若気の至り〈海堂薫〉
名前を出力させて頂きます
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ニヒルさを感じるその笑みに屈するのは躊躇われたが、密かに唇を噛んで考えた結果、海堂はそれなりにあっさりと「お願いします」と申し出てしまった。
「ああいいぞ。まず、件のゆかりという女子生徒についてだが…」
乾の話を要約するとこうだ。
海堂の隣のクラスである彼女は、最近海堂について海堂のクラスの違う女子生徒に聞いていたらしい。
そこで彼女にとって収穫があったかどうかは謎。そもそも海堂は他人と会話をしない。
85%の確率で、ゆかりという生徒は海堂のことを慕っている。
しかしそれを口にする勇気はない。
何故かといえばそれが彼女の性格だから、とまあ曖昧な答えが返ってきた。
「つまり、もしお前にその気があるのなら、こちらから行動を起こさないと関係が進む可能性はどんどん低くなっていくということだ」
「…え、低くなるんすか」
「自分からアクションをしない以上、叶わぬ片思いを貫けるほど強いタイプではないだろうな」
「…なるほど…」
片思い、と聞いて、海堂の心臓は密かに跳ね上がった。
自分に。彼女が。
人知れず思いを寄せていた、彼女が。
まさか。
「…俺は…」
「どうしたらいいのか、か」
全てを察したように乾は軽く溜息をついた。
海堂がそう言われてすぐに行動を起こせるほど恋愛に関して肝の座った方ではないということは、わざわざデータを取るまでもなく分かる。
「まずは目を合わせるところからじゃないか?」
「はあ」
「最近視線を感じていたと思うんだが」
思わず目を見開いた。
「ああ、そうだよな。それも恐らくだが、そのゆかりさんだ」
「マジっすか」
「海堂の気持ちが高揚している確率100%…」
海堂はぐっと口を噤んだ。乾はどこか楽しげである。
「だから逸らされる前に振り返る。そして見つける。目が合えばオーライだ」
「…合わせてどうするんすか」
「度胸があるなら挨拶でもしてみたらどうだ?」
ああ…と海堂は一人納得した。
いつか思いを伝えるとして、まずは会話をするところまで漕ぎ着けなくてはならない。
「心は重なっているのに、交わることは未だ出来ていない、か。不思議だな」
「…そうっすね」
「そう落ち込むな。何なら今すぐ告白しても成功する確率は90%だから不可能ではないと思うぞ?」
そう言って、乾は左手方向を示した。ばっと振り返ると、その向こうには探し求めた彼女の姿が。
彼女は固まっている。海堂と目があったことで困惑しているようだ。
「おい!」
海堂が大声で呼ぶと、彼女はびくっと肩を揺らした。
「ゆかり!」
名前を呼ぶと、彼女はじっと黙ってゆっくりと一歩を踏み出そうとする。
が、決意が遅れているようだった。二人のいるテニスコートへ近付くことを躊躇い、遠慮しているような。
海堂は我慢できずにコートを出た。
彼女は慌てて立ち止まる。その表情は当惑以外の何物でもない。
「ああいいぞ。まず、件のゆかりという女子生徒についてだが…」
乾の話を要約するとこうだ。
海堂の隣のクラスである彼女は、最近海堂について海堂のクラスの違う女子生徒に聞いていたらしい。
そこで彼女にとって収穫があったかどうかは謎。そもそも海堂は他人と会話をしない。
85%の確率で、ゆかりという生徒は海堂のことを慕っている。
しかしそれを口にする勇気はない。
何故かといえばそれが彼女の性格だから、とまあ曖昧な答えが返ってきた。
「つまり、もしお前にその気があるのなら、こちらから行動を起こさないと関係が進む可能性はどんどん低くなっていくということだ」
「…え、低くなるんすか」
「自分からアクションをしない以上、叶わぬ片思いを貫けるほど強いタイプではないだろうな」
「…なるほど…」
片思い、と聞いて、海堂の心臓は密かに跳ね上がった。
自分に。彼女が。
人知れず思いを寄せていた、彼女が。
まさか。
「…俺は…」
「どうしたらいいのか、か」
全てを察したように乾は軽く溜息をついた。
海堂がそう言われてすぐに行動を起こせるほど恋愛に関して肝の座った方ではないということは、わざわざデータを取るまでもなく分かる。
「まずは目を合わせるところからじゃないか?」
「はあ」
「最近視線を感じていたと思うんだが」
思わず目を見開いた。
「ああ、そうだよな。それも恐らくだが、そのゆかりさんだ」
「マジっすか」
「海堂の気持ちが高揚している確率100%…」
海堂はぐっと口を噤んだ。乾はどこか楽しげである。
「だから逸らされる前に振り返る。そして見つける。目が合えばオーライだ」
「…合わせてどうするんすか」
「度胸があるなら挨拶でもしてみたらどうだ?」
ああ…と海堂は一人納得した。
いつか思いを伝えるとして、まずは会話をするところまで漕ぎ着けなくてはならない。
「心は重なっているのに、交わることは未だ出来ていない、か。不思議だな」
「…そうっすね」
「そう落ち込むな。何なら今すぐ告白しても成功する確率は90%だから不可能ではないと思うぞ?」
そう言って、乾は左手方向を示した。ばっと振り返ると、その向こうには探し求めた彼女の姿が。
彼女は固まっている。海堂と目があったことで困惑しているようだ。
「おい!」
海堂が大声で呼ぶと、彼女はびくっと肩を揺らした。
「ゆかり!」
名前を呼ぶと、彼女はじっと黙ってゆっくりと一歩を踏み出そうとする。
が、決意が遅れているようだった。二人のいるテニスコートへ近付くことを躊躇い、遠慮しているような。
海堂は我慢できずにコートを出た。
彼女は慌てて立ち止まる。その表情は当惑以外の何物でもない。