序章




アヴドゥル「恐るべき剣さばき。見事なものだが、テーブルの炎が12を燃やすまでにこの私を倒すだと?相当うぬぼれが過ぎないか?あ・・・と?」

ポルナレフ「ポルナレフ。名乗らせていただこう。ジャン・ピエール・ポルナレフ」

アヴドゥル「メルシーボークー。自己紹介、恐縮の至り。しかし!」

アヴドゥルが指差すと、火時計が刻まれたテーブルが炎に包まれる

炎に下から押し上げられるようにして跳ね上がったテーブルが、床に落下した

そのままテーブルは燃え尽き、火時計は無くなってしまう

アヴドゥル「ムッシュポルナレフ。私の炎が自然通り、常に上の方や風下へ燃えていくと考えないでいただきたい。炎を自在に扱えるからこそマジシャンズレッドと呼ばれている」

ポルナレフ「ふん。この世の始まりは炎に包まれていた。さすが始まりを暗示し、始まりである炎を操るマジシャンズレッド。しかし、この私をうぬぼれと言うのか。この私の剣さばきが、うぬぼれだと?」

掌から放り上げられた、5枚のコイン

シルバーチャリオッツのレイピアが、その5枚を貫いた

ジョセフ「コイン5枚をたったのひと突き!重なり合った一瞬を貫いた!」

承太郎「いや、よく見てみろ」

コインの間には、小さな炎が揺れていた

炎とコインが交互になるよう、貫かれていたのだ

明日華「うそ・・・」

ポルナレフ「ふん。これがどういう意味を持つかわかったようだな。うぬぼれではない。私の幽波紋スタンドは自由自在に炎をも切断できるという事だ。ハハッ。空気を裂き、空と空の間に溝を作れるという事だ」

アヴドゥル「・・・」

ポルナレフ「つまり、貴様の炎は、私のシルバーチャリオッツの前では無力という事!どうかな、お嬢さん?自分の幽波紋スタンドを使って私と戦い、彼らを救うのは?」

明日華「私の幽波紋スタンドを見るのも目的ってわけ?そんなの、お断り!」

ポルナレフ「おっ、と」

あまり強く掴まれていなかったのもあり、ポルナレフの手を振り払う事ができた明日華

そのまま彼から離れると、承太郎達のそばまで駆け寄る

ポルナレフ「それなら、そいつらを殺してからじっくり・・・見せてもらう事にでもしよう」

ほんの一瞬の事だった

シルバーチャリオッツがレイピアを振るい、コインと炎が床に落ちた

さらにはチャリオッツ自身も消えた、その一瞬あと

彼らの背後にあるドアが開けられた音がして、振り返る

ポルナレフがいつの間にか移動し、ドアを開けたのだ

アヴドゥル「いつの間に・・・!?」

ポルナレフ「私の幽波紋スタンドチャリオッツのカードを持つ暗示は侵略と勝利。こんな狭っ苦しい所で始末してやってもいいが。アヴドゥル、お前の炎の能力は広い場所の方が真価を発揮するだろう?そこを叩きのめすのが私の幽波紋スタンドに相応しい勝利。全員、表へ出ろ!」

そう言って店を出たポルナレフに続き、5人はタイガーバームガーデンへとやって来た

香港島のタイハンロード山腹斜面に実在する庭園で、香港奇妙ゾーンナンバーワン

明日華「すっごいカラフルでなんかやだ・・・」

承太郎と花京院のそばで、明日華が呟く

また捕まらないようにと、2人の近くにいるのだ

ポルナレフ「ここで予言をしてやる。まずアヴドゥル、貴様は--貴様自身の幽波紋スタンドの能力で滅びるだろう」

承太郎「アヴドゥル」

アヴドゥル「承太郎、手を出さなくていいぞ。これだけ広い場所なら--思う存分、幽波紋スタンドを操れるというもの」

そう言って、シルバーチャリオッツを出したポルナレフに続き、アヴドゥルもマジシャンズレッドを出す

睨み合いの直後、レイピアによる連撃が襲い掛かる

だがマジシャンズレッドは軽い身のこなしでそれを避ける

ポルナレフ「どうした?得意の炎を思う存分吐かないのか?吐かないのなら、こっちから行くぞ!」

連続で繰り出される突き

そんな中で吐き出された炎の球を、レイピアの一振りで払った

払われた炎はアヴドゥルの背後にあった像に当たり--

ジョセフ「野郎、コケにしている。突きながらマジシャンズレッドにそっくりの像を彫ってやがった!」

ポルナレフ「なかなか。フッハハハ。この庭園にマッチしとるぞ、マジシャンズレッド」

すると、アヴドゥルが構えた

ポルナレフ「くるな。本気で能力を出すか。面白い、受けて立ってやる!」

ジョセフ「おい、何かに隠れろ!アヴドゥルのあれが出る!」

承太郎「あれだと?」

明日華「え、え?」

アヴドゥル「クロスファイヤーハリケーン!」

ポルナレフ「これしきの威力しかないのか!この剣さばきは空と空の溝を作って、炎を弾き飛ばすと言ったろうが!」

そう言ってレイピアで弾かれた炎はマジシャンズレッドに返され、アヴドゥルを炎が包み込んだ

アヴドゥル「うああ!」

ジョセフ「アヴドゥル!炎があまりにも強いので、自分自身が焼かれている!」

炎に包まれたアヴドゥルが、その場に倒れる

ポルナレフ「フッハッハッ!予言通りだな。自分の炎で焼かれて死ぬのだ」

だが炎に包まれたままのマジシャンズレッドが、ポルナレフに向かって行く

ポルナレフ「あーあ、やれやれやれやれだ。悪足掻きで襲ってくるか、見苦しいな」

だがチャリオッツが斬ったマジシャンズレッドからは妙な手応えを感じた上、切断した体内から溢れ出た炎にチャリオッツが包まれた

ジョセフ「あれは幽波紋スタンドではない、人形だ!」

アヴドゥル「炎で目がくらんだな。貴様が斬ったのは、シルバーチャリオッツが彫った彫刻の人形だ!」

ポルナレフ「なっ!?」

アヴドゥル「私の炎は自在と言ったろ。お前が打ち返した火炎が、人形の関節部をドロドロに溶かし、動かしていたのだ。自分の幽波紋スタンドの能力にやられたのはお前の方だったな!そして、改めてくらえ。クロスファイヤーハリケーン!」

ポルナレフ「おわぁ!」

アヴドゥル「占い師の私に予言で戦おうなどとは、10年は早いんじゃあないかな」


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