第一章




平助「あー、なんかわかる!確かに夕陽だ」

永倉「だなぁ」

千世「・・・本気?」

平助「え?」

千世「私には、むしろ・・・」

沖田「血の色に見える?」

千世「!」

心底驚いたような顔だった千世

ハッとした表情に変わると、顔を沖田に向ける

沖田「僕も一君に1票。あんな酷い色よりも、君の赤毛の方が綺麗な色してると思うよ」

千世「・・・」

斎藤「どうした?」

千世「・・・・・・はじめて、言われた・・・」

斎藤「?」

千世「私だけなんです、赤毛。家族はみんな黒髪なのに、私だけ・・・だから、ずっと・・・気味が悪いって、言われてて・・・ひとりだけ、血みたいな色だって・・・」

永倉「何言ってんだよ?この世に赤なんかいくらでもあるじゃねぇか!血だろ、夕陽だろ、赤鬼、林檎、唐辛子、苺、西瓜・・・」

平助「新八っつぁん・・・それ、食いモンばっかじゃん・・・」

原田「後半辺りがな・・・」

沖田「ま、らしいと言えばらしいけど」

永倉「なんだよ!いいだろ、別によ!」

原田「ま、そんなわけだ。あんま悲観的になるなよ、千世」

千世「・・・」

平助「あ、そうだ!なぁ、千世。ちょっとオレと手合わせしねぇか?」

千世「え?」

永倉「おいおい、いくら経験があるったって、相手は女の子だぞ?お前、手加減とか出来るのか?」

平助「出来るよ!馬鹿にすんなよな!オレだってちゃんと手加減くらいするって。女の子に本気になるわけないじゃん。たださ、木刀振ってるだけじゃあ気分も晴れねぇだろうし。試合形式でやるのもありかなって、思っただけだって」

千世「あのさ」

平助「?」

千世「女の子、女の子って・・・まあこんな時代だし、仕方ないとは思いますけど。あんまり小馬鹿にしてると、痛い目見ますよ?」

「「「え?」」」

原田と永倉、そして平助がキョトンとした顔で声を出した










平助「ハァ・・・ハァ・・・」

永倉「お、おい平助?お前、手加減し過ぎなんじゃあ・・・?」

平助「いや、もう途中から本気なんだけど!」

沖田「へぇ、なんか意外」

原田「・・・あー・・・こりゃあ・・・」

斎藤「・・・・・・」

言葉も出ない、といった様子で見つめる原田と斎藤

一方の沖田は面白そうに眺め、永倉は冷や汗を流して苦笑する

そして、肝心の千世は・・・

千世「女の子に本気になるわけない・・・そう言ってませんでした?」

平然とした様子で、小首を傾げてそう問うた

平助「悪ィ、前言撤回!」

千世「ハァ・・・やぁ!」

平助「うおっ!?」

木刀を構えて飛び込んできた千世に、平助は慌てて構え直す

何度も、木刀がぶつかる音が響く

平助「ちょ、ちょお!?」

斎藤「速いな」

沖田「だね。振りも小さいし、最小限の動きで対応してる」

永倉「ただの道場剣術じゃあねぇな」

原田「ああ。女だからって、確かに甘くは見れねぇな」

土方「何してやがる!」

平助「げ!?イテッ!」

千世「あ」

受け止められるだろうと思われた木刀は止まらず、平助の頭に直撃した

頭を抱えたまましゃがむ平助をそのままに、千世は声を荒げた本人を見る

土方歳三・・・苦手だと思う男だ

なぜ苦手なのかと聞かれると、なんとなくとしか言えないが

土方「で、お前らは何やってやがる」

原田「あー・・・」

永倉「け、稽古だぜ稽古!」

土方「見りゃあわかる。だがな、なんでそいつが一緒なんだ?」

千世「・・・」

原田「縁側でぼーっとさせてるよか、マシかと思ってよ。ほら、なんもやってねぇと、色々考えちまうだろ?」

千世「え・・・」

気を遣わせていたのか・・・

意外だと言いたげな顔をする千世に、気付いた原田が苦笑する

千世「・・・すみません」

斎藤「何故、謝罪の言葉を口にした?」

千世「私なんかに、変に気を遣わせてしまったので」

土方「・・・」

平然とした顔で発言した彼女を、土方の鋭い視線が捉える

だが最初に睨んだ時と同じで、千世はなんとも思っていない様子で彼を見ていた

斎藤「・・・」

無表情とも言えるような顔で、斎藤が彼女を見つめる

千世「?」

斎藤だけではない

この場にいる全員が彼女を見つめていた

その中でも、やはり土方の視線だけが鋭い

千世「あの・・・私、何かおかしな事でも言いましたか?」

平助「おかしな事っつーか・・・」

永倉「なぁ?」

原田「ハァ・・・」

沖田「君さ、そういう所はつまんないよね」

千世「え?」

平助「千世ってさ・・・なんでそう自分の事いい加減なんだよ」

千世「関係ない・・・・・・って、言いたい所だけど。しつこそうだから、あなた達」


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