序章




承太郎の単刀直入な質問に、全員が目を見開いて驚き、明日華に顔を向ける

明日華「・・・・・・ハァ・・・見えてるよ」

花京院「じゃあまさか、きみも幽波紋スタンド使い!?」

明日華「“も”?」

ジョセフ「ここにおるわしら全員、幽波紋スタンド使いじゃ」

明日華「・・・そうですか。私からもひとつ、聞きたい事があります」

ジョセフ「ん?」

明日華「“ディオ”--彼を知っていますよね」

「「「「!?」」」」

明日華「ジョースター家と因縁があるそうですね。そして空条くんも、ジョースター家の血を引いている」

承太郎「てめぇ、どこでそれを?」

明日華「調べたの。ディオに殺された、パパとママのために」

承太郎「なに!?」

ジョセフ「殺された!?ディオにだと!?」

明日華「・・・・・・これ以上を言う気はありません。私個人の問題だから。満足した、空条くん?」

承太郎「・・・」

明日華「・・・・・・帰るわ。明日は学校休むから、ノートは今度でいい。さよなら」

今回の明日華は、「また明日」とは言わなかった

その事に違和感を覚えながらも、承太郎は彼女を引き止める事ができなかった

風祭明日華--クラスメイトになったのは3年生だが、実際に承太郎が彼女を知ったのは1年の時

片目を隠す長い前髪が目立つなと、つい見ていた

紺色の短めの髪、紫がかった紅い左目

綺麗な色を持つ彼女に、自然と目がいっていた

テスト結果だって、廊下に張り出されたそれを見ると、いつも上位の方だけを見ている彼女を見つけていた

成績は良いらしいと、ここで思った

図書室に行く彼女を見つけた事もあった

頻繁に通っている様子だった

だが明日華が承太郎を認識したのは、クラスメイトになった3年生の時

ついでに、承太郎が“風祭明日華”として彼女を認識したのも、この時だった

それまで承太郎の中の彼女は、名前の知らない女の子だった

風祭明日華の名前は、確かにテストでは上位組にいた

頭は良いのだろう

だが承太郎は一度として、彼女が誰かと一緒にいるところを見た事はない

風祭明日華は、いつもひとりだった

大した関わりなど、持つはずがないと思っていた

だがまさか、ディオという共通点ができてしまうとは・・・

承太郎「・・・やれやれだぜ」










翌朝、固定電話が鳴り響いた

受話器を手に取り、耳に当てる

明日華「はい」

承太郎「・・・マジでいやがった」

呆れたような声色が受話器から聞こえ、名乗られなくても相手がわかってしまった

明日華「・・・空条くんね。何か用事?」

承太郎「用がなきゃ電話しねぇだろ。お前、今からこっちに来られるか?」

明日華「え?」

承太郎「時間がねぇ、とっとと決めろ」

明日華「・・・何が何だかわからないから事情を説明しろ、って言いたいところだけど・・・わかった、行く」

服を選ぶような時間はないだろうと、仕方なく制服に袖を通す

なるべく最短で空条家に向かうと、明日華を出迎えたのは承太郎本人だった

明日華「で、どうしたの?」

承太郎「・・・」

明日華「ん?」

ここでようやく、“事情”を知る事ができた

ジョセフの祖父ジョナサン・ジョースターの体を乗っ取って復活した、ジョースター家の宿敵であるディオ

ジョナサンの体を通じて影響を受けた彼らは、ここ最近幽波紋スタンド能力に目覚めた

空条ホリィもそのひとり

だが彼女には、幽波紋スタンドをコントロールできる程の精神力はなかった

幽波紋スタンドから悪影響を受け、今では命の危機だ

ディオを倒す事が、ホリィを助ける事になる

そのために、ディオの居場所がエジプトだと突き止め、そこに向かう事が決まったのだと

承太郎は説明してくれた

明日華「・・・・・・事情は大体わかったけど、どうして私を呼んだの?時間がないって言うのに、私なんかに時間を割いていいの?」

ジョセフ「わしが呼んでもらった。ご両親がディオに殺されたと言うのなら、お嬢さんにも関係のある話だと、判断したからじゃ」

明日華「そうですか・・・・・・私はドイツ人のパパと、日本人のママとの間に生まれた子です。とは言っても、ママはアメリカ人と日本人との間に生まれた人だから、私には3ヶ国の血が混ざってるんだけど。エジプトで仕事があると、パパに着いて行った事がある。ディオと会ったのはその時・・・1年くらい前の話。パパは生まれながらの幽波紋スタンド使いだった。私とママを逃すために戦ったけど・・・私を逃がそうとしたママも・・・」

突然だったが、明日華は語った

ディオとどういった経緯で、関わりを持ったのかを

明日華「あいつの狙いは、私だった。私の幽波紋スタンド能力--それは、神の領域さえも侵すような・・・そんな能力」

アヴドゥル「それは、一体・・・?」

明日華「・・・言えない。ディオもまだ、私の能力がどんなものなのか、正確には知らないはず・・・まだ、知られるわけにはいかない。それでも・・・ワガママなのはわかってる、でも・・・私も、エジプトに連れて行ってください」

ジョセフ「なんじゃと!?」

明日華「危険な旅になるのは承知の上です。お願いします」

承太郎「・・・復讐のためか?」

明日華「違う。終わらせるために、私は行く」

承太郎「終わらせる?」

明日華「・・・」


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