step3_(日常編:アカギ)
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「you、今日何か面白い番組ある?」
「んー…さぁ…ロードショーとか?」
「ふーん……何?」
「チャンネル変えてみますか?」
無言は肯定…。
youはチャンネルを変えた…。
アカギさんとわたし5
何気ない会話、何気ない動作でチャンネルを変えた…この行為をyouは今日ほど後悔した日は無い…。
チャンネルをロードショーへ合わせると、丁度始まったところ。
本日の映画の紹介が日本語で説明され、youはリモコンを手にしたまま固まった。
「・・・面白そうだな。」
「・・・ドラマにしませんか?」
ほぼ同時に声を出したアカギとyou。
互いにパッと顔を見合わせる…。
「え?」
「え…っと…。」
「ホラーは苦手?」
ニヤリと笑うアカギに物凄く嫌な雰囲気を感じ取り、youは顔を引き攣らせて「No」と答えた。
「いえ…一人でなければ…。」
「ヘェ…じゃぁ、これ観ようよ。」
「…わっ…分かりました、観ますよ!」
何故ドモったのかはyou自身もよく分からなかった…。
別段ホラー映画が苦手というわけではないが、アカギに「ホラーは嫌い」という風に思われては今後色々とマズイ。
ただ…咄嗟にそう判断し、youは強気に出たのだ。
食事をし終えて、片付けも済ませているリビング。
テーブルにはyouとアカギのコーヒーだけが置いてあり、
それを前にして2人並び、映画が始まるのを待った…。
「始まったな。」
「あ、でもこれホラーゲームが原作の映画ですよね?」
「そうなの?」
「ええ、実はちょっと見たかったんですよね。」
「ふーん…。」
ホラー映画が苦手に見えたyouが「見たかった」と発言したことで、
やはり言うほど苦手ではないことが窺い知れ、アカギはつまらそうに返事を返すのだった…。
それから始まった映画を興味深々に見入るyou。
映画のプロローグ的な部分が終わり、物語が本題へと入っていく…。
行方不明の少女を探して、辺りを探索する主演女優が、ゲームに出てくる不気味な生き物と遭遇するシーン。
「・・・アカギさん。」
「ん。」
「キモイ。」
「いきなり…失礼なヤツだな…。」
「あ、いや!違うよ、このクリーチャーが!」
「ああ、そう。」
一端ここで会話が途切れ、物語は進む…。
少女が行方不明になった理由が明かされていくにつれ、不気味さとグロテスクな表現も増えていき、
ちょっとばかり顔色が悪くなったyouがチラリとアカギを見遣る…。
「なに?」
「え…いや…何でもないです。」
「・・・怖いの?」
「これ怖いっていうより気持ち悪いです。」
「そう?」
「うへぇー…夢に出そうー。」
「その時は怖くないように抱きしめて寝てやるよ。」
「あ、何か新しいの出てきた。」
言い忘れていたが、アカギとの付き合いもそろそろ長くなってきたyouはスルースキル1級である。
今回も見事にアカギが望む会話を強制終了させ、視線をTVの画面に戻した。
画面ではyouの言う「新しい」クリーチャー…。
サイズ的に言ってボス系の存在感を醸し出すそれと主演女優のバトルを2人で見守る。
最終的にボスに勝利し、物語はラストバトルへと進む…。
実はラストバトルのボスは実は探していた少女…というベタなオチ。
しかしながらそのバトルは悲惨極まりない光景をyouに見せた。
焦燥感漂うエンディングが終わり、暫しの沈黙の後、アカギは固まって動かないyouの顔を覗き込んだ。
「・・・you?」
「う…。」
「…大丈夫?」
「キモチワルイ。」
「だろうな。」
一般的な見解であれば、それが普通だと…アカギでさえも言える内容の映画だった。
そういうジャンルが好きな人種にはある程度喜ばれるのだろうが…youはノーマルだ。
チャンネルを変えながら、テンションの下がりきった顔で大きな溜息を吐いている。
「お疲れさん。」
「うう~。」
「もうそろそろ寝る時間だな。」
「そうですね、でも寝る前にお風呂入らないと…。」
「洗髪中、鏡に女の子映ったりな。」
「・・・ないもん。」
「蛇口捻ったら真っ赤な血が出たりしてな。」
「・・・ないもん。」
「石鹸が肉塊に変わってるのに気付いて周囲を見れば、血で錆びた不気味な空間にいたり…。」
「しないもん!」
「…怖いなら一緒に入ろうか。」
「結構ですッツ!」
ガタッと立ち上がり、風呂場へ向かうyou。
普段なら悪ふざけするアカギをじっと睨むはずの彼女が一度も顔を見なかったのは恐らく涙目を隠してのことだろう。
これ以上怖がらせるのも可哀想な気がして、アカギも一端自分の部屋で風呂へ入ってくることにした。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「ちょっとのんびり入りすぎたか…。」
濡れた髪をタオルで乾かしながら、自分の家の風呂場から出てきたアカギ。
風呂に入る前に歯磨き等の寝る準備を終わらせ、ゆっくりめに風呂に入ってきた為
youの家を出てから小一時間程が経過していた。
いつもなら彼女が寝入ってしまっている時間帯にこっそり(いや、堂々と)忍び込み、布団に潜り込むのだが、
今日は先程の映画で気が滅入っているyouがちょっと心配で、髪を軽く拭いた後、隣へ向かった。
玄関の前に立ち、アカギはドアをノックするだけで、インターホンは鳴らさなかった。
暫くして恐る恐る開かれたドアからそっとyouが顔を出す…。
不安げな顔がアカギの姿を確認するなり、ぱぁっと明るい表情に変わったので
本人は気付いていないのだろうが、やっぱり一人はちょっと怖かったのだと彼は察した。
「ただいま。」
「お…おかえりなさい…。」
「入っていいか?」
「…あ、はい…!」
どうぞ…と、アカギを部屋に通す。
再びリビングに戻ってきたアカギが定位置に腰を下ろし、youに話しかけた。
「風呂は怖くなかった?」
「だっ、大丈夫ですよっ!」
「そう?」
「そうっ!……です…。」
「そうか…じゃぁ、別に戻ってくる必要なんてなかったな。」
「え?」
「いや、youが怖がってるんじゃないかって思ったから…。」
「アカギさん…。」
純粋に自分を心配しての言葉だろう、アカギの声色がそう言っていた。
いつも自分をからかうくせに、何気ないところで本当に優しいのはアカギの卑怯なところだと、youはいつも思う。
ただ、それを悟って「ありがとう」と言えば、また意地悪をしてくるかもしれない…。
youはそんな彼よりは今の優しいアカギでいてほしくて、ふわりと笑顔を浮かべるに留めた…。
「あの…アカギさん?」
「ん?」
「申し訳ないんですけど……。」
「何…?」
「今日はその……いや、でも…ああ、やっぱダメだ!私から言うのは、ダメ、絶対だめ。」
「ううう!」と唸り声を上げてその場で頭を抱えるyouを
何か不思議な生き物を見るような表情でポカンと見ていたアカギ…。
しかし、彼女の考えてることなど、手に取るように分かるのだ、この男は…。
「you。」
「うう?」
「泊まってっていいか?」
「っ……いい、デス…ケド…//」
「フフ…ありがと。」
「…~!//」
「泊まってほしかった」考えが悟られ、申し訳なさと恥ずかしさと嬉しさで思わず泣きそうになる。
そして…
勝手知ったるyouの家…。
アカギは何の遠慮も無しにyouの寝室へと向かい、そのままベッドの中へ潜り込もうと布団をめくる…。
しかし、そうは問屋が卸さない。
youは布団をめくるアカギの手を掴み、冷たい眼差しで彼を見据えた…。
「なに?」
「何はこっちの台詞ですけども。」
「寝るんでしょ?」
「そこは私の寝床なんで…。」
「youの寝床はオレの寝床…オレの寝床は…オレの寝床…。」
「ジャイアンかっ!」
ビシッツ!っとツッコミを入れ、布団に入ろうとするアカギを制止するyou。
その場に直立で立ち、ちょっと怒って物申した。
「アカギさんはリビングのソファー!」
「客人なんだけど。」
「じゃぁ私がソファー行きます。」
「それじゃ意味ないだろ…。」
「何で?!」
「youが怖い思いをしないようにオレが抱きしめて寝るんじゃないか。」
「心身共に恐怖を覚えそうなので、謹んで遠慮させていただきます。」
youはツン!と顔を背け、アカギをその場に残してリビングに向かう。
その瞬間、グイっと腕が引かれて、くるりと身体が半回転。
youの身体はあっという間にアカギの腕の中に納まっていた。
「あああアカギさんっ?!!!///」
「…怖い夢に落ちそうになったらおいで?」
「は………ぃ…//」
「おやすみ。」
「お……おやすみなさい…//」
ぱっと腕が離され、アカギはyouの代わりにリビングへ。
youはというと、部屋に立ち尽くしたまま、暫く動けないままでいた…。
やっと鼓動が落ち着きを取り戻し、部屋の電気を消して布団へと潜れば
ドッと疲れが押し寄せたのか、youはあっという間に眠りに落ちていった…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「(ベタだ…ベタ過ぎるッツ!!)」
夢の中、youは走っていた。
怖い夢は見るまいと、楽しいことを考えながら寝付いたはずなのに!と…。
彼女は今の状況を作り出した自分の深層心理を大変恨んだ。
分かりやすく言うのならば案の定怖い夢を現在進行形で見ているということだ。
必死に逃げるyouを追いかけるのは多種多様な魔物の群れ。
可愛いものからグロテスクなもの、魔物でもっともポピュラーなスライムから
何故かスリラーのPVに出てくるMJまでいるというカオスな状況。
ツッコミどころが多過ぎて、泣けばいいのか笑えばいいのか怒ればいいのか。
「(勘弁してよぉおおー!!)」
ぎゅっと目を瞑って加速したのがいけなかった…。
その瞬間にyouは足元の凸凹に足を取られ、盛大にすっ転んだ。
擦り剥いた膝を庇いながら起き上がると、最悪な光景が視界に飛び込んでくる。
今日の映画でyouが見た不気味なクリーチャーが自分に襲い掛かかろうと大きな斧を振り上げた。
あまりの恐怖で悲鳴も出ず、ただぎゅっと目を瞑れば、
夢の中で閉じたはずの視界が逆に現実世界で見開かれる。
涙でぼやける視界でyouの目に映ったのは暗い寝室の天井…。
ゴシゴシと涙を腕で拭い、ゆっくりと起き上がった…。
「ゆ…ゆめ…。」
よかった…と安堵の溜息を吐き、youはカラカラに乾いた喉を潤すべく部屋を出た。
夜明けにはまだ大分遠いこの時間、リビングで眠っているアカギを起こさないように
物音に気をつけながら冷蔵庫を開け、水分補給を行う。
やっと現実にいる感覚が戻ってきた気がしたが、それでも今日はもうこれ以上睡眠を取る気にはなれなかった。
部屋に戻って読書でもしようかとキッチンを出ると、
寝ていたはずのアカギが起きて、youを見ていることに気づく。
「あ、アカギさん!?ごめんなさい、起こしちゃいましたか?!」
「いや…そういうわけじゃない。」
「あうう、すみません…。」
「眠れないの?」
「いや…その…一応寝たんですけど…。」
「…怖い夢、見たんだ?」
「うううう~~~!!」
「こっちおいでよ。」
ニコリと笑みを浮かべ、アカギは自分が寝ていたソファへとyouを招く。
空けてもらったスペースに腰掛けると、まだアカギが寝ていた温もりが残っていて
起こしてしまって申し訳ないと思いつつも、安心できて有難いと感じてしまうのだった…。
「you…大丈夫?」
「え…。」
「電気点けるか?」
「あ、いえ!大丈夫ですよ、もう平気です。」
「そう…?」
「はい!えっと…だからその……私にかまわず寝ちゃってください、ホント、大丈夫なので…。」
「…まって。」
「え?」
焦った様子で自室に戻ろうと立ち上がるyouの手首をアカギが掴んで、再び座らせる。
「あ…アカギさん?」
「…youは眠たいの?」
「えっと……今は…眠くない、です…。」
「そう……オレも眠くないんだよね。」
「そうなんですか?あ…すいません…私が起こしちゃったから…。」
「フフ……少し話でもするか?」
「はい…そうですね。」
「部屋行ってもいいか?」
「え…あ、はい。」
そう言って、アカギは徐に立ち上がり、youの部屋に向かった。
youもアカギの後ろに続き、自室に入る…。
「ベッドの上、座っても?」
「あ、いいですよ。」
珍しくyouに許可を取ってベッドの上に腰を下ろすアカギ。
いつもの彼らしくない行動にちょっと驚いた顔を浮かべながらも、
youは微笑み交じりにアカギの隣に着席した。
「電気点けますか?」
「いや、いい……ねぇ、横になろうよ。」
「えぇ"?!!」
「…その方が自然と眠れるかもしれないと思ったからだよ……他意は無い。」
「そっ、そうですか!?アハハ!しっ、失礼しました!//」
「それとも……違う意味の方がよかった?」
「…ッ…!//」
アカギの言葉を否定すべく隣で首をブンブンと横に振るyou。
彼がフフ…と笑う理由はきっと、暗闇の中でも彼女の顔がどんなに赤く染まっているかが見えなくても分かるから…だろう。
この会話や行動自体がもう既にアカギのペースなのだが、
you自身は怖い夢を見て眠れなくなった羞恥心と、アカギを巻き込んでしまった引け目もあり、
彼の言う事に従っているという節目も見られる。
故に、アカギがゴロリとベッドに横になれば、溜息混じりにyouもその横に並ぶのだ。
「どんな夢見たの。」
「何か凄いカオスでした。」
「カオス…?」
「色んな魔物に追いかけられる夢。」
「ベタだな。」
「ベタです。」
「どんな魔物?」
「っと…スライムからミイラから…今日の映画のヤツもいたし、マイケルもいた。」
「誰、マイケル。」
「MJですよ、スリラーのPVのゾンビで出てきました。」
「…それはまたレアだな…踊ってたの?」
「どうでしょう…そんな余裕あったらうなされてないと思います。」
「ハハ…確かに。」
「ふふ…。」
至近距離で顔を合わせて笑いあう2人。
ただ、周囲が暗闇に包まれていることで距離が特定できず、安心してyouは話せているのだろう。
それからとりとめも無い会話の遣り取りを繰り返し、徐々に言葉の数が減ってくる。
うとうとし始めたyouを見て、アカギが小さく声を掛けた…。
「you…?」
「はいー…?」
「眠いの?」
「んー…眠いけど…寝たくない…。」
「どうして?」
「また…こわい夢見たら…やだなって…。」
「怖い夢は見ないよ。」
「ん…どうして…?」
「その為にオレが傍にいるんだろ?」
「…そっか…ぁ。」
そう言葉を伝えると、安心したように微笑むyou。
うっすらとその表情を確認し、アカギは布団の入り口を掴むyouの手をそっと握る。
何の抵抗も見せず、彼女はその手を握り返したので、アカギはとても嬉しそうな声色で告げた。
「おやすみ。」
「……あかぎさ…。」
「ん?」
「ありがと…ぉ…。」
ほんの微かな声でそう呟いて、眠りに落ちていったyou。
アカギはふっと笑みを浮かべてその額に軽くキスをした。
握る手が
守ってくれる
そんな気がした
you
(んんん~~…。)
アカギ
(・・・・。)
you
(暑い…くるしい…重い…。)
アカギ
(・・・ん…。)
you
(んう~!!はうっ?!)
アカギ
(!)
you
(ギャァアア!)
アカギ
(煩い…。)
you
(ななな、何で私、抱き枕にされてるんですか?!//)
アカギ
(だって…昨日のyou、激しかったから…(寝相が)…。)
you
(みょ、妙な言い方しないでくださいっ!//)
アカギ
(脛は蹴られるし、腹は肘鉄だろ…顔面は裏手入るし…可愛いのは寝顔だけ。)
you
(ど…通りで今日は清々しい夢を見るはず…。)
アカギ
(…どんな。)
you
(昨日私を苦しめた魔物をフルボッコにする夢でした…。)
アカギ
(ヘェ…気持ちよかった?)
you
(そりゃぁもう!襲い来る魔物たちを千切っては投げ…千切っては投げ…。)
アカギ
(ふーん…その身代わりがオレって話なワケだ…?)
you
(いや…それは…その…。)
アカギ
(この代償は高くつくぜ…。)
you
(ちょ、ま…待ってくださ…!)
アカギ
(断る、倍プッシュだ。)
you
(ぎゃぁあああ!!///)
2010.06 words from:yu-a
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