタナイ。」
少しだけ口に含んでいたお茶を吹き出すyou。
その後、ゴホゴホと咽んで、暫し苦しんだ。
「はー…アカギさん…も、わたしを見つけたんですか。」
「まぁね。オレがyouを見逃すなんてこと無いから。」
「はぁ…。」
「で、女の話だけど。」
「う…。」
「知りたい?」
「いや…別に…そんな……それはアカギさんのプライベートな事ですし、わたしが介入するというワケにもいかないですし、でもその…。」
「五月蝿い。まどろっこしい。」
「ああっ!一蹴ッツ!」
アカギの正論に、youは崩れる。
しかし、そこで止めるつもりなど毛頭無いアカギは尚もyouに問い掛ける。
「知りたい?」
「うぅ…。」
「答えなよ、you。」
「う…うぅ…っ…!」
「あ、らら…。」
至近距離でのアカギの目力がそうさせたのか、
はたまた先だっての恐怖心の余韻からか、youの目からポロリと涙が零れ落ちた。
ある程度、こうなることを予想していたのか
アカギは珍しく困ったような表情でふっと笑みを浮かべると、そっとyouの身体を抱き寄せた。
「ふぁ…!?//」
「……心配することない。あれはただの店員と顧客の関係。」
「え、と…。」
「安岡さんに連れてかれた店の子だよ。オレが雀荘行くって抜けようとしたら、知り合いがやってるトコ教えるっていうからさ。」
「はぁ…雀荘…。」
「まぁ、色々言われたけど、オレにはyouだけだからね。走ってくyouを見掛けて、追いかけた。それだけ。」
「お、お店の娘は…?!」
「さぁ、家に帰ったんじゃない?」
「そんな…。」
「ちゃんと理由は言ってきた。」
「え、何て…。」
「ん…?今すぐ追いかけたい女がいるから、今日は雀荘行くの止めるって。」
あまりにストレート過ぎる言葉に、youの顔が真っ赤に染まる。
幸い、アカギに抱き締められているので顔は見られる事は無いのだが…。
「you。」
「う…?」
「顔上げてよ。」
「いやです…//」
「離れないと帰れないよ?」
「うう……っ!//」
「帰ろうよ、家にさ。」
思いがけないアカギの、あたたかな言葉にyouの胸がキュンと鳴った(気がした)。
そっと、アカギから身体を離し、恐る恐る顔を上げる…。
「・・・。」
「どうしたの?」
「アカギさん……わたし…。」
「うん。」
「……すいません、ちょっと……嫉妬しました。」
「!」
「何に、とか……分かんないですけ、ど……ぉおっおお?!!//」
最後まで聞いているのか、いないのか…。
恐らくは絶対に吐いてはくれないであろう台詞が彼女の口から飛び出し、
アカギは再びyouを力いっぱい抱き締めた。
「ああ、アカギさん、くるしい!//」
「……ああ、ごめん。」
「ふぅ…。」
「こんなに嬉しくなるモンなんだな……。」
「え?」
「好きな女が嫉妬してくれるってのは。」
「のっ、ノーコメント!もう帰る!すぐ帰る!//」
「ハイハイ。」
「・・・//」
顔を真っ赤に染めて、半泣き状態でズンズンと歩き出すyouの後姿に、
アカギはいつもの如く「ククク」と笑いながら、付いていく。
が、何故かそれからすぐに名を呼んで、彼女を振り向かせた。
「you。」
「な…何ですか?」
「お茶が飲みたい。」
「唐突ですな。はい、どうぞ。」
またからかわれるかと警戒していたyouだったが、それが稀有だったと分かり安堵する。
しかしながら『お茶が飲みたい』と、突然の脈絡の無いアカギの言葉。
彼女は首を傾げながらも、アカギにもらったペットボトルのお茶を差し出した。
「違う。」
「え?」
これがお茶でなく、何なのだろう…。
youは更に頭に疑問符を浮かべて、アカギを見上げる…。
すると、彼は恋人のように…
否、まるで家族、それも往年の夫婦が交わす言葉の遣り取りのように、
あたたかな笑みを浮かべてyouに手を差し伸べた。
「youの淹れたお茶が飲みたい。だからさ……早く家に帰ろう。」
「アカギさん…。」
こんな優しい提案を、誰が無碍にできるだろうか…。
「はい……いっしょに、帰りましょう!」
差し伸べられた大きな手に、あたたかな体温が伝わった…。
これが2人の未来なら
どんなに
しあわせだろうね
(あの、アカギさん…ちょっと聞いてもいいですか?)
(何…?)
(あの……ただの興味本位なんですけどね!)
(なに?)
(その……そういう…お、女の子がいるお店って…よく行かれるんですか??)
(・・・。)
(何ですかその鳩が豆鉄砲喰らったような顔は。)
(いや……youがオレの事で妬いてくれてるって…感極まってさ。)
(違います違います!興味本位!本当に!だって……お、男の人ってやっぱりそういう所に行きたいのかなーって…。)
(照れなくてもいいのに。)
(だーかーら……だって、やっぱり気になるじゃないですか……もし、わたしに恋人ができて、その人もそういうトコに行きたいのかどうか…とか!)
(ハハ、(全力で阻止するから)youにそんな男できないよ。)
(しっ、失礼なッツ!!)
(いや、まぁ…どうだろうね、真面目に答えると……やっぱ、人によるんじゃない?)
(そ…そんなものでしょうか…?)
(オレは付き合いで行く事はあるけど、自分からそんな人にベタベタされる所になんて行きたくないし…。)
(べ、ベタベタ…ですか。)
(惚れた女以外に傍にいられると……結構気持ち萎えるもんだぜ?)
(綺麗な方でもですか?)
(綺麗だろうが何だろうが同じさ。)
(そう、ですか…。)
(オレはアンタじゃなきゃ自分から近づきたくないってコト。)
(え…じゃ、あの……ちなみにわたしに拒否権は…。)
(無いに決まってるじゃん。)
words from:yu-a
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