『天』 赤木しげる(壮年)
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「赤木さん、わたしに麻雀を教えてください!」
「え、イヤだ……面倒臭ェ。」
実に暇そうな神域の男は
畳の上で寝転がり
気怠そうにそう言った
serious gaze!
「ケチぃい!!」
「大体何で今更そんな……お前さん、今まで俺が教えようとしたって「興味無い」の一点張りだったじゃねェか…。」
「それはそうなんですけど…。」
「どういう風の吹き回しだ。」
「うう……だって……だって…。」
「・・・。」
いつもならば軽くあしらわれる時は悔しそうな顔をしたり、しょんぼりした顔を浮かべるのがyouという女性だった。
しかしながら、今に限っては断られたことに対し、どうにも悲しそうで、今にも泣きそうな顔でグッと堪え、
赤木を見ずに、ぎゅっと握った自分の拳を見つめている…。
今までにない、彼女の様子をじっと見つめ、アカギはハァっと小さく溜息を吐いた…。
「理由次第じゃ教えてやらねェ事もない……オレにちゃんと、正直に理由を説明できるか?」
「っ…赤木さん!できます!理由言えます!!」
「はい、じゃぁどうぞ。」
よいしょ…と、涅槃状態だった体を起こし、胡坐を掻いた状態でyouと向かい合う赤木。
「好きな人が できました!!」
「ハイ、却下ー。」
「早い早い早い!!」
youの理由を聞くや否や、麻雀を教えることを速攻で拒否する赤木。
負けじとツッコミを入れたyouに向かい、彼はビシッ!と指を差して言った…。
「お前は俺のモン!そんな理由許すわけない!だから麻雀教えない!分かったら頷く!ホレ!」
「どういう理屈ですか!」
「理屈もクソもねェ!真理だ!」
「そもそもわたし赤木さんとお付き合いしてないですよね?!」
「あーー聞こえねェーー!!」
「子どもか!!」
youは「聞き入れない」と両手で耳を塞ぐ赤木の両肩を掴み、グラグラと揺さぶる。
「麻雀してることは知ってたんですけど!凄く強いっていうのも聞いてたんですけど!つい最近その人が実際打ってるところを偶々見掛ける機会があって!」
「あーーー…聞こえないーー。」
「普段も勿論カッコいいんですけど、卓って言うんですか?椅子に座って構えてる姿がすっごく綺麗で!」
「いいいーーー。」
「普段は朗らかで穏やかなのに、勝負してる時はすっごい熱い視線で麻雀打ってて!!」
「あー、腹減った腹減った。」
「だからわたしも麻雀覚えたら、そんな真剣な眼差しを向けてもらえるのかなって思って!!思って!!」
「・・・。」
自分で言って、その時のその人物の姿を思い出したのか、youは赤木を揺さぶることを止め、
キャァァ!と、両頬に手を添えて乙女モード発動…。
普段とは別人のようにテンションの高い彼女の様子に、思わず目が点になる赤木…。
「おいおい……ソイツぁ……そんなにイイ男なのかよ…?」
「はいっ!正に惚れ直したってヤツです……今までも勿論好きでしたけど、今までどうしてそんな別方面の魅力に気付かなかったんだわたし…ッ!って感じです。」
「念のために尋ねるが……それは俺の知ってる男か?」
「そうですね…知ってますね。」
「ひろか?」
「違いますね…。」
「じゃ…健?」
「違いますよ。」
「当てに行くぞ?沢田だろ!」
「素敵ですよね!うーん、ちょっと違う。」
「原田…はねェわな、アレが普段、朗らかで穏やかだったら気色悪くて吐いちまう…。」
「わたし、あまり交友ありませんが、原田さんに失礼ですよ。」
「じゃぁ誰だ!」
「もう……本当に分からないんですか?」
「おいおい、まさかだろ…。」
「もう、やっとですか?」
恐らく彼女の(赤木的判断の)ストライクゾーンであろう多数の知人の名前を挙げていくが該当者未だ出ず…。
そんな中、一番身近で、一番彼女の形容する相手として合致する人物の名前を出していない事に気づいた赤木。
ゴクリと一度生唾を飲み、残念な生き物を見る眼差しでyouを見つめ、言った…。
「まさか…天だったなんて……youは一夫多妻制なんて認可できない純粋な女だと思ってたのに…。」
「冗談でしょ?!」
「だって麻雀してんだろ?」
「はい。」
「凄く強いんだろ?」
「らしいです。」
「普段は朗らかで穏やかなのに、勝負してる時は熱い視線で麻雀打つんだろ?」
「はい…っ!」
「天じゃねェか…!」
「天じゃねェです!!」
直後、youはコホンと咳ばらいをして「失礼しました、天「さん」じゃないです」と敬称を略したことを人知れず詫びた。
そうやって、天貴史という主人公気質の男性は魅力的ではあるものの、自分の好きな相手ではないと伝えたyou…。
しかし、彼女の否定の言葉は右から左へ流したのか、尚も残念そうな眼差しで赤木は彼女の手を握り、説得を試みてきた。
「youよぉ、天だけは後生だから……既に嫁2人いるし。ヤツ自身は何人増えたって構わねェだろうが、俺がショックで寝込む…。」
「違うって言ってるのに…。」
「せめて…せめて、ひろにしておけ…な?独身どころか童貞かもしれんが…。」
「「な?」じゃないです……しかも何気に失礼な事を…赤木さんにそんな事言われてるって知ったらひろゆきくんがショックで寝込んじゃいますよ?!」
「なぁ、you……。」
「はい?」
「お前、そんなに……そんなにその男に惚れちまってんのか?」
「・・・はい。」
天やひろゆきを雑にイジった後、とうとう観念したかのように、
再び正面から彼女と向かい合うように座った赤木…。
youも、やっと話が先に進む…と、彼の目を真摯に見つめ返した。
「俺が麻雀打つところは、そんなに様になってたか?」
「はい…っ、え…?」
「飯作ったり、買い物行ったりよ……アンタがオレに良くしてくれるから、居候してるうちに慣れちまってたかな。」
「赤木、さ…ん?」
「身体なんか重ねなくても、愛しいって……うお、何だ照れるなおい……けど言わなきゃな。」
「あの…。」
「アンタのことが好きだ、you。」
「!!」
「今更なんだが……オレの女になってくれねェか?」
「あかぎさ……。」
「麻雀なんかイチイチ覚えなくても、お前がが望めばいつだって本気の目で向き合ってやる。」
「どうして…?」
「おいおい、寧ろこれで違う、オレじゃないなんて言われたら……飛散するぞ。」
「飛散するの?!」
「まぁ、それは冗談として………結局、本当のところはどうなんだ?」
お前の惚れた相手は、この「赤木しげる」で合っているのか?と、彼は尋ねる。
言われてみれば、この赤木しげるという男…。
森羅万象の物事を一瞬見聞きする程度で見透かしてしまうのではないかというほどの推察力を持ち得ていると、youは普段から認識している。
よくよく考えれば、ほぼほぼ毎日傍にいて、彼が自分の動向や変化に気付かないわけなどないのだ…。
ということは、今までのの問答など全てが茶番なワケで…。
最初から最後までずっと分かった上でからかわれ、誘導尋問されてたに等しかったとようやっと気付いた瞬間、
youは恥ずかしさと悔しさを覚えたものの、そういう感情をぐっと飲み込み、こうなればヤケだとばかりに赤木に問いかけをする。
「あの…赤木さん…。」
「ん?なんだ?」
「さっきのあれ……本当ですか?」
「アレってなんだ。」
「その…「麻雀なんかイチイチ覚えなくても…」って…。」
「勿論、本当だ。」
「っ……。」
「寧ろ、麻雀打つ時より本気の目かもな。」
「そ、そんなことあります?!」
「ある。つーか、お前ェはどうなんだよ、you。」
「え?」
「オレに言う事とか、ないのかね。」
「あ…あります!」
「おう、じゃぁどうぞ。」
「わたし…赤木さんが好きです!以前から好きでしたけど……先日、実際麻雀を打ってるところを偶々見掛ける機会があって……その時の赤木さんが凄く素敵でっ!……素敵で…す、すてき、だったので…。」
「身を乗り出すくらいの勢いで言っといて、自分で照れんなよ…。」
「だって…普段は朗らかで穏やかなのに……あんなにカッコいいの……ずるい…。」
ワッと両手で赤い顔を覆い隠し、俯くyou…。
赤木はその様子に嬉しそうに口角を上げると、大きな手で彼女の垂れた頭をポンポンと撫でた。
「朗らかで穏やかなのは相手がお前さんだからだ。」
「そう、なの…?」
「そうだろ……敵意剥き出しのヤツには敵意向けるし、怒りぶつけられたら暴れんだろ、普通?」
「普通は暴れないと思う…。」
「オレは暴れんだよ。」
「今後は控えましょう、心配します。」
「む……けどまぁ、そういうこった。俺が丸っこくなってんのはyouの傍があったかくて心地良いからだ。」
「そういうのは……うれしい。」
「けどな、これからはもう…youに求めるのが傍にいてあったかくて心地良い場所だけじゃなくなっちまった。」
「え…。」
「だからこそ……お前さんの望むモノも手に入るって寸法だ。win-winってヤツだな。」
「???どういうことでしょう…?」
伏せていた顔をいつの間にか上げていたyouは、そのまま赤木にその真意を問う。
すると彼は徐に彼女を指さした。
「youは俺の女。」
「はぁ。」
「んで、お前の男は俺だ、いいな?」
「は、はい…。」
「つまり男女の関係になるってやつだ。」
そう言った後、あまり状況が飲み込めない様子のyouの両肩に手を置くと、
ゆるりとした動作で彼女の身体を畳の上に押し倒した…。
そうして仰向けになったyouの視界に天井を背景にした赤木が映り込んだところで、
やっと彼女は自分の置かれた状況を理解する…。
「えーーっと……あの、さっき「身体なんか重ねなくても、愛しいって」言って…。」
「そんなもん、いい年してお前のことが大事過ぎて手出せなかっただけだよ!!分かれ!悟れ!」
「!!」
「いつだって、お前を俺のモンにしたくて堪らなかったよ…。」
「赤木さん……その目…。」
「ああ、今正に、博奕以上に真剣かもな。」
「カッコいい…。」
「な、言っただろ…麻雀なんかイチイチ覚えなくてもいいんだって。」
「ん……でも、やってみたい……そのうち教えてくださいね。」
「どうすっかな……条件次第じゃ教えてやらねェ事もないが…。」
「もー……今度は何?」
「麻雀教える前に、youに俺のこと何もかも全部、教えたいんだが。」
「っ……!」
「いいか?」
「な……なるべく優しく教えてもらえれば……幸いです…。」
「なんだ、意外に甘え上手じゃねェか……じゃぁ、そうするかね。」
「クク…」と、愉快そうに喉を鳴らした赤木…。
眼下で、自分の視線だけで体温を上昇させ、思春期の少女のように顔を真っ赤に染めた恋人を見つめ、
まずは手始めに…と、赤木はゆっくりその唇を落とすのであった…。
そりゃお前・・・
好きな女を抱く時に
熱い眼差しにならないワケがないだろ
(こんにちは、youさん!赤木さんいますか?)
(あ、ひろゆきくん。こんにちは……赤木さんはいるけど、お昼寝中で…。)
(そう、ですか……どうしよっかな…。)
(良かったらお茶でも飲んで待つ?)
(え、いいんですか?)
(うん、どうぞ?)
(じゃぁ…お言葉に甘えて…お邪魔します。)
(どうぞー。)
(・・・わ、本当に寝てる。)
(あ、ひろゆきくん……あんまり寝てる赤木さんに近付かない方が…。)
(ンわぁああああ!!)
(遅かったか…。)
(んー……you……離れんじゃねェって……んー……あ…あぁ?)
(ああああ、赤木さ…おっ、おれです、ひろ、ひろゆきですっ!!youさんじゃなくて!!)
(あぁ?……何でyouが……童貞に…童貞という名のひろゆきに…。)
(赤木さんッ?!おれのことそんな風に思ってたんですか!!??辛い……ショックで寝込む…。)
((ほらやっぱり…。))
words from:yu-a
2023/09/26 R.I.P
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