若気の至り〈海堂薫〉
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毎日それなりに重い部活メニューをこなしながらも、自分のトレーニングを欠かしたことは一度もない。
寒かろうが暑かろうが、河原でトレーニングをしなければ気が済まないし、逆にここへ来ることで何となくほっとする部分もあった。
ここ最近、海堂には一つ気になることがある。
何となく、何となくだが、誰かがちらちらとこちらを見ているような気配を感じたり、感じなかったりするのだ。
正直クラスでも浮いている自覚はある。好奇の目を向けられることは気に食わないが、皮肉にもそれは慣れてしまっている。
だからその目線がそういった不愉快な類のものではないことはすぐにピンときた。
何かしただろうか、と考えては、何もしていない、と何度も確信する。
気にしないに限る。
海堂は結局、それに対して何をすることもすることなく、ただ心の片隅では気にしながら、練習に打ち込むフリをしていた。
が。
「…海堂、最近何があった?」
「え」
自分の気がかりを自分で無視することは出来ても、乾のデータを誤魔化すことは不可能らしい。
「試合中の様子はこれまでと何ら変わりはないが、休憩中、特に部活が終わる頃になると、放心していることが多い」
あまりに詳しく指摘されて、海堂は苦い心持ちがした。
この人の手にかかればこの程度造作ないのだろう。しかし実際にかけられてみると、どこか薄ら寒ささえ感じる。テニスのことでないから尚更かもしれない。
「…別になんもねえっすよ」
「それならそれで、集中することを意識して過ごした方がいい。俺はてっきり、ゆかり、という女子のことで何か考えているものかと思っていたが」
「はあ?」
思わず大きな声で聞き返してしまった。
「お、図星なのか?」
「な訳ないじゃないっすか」
「何故だ?データは嘘をつかないが」
「…あんた、どこまでデータ取ってんすか」
「さあな」
本気で辟易としながら、海堂は逃げ道を探していた。探られたらまずい。
彼女と話したことはこれまで殆どなかった。
最近感じる視線の正体はからっきし分からないままなので、彼女であるかもしれない、彼女だったらどんなに…などと暢気にも考えるのは、100%海堂の希望的観測に過ぎない。
それでも、分からないのだから、どうせなら、と身勝手な想像を抱くのは、脳筋の中学生には遠ざけられない感情だった。
「…データの解説をしてもいいぞ」
海堂が黙って頭を巡らせていると、乾が珍しいことを言った。
「…え、は?」
「海堂、さっきからそればかりだな。個人的なことを俺に打ち明ける必要は無いが、俺にはお前が悩んでいるように見えたんだよ」
だから参考になりそうな部分だけなら教えてやろうかと思ったんだが、と笑う。
寒かろうが暑かろうが、河原でトレーニングをしなければ気が済まないし、逆にここへ来ることで何となくほっとする部分もあった。
ここ最近、海堂には一つ気になることがある。
何となく、何となくだが、誰かがちらちらとこちらを見ているような気配を感じたり、感じなかったりするのだ。
正直クラスでも浮いている自覚はある。好奇の目を向けられることは気に食わないが、皮肉にもそれは慣れてしまっている。
だからその目線がそういった不愉快な類のものではないことはすぐにピンときた。
何かしただろうか、と考えては、何もしていない、と何度も確信する。
気にしないに限る。
海堂は結局、それに対して何をすることもすることなく、ただ心の片隅では気にしながら、練習に打ち込むフリをしていた。
が。
「…海堂、最近何があった?」
「え」
自分の気がかりを自分で無視することは出来ても、乾のデータを誤魔化すことは不可能らしい。
「試合中の様子はこれまでと何ら変わりはないが、休憩中、特に部活が終わる頃になると、放心していることが多い」
あまりに詳しく指摘されて、海堂は苦い心持ちがした。
この人の手にかかればこの程度造作ないのだろう。しかし実際にかけられてみると、どこか薄ら寒ささえ感じる。テニスのことでないから尚更かもしれない。
「…別になんもねえっすよ」
「それならそれで、集中することを意識して過ごした方がいい。俺はてっきり、ゆかり、という女子のことで何か考えているものかと思っていたが」
「はあ?」
思わず大きな声で聞き返してしまった。
「お、図星なのか?」
「な訳ないじゃないっすか」
「何故だ?データは嘘をつかないが」
「…あんた、どこまでデータ取ってんすか」
「さあな」
本気で辟易としながら、海堂は逃げ道を探していた。探られたらまずい。
彼女と話したことはこれまで殆どなかった。
最近感じる視線の正体はからっきし分からないままなので、彼女であるかもしれない、彼女だったらどんなに…などと暢気にも考えるのは、100%海堂の希望的観測に過ぎない。
それでも、分からないのだから、どうせなら、と身勝手な想像を抱くのは、脳筋の中学生には遠ざけられない感情だった。
「…データの解説をしてもいいぞ」
海堂が黙って頭を巡らせていると、乾が珍しいことを言った。
「…え、は?」
「海堂、さっきからそればかりだな。個人的なことを俺に打ち明ける必要は無いが、俺にはお前が悩んでいるように見えたんだよ」
だから参考になりそうな部分だけなら教えてやろうかと思ったんだが、と笑う。
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