第二章




平助「すげぇ!カッコいい!」

はしゃいだ声で言いながら平助が広げたのは、浅葱色の羽織だった

永倉「これが俺達の隊服か?」

近藤「ああ」

新見「浪士組の名を京で知らしめるために、芹沢先生が大坂で調達した金で作らせたのだ」

平助「なぁ!折角だから袖通してみようぜ!」

近藤「いいですか、芹沢さん?」

芹沢「ああ、構わん。着せてやれ」

平助「やったぁ!源さんはさみ、鋏!着付け糸とるから!」

井上「ああ。ちょっと待ちなさい」

平助「早く早く!」

井上「切ってあげるから、じっとしていなさい」

永倉「俺のもな!」

井上「はいはい」

千世「ん?」

通りかかった千世は、何やら賑やかなその部屋につい視線を向ける

それに気付いた井上は、彼女に声をかける

井上「あぁ、千世君。ちょうどいい所に。ちょっと手伝ってくれるかい?」

千世「え?あ、はい」

鋏を手渡され、隊服の着付け糸を切って回るのを手伝って欲しいと言われる

受け取ると、「はい」と素直に返事をして了解する

沖田「左之さんはこの服、どう思う?」

原田「ちょっと目立ち過ぎな気もするが・・・な、斎藤?」

斎藤「一理ある」

土方「京で俺達浪士組の事を知らしめるためには、こういうやり方もあるって事だ。それにな、見回りの時に揃いの隊服を着てりゃあ、不逞浪士と間違われる事もねぇし。味方に斬りつけちまう事も避けられる」

原田「なるほどな」

芹沢「ふっ・・・」

土方の言葉を聞き、芹沢が笑みを深める

それを横目で見ていた千世

沖田「千世ちゃん、こっちもいい?」

千世「あ、はい」

原田「俺と斎藤のも頼むぜ、千世」

千世「わかりました」

近藤「芹沢さん、少しよろしいですか?」

芹沢「ん?」

山南「今後、会津藩から要人警護なども任される事が多くなるでしょう。そのためにも隊士の募集が急務となります」

新見「フンッ、そんな事はもうとっくに考えて策を練って・・・」

彼の言葉を、芹沢が手で制して切った

芹沢「隊士など、浪士組の名が売れればいくらでも集まってくる。そのための隊服だろう。土方!」

投げ渡された隊服を、土方は笑みを浮かべて受け取った

土方「そんじゃ、てめぇら。行くぞ!」

「「「「「おう!」」」」」

千世「・・・」

揃いの、浅葱色にダンダラ模様が入った羽織り

“新選組”の隊服だと、いつだったか聞いた事がある

千世「いいな・・・【ハッ】え・・・?」

羨ましい?なぜ今、そんな事を思ったのだろう・・・

千世「・・・・・・ずっと、独りが当たり前だったのに・・・」




















近藤「芹沢さん、近藤です」

芹沢「入れ!」

近藤「失礼します」

この日、近藤と土方、山南は芹沢の部屋を訪れた

部屋に入ると芹沢、新見、井吹といったお馴染みの3人がいた

そして今回は、さらに別の男がもうひとり

土方「?」

山南「お呼びとの事ですが」

芹沢「うむ」

新見「実は、浪士組の人材不足を解決する、妙案があるのですよ」

近藤「ほう、それは如何様な?」

芹沢からの目配せに、新見が続けて話す

新見「そちらは、幕府より遣わされた蘭方医の、両儀黄麻こうま殿です」

山南「幕府から?」

土方〈両儀・・・あいつと同じ姓、だと・・・?〉

新見「ええ。私は幕命により、かねてよりこの両儀殿と、準備を進めてきました」

土方「かねてよりってのはいつからだ?」

新見「かねてより、ですよ」

土方「?」

知っていたかと訪ねるように近藤を見る土方だったが、彼は首を左右に振る

近藤も知らなかったようだ

近藤「それで、妙案というのは?」

だが話を始める前に、芹沢は井吹を部屋から追い出した

話が終わる様子はまだなく、辺りはすっかり暗くなっていた

千世「失礼します。お茶を淹れてきましたけど・・・飲みますか?」

井上「ああ、頂くよ。すまないね、千世君。ありがとう」

千世「いえ」

平助「長いな・・・近藤さん達、何話してんだ?」

永倉「幕命か・・・キナくせぇな」

井上「勇さんやトシさんがいるんだ。悪いようにはならないと思うが」

斎藤「お二人にお任せしておけばいい」

沖田「井吹君、君、芹沢さんの肩もみしなくていいの?」

井吹「話が終わるまでこっちにいろって言われたんだよ!」

千世「じゃあ余分に淹れてきてよかった。はい、お茶」

井吹「え?あぁ、ありがとう・・・あ、そうだ。なぁ、千世。お前の他にも、未来から来た奴なんていたりすんのか?」

千世「え?さぁ・・・いないと思うけど。どうして?」

井吹「いや、さっきさ--」

「うわあぁぁぁーーー!!」


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