序章
出逢いはいつだって、唐突だ--
優姫「・・・・・・あ?」
目の前にいる4人に、思わず呆けた声を出した
4人も同じように、呆けた顔をしている
彼女と彼らの出逢いは
いや、これは再会とも言える
それは、本当に唐突だった--
優姫「・・・・・・誰お前ら?」
悟浄「第一声がそれかよ」
その日は、なんでもない日だった
いつも通りの、つまらない日常
在り来たりな一日を過ごしていたはずだった
だがそれは、1台の車に一瞬で壊された
青信号で歩道を歩いていた、はずだった
車道側の信号は、確かに赤だった
なのに、1台のトラックが突っ込んで来た
痛みがあったのかなんて、覚えていない
体が吹き飛ばされて、コンクリートの上を何度か転がったのはわかった
まあ、いいか・・・
自分が死んだところで何も変わらないし、誰も何も思わない
いや
彼女はもっと幼い頃から、独りだった
きょうだいはいない
親は彼女に関心がない
誰も彼女に近寄ろうとしない
それは彼女の見た目と、雰囲気がそうさせていた
彼女自身、あまり周りと関わらないようにしているのも原因だが・・・
中性的な顔立ちと、男口調、名前のせいでよく間違われる
しかし彼女は、歴とした少女だ
鎖骨まで長さのある、漆黒のミディアムヘア
海のような、空のような青い瞳
おまけに
漢字だけを見れば、女の子らしいと思うだろう
だがその少女の人生も、ここで終いだろう
彼女自身も、そして誰もがそう思った
だが、実際は違った
白い羽根が、真っ暗闇の中に見えた気がした--
浮上するはずのなかった意識が浮上し、見知らぬ天井が視界に入った
優姫「・・・・・・知らない天井・・・」
ふと口から出た言葉は、誰に聞こえるわけでもなく
だがまるで聞こえていたかのように、誰かが部屋に入ってきた
優姫「・・・・・・あ?」
ここで冒頭に戻る
目の前にいる4人に、思わず呆けた声を出した
4人も同じように、呆けた顔をしている
彼女と彼らの、再会とも言える出逢いは・・・本当に唐突だった--
優姫「・・・・・・誰お前ら?」
悟浄「第一声がそれかよ」
彼女は彼らを知っていた
赤い髪の男・沙悟浄が呆れような声色で突っ込んだ
八戒「まあまあ。ひとまず、目が覚めてよかったですよ。ちょっと危ない状態でしたからね」
そう言ったのは、片方しかない眼鏡をしている男・猪八戒
悟空「血のにおいがしたからさ、何かと思ったらあんたが倒れてたんだ。助かってよかったぜ」
人懐っこい笑顔を見せながら言った男・孫悟空は安心した様子だ
ただひとり、金髪の男・玄奘三蔵は終始不機嫌そうな顔をして、ずっと黙っている
優姫「・・・・・・」
八戒「体調はいかがですか?」
優姫「・・・・・・まあまあ」
八戒「それはよかった。あ、僕は猪八戒といいます。あなたは?」
優姫「・・・桜葉優姫」
悟空「へぇ、優姫っていうんだな。オレ悟空ってんだ、よろしくな」
悟浄「俺は悟浄だ、沙悟浄」
三蔵「・・・」
八戒「三蔵」
三蔵「・・・・・・玄奘三蔵」
優姫「・・・お前らコスプレイヤーかなんかか?」
悟浄「コス・・・なんだって?」
優姫「・・・・・・いや」
体を起こそうとベッドから這い出るが、全身が痛むような感覚に動きが止まる
優姫「うっ・・・」
八戒「あ、まだ動かない方がいいですよ。何があったかはわかりませんが、ひどい打ち身でしたからね」
言いながら体を支える八戒の手を借りて、ベッドに戻る
再び横になった優姫は、大きくひと息吐き出した
八戒「差し支えなければ、何があったのか話して頂けますか?」
優姫「話す、ねぇ・・・」
八戒「あんな人気のない場所で、血塗れで倒れていたんですし・・・もしかしたら、力になれるかもしれませんからね」
優姫「・・・・・・オレどこにいたの?」
八戒「え?」
悟浄「人気のねぇ森ん中だよ。覚えてねぇのか?」
優姫「行った覚えもねぇし」
八戒「誘拐・・・に、しては扱いが雑ですし。そういう趣味嗜好なら、話は別ですが」
悟浄「お前、今さらっとやべぇこと言ったぞ?」
悟空「なぁ、ホントになんも覚えてねぇの?」
優姫「なんもとは言ってない。覚えてるよ、気を失う前の事は」
悟浄「って、覚えてんのかよ!?」
優姫「覚えてないなんて誰が言ったんだよ。森に行った覚えはないって言ったんだけど」
八戒「確かにそうですね」
悟浄「納得してんじゃねぇっての」
優姫「・・・・・・話してもいいけど、信じるか信じないかは自分で決めてよ。オレは知らん」
三蔵「・・・どういう意味だ」
優姫「そのまんま、言葉の通りだ。他に意味なんてないよ」
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