『無頼伝涯』 工藤涯
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「ねぇ、youは聞いた?」
「何を?」
「工藤君のこと…。」
「工藤くんが、どうかしたの??」
友人が小声でゴニョゴニョと詳細を話し、徐々に彼女の眼は見開いた…。
崖っぷちの男
[何かぁ、工藤君ホームレスっぽい生活してるらしいよ!]
「嘘ぉ?!」
[ちょっとyou、静かに!本人に聞こえちゃうでしょ!]
[う、うん…ごめ。]
[ウチの男子が何人か見たんだって、公園の水道で髪洗ったりしてるとこ!]
「そ、そんな……。」
驚きを隠せないyouに、ポンっと軽く肩を叩いて
彼女の友人は優しく声を掛けた。
「だから、you…工藤君のことは諦めて他の恋を……」
「何てワイルドなの!!」
「って、オイィイイッツ!!」
窓際に座って外を眺めている涯の背を、youは感嘆の台詞と共に
両手を絡ませて乙女のポーズでガン見する。
友人はもう諦めたのか、それ以上ツッコまずにyouに一言
「もう好きにしな」と告げて、自分の席に戻っていった。
これまでの会話でも分かるように(というか誰が見ても分かる)、
youの好きな人は工藤涯…その人。
当の涯本人は彼女の気持ちに気付いていないようだが、少なくともyouは随分前から想っている。
無口で無愛想という部分は彼女の中ではクールな一匹狼と脳内変換され、
ホームレス生活は彼女の中では見事に、サバイバル生活とみなされた。
人に倦厭される涯とは違い、youは普通の女の子だ。
寧ろ涯に嫉妬の目を向ける男も少なくないくらい……なのだが。
恋は盲目(いや、限度があるだろうと人は言う)…。
彼女はどうあってもこの恋を手放す気は無いようだ。
休み時間が終わって、皆が一斉に教室に戻ってきたので周囲がガヤガヤと煩くなる…。
youも自分の席である涯の隣にの席に座って、次の授業の準備を始めた。
教科書を出し、ノートと筆記用具を出し終えて涯に話しかける…。
「涯くん、涯くん……今日の放課後はすぐ帰宅?」
「あ?……まぁ。」
「一人?」
「あぁ。」
「一緒に帰ってもいい?」
「なんで。」
「何でって……ダメ…かな?」
「いいけど、別に……でもアンタ、友達は?」
「いつも一緒に帰る子は今日休み。」
「あ…そう。」
「一緒に、いい?」
「……あぁ。」
「ありがとう!」
嬉しそうに微笑んだ後、ちょうど先生が入ってきて授業が始まる。
それから帰りのホームルームが終わるまで、youは終始にやけた表情をしていた。
帰りの挨拶が済み、皆一様に鞄を持って教室から出て行く。
涯も帰る準備を済ませ、あとはyouが立ち上がるのを待つだけとなったのだが、
未だ座ったままでポーッと夢見心地そうなyouの肩を揺すった。
「おい…。」
「はッ!」
「帰るぞ。」
「何時の間にかHRが終わっている…。」
「寝てたのか……?」
「ううん、ちょっとアナザーワールドに旅立ってた。」
「寝るよか性質悪いな。」
席を後にし、歩き出した涯。
そしてそれを追いかけるyou。
夕暮れた運動場をバックにして並んで校門を出る…。
「涯くん、あのね、今日、涯くんの噂を聞いちゃった。」
「……。」
自分がホームレスに近しい生活をしていることが学校中の噂になっていることくらい、涯は勿論分かっていた。
「汚い」だの「貧乏」だの「不潔」だのと陰口を叩かれていることも、知っていた。
そんな中、始めは彼女が自分を誘う意味が分からなかった涯だったが
何となくの推測で導き出した答えを彼女に問うた…。
「お前……もしかしてクラスのヤツに聞いて来いって言われたのか?」
「は、何を?」
「本当にホームレス生活してるのかって。その真偽を。」
「え、やっぱり本当なの?」
「ククク……成る程、そういうことか……ご苦労なこった…。」
「がいくん?」
「本当だよ。寝床はあばら家、不衛生な風呂無し生活。これで満足か?」
「わー!本当だったんだ!?」
「分かったら、こんな損な役回り…もう引き受けんなよ…。」
「やっぱり涯くんて素敵!」
「はい?」
立ち止まって、三白眼なのが更に強調されるくらいに目を点にする涯。
youはというと、両頬に手を宛ててキャーキャー騒いでいる。
「あのね、もう……分かってると思うんだけどね…っていうか、クラスの皆知ってるし…。」
「……??!」
「私ね、涯くんのコトが好きなの。」
「………!?」
「迷惑じゃなかったら、これからも一緒に帰ったりしていいかなぁ……ていうかぶっちゃけ付き合ってほしいなぁ///」
「はぁあああッツ?!!///」
物凄いリアクションをしてyouを見る涯…。
どういう言葉を発していいか分からずにたじろいでいると、
youが涯の手をぎゅっと握ってきた。
その温かい温度と、柔らかな感触に途端に心拍数が上昇するのを感じ
涯の顔は真っ赤になる…。
「おまっ……なんっ?!///」
「あれは隣の席になった日のコト…。」
「(何か語りだした!!?)」
長くなりそうな予感はしたが、話を聞くことで彼女が自分を好きになった原因が分かるのかと思い
涯は黙ってyouの話を聞くことにした…。
「急に当てられた数学の問題、解けなくて困ってた私に答え教えてくれた涯くん…。」
「(そういえばそんなこともあったな…。)」
「それでちょっとキュンってなって、涯くんに視線がいくようになっちゃった。」
「(自分でキュンって言うのかよ…。)」
「勉強もできてスポーツも万能で素敵だな、って。」
「買被り過ぎだろ…。」
「それだけじゃなくて、私がドジしたりヘマしたりすると必ずフォローしてくれる……涯くんは優しい人。」
「それは何かにつけお前がよく失敗するからだろ。」
「でも、皆はそういうのフォローしたりしないよ、男子は特にウザったそうにするでしょ……ほら、平田くんとか…。」
「あぁ…アイツ。」
「女子はそうでもないけどね」と、一言付け加えてyouは涯を見た。
そんなわけで一通り涯に恋する理由を述べたyouはその返事を貰う為に会話を進めていく…。
「そういう理由かな、敢えて涯くんのことを好きな理由を言うなら…。」
「……止めとけ、オレなんかと一緒にいるとお前まで人格を否定されるぞ。」
「そうかなぁ?」
「それに、オレ自身が孤立したい…群れたくないんだ。」
「じゃぁ涯くんは私のコト、キライ?」
「…嫌い、ではないけど…。」
「じゃぁ好き?」
「あ、あのな……よく言うだろ、物事を全て好き嫌いで判別するのは良くないって…。」
照れた顔で一般論を語った涯だが、
それは逆に墓穴を掘ることとなった…。
なぜなら、次の彼女の質問は涯を崖っぷちに追い込むものだったから…。
「じゃぁ、涯くんは私のことは関わりたくないただのクラスメイトっていうこと?」
「か、関わりたくないとか…そこまでは言ってない。」
「じゃぁ、普通よりは好きってことだよね?」
「……まぁ、それなりに。」
「じゃぁ、本当に孤立したいとは思ってないってことじゃないの?」
「!!」
グサっと、涯の胸に刺さったyouのツッコミの矢。
暫し何も言い返せずに唖然としていると、youがオロオロし始めた…。
「あ、あの、が、涯くん??」
「そう…なのか……オレは孤立したいはずなのに、こ…。」
「こ?」
「こんなハズでは…ッツ!!」
ガクッとその場に膝をつき、涯は頭を抱えた…。
恐らくはyouが見つけた重箱の隅を突くような矛盾点に関してのことだろう…。
涯がそのままどうすべきかと悩んでいると、
youがそんな彼に一つの答えを見出した様子。
「あのさ、涯くん。」
「……。」
涯は恨めしそうに彼女を見上げ、また視線を地面に戻す。
そして、それに対してyouは涯と同じ目線になるべく
その場にしゃがみ込んで彼の両頬に手を添えて言った…。
「ツガイは群れじゃないと思うんだよね。」
「・・・。」
「2人って複数だけど、2人を1つの纏りと考えれば1つだよね。」
「・・・。」
「ツガイなら2人でも孤立は成り立つと思うんだよね。」
「・・・。」
「すき。」
「・・・///」
顔を上げればyouの笑った顔が目の前に咲いていて、
涯は軽く溜息を吐いた後、彼女の額を強く押した。
youは涯から手を離してバランスを取るが、不意打ちには対抗できず
已む無くその場に尻餅をついてしまった…。
「あいたた」と背後に手を伸ばして尾骨辺りを摩るyouに
スッと伸ばされたそれは涯の手…。
youが不思議そうな顔で見上げると、
そこには頬を赤くして困った表情を浮かべた涯…。
「そういう斬新な考え方、オレは嫌いじゃない。」
「じゃぁ、好き?」
「……かもな。」
「…!!///」
パァ…っと、そんな漫画のような効果音がピッタリの嬉しそうな顔で
youは涯に抱きついた。
「わっ…な、何す…!///」
「涯くん、これからよろしくねぇ!」
「ま、まだ好きだとは言ってない!///」
「じゃぁ嫌い?」
「結局強制的に同道巡りの二者択一じゃねーか!!」
そう叫んだ涯にyouはニッコリと…
でも少しだけ意地悪そうに笑った。
物好きな女もいたもんだ///
(ん?涯くん、何かニオうよ…)
(3日くらい風呂入ってないからな)
(えぇえ!)
(引いただろ、だからオレなんかと一緒にいるとお前まで変な目で見られ…)
(じゃぁ私の家に入りにおいで~)
(…youはよく変わってるって言われないか…)
(わ!涯くんが「you」って!///)
(人の話聞けよ…)
*。゜.*。゜.*。゜.*