賜物作品
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相互リンク記念作品
『6.t』
あつみさまより
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それは悪戯にかどわかす
「今日、泊まっていいか?」
自分の耳を疑ってしまう要因を作ったのは、今し方妙なことを口走った目の前の男である。
表情一つ変えずに私を見下ろし、こちらの返答をじっと待っている。
この男、風来坊のように場所を転々とする赤木しげるに、家と言える、またそれに該当するような場所がないということは知っていたのだが、だからと言って突然寝床を共有させて欲しいと異性に言われて驚かないほうが無理という話である。
しかしこの男に振り回されるのは癪であるわけで、別段うろたえた様子を見せずに気丈に振舞ってみてしまう。
そんな自分の心情をこの男がどれだけ見抜いているのだろうかというよくわからない心配をしてしまっている時点で、私はひどく混乱しているわけなのだが。
「この辺に泊めてくれる知り合いくらいいるでしょ?」
「いない」
「嘘。……あ、赤木さんなら泊まっていいよって女の人、……いるはずだよ」
自分で言った言葉に悔しくなって死んでしまいそうになる。
知ってるよ、赤木さんのこと好きな女性、結構いるもんね。自分だってその一人だというのに。
思わずおもしろくなさそうに顔を歪めてしまった。
子供じみた嫉妬なのはわかっているのだが、こればかりはどうしようもないのである。
自分を選んでもらった喜びよりも、疑って自分よりも“イイ人”の存在を探ろうとしてしまう。
「youは違うのか?」
「え?」
「俺の為に、俺ならいいって、そう思わない?」
すっ、と顔が近づいてきて、視界いっぱいに広がる赤木しげるの顔。
もう少しで唇と唇がくっついてしまいそうなほどの距離に、どぎまぎしてしまう。
自然と頭は後退して距離をとろうとするのだが、すぐさま頭をガシッと掴まれて、その目が強く語っていく。
逃げたいか? 俺から、逃げてしまいたいか? そんなことは許さないとばかりに距離が縮まっていくのだから、
もう、もう駄目だ、これは奪われてしまう! 唇を奪われてしまう!
動揺を隠すこともできなくなっている私は、赤くなった顔のままで、覚悟を決めたかのように目をぎゅうっと瞑って事が終わるのを待つだけなのである。
「you……」
「――っ!」
甘い声色で名前を呼ばれ、くるっ! と強張らせた瞬間、耳元にふーっと息を吹きかけられて強張った体が敏感に反応する。
一瞬、何をされたかわからなかったのだが、衝撃を受けた耳を押さえて目をパチクリとさせてしまえば、映るは心底楽しそうに笑う、その男だ。
「ククッ、キスされると思っただろ」
「おおお思ってないよ! 全然全く微塵も思わなかったよ!」
「嘘吐け。そんな赤い顔で説得力があるか」
「あああ赤木さんのせいでしょ―!」
「嫉妬なんてするからだ。可愛いことすんじゃねぇ」
穏やかな笑顔が向けられて、酔ったように頭がグラグラとよろめいてしまったような気さえする。
反則だ、そんな笑顔は、ズルすぎる。
少しの間をあけて、私を見つめる男の口がゆっくりと動く。
いいか、よく聞け、そう続く言葉に赤い顔を隠すことすら忘れて素直に耳を傾ければ、聞こえた言葉に生唾を飲みこむことになるのだ。
どう思ったところでやはり期待しているのである。一晩を共に過ごす相手として自分が選ばれてしまった故に。
「好きだよ、you」
「ズルい、そんなのズルい」
赤さの増した顔の意味を否定する術がわからない私には、男から顔を背けることでしか反抗できない。
見えなくてもわかってしまうのは、私の反応に再び口元に笑みを浮かべているだろう、その男の表情くらいだ。
「それで、今日俺はどこに泊まればいい?」
「ウチにくればいいでしょ……! 最低! 女タラシ! スケベ!」
「いい子だ」
クククッ、と嫌味に聞こえる笑い声をのせて、私の頭を優しく撫でる男が憎い。
そんなに私を可愛く思うならずっと一緒にいてくれてもいいじゃない、そう、小さな小さな声で呟いてみる。
たぶん、聞こえなかったと思う。そう思うのだが、それ以前に言わなければ良かったと後悔する自分もいるのだ。
男を見つめればやはりこちらの言葉は聞き取っていなかったようで、端整な顔を崩すことなく涼しそうにしている。
私はこんなに赤面したりあたふたしたりと忙しないのに、本当にズルい人だ、そう思ってしまう。
「それは俺に理性をなくせってことか?」
ああそんな! 聞かれていた! 驚いて思わず俯き加減だった顔を激しくあげてしまったわけだが、ニヤニヤした赤木しげるの顔に今度は顔から血の気が引いていくのがわかる。
「可愛くて可愛くて、どこかに閉じ込めて死ぬまで激しく可愛がりたい」
「アアア、アブノーマル……!!」
「できるもんなら、とっくにやってるさ」
「あ、あの、やっぱり今夜は他所に泊まって……」
「ダーメ」
一際優しげな笑顔を向けられて何も言えなくなった私は、それは性質の悪い冗談に違いないと、そう思うことで身の危険を回避したつもりでいたいわけで。
そうは言っても、赤木しげるが言ったというだけで、それが冗談に聞こえないのだから恐いものなのである。
あつみさまへ
『6.t』(現『祈れ呪うな』)
相互ありがとうございました
ずっと、ずっと大好きです。
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