序章




出逢いはいつだって、唐突だ--

優姫「・・・・・・あ?」

目の前にいる4人に、思わず呆けた声を出した

4人も同じように、呆けた顔をしている

彼女と彼らの出逢いは

いや、これは再会とも言える

それは、本当に唐突だった--

優姫「・・・・・・誰お前ら?」

悟浄「第一声がそれかよ」










その日は、なんでもない日だった

いつも通りの、つまらない日常

在り来たりな一日を過ごしていたはずだった

だがそれは、1台の車に一瞬で壊された

青信号で歩道を歩いていた、はずだった

車道側の信号は、確かに赤だった

なのに、1台のトラックが突っ込んで来た

痛みがあったのかなんて、覚えていない

体が吹き飛ばされて、コンクリートの上を何度か転がったのはわかった

まあ、いいか・・・

自分が死んだところで何も変わらないし、誰も何も思わない

桜葉さくらば優姫ゆうきは、18歳にして独りだった

いや

彼女はもっと幼い頃から、独りだった

きょうだいはいない

親は彼女に関心がない

誰も彼女に近寄ろうとしない

それは彼女の見た目と、雰囲気がそうさせていた

彼女自身、あまり周りと関わらないようにしているのも原因だが・・・

中性的な顔立ちと、男口調、名前のせいでよく間違われる

しかし彼女は、歴とした少女だ

鎖骨まで長さのある、漆黒のミディアムヘア

海のような、空のような青い瞳

おまけに優姫ゆうきというこの名前

漢字だけを見れば、女の子らしいと思うだろう

だがその少女の人生も、ここで終いだろう

彼女自身も、そして誰もがそう思った

だが、実際は違った










白い羽根が、真っ暗闇の中に見えた気がした--










浮上するはずのなかった意識が浮上し、見知らぬ天井が視界に入った

優姫「・・・・・・知らない天井・・・」

ふと口から出た言葉は、誰に聞こえるわけでもなく

だがまるで聞こえていたかのように、誰かが部屋に入ってきた

優姫「・・・・・・あ?」

ここで冒頭に戻る

目の前にいる4人に、思わず呆けた声を出した

4人も同じように、呆けた顔をしている

彼女と彼らの、再会とも言える出逢いは・・・本当に唐突だった--

優姫「・・・・・・誰お前ら?」

悟浄「第一声がそれかよ」

彼女は彼らを知っていた

赤い髪の男・沙悟浄が呆れような声色で突っ込んだ

八戒「まあまあ。ひとまず、目が覚めてよかったですよ。ちょっと危ない状態でしたからね」

そう言ったのは、片方しかない眼鏡をしている男・猪八戒

悟空「血のにおいがしたからさ、何かと思ったらあんたが倒れてたんだ。助かってよかったぜ」

人懐っこい笑顔を見せながら言った男・孫悟空は安心した様子だ

ただひとり、金髪の男・玄奘三蔵は終始不機嫌そうな顔をして、ずっと黙っている

優姫「・・・・・・」

八戒「体調はいかがですか?」

優姫「・・・・・・まあまあ」

八戒「それはよかった。あ、僕は猪八戒といいます。あなたは?」

優姫「・・・桜葉優姫」

悟空「へぇ、優姫っていうんだな。オレ悟空ってんだ、よろしくな」

悟浄「俺は悟浄だ、沙悟浄」

三蔵「・・・」

八戒「三蔵」

三蔵「・・・・・・玄奘三蔵」

優姫「・・・お前らコスプレイヤーかなんかか?」

悟浄「コス・・・なんだって?」

優姫「・・・・・・いや」

体を起こそうとベッドから這い出るが、全身が痛むような感覚に動きが止まる

優姫「うっ・・・」

八戒「あ、まだ動かない方がいいですよ。何があったかはわかりませんが、ひどい打ち身でしたからね」

言いながら体を支える八戒の手を借りて、ベッドに戻る

再び横になった優姫は、大きくひと息吐き出した

八戒「差し支えなければ、何があったのか話して頂けますか?」

優姫「話す、ねぇ・・・」

八戒「あんな人気のない場所で、血塗れで倒れていたんですし・・・もしかしたら、力になれるかもしれませんからね」

優姫「・・・・・・オレどこにいたの?」

八戒「え?」

悟浄「人気のねぇ森ん中だよ。覚えてねぇのか?」

優姫「行った覚えもねぇし」

八戒「誘拐・・・に、しては扱いが雑ですし。そういう趣味嗜好なら、話は別ですが」

悟浄「お前、今さらっとやべぇこと言ったぞ?」

悟空「なぁ、ホントになんも覚えてねぇの?」

優姫「なんもとは言ってない。覚えてるよ、気を失う前の事は」

悟浄「って、覚えてんのかよ!?」

優姫「覚えてないなんて誰が言ったんだよ。森に行った覚えはないって言ったんだけど」

八戒「確かにそうですね」

悟浄「納得してんじゃねぇっての」

優姫「・・・・・・話してもいいけど、信じるか信じないかは自分で決めてよ。オレは知らん」

三蔵「・・・どういう意味だ」

優姫「そのまんま、言葉の通りだ。他に意味なんてないよ」


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