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相互リンク記念作品
『妄想-utopia-』
愛姫さまより
*。゜.*。゜.*。゜.*
あぁぁ…
今日バイトでミスっちゃった…
お客さんにお鍋ぶちまけちゃったの…。
しかも悪酔いしてるお客さんにやらかしちゃって、クリーニング代取られるしゴハン代も払わないで帰っちゃったし…
ぜんぶ私の責任。
でも、損してない。
損したのはお店の方。
申し訳なさすぎて、涙が止まらなくてずっと謝ったんだけど…まだ責任感じてる。
店長も優しいから怒ってないんだけどさ…
…凹むよね…
一心同体
リンリン…
おうちに帰ってきて30分、ずっと落ち込んでいた時。
電話が鳴った。
『…誰よぉ…』
半泣きでぐじぐじした顔を擦り、声を正す。
『…もしもし…』
『よう、youか?』
相手は、私の彼氏。
かなり危険なお仕事してる人。
気まぐれで、命を顧みないギャンブルバカ。
でも大好き。
なんか大好き。
だから付き合ってる。
『…なんだ、しげるか。この家には私以外誰もいません。文句ある?』
『なんだよ、それが愛する男からかかってきた電話の対応か?』
今日の彼は機嫌がいいらしい。
ものすごく楽しそうに話してる。
…そういえば、今日はお世話になってる組の人とお食事会だって言ってたなぁ…
酒か。
酒が入って、気分がいいのか。
みんな知らないけど、アイツはお酒が入るとかなり変わる。
鬼畜になったり、甘えてきたり。
今日は…どんな事になってんだろう…
ま、一般人には迷惑かけない体質だろうから、そこら辺は心配してないけど。
『…で、何の用?』
『用がなきゃ電話しちゃいけねぇのか?』
『質問を質問で返さないで。用がないなら切るから』
こう見えても私は落ち込んでるの。
もうしばらく一人でいたい。
早く切って、落ち込むとこまで落ち込みたい。
じゃないと這い上がれないから。
『あと5分で着く。布団出しとけ。あと、2人分のバスタオルもだ。湯船に湯を張るのも忘れるな。オレが行くまで入んなよ』
ガチャン。
『………』
相変わらず自分勝手な奴。
有無も言わさず切るなんて…
…まぁいいか…。
彼氏といるのは苦じゃない。
落ち込むのは、アイツが寝てからにでもするか。
『…仕方ないなぁ…』
しげる用のお布団を出してやろうと、押し入れを開けた。
『you-開けろ-』
ノックと共に聞こえたしげるのバカ声。
『はいはい、ちょっと待って』
気の利くことに、奴にお茶漬けを作ってあげてた。
お酒のあと、絶対食べたがるんだから。
私、なんていい女。
『you-』
『待ってってば。鍵開けてんだから』
鍵を開き、ドアを開けたと共に雪崩れ込んできた奴のデカイ身体…
『you-…元気か?』
私にもたれかかるように抱きついてきたのを見て、察する。
今日は、甘えてくる日だ。
…ったく、毎回扱い変えなきゃいけないから面倒なのよね。
『はいはい、元気よ』
頭をポンポンと撫でてやると、首筋に軽い口付けをいくつもしてきた。
…そうだ…
コイツ…酔うとキス魔になるんだった…
『…んっ…』
私の感じるところを覚えてるらしく、酔ってるのに無意識に責めてくる。
…変な声…出ちゃうじゃん…
出したら出したで、後の処理が面倒。
朝までコースを何度味わわされたことか…。
声を必死で殺してる私の横で、アホみたいな事を口走ってる赤木しげる。
『you-…オレの女…オレの嫁…オレの姫…』
『アンタ、どんだけ飲んだのよ。かなりキテるわね』
『なんだ、冷てぇな。それが旦那に対する言いぐさか?』
『旦那じゃないでしょ。いいから、さっさと入って。寒いし』
未だにひっつく重いしげるを引きずりながら、私は部屋に入った。
『おっ、美味そうな匂い』
『アンタの為に作ってやったのよ。感謝しなさい』
テーブルの上にあるお茶漬けセットを見るなり、彼は私から離れた。
わぁい、という声が聞こえてきそうなくらい軽快な足取りで歩を進める。
すぐさま席に着き、私を上目使いでじぃっと見つめ、黙って待ってる。
『今準備するから、いい子に待ってなさい』
『ふふっ…お前が作るの、美味いんだよな』
『作り手の心が美しいからよ』
『心…?そうか。お前、そんなにオレの事を愛してるのか』
『…違うし』
何やら勘違いじみた事を言いやがるしげるを無視し、私は台所に向かった。
『酒のあとは、やっぱりコレだな』
『オッサンみたいな事言わないでよ』
『ふふっ…いいだろ、別に』
さらさらとお茶漬けをかきこむしげる。
その姿を見るのは嫌いじゃない。
『……』
幸せそうに私の手料理を食べるしげるは愛しい。
なんだかんだ言って、コイツのこと、大好きなんだ。
『美味しい?』
『あぁ、もちろん』
あっという間に1杯食べ終わってしまった。
『ごちそうさま』
『もっと欲しい?』
『いや、これだけでいい。あんまり食べすぎると有り難みがなくなっちまう』
満足そうに微笑むしげるに胸が鳴る。
普段はこんな顔しないから。
酔ってる時だけ、コイツは特別。
*。゜.*。゜.*。゜.*
『さて、風呂に入るか』
『食べたばっかじゃん。具合悪くなるよ?それに、お酒入ってるのにお風呂に入るのは危険』
『いいんだよ。お前がいりゃ、死んでも葬式してくれるだろ?』
そう言って立ち上がり、私を見下ろした。
『早く来いよ』
一人でそそくさと風呂場に消え、私はため息をつく。
『…着替えも持っていかないで…。これ片付けなきゃいけないのに』
気まぐれ猫みたいなしげるの機嫌を損ねないために、私は急いで準備をした。
『なんだ、ぬるいな』
『熱すぎると死ぬんだってば』
『死んだっていいのに』
『死なれたら私が困るの』
『だよな。オレがいなきゃ生きていけないからな』
『違う。後処理が面倒なの』
しげるとお風呂に入るのは慣れてる。
お泊まりのときはいつも一緒だから。
意外と仲良しだって勘違いされるけど、これでも私は無理矢理付き合わされてる。
なんでお風呂までコイツと一緒なのよ。
…まぁ…いいけどっ。
『ほら、こっち来いよ』
私の都合なんてお構いなしに、湯船の中でしげるは自分の膝に私を置いた。
『…やっぱ風呂はいいな』
『そうね』
『お前がいるから、もっと気持ちいい』
『…何言ってんのよ。気持ち悪い』
『喜べよ。素直じゃねぇなぁ』
普段、滅多にそんな事言わないくせに、こういう時だけ言葉責め。
…ズルい奴。
後ろから私をぐっと抱きしめ、首筋に顔を埋めてきた。
『……』
…まぁ…私だって…
しげるといると安心する。
突っぱねて素直じゃないけど、彼が思ってる以上に私は彼を愛してる。
私を認めてくれるしげるは、尊敬するし大好き。
『…お前、太ったな』
…そう思った矢先にそんな事を言うな。
お腹のお肉を摘まみながらククっと笑うしげる…
…ムカつく。
『…黙れ。その肉が嫌いなら出てけ』
『誰も嫌いだなんて言ってねぇだろ?』
『……』
私が拗ねたのが楽しいらしく、しげるは抱きしめてる腕をより強くした。
からかわれて機嫌を悪くした私は、しげるなんて完全無視の体制で全身にまとわりつくお湯の感触をしばし楽しんた。
『…で、何があった?』
『……?』
突然口を開いたしげる。
その意味がよく分からない。
『…何言ってんの?』
顔を上げず、しげるは喋り続けた。
『今日、何かあったろ?どうした?どうせ仕事のミスだろうけど』
私を嘲け笑うような声を出し、一度緩めた腕にまた力を入れた。
『……』
…なんで…分かったんだろう…
落ち込んでるって言ってないのに。
言うつもりなかったのに。
隠すつもりだったのに…。
『…別に。何もないわよ。どうして?』
素っ気なく否定すると、しげるはまたふふっと笑った。
『目が腫れてる』
『…腫れてない』
『オレには分かる。お前が自分の顔を見てるより長く、オレはお前の顔を見てんだ』
『……』
確かに…ちょっと腫れてるかも。
でも、気付かれないと思ってた。
…しげるを甘く見てたな…。
コイツは、観察力に長けてるんだった。
『それになぁ、予感がしたんだ』
『予感?』
『あぁ。youが苦しんでるって予感だ』
『…』
『だから、途中で抜けてきた。美味い酒があったんだけどな』
嫌味を言い終えると、彼は無理矢理私を自分の方向に向かせた。
『お前プライド高いから、自分がミスしたことが許せねぇんだろ?』
『…なっ…何言って…』
『悔しいことやイヤなこと溜めこんでも、いいことなんて1つもねぇよ。せっかくオレがいるんだから、ぶちまけろ』
『……』
…突然…何言い出すのよ…
…ぜんぶ当たってるじゃん…
この時、しげるの顔を見れなかった。
絶対、優しく微笑んでるから。
そんな顔されたら、崩れる。
甘えちゃう。
甘えることは、自分が弱くなっていくこと。
自分がそうなることを、私は許さない。
そうやって生きてきた。
それ以外で生きることを、私は知らない。
『…you…?』
うつむいてる私の頬を撫で、甘い声で名前を呼んだ。
『…なんで…』
『…ん…?』
『…なんで…分かるの…?私のこと…』
『…分かるに決まってんだろ。恋人なんだから』
撫でてた手で私の顔を無理矢理上げて、真っ直ぐな視線を送るしげる…。
『…お前を救いたい。それだけだ。そう願うだけで、お前の事が何でも分かる』
その微笑みは、すんごく柔らかかった。
こんな笑顔…初めて見た…
胸の奥が熱くなる。
しげるに…また恋してしまったみたい…。
『いいか?オレとお前は、2人で1つ。一心同体だ』
『…一心…同体…?』
『それが"恋人"ってもんだろ?お前が苦しんでる時は、オレも苦しんでんだ。だから、お前を救う』
『…しげる…?』
いつもと違うしげるに戸惑う。
でもなんだか…心地よい…。
『…オレだけになら…甘えてもいいんだぜ…?』
『…うぅっ…』
なんか訳の分からないしげるの言葉を聞いてたら、涙が出てきた。
『しげるっ…』
いつも静かで、恋愛に興味がなさそうなしげる。
付き合ってて不安な時もあった。
そんなしげるが私を心配してくれてるのが嬉しい。
そして、誰かに甘えてもいいって言ってくれた。
私は…誰かにこう言われるのを待ってたのかもしれない…。
言ってくれたのは…しげる。
甘えてもいいのは…しげる。
しげるは…私の恋人なんだ…
この時、初めてしげるを"恋人"だと思った。
それまで、彼の気持ちが正直わからなかった。
恋愛感情に関係なく、ただ一緒に過ごして楽しんでるだけかと思った。
それでも、私が彼を愛しているだけで幸せだった。
でも、彼は私を想ってくれてる。
今のこの言葉を聞いてそれを感じた。
私たちは、ちゃんと心の通い合った恋人だったんだ。
私はしげるに抱きついて泣いた。
すると彼は、私の身体を優しく包んでくれた。
温かいお湯と、温かいしげるの身体。
彼の肌を感じながら更に密着させると、とてつもない安心感に襲われる。
『うぅっ…しげるっ…』
『そうだ、そうやって泣けばいいんだ』
抱きつく腕を強くすると、受け止める腕も強くしてくれる。
『…仕事でミスったんだろ?』
『…う…んっ…』
『たかがバイトなんだから、そんな事気にすんな』
『…だって…』
顔を上げると、長い指が涙を拭ってくれた。
『オレなんて、ミスりゃ命取られんだ。それに比べたら可愛いじゃねぇか』
励ましてんのか何なのか分からない言葉だけど、すごく心強い。
とりあえず私の味方してくれてるんだ。
『そうやって落ち込むのはお前の悪いところだ。プライドが高すぎて、責任感が強すぎる』
いつの間にか私の性質を知ってるしげるにちょっとビックリ。
意外と私の事、見てくれてるんだ。
興味あるんだね、私に。
『それはお前の才能も殺してるんだぜ?そんなことばっかり気にしてたら、可愛い笑顔が台無しだろ?』
『…笑顔…?』
『あぁ…』
濡れた手で私の頬をなぞり、照れた様子もなく言った。
『…お前の笑顔は…世界を平和にする』
『…バっ…バカなこと言わないでよっ…』
『ホントだぜ?周りは、お前の笑顔で幸せになってるはずだ。だから笑うことを忘れるな』
『……』
これは罠。
私を元気にするための騙し文句。
分かってる。
分かってるけど…
『……』
しげるの不思議なところは、口にした言葉がすべて真実に見えてしまうこと。
だから、すぐに騙されてしまう。
『…分かった…明日から笑う…』
『…よし…。前向きに強く生きるのがお前のいいところだ』
『…ぐすんっ…』
『その取り柄を活かせ。そして、もっとオレを惚れさせてくれ』
『…しげるを…?』
『あぁ…』
しげるの言うことがよく分からず、ずっと彼を見つめる。
『お前にもっと惚れたら…もっとお前の為に生きたくなるだろ?その分、youが苦しい時にすぐに気付ける』
『…しげる…そんな事考えてるの…?』
『ふふっ…youの事なんて、考えない時なんかない』
今まで、私の方がしげるを愛してるんだって考えてた。
でも違った。
しげるは、私以上に私の事を考えてくれて、愛してくれてる。
『…しげるっ…ありがとっ…』
『…この話はもうこれで終りだ。泣くなら今のうちに泣いとけ』
私を引き寄せ、広い肩に顔を押し付けた。
…しげるの匂い…
安心して心が緩むと、また静かに涙が溢れた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
お風呂から上がって、私たちはすぐに眠ることにした。
しげるは自分専用の布団に座ると、私を呼んだ。
『you、こっち来い』
『……』
黙ってしげるのところに行き、隣に座る。
『…なぁに?』
『用なんてねぇよ。隣にいてほしいだけだ』
私の手を取り、いつものしげるからは考えられない笑顔を見せた。
『…何よ、その顔』
なんか怪しい。
悪だくみでもしてるのかしら…?
『ふふっ…嬉しいんだ』
『…嬉しい…?』
『あぁ…』
うつ向いて、更に微笑みを浮かべた。
『…初めて泣き顔見たから…』
『…そうね…』
しげるの前で泣いた事なんてない。
弱い女だって思われたくないから。
しげるみたいな強い人は、強い女が好きなんだって考えてるから。
『やっとオレを頼ってくれて、弱さを見せてくれて嬉しいんだ。やっとオレの女になった気がして…』
上手く言えねぇなと笑い、照れた顔を見られないように私を抱きしめた。
『…不安だった…ずっと…』
『…何が?しげるも不安になることもあるの?』
『あるさ。お前が絡む事となると、いつも不安になる』
『…私…?』
髪を撫でる手付きがいつも以上に落ち着く。
きっと、しげるの気持ちにちょっとした変化があったのかもしれない。
『そうだ。いつになったらオレに心のすべてを見せてくれるのかって…そんな不安さ』
『…しげる…』
しげるを不安にさせてたなんて、知らなかった。
私ばっかり不安になってるものだとばかり思ってた。
『これでお前はもう苦しまない。オレがいつでも救ってやれるからな』
『…一心…同体…ってやつ…?』
『…そうだ。いつでもオレが守ってやる』
身体を離すと、軽いキスをしてくれた。
一瞬だけだったのに、温かい唇から今まで感じたことのないしげるの優しさを感じた。
『…愛してる』
『……』
一瞬で胸がいっぱいになった。
付き合って以来、こんな言葉言われたことなかった。
こんなに心からしげるを愛しいと思ったことはない。
『…しげるっ…』
今度は私から彼に抱きついた。
『…珍しいな。甘えてくるなんて』
『…いいのっ…』
普段の私からは考えられない行動に、彼は喜んでるようだった。
『…ありがと…』
『…ん…?』
『いつも側にいてくれて…ありがと…』
『ふふっ…こちらこそ、ありがとう』
私を抱いて後ろに倒れると、しげるは純粋な眼差しで私を見つめた。
『…たまには、一緒に寝るか?』
いつも私が嫌がるから、うちに来た時、しげるはかなり寂しそうに眠ってる。
今夜は、私を離したくないみたい。
自分が救った迷子は、ずっと保護したいんでしょ。
独占欲強い奴の考えることよね。
『…うん…』
『よし、入れ』
ま、私も満更でもないんだけどね。
今夜は、彼と触れ合っていたい。
私が布団の中に潜り込むのを確認すると、しげるは電気を消してくれた。
『変な気起こしたら、いつでも相手してやるからな』
『…バカっ。言っとくけど、私は相手しないから』
『はいはい。今日は我慢してやるよ』
私が隣にいることがそんなに嬉しいのか、彼は私を腕の中にすっぽり包みこんだ。
『…おやすみ』
『あぁ』
『……』
…意外と心地いいかも…。
今度から、一緒に寝てあげよう。
だって私たちは、2人で1つ。
少しでも離れちゃいけない存在なんだから。
愛姫さまへ
『妄想-utopia-』相互ありがとうございました。
ずっと、ずっと、大好きです。
*。゜.*。゜.*。゜.*
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