『カイジ』 伊藤開司
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「どうぞ、上がって。」
youは、オズオズと不安そうな顔で玄関に留まるカイジの手を引いた。
「ぉ、おじゃましまーす…。」
優しい音は君に囁く
「ホントにいいのかよ…俺みたいなプーでニートな男を家にあげて…。」
「プーでニートでバカイジでも、貴方は私の好きなひと。よ?」
「ぇ……今一個増えなかった?」
「ん?気のせいじゃない?」
「………。」
カイジが押し黙って数歩。
部屋の扉の前でyouが立ち止まった。
「どーぞ。」
「な、何か……お、女の子の家とか部屋に入るのって…。」
「緊張する?」
「っていうか……実は初めてかも…?」
「そうなの?……っていうか何で疑問形?」
クスクスと笑いながら、扉を開きyouはカイジを中へ招き入れた。
「お、お邪魔します。」
「狭くてごめんね。」
「狭くないよ。」
「適当に座ってて、今お茶淹れるから。」
「おう……あ、いや、お構いなく。」
「あはは!どっち?!」
声のドモり具合からも焦りようからもカイジの緊張が見て取れた。
youはそんなカイジを可愛いと思い、一つ笑った後、部屋を出た。
そんな彼女の部屋に一人残されたカイジ。
とりあえず立ったままキョロキョロと部屋を見回す。
「さすがにベンツのエンブレムなんてのは無いよな。」
あるわけがない。
むしろそんなゴツイ代物とは無縁の可愛いぬいぐるみだとか
アクセサリだとかが飾ってあったり置いてあったり…。
シンプルで殺風景な自分の部屋とは違い、彩りに溢れた暖かい部屋。
「いいなぁこの部屋……youのにおいがする…。」
それは、愛しい彼女と同じ香りの空気に包まれていたい……
という本心から出たもの。
しかしやはり口にすると恥ずかしい台詞なのは確かなのであって、
呟いた後、気恥ずかしくなって顔が赤くなるのを感じた。
「ん……何だこれ。」
カイジの目にとまったのは長方形の木箱。
一見アクセサリケースにも見えるそれを手に取ってみる。
その時、扉の外からyouに扉を開けるようにお願いされたので、
カイジはそれを元の場所に戻し、部屋の扉を開いてやった。
「おまたせ。」
「おかえり。」
「カイジは珈琲でよかった?」
「うん、サンキュ。」
クロスの敷かれた小さなテーブルにカップを置いき、
持ってきたお菓子を一緒に並べた。
「いただきます!」
「うん、どうぞ。」
にっこりカイジに微笑んで、youも自分のカップに手を添えた。
それから暫く他愛もない会話を繰り広げ、カップの中身が空になりかけた頃…。
カイジが思い出したようにyouに尋ねた。
「あ、あのさ、you……あれ何?」
「ん、あれ?」
「あの木箱。」
「あぁ、これね。」
youは立ち上がって、カイジの指差した木箱を手に取った。
カイジの横に着席し、木箱の蓋を開けた。
「あぁ、それ、オルゴールだったんだな。」
「うん、シンプルでしょ。」
「だな。」
「オルゴールはね、木板の上に置くととっても綺麗に響くんだよ。」
「ヘェー、そりゃ初耳だな…。」
「実際に聞くといいよ。」
そう言ってyouは木箱を裏向きにし、オルゴールのネジを数回転させた。
パッと手を離すと、鈴を弾いたようなオルゴール独特の可愛らしい音が響く。
youはそれをフローリングの床にそっと置いた。
そこから響いた音は彼女の手の中にあった時よりも大きなものだった。
「すげ……こんなに違うんだ?」
「凄いでしょ。」
「凄い。」
感心して頷き、youを見た。
それから曲についての質問を投げかけてみた。
「この曲、よく聞いたことあるけど、何て曲?」
「『トロイメライ』だよ。」
「ふーん……そんな名前だったんだ。」
「子ども心を描いた、大人のための作品の一つなんだって。」
「どうりで…。」
「え?」
「どうりで何か甘えたくなるワケだ。」
「えー、何それ?」
カイジの突然の台詞にくすぐったそうに苦笑するyou。
するとカイジが前を向いたまま彼女の名前を呼んだ。
「you。」
「なぁにー?」
「………ひざまくら。して。」
「……いーよ。」
そう彼女が言うや否や、カイジの頭が膝に降りてきた。
youはカイジを受け止め、優しくその髪を撫でた。
数分間そうやっていると、カイジが呟くように告げた。
「…けてくみてぇ。」
「え?」
「溶けてくみたいだ……今まであった辛いこととか……苦しいこととか…。」
「………。」
「裏切り…孤独…絶望、痛み……血に…汗に…涙………。」
「カイジ…。」
「youと一緒にいると、全部溶けてくみてェ。」
ゴロン…と、仰向けになってyouの顔を見上げて笑った。
「ありがとな、俺……youにスゲー救われてる。」
「私、カイジに何も、できてないって思ってた。」
「そんなことないさ。」
「そっか……うれしいな。」
「you……。」
急にじっとyouの顔を覗きこみ、視線を合わせてくるカイジ。
いつになく真剣な眼差しに思いがけず赤面してしまうyou。
「な、なに?」
「あのさ……。」
「ん……?……きゃ!?」
少し顔を傾けた瞬間、カイジの両手がyouの顔を掴み
そのまま真下へ引き下ろされた。
鼻と鼻がくっついた状態でカイジが言う。
「キス、してい?」
「は……んっつ!?」
そのまま更に顔を引き寄せられ、有無を言わさず口付けられる。
一瞬で唇は離されたものの、今度はyouからカイジに口付けた。
「カイジ……傍にいてよね……置いてって…離れちゃ嫌だからね。」
「ハハ……youがいるから、どこにも行かねぇんだよ。」
ゆっくり顔を離したyouの頭を撫でて笑った。
その笑顔に少し安心したのか、youもちゃんと微笑み返した。
辺りを包む優しい空気と音楽。
その心地よさにカイジは眠気を覚え、youに提案をする。
「you、またお願いがあるんだけど。」
「今度は何?」
「んーとな、夜になるまでこのまま寝たい。」
「いいけど……それってつまり夜は寝ないって意味なのかしら?」
「バレた?」
「カーイージーさーん?」
「いいじゃん、今日の夜から早速…ずっと離れないでいてやれるんだぜ?繋がったまま。」
「下品。」
「いででででで!!」
ギューっと頬を抓られて少し涙目になるカイジ。
「you……?」
「………///」
それでも見上げたyouの顔が少し赤くて、満更嫌というわけでもないことを察知。
それならば…と目論見を胸に目を閉じ、彼女の膝の暖かさにまどろむことを決めたカイジなのであった。
きっとキミは大人な子ども。
(カイジ……カイジ、起きてぇ!)
(んーー……あと5分ん~…。)
(痛いんだって!足!痺れてるのぉ!!)
(んー……未来はボクりゃの手のなきゃ…。)
(んの……バカイジーーー!!!)
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