step3_(日常編:カイジ)
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
本日 晴天
しかし彼等は屋内で
とある作業に勤しんでいた
カイジくんとわたし2
「っ……やば…//」
「うーーん??」
「・・・・//」
「こっちかな?いや、でも繋がってるしな……うーん。」
「目の毒…//」
「…全部差さってる……ってことは。」
「ぉ…ぉぃ…//」
「このコードを……一回抜いて……。」
「・・・ぁ…//」
伊藤家、パソコン机の下に頭だけ潜り込ませていたyouがゆっくりと上半身を動かして顔を上げた。
くるりと後ろを振り向き、家主であるカイジの顔を見つめてyouは唇を開く…。
「配線は問題ないみたい。」
「そっ、そーか!//」
「ちょっとパソコンを拝見……ん、やっぱり。」
「スーーーハーー…//」
「どうしたのカイジくん、さっきから顔赤い。」
「なななななんでも!何でもないッツ!!//」
「そう…?」
首を痛めそうなくらいのスピードでブンブンブンと力強く首を横に振るカイジ…。
火照った顔の熱も風速で下がってほしいと切実に願うばかりだ。
というのも、それはたった今の今までyouのあられもない姿を目にしており、単に興奮してしまったが故である。
机の下に潜り込んで配線確認をしているyouは無防備で、
しかも今日はそのスカートが割と短めだったため、要するにパンツが見えそうだった…というわけだ。
日頃、(美心以外の)若い女性との付き合いが非常に乏しいカイジにとって、
見えそうで見えないチラリズムだったり、惜しげもなく顕になった白い太腿なんかと至近距離でお目見えすることなど皆無。
ましてやそれが好意を抱いている女性であれば興奮するのは至極当然なのである。
そんなカイジの本音に気付くことなく、youは淡々と会話を続け出す。
「で、パソコンが起動しない理由なんだけど、多分…。」
「お、おう…。」
「ただのバッテリー切れみたい。」
「げぇっ?!何それ、マジ?!」
「うん、だってほら、今はもう充電ランプ点いてるでしょ。」
「あ、本当だ…。」
「多分、停電した日から電源の供給がストップしてたんじゃないかな?」
「そっ、そんなことあるのか…。」
「あるみたい。でも良かったね、パソコンの故障じゃなくて。」
「ああ…確かにな……イイモノも見れたし…。」
「いいもの?」
「なっ、何でもないっ!!//」
次は首ではなく両手を顔の前でブンブンと振り、否定を示す。
そんなカイジのオーバーアクションにも、
youは何も不思議がることなく次のステップを提案する…。
「じゃぁ、原因が分かったところで、起動させて動作確認してみるね。」
「ああ、頼むわ。」
少しだけ平素を取り戻したカイジが頷けば、
youは「じゃぁ」と言ってパソコンの起動ボタンを押した。
「悪ィな、PCが古いから…起動遅いんだ。」
「じゃぁ、そのうち初期化しないとね。」
「初期化ぁ?オレそんなの分かんねぇよ……you、そん時は手伝って。」
「うん、分かった。バックアップだけは自分で取っててね。」
「了解~。」
「あ、そろそろ起動できたかな?」
「あんまり使わないからなぁ、オレ自身、久々に見るかも…ってぇええ!!」
「な、なに?!」
急に大声を発したカイジに驚き、youは目を丸くさせたのだが、
カイジのそれは彼女以上に見開かれ、緊急的危機を彷彿とさせた…。
―以下、カイジの心境―
マズイマズイマズイ!!
めっちゃくちゃマズイ!!
確かこのパソコン・・・
開いた時に、ああああああああ!!!!!
―終了―
一度始まった起動作業は途中で中断することもできず、
カイジのパソコンは、時間を掛けてその全貌を曝け出す…。
壁紙が現れ、デスクトップにはアイコンが。
下部のタスクバーが構成され、スタートアップが全て出揃った後…。
それは姿を現した。
「なにこれ…『ご入会ありがとうございます』…?」
「こっ、これはその……もも、貰ったパソコンだから!さっ、最初からこういうのが出てて…ッツ!!//」
「カイジくん…。」
「ぅっ……あの…その…you……オレ…。」
カイジが慌てて言い訳した理由としては、画面に何やら如何わしい画像と強迫まがいのメッセージが表示されたから。
所謂、詐欺…。
架空請求画面という類のものである。
今更恥ずかしがってもどうにもならないのだが、他でもないyouに見られた事が痛かったカイジ。
目を合わせる事ができなくて、眉を八の字にしてその場に俯いて言葉を詰まらせる…。
それに対して、当のyou本人はというと…。
「ここに振り込んだりしてない?!」
「へっ?!」
「メールを返したり、電話で確認したりしてないっ?!」
「い、いや…し、してねぇケド……(そもそも払える金ねぇし…。)」
「本当?」
「う、うん。」
「本当にホント?!絶対?!」
「あ、ああ・・・。」
両肩をがしっと掴まれ、顔を近付けられたかと思えば
随分と深刻な顔をしてyouはカイジに架空請求の画面の連絡先に問い合わせなどをしていないか聞いてきた。
否、と答えれば、ほっと安堵の息を吐いて両肩に込められた力が緩んでいった…。
「よかったぁ……。」
「ふえ…。」
「ごめんね、失礼だけどカイジくんって、こういうの、騙されるタイプなんじゃないかって思って…。」
「う…(確かに、金があったら出してたかも…。)」
「余計なお世話だったよね。」
「い、いや…心配してくれて嬉しいよ、ウン…。」
ハハ、と…軽く苦笑しながら指でぽりぽりと頬を掻くカイジ…。
「そっか」と、いつもの笑みを浮かべたyouによく分からない安心感を覚えたのも束の間。
はた…と、カイジはある事に気付く…。
「(ていうか、この画面が架空請求だって…何でyouが知ってんだ?)」
「引っかかる人多いんだろーなぁ、こういうの。」
「(ま、まさかyouも経験者?!そ、そんなまさか、youに限って…///)」
「カイジくん、この画面いつから出てるの?」
「(いや、でもそういうちょっとエッチなyouもオレはアリだと…って何考えてんだ!!馬鹿かオレはッツ!!///)」
「…カイジくん?」
「(つーかそもそもこの画面ってyouが福本荘来る前からだよな、youが来てからエロ動画とか見てねェし。)」
「ねぇ、カイジくんってば!」
「うわぁ!ゴメンナサイッツ!!///」
「い、いや別に怒ってるわけじゃ…。」
「え?」
都合のいい思考を張り巡らせている中、急に響いたyouの大きな呼び掛けに驚き
飛び退いたカイジだったが、逆に彼女が驚いたような顔をしている。
次の瞬間には目を点にしてyouを見つめるカイジに、youは再度問いかけを行った。
「いや、この画面っていつから出てるの?って。」
「えっと……youが福本荘来る前、かな…?」
「え!それってかなり前だよね?!」
「あ、ああ……何か問題なのか?いや、こんなの出てくる時点で問題だけどよ…。」
「うーん、それだけ時間が経ってたら復元で消すのは難しいなぁ。」
「え、この画面消せんの?!」
「うん…いくつか方法はあるけどね…一番手っ取り早いのがシステムの復元ね。」
「あー…何か、パソコンを過去の状態に戻せるアレ?」
「そう、でも戻せる期間は精々数ヶ月前までだから……復元ポイントが残って無いと思うの。」
「そっか……まぁ、どうせ初期化しないと動きも悪いしな。」
「それならいいんだけど……あとはフリーの削除ツールをダウンロードして消すか。」
「何だそれ…よく分からんけど面倒臭そうだな……やめようぜ。」
「でも初期化の方が面倒よ?」
「マジか。」
「マジ。」
「どうする?」
「どうするっても……放置?別にこっちから連絡しない限り請求とか来ねェんだろ?」
「それはそうなんだけど…。」
妙な画面が消える事を知り、驚きと喜びを顕にしたカイジだったが
今の状況では少し面倒な作業をしなければ解決が難しいと知り、自堕落モードが発動した。
画面を消すのに労力が要ることが面倒だと言う。
要するに、自分の身にその請求書が送られてこない限り重い腰を上げるつもりが無いらしい。
「でも、何となくイヤじゃない?こんな画面がいつも出るの。」
「そりゃイヤだけど……。」
「カイジくんの彼女が見たら嫌な顔しちゃうよ、きっとー。」
「バッ!//か、彼女とか、いねェから!!//」
「そうなの?」
「そうだよ……欲しいけど…//」
「そっか、じゃぁ、尚の事直しておこうよ、ツール使ってさ!」
「(その彼女にしたい女からパソコン直してもらうオレってどうなの……。)」
「ね?」
「じゃぁ、その削除なんたらって…you、出来るのか?」
「うん、大丈夫。」
ニコリと笑みを浮かべ、youは自信満々にカイジの依頼を請け負った。
*。゜.*。゜.*。゜.*
数分後…。
「はい、削除完了!」
「ふぇー……スゲーなぁ。」
ダウンロードした削除ツールは、無料のソフトにも関わらず随分と有能で
あっという間に架空請求が根付く根源を見つけ出し、カイジのパソコンを修復するに至った。
シャットダウンし、ノートパソコンをパタンと閉じたyou。
そんな折、カイジの脳裏にふわり、浮かんだのは先程の疑問。
どうせなら…という勢いで、思い切って(しかし限りなく、さりげなさを前面に押し出して)尋ねてみた。
「つーかさ……何でそんな詳しいんだ?」
「ん?」
「こういう画面の対処法。」
「えっ?//」
「もしかして……youもエッチなサイト見ちゃったり…?」
「しませんっ!//」
「本当かなぁ~?ん?ん?お兄さんに正直に話しなさい!」
「本当に!そんなことない!//」
「本当の本当にぃ~?怪しいなぁ~…?」
「かっ、カイジくん!//」
「ククっ、ウソウソ、冗談だよ!顔真っ赤にしちゃって…可愛いなぁ!」
「う~~っ!!//」
顔を赤くして縮こまるyouが可愛くて、カイジは堪らずその頭をわしわしと撫でる。
「もう!//」と、僅かにくしゃくしゃになった髪を整えるyouにカイジは更に問うた。
「で、本当のところは?」
「本当はっていうか……身近な人に同じ症状の人が多くて…。」
「ドウイウコト?」
複雑な表情でそう問えば、随分と身近な人名が連なって上がる事となった。
「最初は大家の遠藤さんが……。」
「・・・え、本当に身近。」
「遠藤さんの時に、ネットで検索したら「復元すれば直る」ってあったから、それで解決したり…。」
「・・・。」
「南郷さんとか、安岡さんとか…アカギさんの家に来てた知り合いのおじさん方のも同じように直したり、直らなくて、さっきみたいに削除ツールを使うことを覚えたり…。」
「えー……何それ技術上がってるじゃん。」
「そうなのよ……皆恥ずかしそうにする割には手立てが無くてわたしに聞いてくるんだもん。」
「(正に今のオレじゃねェか……その姿、目に浮かぶぜ…。)」
「わたし、女の子なのに…失礼しちゃうよね。」
「ち……ちなみにアカギは…?」
「アカギさん?アカギさんはパソコン持ってないもの。」
「ああ、成程……(チッ…)」
「そういう理由で、気付けば解決できるようになったワケです。」
「よぉ~っく分かりました。」
顔を下に向けて、力強くそう言葉を放ったカイジ…。
あまりいい理由ではないため、深く追求してしまった申し訳なさも相俟っての事だった。
youもその意を汲み取ったようで、逆にカイジを責めるようなことはせず…。
ふぅ、と軽く息を吐き、顔を上げさせるため、彼の名を呼ぶ。
「そういうことだけど……でも、カイジくん。」
「んぁ?」
「直るって分かったからって……あんまり復元しないようにね、あんまりパソコンに優しい作業じゃないんだから。」
「そうなのか……って、しねェよ!つーかもう見ねェよ!!//」
「はいはい。」
「…ッツ……そもそもyouが福本荘に来てからはそんなの見てないっつの!!//」
「・・・え?」
「・・・え?」
ある意味でサラリと爆弾発言をかましたカイジ。
御互いに目を合わせ、何度かぱちぱちと瞬きをした後
何とも言えない羞恥心が体中を駆け巡り、2人して顔を真っ赤に染め上げた。
「い、いいいいや!違う!そそそそういう意味じゃなくて!!//」
「・・・・//」
「本当に違うんだって!youの事そういう目で見てたワケじゃなくて!(いや見てる時も現在進行形でありますけど!!///)」
「っ……//」
「そういうの、見る時間が惜しいくらいyouと一緒にいるのが楽しいって意味で!//」
「ふっ、…わ?//」
「あっ……いや、その……うん……まぁ…つまり、そういう…//」
「カイジくん…。」
「そういう、コト…だよ//」
「わたし……も、楽しいよ。」
「え…!//」
咄嗟に入れたフォローだったが、思った以上にカイジ自身、いい言葉を選んだと思った。
するとどうだろう、youも満更でもない返事を返してくるので、益々カイジの体温は上昇していく…。
「カイジくんと一緒にいると楽しい。」
「…you…っ…!//」
「福本荘の皆と一緒にいると本当に凄くたのしいっ!」
「あぁ、うん………そうだな。」
やっぱり、そうなるのね。
と、一瞬で熱が引くカイジであった。
「カイジくん…?」
「いや、何かもう…何、この一人相撲大会みたいな。」
「??」
「あーいや、うん……いいんだ、オレが勝手に勘違いしてただけ。」
「うん?」
「でもさ……オレのは、本当だから。」
「え?」
「色々いるけど……誰よりもさ、オレはyouと一緒にいる時が楽しい。」
「あ……ありがとう……//」
「おっ、ちょっと赤くなった?」
「だ、だってなんか……照れます…//」
「へへ……ま、今日はこのくらいで我慢すっか。」
「・・・ぅ?//」
それはアカギや零への強い対抗意識でもあり、
さり気無い美心への興味の低さを示唆する台詞。
少しでも届いてくれればいいな、と…。
カイジはこの日一番の笑顔をyouに向けるのだった…。
オレも負けてらんねェからな!
(そういやさ…youは平気なの?こういう映像とか本とかを男が見てるっての…。)
(うーん……男だからしょうがないって、今は思うかな。)
(ヘェ、結構寛大なんだな…。)
(いや、ていうか……この画面の対処をする度におじさん達からそう呪詛のように言われ続けたから…。)
(どんだけ件数こなしたの、キミ。)
(ふ……ふふ…結構な数とだけ…はは…。)
(相当数なんだな。)
(あっ、でも若い人はカイジくんが初めてだよ!)
(あっはっは!何それ、超不名誉!!)
*。゜.*。゜.*。゜.*