序章




飛行機が不時着したのは、香港沖35キロ地点

承太郎達は、香港への上陸を余儀なくされた

ジョセフが公衆電話を使い、どこかに電話をかけていた

離れた場所でそれが終わるのを待っていると、店の男からお粥をすすめられる

花京院曰く、香港ではお粥を主食として食べる事が多いらしい

お粥を頼もうとすると、ジョセフが戻って来た

ジョセフの馴染みの店とやらで、電話内容も含めて話をする事に

今後の移動手段について、話し合いは行われた

飛行機はもう使えない

関係のない一般人を、また大勢巻き込む事になるからだ

陸路か海路をとるしかない

アヴドゥル「しかし、50日以内にディオに出会わなければ・・・」

ホリィの命が危ない

濁されても、その続きはわかっていた

花京院「あの飛行機なら、今頃はカイロに着いているものを」

明日華「簡単に行く道のりじゃない。そんなの、あなた達だってわかっていたんじゃないの?」

花京院「それは・・・」

明日華「終わった事をいつまでも引き摺ってたって仕方ない。さっさと思考を切り替えないと、次に敵に出会したら死ぬだけよ」

承太郎「なんだと?てめぇ、他人事だと思ってんじゃあ・・・!」

明日華「下ばかり見てないで前を見ろって言ってるの。道は完全に閉ざされたわけじゃないんだから」

承太郎「なに?」

椅子の背もたれに体を預け、明日華は口を開く

明日華「100年前のジュール・ヴェルヌの小説では、80日間で世界一周。つまり4万キロを旅する話があるの。まだ汽車や蒸気船が使われていた時代よ。飛行機じゃなくたって、50日もあれば行けると思わない?1万キロのエジプトまで」

ジョセフ「その通りじゃ。そこでルートだが」

懐から地図を出し、テーブルに広げながらジョセフは続ける

ジョセフ「わしは海路を行くのを提案する。適当な大きさの船をチャーターし、マレー半島を回ってインド洋を突っ切る。謂わば海のシルクロードを行くのだ」

アヴドゥル「私もそれがいいと思う。陸は国境が面倒だし。ヒマラヤ山脈や砂漠があって、もしトラブったら足止めを食らう。危険がいっぱいだ」

花京院「私はそんな所、両方とも行った事がないので。なんとも言えない。おふたりに従うよ」

承太郎「同じ」

明日華「特に異論はありません」

ジョセフ「決まりだな。だが、やはり一番の危険は、ディオが差し向けてくる幽波紋スタンド使いだ。いかにして見つからずに、エジプトに潜り込むか」

明日華「・・・」

ジョセフ「それにしても、まさかお嬢さんがジュール・ヴェルヌの小説を知っていたとは・・・驚きだのう」

明日華「学校で読んだ事があって・・・たまたま覚えてたんです」

承太郎「そんな本あったか?」

花京院からお茶のおかわりの仕方について、やり方を聞かされていた承太郎

ふと耳に入ったジョセフと明日華の会話に、疑問を投げた

明日華「空条くん、図書室行かないでしょ?それと、高校の図書室じゃなくて大学--」

ポルナレフ「すみません、ちょっといいですか?」

ゾクッ

明日華「!?」

ポルナレフ「私はフランスから来た旅行者なんですが、どうも漢字が難しくて、メニューがわかりません。助けて欲しいのですが」

承太郎「喧しい、向こうへ行け」

ジョセフ「おいおい承太郎。まあいいじゃないか」

そう言って、ジョセフはメニューを受け取る

ジョセフ「わしゃ何度も香港に来とるから、メニューぐらいの漢字は大体わかる。どうじゃ?一緒に」

明日華「!」

花京院「ん?」

スカートを両手で握り締め、冷や汗を流す隣に座る明日華

花京院が彼女に疑問を抱くと同時に、承太郎も様子がおかしい事に気付いた

ジョセフ「で、何を注文したい?エビとアヒルとフカのヒレとキノコの料理?」

店員を呼び、いくつかの料理を注文するジョセフ

だが運ばれて来た料理は・・・

アヴドゥル「牛肉と魚と貝とカエルの料理に見えますが」

花京院「確かに、全然違いますね」

承太郎「こうなるって思ってたぜ」

ポルナレフ「あぁ・・・」

ジョセフ「ハッハハハハハ!まっ、いいじゃないか。わしの奢りだ!何を注文しても結構美味いものよ。ガッハハハ!さあ、みんなで食べよう!」

半信半疑で箸をつけるが、確かに味は良かった

だがひとりだけ、箸を手に取る事すらしていない

承太郎「風祭」

明日華「えっ」

承太郎「食わねぇのか」

花京院「先程から顔色も悪い。大丈夫かい?」

明日華「あ・・・わ、私・・・」

ポルナレフ「おぉ、これは!手間暇かけてこさえてありますなぁ。ほら、このニンジンの形。スターの形。なんか見覚えあるなぁ」

明日華「・・・私、ちょっと!」

ガタンッと音を立てて椅子から立ち上がった明日華

だが慌てて立ち去ろうとする彼女の手を、フランス人の男が掴んだ

明日華「!」

ポルナレフ「そうそう。私の知り合いが、首筋にこれと同じ形のアザを・・・持っていたなぁ」

花京院「貴様、新手の!」

ジョセフの目の前にある料理から、細い剣が姿を現した

アヴドゥル「ジョースターさん、危ない!」

ジョセフ「幽波紋スタンドだ!」

アヴドゥル「マジシャンズレッド!」

繰り出された炎は、吸い寄せられるように剣に巻き取られた

それはテーブルに向かって放たれ、数字の文字盤と針を作り出した

花京院「な、なんという剣さばき・・・!」

ポルナレフ「俺の幽波紋スタンドは戦車のカードを持つ、シルバーチャリオッツ。モハメド・アヴドゥル、始末して欲しいのは貴様からのようだな。そのテーブルに、火時計を作った。火が12時を燃やすまでに、貴様を殺す!」


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