step3_(日常編:アカギ)
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「youちゃん、悪いんだが…。」
という南郷の頼みに、youは嫌そうな声と顔で
「え~」という反応を返した。
アカギさんとわたし2
「頼まれてくれないかな…?」
「でも…。」
「youちゃんが持って行った方がアカギも喜ぶと思うし…。」
「だけど…。」
「これから用事があるんなら、仕方ないから諦めるけど…。」
「いや…特に用事は無いですけど…。」
「だめかなぁ?」
「うう…。」
顔の前で手を合わせて申し訳なさそうにyouを見る南郷。
巨体と反比例する縮こまった南郷のその態度に実はyouは弱い。
否、youだけでなく、南郷を知る者は皆、彼にそういう態度を取られると庇ってやりたくなるのだ。
今回も例外ではなく…youは大きな溜息を吐いて渋々依頼を承諾する羽目になるのだった…。
「それで、アカギさんにそれを渡せばいいんですか?」
「頼まれてくれるのか、youちゃん!ありがとう!!」
「私も南郷さんにはお世話になってますから…ね。」
軽く苦笑して、依頼の詳細を尋ねれば、それは以下のもの。
町の雀荘で打ってるアカギに、南郷が現在手に持っている土産を渡して欲しいという…。
所謂「おつかい」というものだ。
別に福本荘に戻ってきた時に渡してもいいのではないかという誰しもが思う事柄は、
アカギが何時戻るか分からないこと、土産がナマモノだという点で却下された。
では南郷が渡しに行けない理由はというと、
出掛ける用事があって、2、3日留守にするから、代わりに渡してくれる誰かを探していた…という状況。
そこにたまたまyouが現れ、町へ買い物に出掛けるというものだから、すかさず依頼を試みたのだ。
「それじゃあ、頼む!」
「今度何か美味しいもの奢ってくださいよ?」
「ああ!分かったよ!」
にっこりと、満面の笑みで手を振って去っていく南郷…。
youは軽く手を振り返して、その場で「はぁ~~~!」っと物凄い大きな溜息を吐いた。
「何で私が態々雀荘にまで赴かなきゃいけないのよ…。」
プリプリ怒りながら、町へ繰り出すyou。
町へは夕飯の買出しの予定だった為に、任されたようなものなので、
それなら「友達と夕飯を食べに行く」と言えばよかったと…今更ながらに後悔するのだった…。
雀荘の場所と名前を教えられ、比較的主だった通りにあるその店の場所は
運が良いのか悪いのか、youも分かる場所にあった。
それ故難なく辿り着いたその階段を上がりながら、溜息を一つ。
更に、店のドアの前に立ってもう一つ溜息を零した。
ゆっくりと雀荘の扉を開くと、すぐに歪にゆがむyouの眉。
「(分かっちゃいるけど、相当煙たい!!!)」
あまり口で呼吸をしないように受付に向かい、カウンターの女性に声を掛けた。
「こんばんわ、いらっしゃいませー。」
「あの…知人がこちらに来てると思うんですけど…。」
「お名前いただけますか?」
「えっと…アカギ…赤木しげる…です。」
「えー!貴女アカギさんの知り合い?もしかして彼女なの?!」
「違います。そして、いるなら呼んでいただけますか。」
「あっ、違うんだ?そうなんだ、よかった!少々お待ちくださ~い!」
取り乱した態度からコロリと元通りになった受付嬢は、
ニコリと営業スマイルをyouに向けてフロアに向かって歩いていく。
その姿を辿って、最終的に行き着いた先にいる見慣れた白髪。
受付嬢に話し掛けられて、彼は吸っていた煙草を灰皿へ押し付ける。
何か2、3言会話をして、アカギは座ったまま動かず、受付嬢の女の子だけが再びyouのところまで戻ってきた。
「えっとですね、今やってる局が最後だから、もうあとちょっと待っててください…と。」
「えー…じゃぁ、これ、渡しておいていただけますか?」
「これは?」
「南郷さんからのお土産です…って、言っていただければ。」
「直接渡しに行かれては?」
「邪魔しちゃ悪いですし。帰る時にでも渡してください。」
「そうですか…分かりました、じゃぁ、渡しておきますね!」
「お願いします。」
ペコリとお辞儀をして、youは雀荘のドアを開く。
「ありがとうございました!」という受付嬢の声が後ろから聞こえたことと、
手荷物が無くなったことで、ほんのちょっと開放感を感じた。
さて、買い物して帰るかと、誰にとも無く頷いて階段を全段降りたところで、上の雀荘のドアがバン!と開いた。
何事かと驚いて上を見上げれば、さっき一度見た、見慣れた白髪が自分を見下ろしていた。
「you!」
「アカギさん?」
タンタン、と軽やかに階段を降りてきて、アカギはyouの目の前に立つ。
少し怒っているような、困っているような、複雑な顔つきでアカギは溜息を吐いた。
「何で帰るの。」
「何でって…用事が終わったから…。」
「用事って、これ?」
「南郷さんに頼まれたんですよ、アカギさんに渡してほしいって。」
「態々届けに?」
「お土産、生ものらしいんです。アカギさん何時帰ってくるか分からないからって。」
「何でyouが?」
「南郷さん今日から2、3日お出掛けされるそうなんです。」
「ああ…それで今日は早々と帰ったんだ。」
「途中でこのお土産のこと思い出して、途中でばったり会った私に白羽の矢が立ったと。」
「なるほどね。」
「持って行っててそのまま持って帰ってきちゃうのが南郷さんらしいですね。」
「ハハッ、そうだな。」
お土産にチラッと目を遣り、その場で笑う2人。
そして、youが思い出したようにアカギに尋ねる。
「あ、アカギさん、今、勝負中だったんじゃないですか?」
「ん?ああ、抜けてきた。」
「えええっ?!」
「殆どオレが勝ち攫ってたし、取った分は全部置いてきたから大丈夫。」
「だ、大丈夫って…折角勝ってたのに勿体無くないですか…?」
「youが折角会いにきてくれたんだから、それを逃す方が勿体無いでしょ。」
「も!ま、またそういうことをポンポンと言う…///」
「ありがとう、会いにきてくれて。お使いでも嬉しい。」
「っ…//」
ポンポンと頭を撫でて、youに笑いかけるアカギ。
しかしながら、youはというと…。
いつものように赤い顔をしながらも、眉を寄せて若干不安気な表情を浮かべていた。
「you…?」
「たし…は…。」
「?」
「私は…来なければ、良かったです…。」
「…なんで?」
「違う人みたいで…。」
ぎゅっと拳を握り締めて、地面に向かって搾り出すような声で、言った。
「ドアからアカギさんのいるトコまで……何か凄く、遠かった、から…。」
ぎゅっと、目を瞑って…。
「いつも隣にいるアカギさんじゃない、みたいで…。」
そこまで言って、ハッと我に返った様子のyou。
目を開いて、視界に入った自分とアカギの足元を捕らえた後、ブンブンと大きく首を左右に振った。
「何でもありません!」
「…you。」
「それでは、夕飯の買い物をして帰りますので!!」
「you。」
「お疲れ様でした、アカギさん!」
「youッツ!」
「っ…!」
無理矢理踵を返して駆け出そうとしたyouの肩を掴み、その場に制止させたアカギ。
身体を反転させれば、youは動揺した目でアカギを見上げる…。
「お前が見た、どれも全部オレだ。」
「う…ん。」
「ギャンブルしてるオレも、飯食ってるオレも、煙草吸ってるオレも。」
「うん…。」
「オレの生きてる行為に偽者なんて、無い。」
「…はい。」
「別人に思えても、オレなんだ。」
「…っ!!知ってます、分かってます!」
「だけど……一つだけお前に入れれるフォローがあるとすれば…。」
声色が穏やかなものに変わり、アカギの顔もそれと併せて変化し、
珍しく、とても困ったような笑みを浮かべてyouの身体を抱き寄せた。
唐突なその行為に慌てふためくことも出来ずに、youはただ目を丸くしてアカギの腕の中に納まる。
「あ…アカ、ギさ…?!//」名前すらスムーズに出てこない彼女にアカギの唇はふっと孤を描き、
暫しの沈黙の後、とても澄んだ低い声でyouを泣かせた。
「お前の傍にいる時のオレが、オレは一番好きだから、you。」
何で涙が出るのかは分からないが、ただ、自分を想って言ってくれていることが
有難くて、気を遣わせてしまって申し訳なくて、youは泣いた。
アカギの背中に腕を回して、youは暫く泣いていた…。
どのくらいかの時間が経過し、鼻をスン…と鳴らしたyou。
「落ち着いたか?」
「…ハイ…取り乱しまくってスミマセン。」
「いいよ、泣いた顔も好きだから。」
「悪趣味ですっ!///」
「ハハッ……それで…。」
「?」
「少しは理解したか、オレの気持ち。」
「はい!」
「・・・。」
満面の笑みでそう答えたyouに、どうにも嫌な予感を感じるアカギ…。
「一応聞こう・・・何を理解した?」
「アカギさんが……私を…。」
「youを…?」
「妹みたいに大事に想ってくれてることを!!」
「そうかい、じゃぁ近親相姦フラグだな、アンタ。」
ゴゴゴ…と、アカギのバックに炎が見える…。
幾度と無くこのような類の遣り取りを行ってきたが、
今日という今日は流石にアカギも脈アリと感じたらしく、それが逆に怒りのボルテージを上げさせた。
「ええっ?!だ、だってそうでしょ!お仕事してるお兄ちゃんは私の知ってるお兄ちゃんじゃない!みたいな!!」
「別に家族じゃなくていいだろ、そこは。」
「仕事をしてる自分は好きだけど、家族と一緒にいるときの自分がもっと大事で一番好きなんだと!」
「意味は大体合ってる。だがキャストが違う。」
「ではパパと娘とか。」
「ほぉ……ケンカなら買うぞ、ただしベッドの上の攻防戦だけどな。」
「謹んで遠慮させていただきます!!」
再度逃げ出そうとしたyouの首根っこを掴み、アカギは冷たい声で言い放つ…。
「さっきの麻雀で手に入れ損ねた代金分、オレの為に働け、you。」
「ななな!何でですか、そ、そんなの横暴ですっ!!」
「横暴でも何ででもだ。」
「絶対イヤです!」
「じゃぁ、身体で払うか?」
「…掃除洗濯炊事に肩もみ肩叩き、何でも仰ってください。」
「ちなみに身体だと一回で済むけど…。」
「…掃除洗濯炊事に肩もみ肩叩き、何でも仰ってください。」
「チッ。」
あくまでも家政婦の道を選ぶyouに大きく舌打ちをしたアカギだったが、
いつものこの遣り取りが一番楽しいような気がして、それ以上は何も言わず、ただ笑って前を歩き出すのだった。
オレの在処は
アンタの隣だ
(you、肩揉んで。)
(はいはい。)
(you、膝枕して。)
(はいはい。)
(you、添い寝してよ。)
(はいは……一人で寝てください。)
(つれないな……この間はしてくれたじゃん?)
(あ、あれはアカギさんが私を巻き込んで倒れたから!!//)
(じゃぁ今回も巻き込んで倒れればいいわけだ?)
(今日の手伝いはこれにて終ーーー了!!帰宅!!)
(ククク……それはオレが決めること。)
(ギャーーー!!玄関塞ぎやがったーー!!)
words from:yu-a
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