06
夢小説設定
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「ん?」
城内をぷらぷら歩いていたらたくさんの男の人らしき声が聞こえてきた。遠すぎてはっきりとはしないけど、騒いでる声っぽい。
一瞬時代劇のとあるシーンが脳内で再生されて青ざめかけたけど、風向きが変わって少しだけ大きくなった声に緊迫感や緊張感が無いのが分かってホッとする。
そうなるとむくむくと頭をもたげるのは好奇心なわけで。
「えーと、こっち、かな」
もしかしたらを考えて迷いはしたけど好奇心には勝てず、声のする方へと歩いて行く。近付いていくにつれよりはっきり聞こえてきた声は騒ぎ声というより歓声という表現の方がぴったりくる。どうやら危険は無さそうだ。
そうして辿り着いたのは塀に囲まれた広い場所。中には二棟をL字型になるように建ててあるらしい平屋の建物と広場があって、たくさんのヤンキー(にしか見えない見た目の多分兵士)の人達は大きい方の建物に集まっていた。騒ぎの中心は建物の中っぽいけどヤンキー兵士(仮)達のせいで屋根しか見えない。中の様子はちっとも見えない。
「筆頭最高っすー!!」
「成実様もふぁいとっすー!!」
「筆頭? 成実様?」
どうやら中には政宗と成実さんがいるらしい。ファイトとか最高なんて応援を受けながら何をしてるんだろう。
騒いでいるのが見た目ヤンキーな男達ばかりなこともあって喧嘩とか下剋上とか、あぶないものばかり想像しちゃう。
それでも身の危険を感じるような雰囲気は無かったから、こっそり後ろから近付いていく。みんな政宗と成実さんに注目しているからか誰も私には気付かない。
でも、ヤンキー兵士(仮)達の壁が厚くて隙間を縫って中に入ることも出来ない。ワッと歓声が上がり、場はますます盛り上がってきて余計に気になってくる。
「中が見たいのか?」
「え? あ、小十郎さん」
人垣の後ろでうろうろしたりぴょんぴょん跳び跳ねたりしていたら声を掛けられた。振り向いたら小十郎さんが居て、いつものようにどこかに出掛けて帰って来たところらしく馬を引いていた。
「なんか政宗と成実さんが何かしてるっぽいんです」
「恐らく仕合だろう。ここは鍛練場だからな」
「鍛錬場?」
言われて見れば広場の端には藁束で作った人形が立っていたり弓の的があった。
喧嘩や下剋上じゃ無かったことにホッとしつつ、でもやっぱり気になるからどっかに隙間とかないかなとまたうろうろしてたら小十郎さんが近くにいたヤンキー兵士(仮)の一人に馬を預け、人垣に向かって一言、「道を開けろ」と言った。
「わ、すごっ」
そんなに大きな声で言ったわけじゃないのに、あんなに騒いでいたヤンキー兵士(仮)達が一斉に静かになってさらには綺麗に左右に退いて道が出来た。なんかの一場面みたい。すごい。
ヤンキー兵士(仮)達が割れて出来た道を小十郎さんの後ろに着いて歩く。なんか注目されてる気がするけど鍛練場に女が珍しいからかな?
建物の中に入ると木刀を持った政宗と成実さんが仕合をしてた。カンカンと木刀同士がぶつかる音が絶え間無く響く。
「Ha! その程度かよ!」
「まだまだこれからだっての!」
なんか、楽しそう。お互い汗だくになって打ち合いながらも二人は笑ってる。子供同士のちゃんばらごっことは違う感じがするのに、なんで楽しそうなんだろう。
木刀を振り下ろし、受け止め、弾き、振る。息をも尽かせぬ攻防を繰り返しながら、それでも成実さんが押されているのが素人の私でも分かった。汗の量も息の荒さも成実さんの方が酷い。
政宗が下から斜めに振り上げた木刀が成実さんの木刀を弾き飛ばした。政宗が木刀の先を成実さんの首に突き付けるのと私の体が誰かに抱き寄せられたのはほぼ同時。
パシッという音が頭上でして、見上げれば弾き飛ばされた成実さんの木刀を小十郎さんが掴んでいた。
「怪我はないか?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
小十郎さんは私の体を離すとこっちへ来ていた成実さんに返した。
「さんきゅー、小十郎。美夜ちゃんごめんね」
「気にしないでください。私が勝手に見に来ただけですから」
「見に来るのは構わねえが気をつけろよ」
「うん」
ぽんと頭に手を置いてきた政宗に素直に頷く。セクハラとかイジメさえしてこなけりゃ私だって政宗につっかかったりしない。
「ねえ。仕合って楽しいの?」
「An?」
「二人とも笑ってたでしょ? だから楽しいのかなって」
「そりゃ、楽しいからな」
「女の子には理解し難いかもね」
確かにわかんない。剣道とかやったことあったら分かったのかな?
「さってと、汗でも流してくるかな。梵も行く?」
「ああ」
「わっ! ちょっ! 何すんの!?」
見送ろうとしたらなぜか政宗に担ぎ上げられた。小十郎さんに助けてもらおうとしたら兵士さんたちに鍛練の指示を出しててもうこっちに意識は向いてなかった。自分でどうにかしろってことですか!?
暴れても無駄でそのまま建物の外へと連れ出された。でもちょっと歩いただけですんなり降ろしてくれた。どうやらもう一棟の建物の裏手らしい。裏って言うのがいかにも何か企んでますって感じで危険を感じる。今のうちに逃げなきゃ。
「美夜様、こちらを」
「え?」
逃げようとしたら建物の中から侍女さんが来て手ぬぐいを渡された。何に使うんだろうと首を傾げていたらバシャッと派手に水をぶちまける音。何だろうと何気なく振り向いたら井戸から汲み上げた水を、上着を腰に垂らし上半身だけ裸になった政宗が頭から被ってた。
あ、だからさっさと降ろしてくれたわけか。でも汗を流すためとはいえ豪快だなー。全身ずぶ濡れじゃん。って手ぬぐいはそのためか! それってなんか部活の休憩時とかに女の子が好きな男子に「これで汗拭いてください!」とか言ってタオル渡すシチュエーションに似てるんだけど!
なんで私がそれを政宗とやらなくちゃならないわけ!? ふりとはいえ許嫁だから!? あ、成実さんも水被った。よーし、政宗じゃなくて成実さんに渡、あああ侍女さーん! 成実さんに渡すの早過ぎー! 政宗もニヤニヤした顔を向けるな!! 誰が渡すか! 意地でも渡すか!
「な、何よ」
何かを考えるように視線を僅かな間横にやった政宗がこっちを見て笑った。にっこりじゃなくてニヤリって。うーわー、嫌な予感がするよ。ていうかこの場合予感じゃなくて確実にセクハラされるよね!?
「わっ」
ビビらせるためかゆっくり近寄ってくる政宗から逃げるように後退っていたら足が縁に当たってバランスが崩れた。尻餅を突くように縁に座ることになった私の上に影が出来る。ヤバい。こういう展開知ってるぞ。
顔を上げたら絶対に政宗が居るんだよ。だって私の前に政宗が履いてたのと同じ色の袴を履いた人の足が見えるんだもん! んでこの後両側に手を突かれたりして逃げ場を封じられてなんかされるんだよ! 定番の展開だよ! ほら手がきたー!!