御伽の国
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「おい!来ないぞ!!」
先に城の外に出ていた彼らは、小狼とサクラを待っていた
「川の流れが速くなった!」
グロサム「これ以上流れが速まると、渡れなくなるぞ!」
「本当にあの2人来るのか!?」
ツバキ「うるっさいわねぇ。ちょっと静かにしてくれる?」
黒鋼・ファイ「「・・・・・・」」
黒鋼「・・・来た」
ザバ
ファイ「ひゅー♪『やった』ね--小狼君」
ツバキ「【ホッ】・・・」
黒鋼の手を借りて水から上がってきたのは、サクラを抱えた小狼だった
「先生は!?」
小狼「わ・・・かり、ません」
ファイ「追って来ないってことは・・・・・・城と運命を共にした・・・かなぁ」
気を失っていたサクラが目を覚ますと、優しく微笑んで子供の頭を撫でる仕草をする、エメロード姫がいた
エメロード《子供達を助けてくれて、本当にありがとう》
彼女が手をかざすと氷が溶け出し、羽根はサクラの中に戻っていった
エメロード《この羽根を、貴方に返せて良かった。
気を付けて。誰かがずっと、貴方達を視ている》
サクラは羽根が戻ったことで、ツバキも安心感からか、緊張が解けたからか
2人は眠ってしまい、その言葉の意味を聞くことは--出来なかった
「本当に良かった!」
「どこも痛いところはない!?」
「心配したのよ!」
無事に親元へと帰された子供達
その再会の様子を、2階の窓から見下ろすモコナが振り返る
モコナ「みんな、嬉しそう!」
ファイ「カイル先生は子供達を傷つけたりはしなかったみたいだしねぇ」
黒鋼「羽根を掘り出すための労働力だからな。わざわざ怪我させたりはしねぇだろ」
ファイ「しかし、カイル先生が催眠術を使ってたとはねぇ。でも、サクラちゃんとツバキちゃんが見たっていうエメロード姫は、なんだったんだろう?先生、2人にも催眠術掛けてた?」
小狼「そんな様子はなかったと思います」
ファイ「じゃあ、羽根の力ー?」
モコナ「ソレだったら、モコナがわかったと思う」
小狼「サクラ姫とツバキさんが視たのは、エメロード姫の
ファイ「玖楼国の人って、みんなそうなのー?」
小狼「いいえ。おれが知る限り、今は神官様とサクラ姫だけです」
ファイ「小狼君はー?」
小狼「【ふるるるる】」
ファイ「黒るーは?」
黒鋼「んなもん視えねぇ」
ファイ「オレもそっちの力はないなぁ」
モコナ「幽霊だったら、モコナ視えないし感じない」
ファイ「そうなんだー」
モコナ「幽霊とか視えるのは、黒くて、青いお耳飾りのモコナなの♡」
黒鋼「なんかいたな。黒いまんじゅうみたいなのが。役に立たねぇな、白まんじゅうは」
モコナ「モコナ頑張ったもん!大活躍だったもん!!」
ぽかぽかぽか
黒鋼を叩くモコナを、冷や汗を流して見ている小狼
ふと外を見ると、本当に嬉しそうにしている町の人達、そして
嬉しそうに笑顔を見せているグロサムが、小狼の視界に入った
ツバキ「【ひょこっ】不器用よねー、あの人」
小狼「うわっ!?ツバキさん!いつの間に・・・!?」
ツバキ「町長さんから聞いた話。カイルが掛け合う前から、土地代は豊作になるまで待つって、町長さんに言ってあったらしいわ」
小狼「え?」
ツバキ「それとこの宿。ここも元はグロサムさんのものだったけど、病院にするならって、無償で貸してたらしいわ。子供達が姿を消してからも、徹夜して探してたんだって。なんだかんだで、あの人は町の人達のことを一番に考えていたのよ。ほら、ね?不器用な人だと思わない?」
小狼「ツバキさん・・・・・・そうかもしれませんね」
モコナ「サクラが起きたー!」
小狼「大丈夫ですか!?」
サクラ「ずっと・・・誰かが視てる・・・って、どういうこと・・・?」
ツバキ「!」
小狼「姫?」
サクラ「もう一度、エメロード姫に会わなきゃ・・・!」
借りた本と記録、置き手紙をその部屋に残し、彼らは宿から静かに出て行った
正しいエメロード姫の伝説を、語り継いでほしい、と--
サクラ「・・・・・・だめ。エメロード姫・・・どこにもいない・・・」
モコナ「前に、侑子言ってた。心配なことがなくなったら、霊はどこかへ行くんだって」
黒鋼「成仏する、ってことか」
ツバキ「それが一番近い言い方かもね。私も、もしかしたらとは思ったけど・・・やっぱり逝ったあとかぁ」
ファイ「よっぽど子供達のことが心配だったんだねぇ、金の髪のお姫様。けど、エメロード姫がサクラちゃんとツバキちゃんに教えてくれた、『誰かがずっと視ている』っていうのは、どういう意味なんだろー」
小狼「もうひとつ、わからなかったことがあるんです。カイル先生はどうして、あの城の地下に羽根があると知ったんでしょう」
黒鋼「本にあったとかじゃねぇのか」
小狼「グロサムさんに聞きました。羽根がエメロード姫の亡くなったあと、どこにあるか書かれた本はないそうです。それに、そんな伝承もないと」
ファイ「この旅にちょっかいかけてるのがいるってことかー」
小狼「『誰か』が」
疑問と疑念を抱いたまま、彼らは次の世界へと旅立つ
さて、今度の行き先はどんな世界で--
どんな困難が待ち受けているのか--?
「御伽の国」ジェイド国編、完