09
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「成実、くれぐれも政宗様の馬に美夜を乗せるんじゃねえぞ」
「分かってるって」
「乗せたら呪うから」
「眼がマジで怖いって!」
マジにもなるに決まってるじゃない! 大っ嫌いなジェットコースターの方がマシって思えるくらい政宗の操る馬は怖かったんだもん! もし乗ったのが食後直ぐだったら絶対リバースしてたんだから!
耳タコになりそうなくらい小十郎さんに言い聞かされてげんなりしてる成実さんの手を借りて馬に乗る。政宗を見たらものすごーくつまらなさそうな顔をしてた。もしかして行きに飛ばしたのはわざと? ドSだから有り得るわね。
まだ畑の世話をするという小十郎さんと別れてポクポク馬を歩かせる。ゆっくりだから多少体が揺れる程度だし小十郎さん効果か成実さんもしっかり支えてくれているから超快適!
行きは出来なかった景色見物をのんびりしているうちに前方の見える街並みに意識が向いて、出掛けられると分かった時に出来たら良いなと思ったあることを思い出した。
「ねえ、このまま真っ直ぐお城に戻るの?」
「行きてえ所でもあるのか?」
「うん。街を見みてみたい」
「街を? 見てどうすんの?」
「どうって言われても、この時代の町並みが見たいだけなんだけど……」
二人ともよく分からないって顔してたけど政宗からオッケーが出た。やったね! 写真を撮ったり出来ないのがちょっと残念だけど一度は見てみたかったんだよね。
街に着いた時にはお昼を少し過ぎたくらいで、お腹も減っていたから三人でお蕎麦を食べた。その後は観光名所があるわけでも無いし時代劇のドラマとかで見る町並みと同じなのかとかが気になってただけだから適当にぶらつくことになったんだけど……。
「美夜ちゃん、飴売ってるよ。買ってあげようか?」
「……いりません」
「あ、向こうで風車売ってる。あれは?」
「……いらないです」
なぜかやたらと成実さんが物を買ってくれようとする。しかもチョイスが全部子供が喜びそうな物。おまけに政宗は私達の遣り取りをニヤニヤと質の悪い笑みを浮かべて見ている。政宗がこんな表情をしてるってことは私にとっては面白くないことがあるに決まってる。
てことはやっぱり成実さん、私の年齢勘違いしてるんじゃ……。
「成実さん」
「なに? やっぱり風車欲しい?」
「違います。そうじゃなくて、成実さんて私のこと何歳だと思ってるんですか?」
「美夜ちゃんの歳? 十三、四歳じゃないの?」
「クッ!」
「笑うな!!」
「え? 何なに?」
肩を揺らして笑ったかと思えばにやにや笑いながらこれみよがしにぽんぽんと私の頭を叩いてきた政宗の手を振り払い、あんたのせいだと一人野次馬よろしく政宗が笑い出した理由を気にしている成実さんを睨む。
「私、十七です」
「何が?」
「年齢が、です」
妙な沈黙が落ちた。
「年齢?」
「はい」
また沈黙。そして成実さんはじぃーっと私を見詰めてきたかと思うとあははと笑いだした。
「まったまたー。美夜ちゃんが十七歳? 無い無い、それは無い。いくらなんでもそんな見え見えの嘘に騙されるほど馬鹿じゃないって」
「ほんとに十七です! んでもって秋には十八になります!」
「えぇー」
「ほんとですってば!」
「ククッ」
「あんたはいい加減笑うのやめろ!」
中々認めない成実さんにも笑い続ける政宗にもムカついて、うがー! と怒っていたらいつの間にか道行く人の注目を集めてしまっていた。
恥ずかしくなって現況の二人を睨むも効果無し。でも意地の悪い笑みを浮かべたままながらも政宗は移動するぞと行って歩き出した。私もこれ以上の注目は浴びたくないから後ろを着いていく。
ついでとばかりに政宗の腰にパンチの一発でも決めてやろうとしたけど、背中に眼でもあるのか拳を握った段階で手を掴まれ阻止されてしまった。むぅ、とむくれれば隣を歩く成実さんが「やっぱり子供だよなぁ」とか呟くものだからイライラし過ぎてハゲそうだ。
連行されるみたいなや政宗に手首を掴まれたまま連れてこられたのは橋のたもと。民家らしき建物もまばらだからか私達三人以外に人の姿は無い。
「成実さん。私がもし十三、四歳だとしたら政宗のセクハラはどう説明するんですか?」
ここへ来る間も何度も「ほんとに十七歳です!」と成実さんに言っても全然信じてくれないから、ならばと違う方面から攻めてみる。
政宗はといえば一生懸命説明する私と全く信じようとしない成実さんをそれはもう楽しそうに笑って見ているだけ。
政宗の笑いの理由は成実さんが私の歳を勘違いしてたことに対してじゃなくて、実年齢よりも下、つまり子供に見られていたことと中々十七歳だと信じてもらえない私を面白がってのものだと分かるから助け船を出してくれないことも合わさってものすごく腹が立つ!
「せくはらってイジメのことだよね?」
「正確には精神的肉体的に性的嫌がらせをすることです」
「そうなんだ。確かに梵は美夜ちゃんの胸とか足とか触ってるもんなぁ」
「でしょ!? 私が嫌がってるのに反応を楽しがってわざとやってくるんだから! と、話がズレた。えっと、政宗がセクハラしてくるってことが私が子供じゃないって証拠です!」
「証拠じゃなくて梵がそういう趣味だったってことだろ? 付き合い長いけど俺全然知らなかったよ」
「成実。そりゃどういう意味だ」
笑いを納めた変わりに政宗は地を這うような声で成実さんを睨んだ。さすがに成実さんの顔が引き攣る。でもどっちのフォローもする気なんか全く無い。だって成実さんにだけじゃなく政宗にも怒ってるんだもん。
「テメェは俺のことを幼女趣味だと思ってたのか? あ゙ぁ?」
「い、いやだって美夜ちゃんの体触りまくってたし押し倒してたりすることもあるじゃん? だからそうなのかなーって……」
「ほぉ。テメェはそれを見てこいつがBaby Faceなんだとは思わなかったのか」
「べび、ふ?」
「童顔って意味だ」
「ああ、童顔な。ちょっとは思ったよ。でも美夜ちゃんの胸ちっさいから子供だと思、って美夜ちゃん痛い! なんで俺の足踏んでるの!」
「心底ムカついたからに決まってます!!」
「ごめんって! えーと、ぺったんこ、じゃなくて胸が寂し…」
「私はこれでもCカップだー!!」
◆ ◆ ◆
「梵を幼女趣味と間違えてすみませんでした! 美夜ちゃんを子供だと思ってたことと胸が小さいって言ってすみませんでした!」
着物が汚れるのも構わず成実さんは地面に額がくっつきそうな程に土下座して謝った。人が居たらきっとジロジロ見られていただろう。
ロリコン疑惑を向けられていた政宗はふんと鼻を鳴らして一先ずは成実さんを許したみたいだけど、私はまだちょっと不満が残る。
だって、成実さんが私の年齢を間違えていたことを認めたのも胸のことも、私がしつこく言ったからでも成実さんの足をこれでもかとグリグリ踏んだからでも無いのだ。「こいつは確かに十七だ」と政宗が言ったから成実さんは漸く信じたのだ。
政宗は私の手帳を見た時に私の年齢を知ったらしい。誕生日の所に『祝! 十八歳!』って書いて花丸で囲ってあったことと最後のページにあるパーソナルデータに書いてあったのを見たんだって。胸については「デカくはないがとりあえず掴める程度には膨らんでる」って。
「とりあえずってどういうことよ! しっかり膨らんでるわよ!」って怒ったらニヤニヤ笑いながら悔しかったら俺の手に余るくらいデカくしてみろ、って。意地でも巨乳になってやるんだから!
「はぁ。美夜ちゃんがもうすぐ十八とか詐欺だよ」
「何か言いました?」
「言ってない! 言ってないから足を踏もうとしないで!」
ズザッと後退った成実さんをジト目で睨むと少ししてから「ゴメンナサイ」と謝ったからそれを聞いてから上げてた足を下ろした。それを見て成実さんはホッと息を吐いたけど、成実さん。次に年齢と胸のことでなんか言ったら小十郎さんにチクるから。
「ねえ美夜ちゃん」
「何ですか?」
「前から気になってたんだけどさ、なんで俺と話す時は敬語になるわけ? 小十郎に対してはまあなんとなく分かるけど、美夜ちゃんはもうすぐ十八になるんだろ? だったら俺と同じ歳ってことなんだしもっと砕けた話し方で構わないよ?」
「えっ!? 同じ歳!? 二十五、六歳じゃないの!?」
「俺ってそんなに老け顔!?」
「クッ!」
嘆く成実さんを見て政宗はまた笑い出した。成実さんは政宗を恨めしげに見ていたけど急にニヤッと笑ったかと思うと私を見た。
「美夜ちゃん、梵の歳って知ってる?」
「知らないけど、二十二、三歳くらいかなって思ってます」
「俺はまた十九だ!」
「えー! 十九って顔じゃなぶふっ!」
本気で驚いたらがっしり頬を掴まれ潰された。結構痛い。
「人のこと笑っといて梵も老け顔じゃーん。ぷふーっ!」
「成実、歯ぁ食いしばれ」
「えっ!? ちょっ! 梵待っぐはぁっ!!」
顔面にもろにパンチくらった成実さん(さん付けの方がなんかしっくりくるから呼び方はこのままでいいや)は華麗に宙を飛んで川に落ちて行った。
人がマンガみたいに飛ぶとこ初めてみたよ。
続