第1章 Philosopher's Stone
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5 密やかな孵化と、深夜の塔
クリスマス休暇が明け、ホグワーツにハーマイオニーが戻ってくると、停滞していた「ニコラス・フラメル」の捜索は一気に進展した。
彼女が実家から持ち帰ったという巨大な古い本を大広間で広げたとき、4人はついにその名を見つけたのだ。
「これよ! ニコラス・フラメルは『賢者の石』の唯一の製造者なの!」
ハーマイオニーが興奮気味に囁く。
「賢者の石……って、どんな金属も純金に変えて、飲むと不老不死になる『命の水』を作る、あの伝説の?」
エリーが目を丸くして尋ねると、ハーマイオニーは力強く頷いた。
「そうよ。だからあの三つの頭の犬が守っているのは、その石に違いないわ。そしてスネイプはそれを盗もうとしてるのよ」
ハリーとロンも身を乗り出し、4人はようやく謎の核心にたどり着いた。しかし、その興奮も束の間、彼らはハグリッドの小屋でさらに奇妙な問題に直面することになる。
春の初めのある日、4人がハグリッドの小屋を訪れると、部屋の中は暖炉の火が激しく燃え上がり、サウナのように暑くなっていた。
「ハグリッド、これ何?」
エリーが真っ先に気づいた。暖炉の炎の真ん中、黒いケトルの下に、ラグビーボールほどもある真っ黒な大きな卵が置かれていたのだ。
「ああ、それか……。トランプで勝って、ある旅人から手に入れたんだ」
ハグリッドは大きな手で髭をいじりながら、嬉しそうに、けれど少しきまり悪そうに言った。
「それ、ドラゴンの卵じゃない! ハグリッド、イギリスでドラゴンを飼うのは法律で禁止されているわ!」
ハーマイオニーが鋭く指摘したが、魔法生物が大好きなエリーは、好奇心で目を輝かせながら卵に近づいた。
「すごい……本物を見るのは初めて。ハグリッド、これって『ノルウェー・リッジバック』の卵?」
「おお、エリーはよく知ってるな! その通りだ!」
ハグリッドとエリーが魔法生物の話題で盛り上がっていると、突然、卵の殻にピキッとひびが入った。
全員が息を呑んで見守る中、殻が中から激しくつつかれ、ついにトゲトゲした小さな生き物が姿を現した。それは、蝙蝠のような黒い羽と、長い鼻を持つ、トロールの子供のような外見の赤ん坊ドラゴンだった。
ハグリッドは「可愛いノーバートちゃん」と涙ぐみ、ドラゴンもハグリッドの手を甘噛みしている。
「可愛い……かなあ」とロンが引き気味に呟くと、すかさずエリーが「とっても可愛いわ!」と返した。
しかしその時、ハリーが窓の外に動く影を見つけた。
「誰かが覗いてる……! マルフォイだ!」
スリザリンのドラコ・マルフォイに秘密を知られたことは、致命的だった。
それからの数週間、ノーバートは恐ろしいスピードで成長した。ハグリッドの小屋のあちこちを焦がし、ついにロンの手を噛んで腫れ上がらせるに至って、4人はこれ以上隠し通すのは不可能だと判断した。
「ロンのお兄さんのチャーリーは、ルーマニアでドラゴンの研究をしてるんでしょう? 手紙を書いて、引き取ってもらおうよ」
エリーの提案により、チャーリーの友人たちが真夜中にホグワーツの一番高い天文の塔へ、ノーバートを極秘で引き取りに来てくれることになった。
そして作戦の決行日、土曜日の真夜中。
負傷したロンは医務室に入院中だったため、ハリー、エリー、ハーマイオニーの3人が動くことになった。ハリーの「透明マント」を3人で深く被り、ノーバートが入った重い木箱を抱えて、暗い城内を慎重に進む。
「……静かに。誰かいるわ」
ハーマイオニーが息を止めた。マントの隙間から覗くと、なんと廊下の先で、マクゴナガル教授がマルフォイの耳を引っ張って怒鳴りつけていた。
「真夜中に歩き回るとは何事ですか、ミスター・マルフォイ! 『ポッターがドラゴンを運んでいる』などという馬鹿げた嘘をついて! スリザリンは五十点減点、あなたには罰則を科します!」
マントの中で、エリーたちは顔を見合わせて、声を殺してクスクスと笑い合った。マルフォイはハリーたちを捕まえようとして、逆に夜間外出で見つかったのだ。
難所を切り抜けた3人は、ようやく天文の塔の最上階へとたどり着いた。冷たい夜風が吹きすさぶ中、エリーは木箱からノーバートをそっと撫でた。
「元気でね、ノーバート。ルーマニアでたくさんお友達を作るんだよ」
しばらくすると、夜空から4本の箒に乗ったチャーリーの友人たちが静かに舞い降りてきた。彼らはハリーたちに親切に微笑むと、ノーバートの木箱をしっかりと箒に固定し、再び夜の闇へと飛び去っていった。
「やったわ……! 成功よ!」
ハーマイオニーがホッとしたように笑い、ハリーも肩の荷が下りたように息を吐き出した。
「ありがとう、二人とも。これでハグリッドも助かるよ」
しかし、最大の油断は、目的を達成したその瞬間に訪れた。
ノーバートを無事に送り届けた解放感から、彼らは天文の塔の頂上に、大切な「透明マント」を置き忘れたまま階段を降りてしまったのだ。
暗い廊下の角を曲がったその瞬間、ランタンの灯りが3人の顔を容赦なく照らし出した。
「おや、おや、おや……。こんな夜更けに、グリフィンドールの迷子たちが3人もいるぞ」
暗闇から現れたのは、意地悪な笑みを浮かべた管理人のフィルチだった。
3人は瞬時に凍りついた。マントがない今、言い訳のしようもない。
フィルチに連れられてマクゴナガル教授の部屋へ向かう途中、ハリーはエリーの顔を見た。エリーは怖さに震えながらも、ハリーを責めるような目は一切せず、むしろハリーを安心させるように、その細い指先でハリーの制服の袖をぎゅっと握りしめていた。ハリーはその手の温もりに、酷く申し訳ない気持ちになった。
マクゴナガル教授の部屋には、なぜかネビル・ロングボトムも連行されていた。ハリーたちがマルフォイに捕まるのを阻止しようと、警告するために部屋を抜け出してきたらしい。
「本当に呆れました。あなたたち4人が、一晩に揃ってベッドを抜け出すなんて!」
マクゴナガル教授は、これまでに見たことがないほど激怒していた。
「アリス・ストウナー、あなたは比較的真面目な生徒だと思っていましたが、大変落胆しました。……一人につき五十点、計二百点、グリフィンドールから減点します!」
「ご、五十点!?」
ハリーもハーマイオニーも絶句した。二百点という数字は、グリフィンドールを現在の寮杯争いのトップから、一気に最下位へと叩き落とす破滅的な数字だった。
「さらに、4人には後日、罰則を受けてもらいます。今夜はもう寮に戻りなさい!」
談話室へ戻る道中、4人の間に言葉はなかった。ネビルはシクシクと泣いており、エリーがその背中をそっと撫でていた。ハーマイオニーも悔しさのあまり唇を噛み締めてうつむいていた。
翌朝、グリフィンドールの砂時計から大量のルビーが消え去っているのを見た他寮の生徒たち、そしてグリフィンドールの仲間たちからの視線は、冷酷そのものだった。
ハリーはどこへ行っても指をさされ、「あの点数を一晩で台無しにしたポッターだ」と罵られた。
「ハリー、気にしちゃダメだよ。みんな、本当の理由を知らないだけなんだから」
大広間の片隅で、エリーはハリーの隣に座り、彼のためにスープを取り分けてあげた。ハリーはエリーのその優しさが救いだったが、同時に、自分のせいでエリーまで周りから冷たい目を向けられていることが、何よりも耐え難かった。
「ごめん、エリー。僕のせいで、君まで巻き込んで……学校中から嫌われて……」
ハリーが消え入りそうな声で呟くと、エリーはスープのスプーンを置き、はっきりとした瞳でハリーの緑色の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「私は嫌われてなんかいないよ。ハリーやロン、ハーマイオニー、ハグリッドが私の味方でいてくれるもの。それにね、私は自分が正しいと思ったことをやったの。ノーバートを逃したことは、絶対に間違ってないわ」
エリーは人好きのする笑みを浮かべ、ハリーの肩をポンと叩いた。
「だから、うつむかないで、ハリー。私たちは4人で一人前なんだから」
エリーの言葉は、ハリーの傷ついた心に驚くほどの自信と、温かい力を与えてくれた。ハリーはメガネの奥の目を少し潤ませながら、エリーに向かってしっかりと頷いた。
「うん。……ありがとう、エリー」
隣で二人の間に流れる温かい空気を見ていたハーマイオニーは、そっとエリーの手を握りしめた。女の子同士の連帯感が、そこには確かにあった。
しかし、彼らに科された「罰則」の内容は、彼らの予想を遥かに超える、恐ろしいものだった。
ある夜、ハグリッドに連れられて向かった先は、夜の闇に沈む、あの立ち入り禁止の『禁じられた森』だったのだ。
クリスマス休暇が明け、ホグワーツにハーマイオニーが戻ってくると、停滞していた「ニコラス・フラメル」の捜索は一気に進展した。
彼女が実家から持ち帰ったという巨大な古い本を大広間で広げたとき、4人はついにその名を見つけたのだ。
「これよ! ニコラス・フラメルは『賢者の石』の唯一の製造者なの!」
ハーマイオニーが興奮気味に囁く。
「賢者の石……って、どんな金属も純金に変えて、飲むと不老不死になる『命の水』を作る、あの伝説の?」
エリーが目を丸くして尋ねると、ハーマイオニーは力強く頷いた。
「そうよ。だからあの三つの頭の犬が守っているのは、その石に違いないわ。そしてスネイプはそれを盗もうとしてるのよ」
ハリーとロンも身を乗り出し、4人はようやく謎の核心にたどり着いた。しかし、その興奮も束の間、彼らはハグリッドの小屋でさらに奇妙な問題に直面することになる。
春の初めのある日、4人がハグリッドの小屋を訪れると、部屋の中は暖炉の火が激しく燃え上がり、サウナのように暑くなっていた。
「ハグリッド、これ何?」
エリーが真っ先に気づいた。暖炉の炎の真ん中、黒いケトルの下に、ラグビーボールほどもある真っ黒な大きな卵が置かれていたのだ。
「ああ、それか……。トランプで勝って、ある旅人から手に入れたんだ」
ハグリッドは大きな手で髭をいじりながら、嬉しそうに、けれど少しきまり悪そうに言った。
「それ、ドラゴンの卵じゃない! ハグリッド、イギリスでドラゴンを飼うのは法律で禁止されているわ!」
ハーマイオニーが鋭く指摘したが、魔法生物が大好きなエリーは、好奇心で目を輝かせながら卵に近づいた。
「すごい……本物を見るのは初めて。ハグリッド、これって『ノルウェー・リッジバック』の卵?」
「おお、エリーはよく知ってるな! その通りだ!」
ハグリッドとエリーが魔法生物の話題で盛り上がっていると、突然、卵の殻にピキッとひびが入った。
全員が息を呑んで見守る中、殻が中から激しくつつかれ、ついにトゲトゲした小さな生き物が姿を現した。それは、蝙蝠のような黒い羽と、長い鼻を持つ、トロールの子供のような外見の赤ん坊ドラゴンだった。
ハグリッドは「可愛いノーバートちゃん」と涙ぐみ、ドラゴンもハグリッドの手を甘噛みしている。
「可愛い……かなあ」とロンが引き気味に呟くと、すかさずエリーが「とっても可愛いわ!」と返した。
しかしその時、ハリーが窓の外に動く影を見つけた。
「誰かが覗いてる……! マルフォイだ!」
スリザリンのドラコ・マルフォイに秘密を知られたことは、致命的だった。
それからの数週間、ノーバートは恐ろしいスピードで成長した。ハグリッドの小屋のあちこちを焦がし、ついにロンの手を噛んで腫れ上がらせるに至って、4人はこれ以上隠し通すのは不可能だと判断した。
「ロンのお兄さんのチャーリーは、ルーマニアでドラゴンの研究をしてるんでしょう? 手紙を書いて、引き取ってもらおうよ」
エリーの提案により、チャーリーの友人たちが真夜中にホグワーツの一番高い天文の塔へ、ノーバートを極秘で引き取りに来てくれることになった。
そして作戦の決行日、土曜日の真夜中。
負傷したロンは医務室に入院中だったため、ハリー、エリー、ハーマイオニーの3人が動くことになった。ハリーの「透明マント」を3人で深く被り、ノーバートが入った重い木箱を抱えて、暗い城内を慎重に進む。
「……静かに。誰かいるわ」
ハーマイオニーが息を止めた。マントの隙間から覗くと、なんと廊下の先で、マクゴナガル教授がマルフォイの耳を引っ張って怒鳴りつけていた。
「真夜中に歩き回るとは何事ですか、ミスター・マルフォイ! 『ポッターがドラゴンを運んでいる』などという馬鹿げた嘘をついて! スリザリンは五十点減点、あなたには罰則を科します!」
マントの中で、エリーたちは顔を見合わせて、声を殺してクスクスと笑い合った。マルフォイはハリーたちを捕まえようとして、逆に夜間外出で見つかったのだ。
難所を切り抜けた3人は、ようやく天文の塔の最上階へとたどり着いた。冷たい夜風が吹きすさぶ中、エリーは木箱からノーバートをそっと撫でた。
「元気でね、ノーバート。ルーマニアでたくさんお友達を作るんだよ」
しばらくすると、夜空から4本の箒に乗ったチャーリーの友人たちが静かに舞い降りてきた。彼らはハリーたちに親切に微笑むと、ノーバートの木箱をしっかりと箒に固定し、再び夜の闇へと飛び去っていった。
「やったわ……! 成功よ!」
ハーマイオニーがホッとしたように笑い、ハリーも肩の荷が下りたように息を吐き出した。
「ありがとう、二人とも。これでハグリッドも助かるよ」
しかし、最大の油断は、目的を達成したその瞬間に訪れた。
ノーバートを無事に送り届けた解放感から、彼らは天文の塔の頂上に、大切な「透明マント」を置き忘れたまま階段を降りてしまったのだ。
暗い廊下の角を曲がったその瞬間、ランタンの灯りが3人の顔を容赦なく照らし出した。
「おや、おや、おや……。こんな夜更けに、グリフィンドールの迷子たちが3人もいるぞ」
暗闇から現れたのは、意地悪な笑みを浮かべた管理人のフィルチだった。
3人は瞬時に凍りついた。マントがない今、言い訳のしようもない。
フィルチに連れられてマクゴナガル教授の部屋へ向かう途中、ハリーはエリーの顔を見た。エリーは怖さに震えながらも、ハリーを責めるような目は一切せず、むしろハリーを安心させるように、その細い指先でハリーの制服の袖をぎゅっと握りしめていた。ハリーはその手の温もりに、酷く申し訳ない気持ちになった。
マクゴナガル教授の部屋には、なぜかネビル・ロングボトムも連行されていた。ハリーたちがマルフォイに捕まるのを阻止しようと、警告するために部屋を抜け出してきたらしい。
「本当に呆れました。あなたたち4人が、一晩に揃ってベッドを抜け出すなんて!」
マクゴナガル教授は、これまでに見たことがないほど激怒していた。
「アリス・ストウナー、あなたは比較的真面目な生徒だと思っていましたが、大変落胆しました。……一人につき五十点、計二百点、グリフィンドールから減点します!」
「ご、五十点!?」
ハリーもハーマイオニーも絶句した。二百点という数字は、グリフィンドールを現在の寮杯争いのトップから、一気に最下位へと叩き落とす破滅的な数字だった。
「さらに、4人には後日、罰則を受けてもらいます。今夜はもう寮に戻りなさい!」
談話室へ戻る道中、4人の間に言葉はなかった。ネビルはシクシクと泣いており、エリーがその背中をそっと撫でていた。ハーマイオニーも悔しさのあまり唇を噛み締めてうつむいていた。
翌朝、グリフィンドールの砂時計から大量のルビーが消え去っているのを見た他寮の生徒たち、そしてグリフィンドールの仲間たちからの視線は、冷酷そのものだった。
ハリーはどこへ行っても指をさされ、「あの点数を一晩で台無しにしたポッターだ」と罵られた。
「ハリー、気にしちゃダメだよ。みんな、本当の理由を知らないだけなんだから」
大広間の片隅で、エリーはハリーの隣に座り、彼のためにスープを取り分けてあげた。ハリーはエリーのその優しさが救いだったが、同時に、自分のせいでエリーまで周りから冷たい目を向けられていることが、何よりも耐え難かった。
「ごめん、エリー。僕のせいで、君まで巻き込んで……学校中から嫌われて……」
ハリーが消え入りそうな声で呟くと、エリーはスープのスプーンを置き、はっきりとした瞳でハリーの緑色の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「私は嫌われてなんかいないよ。ハリーやロン、ハーマイオニー、ハグリッドが私の味方でいてくれるもの。それにね、私は自分が正しいと思ったことをやったの。ノーバートを逃したことは、絶対に間違ってないわ」
エリーは人好きのする笑みを浮かべ、ハリーの肩をポンと叩いた。
「だから、うつむかないで、ハリー。私たちは4人で一人前なんだから」
エリーの言葉は、ハリーの傷ついた心に驚くほどの自信と、温かい力を与えてくれた。ハリーはメガネの奥の目を少し潤ませながら、エリーに向かってしっかりと頷いた。
「うん。……ありがとう、エリー」
隣で二人の間に流れる温かい空気を見ていたハーマイオニーは、そっとエリーの手を握りしめた。女の子同士の連帯感が、そこには確かにあった。
しかし、彼らに科された「罰則」の内容は、彼らの予想を遥かに超える、恐ろしいものだった。
ある夜、ハグリッドに連れられて向かった先は、夜の闇に沈む、あの立ち入り禁止の『禁じられた森』だったのだ。