04
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目が覚めて、見覚えの無い木の天井に軽く混乱して、異世界トリップしたことを思い出して、夢落ちは無かったなーとちょっとだけ落ち込んで、布団の上でぼんやりしていたら知らない女性が入ってきた。
「おはようございます。ゆっくりとお休みになられましたか?」
「あ、はい。よく、眠れました」
自分でもびっくりするほど熟睡した。戦国時代でも異世界の、だからなのかそれともお城だからなのか、ふかふかの柔らかい布団だったけど、トリップしたこととか帰れるのかなとか、いろんな不安を抱えた状態だから今夜は眠れないかも、なぁんて思った昨日の私は何だったのかと思うほどぐっすり熟睡だった。自分が思っているよりも私って図太い神経なのかも。
「それはようございました。ああ、申し訳ございません。ご紹介が遅れました。本日より美夜姫様のお世話係を勤めさせていただきます、みつ、と申します。お困りの際は何なりとお申し付けくださいませ」
「は、はい。ありがとうございます。…ん?」
「早速ではございますが、お起きになられますか? それとももう少しお休みになられますか? お起きになられるのであれば、宜しければお召し変えを手伝わせて頂きますが」
「あ、起きます。着替えはだいじょ……ぶじゃない、です。お願いします」
女性の傍らに置かれた、たぶん私の着替えだろう畳まれたものに気付いてお言葉に甘えることにした。仕方ないことだけどたぶんまた着物だ。
昨日の夜にパジャマとして渡されたのは旅館の浴衣みたいなものだったから大丈夫だったけど、着物となればお手上げだ。
挨拶の時に何か気になることがあった気がしたけど、着付けに意識が向くところっと忘れてしまったからきっと大したことじゃないんだろう。
顔を洗い、着物を着せてもらうと直ぐに朝食が運ばれてきた。持ってきてくれた人もみつさんも、同じ色柄の着物を着ている。帯まで一緒。きっとお仕着せだろうから、二人は侍女とかそういう立場の人なんだろう。
『侍女』と表現すれば何とも思わないけど、『メイド』と表現すると一気に政宗がメイド好きの変態に思えてきてしまう言葉のマジック。
こんなこと考えてるのがバレたら大変なことになりそうだ。この場に政宗が居なくて良かった。まあ居ても私がぽろっと言っちゃわない限りはバレないだろうけど。
朝食は味噌汁に白米、塩鮭と漬物という、これぞ日本の朝食といったメニューだった。塩鮭の塩分がちょっと濃くて塩辛い以外は美味しかった。食後のお茶も頂くと、みつさんから政宗の部屋に案内しますと言われた。私が起きたら連れてくるよう言われていたらしい
一人で部屋に居てもすることなんて無いし、拒む理由も無いから大人しく着いていく。
お城イコール広くて大きいってイメージだったけど、まさにその通りだった。廊下を進んで曲がってまた進んで曲がって。早々に迷路の中にでもいる気分になってきた。自力で部屋に戻れる気がしない。
帰りも迎えに来てくださいってお願いしようか。建物内で迷子ってなんか恥ずかしいし。
などと考えていたらみつさんが立ち止まった。いつの間にか庭に面した――濡れ縁と言えばいいのか廊下で良いのか――場所に居た。
「左手に庭を見ながら進んでいただければ政宗様のお部屋がございます。人払いを申し付けられておりますので、ここから先は姫様お一人でお進みください」
「はい。ありがとうございました」
「いえ。では私はこれで。失礼致します」
頭を下げたみつさんにこちらも頭を下げて見送る。なんか姫様とか言われた気がするけど(そういえば着替えの時にも言われた気が)、なんでだろう。何かの勘違い? それとも政宗がそう説明した、とか?
今日借りた着物は昨日のものよりもちょっとだけ子供っぽさの薄れたデザインで、尚且つ質も上がっている、と思う。着物に詳しくないから分からないけど。
さすがに異世界人だ、なんて説明は出来ないから適当にどっかから預かったお姫様ってことにしたんだろうか。だとしたら一言言ってほしい。気構えとかしたいし。一番良いのはただのお客様って立場だけど。お姫様とか柄じゃ無さすぎてなんかむずむずする。
このことについても話をしようと思いながら、みつさんに言われた通りに右手に庭を見ながら廊下を進んでいく。二度ほど角を曲がったところで政宗の姿を見つけた、んだけど……。
「う、わ……」
なに、あれ。写真撮りたい。
開け放された部屋の前、広縁に政宗は居た。立てた片膝に腕を乗せて、煙管を咥えて。ふぅ、と煙を吐き出すその姿すらカッコいい。映画のワンシーンか何かみたい。
着物姿だから余計に背景の庭や縁を支える柱、障子といった純和風の建物が合っていて、画家や写真家じゃなくても形に残したいと思ってしまうほどにカッコいい。
建物とか小道具はもちろん、庭や青空すら政宗のために用意されたのではと思うほど全てが一体となって政宗を演出している気さえしてきてしまう。
声を掛けてその雰囲気を壊してしまいたくない。ずっと見ていたい。そんなことを思っていたら突然政宗がこちらを向いた。
「いつまで突っ立ってる気だ?」
「っ! す、座るわよ!」
見惚れちゃってたことがなんとなく悔しくて、政宗の顔を見ないようにして隣に座る。正座すると足が痺れるから政宗みたいに縁の外へと足を降ろす。
「き、来たわよ」
「来たならさっさと座れ」
「い、いつ座るかなんて私の自由でしょ! それより呼んだ用ってなによ」
「お前が居た場所の話を聞かせろ」
「え、話? 別に良いけど、何が知りたっ」
横から伸びてきた手に急に顎を掴まれ無理矢理に政宗の方を向かされた。なぜ顎を掴む。ていうか今グキッていったんだけど。痛いんだけど。
「話の前に一つ」
「なに?」
「さっき、見惚れてただろ」
「なんで分かっ……なに言ってるのかワカンナーイ」
咄嗟に政宗から眼を逸らして誤魔化した。だってバレたら絶対からかわれるもん!
「くくっ、嘘が下手だな。いや、誤魔化し方が面白ぇほど下手なだけか」
くつくつと喉の奥で楽しそうに笑われて、恥ずかしいやら悔しいやらで顔が熱い。そしてこいつはやっぱり性格悪い!
「く、首痛いからさっさと離して!」
顎を掴む手をぺっと払って顔を見られないように背中を向ける。中身もカッコイイ男性はこういう時気付かないふりをするものだと思う。そういう意味でも政宗は性格残念な顔だけ男だ。
「そんなに見たいなら見せてやるよ」
中々笑いを治めない政宗を心の中で詰っていたら腰に腕が回され引き寄せられた。体勢が崩れ頭が政宗の胸に当たる。鍛えているのか硬い。
「なにす……」
いきなり何するんだと見上げた政宗は、言おうとしていたことも言われたことがすこーんと頭から抜け落ちて遥か彼方へ転がっていってしまうほどに色気ダダ漏れの微笑みを浮かべて私を見下ろしていた。逆光のせいで顔が影になってるのが何とも言えない妖しい雰囲気を醸している。
一瞬にして顔が熱くなって、鼓動が跳ねて乱れる。
「どうした? 熱でもあんのか?」
「だっ! が、だばーっ!」
なにをしようとしたのか、ただでさえ吐息が掛かりそうなほどに近かった顔をさらに近づけて来たものだから、パニックに陥って自分でも何が言いたいのか分からない意味不明な音の羅列でしかないものを叫びながら、それでも必死に両手で政宗の顔を押し遣り距離を取る。
色気のあるイケメン俳優を見てもこんな状態になったことないのに、なんで!? テレビの画面越しとリアルの差と片付けるにはあまりにも差が有りすぎる。全然平静が戻ってこない。
「ぎゃっ!」
ぐいぐい押し遣っていた手のひらが生温く湿ったものにべろりと舐められた。びっくりして手を引き寄せ抱え込むとその上から政宗の手が置かれ、がっちりと捕まれる。手が動かせない。