序章




ジョセフ「恐るべき威力。まともにくらった奴の幽波紋スタンドは溶解して、もう終わりだ」

承太郎「ひでぇ火傷だ。こいつは死んだな。運が良くて重症。いや、運が悪けりゃかな」

花京院「どっちみち、3ヶ月は立ち上がれんだろう。幽波紋スタンドもズタボロで戦闘は不可能」

ぐいっ

承太郎「ん?」

明日華「ッ・・・」

上着を掴んで引っ張ってきたのは、そばに立っていた明日華

その表情は強張り、頬には冷や汗が流れている

承太郎「おい?」

明日華「・・・まだ、終わってない」

承太郎「なんだと?」

次の瞬間、シルバーチャリオッツの体がバラバラに弾けた

ジョセフ「な、なんだ?奴の幽波紋スタンドがバラバラに分解したぞ!?」

さらに、ポルナレフの体が上空へと弾かれるように上がった

花京院「奴が寝たままの姿勢で空へ飛んだ!?」

ポルナレフ「ブラボー!おぉ、ブラボー!」

ジョセフ「こ、こいつは・・・!」

アヴドゥル「信じられん!」

花京院「ピンピンしている」

承太郎「しかし、奴の体がなぜ宙に浮くんだ?」

明日華「彼の幽波紋スタンドをよく見て」

アヴドゥル「おっ、あれは!?」

軽い身のこなしで宙を舞い、着地するポルナレフ

よく見れば、彼の幽波紋スタンドの姿が少し変わっている

ポルナレフ「よく気付いたな、お嬢さん。そう、これだ。甲冑を外した幽波紋スタンドシルバーチャリオッツ!」

アヴドゥル「ううっ」

ポルナレフ「呆気に取られているようだが、私の持っている能力を説明せずに、これからきみを始末するのは騎士道に恥じる。闇討ちにも等しい行為。どういう事か、説明する時間を頂けるかな?」

明日華〈この人・・・〉

アヴドゥル「うむ、恐れ入る。説明して頂こう」

ポルナレフ「私の幽波紋スタンドは、さっき分解して消えたのではない。シルバーチャリオッツには防御甲冑がついていた。今脱ぎ去ったのはそれだ。きみの炎に焼かれたのは甲冑の部分。だから私は軽症で済んだのだ。そして甲冑を脱ぎ捨てた分、身軽になった。私を持ち上げた幽波紋スタンドの動きが見えたかね?そう、それ程のスピードで動けるようになったのだ」

アヴドゥル「うむ、なるほど。先程は甲冑の重さ故、私のクロスファイヤーハリケーンをくらったという事か。しかし、逆に今はもう裸!プロテクターがないという事は、今度再びくらったら命はないという事」

ポルナレフ「ふむ。ウィ、ごもっとも。だが、無理だね」

アヴドゥル「無理と?試してみたいな」

ポルナレフ「なぜならきみに、ゾッとするものをお見せするからだ」

アヴドゥル「ほう、どうぞ」

次の瞬間、シルバーチャリオッツがポルナレフの背後で増えた

7体のシルバーチャリオッツ--

ジョセフ「な、なんじゃ!?奴の幽波紋スタンドが6!いや、7体にも増えたぞ!」

花京院「ば、バカな!幽波紋スタンドは1人1体のはず!?」

明日華「分身か、あるいは残像か・・・」

ポルナレフ「本当に頭のいいお嬢さんだな。いや、察しがいいってのが正しいか。そう、これは残像だ。ハッハッハッ。視覚ではなくきみの感覚へ訴える幽波紋スタンドの残像群だ。きみの感覚は、この動きについてこれないのか」

アヴドゥル「くっ」

ポルナレフ「今度の剣さばきはどうだ!」

アヴドゥル「レッドバインド!」

マジシャンズレッドの炎が当たり、いくつかの残像が消える

だが当たるのは全て、本体ではなく“残像”

ポルナレフ「この動きにはついてこれないと言ったろ。きみの炎が捕えるのは全て残像」

それでも、アヴドゥルは攻撃を続ける

ポルナレフ「手当たり次第か。少々やけくそにすぎるぞ、アヴドゥル」

花京院「確かに。あれでは消耗するのみ」

アヴドゥル「クロスファイヤーハリケーン!」

ポルナレフ「ノンノン、ノンノンノンノン!それも残像だ!私の幽波紋スタンドにはきみの技は、通じない!」

ついに剣先が、アヴドゥルを捉えた

承太郎「アヴドゥル!」

僅かに血が出たのを見てか、承太郎が叫ぶ

アヴドゥル「なんという正確さ。こ、これは・・・相当訓練された幽波紋スタンド能力!」

ポルナレフ「ふん。理由あって10年近く修行をした。さあ、いざ参られ。次なる攻撃できみにとどめを刺す」

アヴドゥル「騎士道精神とやらで手の内を明かしてからの攻撃。礼を失せぬ奴。故に私も、秘密を明かしてから次の攻撃に移ろう」

ポルナレフ「・・・ほお」

アヴドゥル「実は私のクロスファイヤーハリケーンにはバリエーションがある。アンクの形の炎だが、1体だけではない。分裂させ、数体で飛ばす事が可能。クロスファイヤーハリケーン!スペシャル!かわせるか!」

ポルナレフ「くだらん!アヴドゥル!うああああっ!」

ジョセフ「円陣を組んだ!?」

花京院「死角がない!?」

ポルナレフ「甘い!甘い甘い甘い甘い、甘い!前と同様、このパワーをそのまま貴様に--切断、弾き返してやる!」

目の前の炎にだけ、ポルナレフは“集中してしまった”

だからこそ、真下から襲ってきた炎に気付かなかった

ポルナレフ「なに!?ぐあああああ!」

そして、アヴドゥルの足元には

ジョセフ「あれは!?さっき炎で開けた穴だ!そうか、1撃目の炎はトンネルを掘るためだったのだ。そしてそこから、クロスファイヤーハリケーンを」

アヴドゥル「言ったろう。私の炎は分裂、何体にも分かれて飛ばせると」

今度こそ、マジシャンズレッドの炎で全身を包まれるポルナレフ

その彼に向かって、アヴドゥルは短剣を投げ渡した

アヴドゥル「炎に焼かれて死ぬのは苦しかろう。その短剣で自害するといい」

そう言って、背を向けるアヴドゥル

短剣を手にしたポルナレフは、それをアヴドゥルの背中に向かって投げようと振り被った

だがそれを、自分の喉に向けるも地面に倒れる

ポルナレフ「うぬぼれていた。炎なんかに私の剣さばきが負けるはずがないと。やはりこのまま、潔く焼け死ぬとしよう。それがきみとの戦いに敗れた、私の・・・きみの能力への礼儀。自害するのは、無礼だな」

気付いたアヴドゥルは、彼の体から炎を消した


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