御伽の国
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カイル「・・・金の髪の姫を見たんですか?」
サクラ「ごめんなさい。わたしがあの時、外に出ていれば・・・」
ツバキ「・・・・・・」
カイル「夢だと思ったんでしょう。雪の中を歩いているドレスの女なんて、現実じゃないと思うのは当然です」
ファイ「町の人達は、そう思ってないみたいでしたけどー」
カイル「『スピリット』の人達にとって、あの伝説は真実ですから」
小狼「史実ということですか」
カイル「この国、『ジェイド国』の歴史書に残っているんですよ。“三百年前にエメロードという姫が実在し、突然王と妃が死亡し、その後、次々と城下町の子供達が消えた”」
小狼「子供達はその後、どうなったと書かれているんですか?」
カイル「“いなくなった時と同じ姿では、誰一人帰って来なかった”と」
黒鋼「そりゃあ、生きて帰ってこなかった、ともとれるな」
カイル「城は既に廃墟ですが、その時とあまりに似ているので。町の人達が伝説の再現だと思ってしまうのも、無理はないんですが・・・」
小狼「町で金の髪の姫を見たのは、他には・・・」
カイル「いません。サクラさんとツバキさんとおっしゃいましたね。貴方達が初めてです。その事で、グロサムさんが何か言ってくるかもしれません」
ファイ「サクラちゃんとツバキちゃんは、初めての目撃者かもしれないものねー」
小狼「その『ジェイド国』の歴史書は、読めるでしょうか」
ファイ「この国の歴史書が読みたいのは、純粋な興味ー?」
小狼「それもありますが、確かめたいことがあって」
ファイ「おっとー。ここだねぇ。お医者さんに教えてもらった町長さんち。歴史書はグロサムさんとこにもあるらしいけど。まぁ、あの人は貸してくれそうにないでしょー」
ちりんちりーん
ツバキ「案外、それが罠・・・とか・・・」
黒鋼「罠?」
カチャ
「は・・・はい」
ファイ「申し訳ありませんー。町長さんはご在宅ですかー」
「あ・・・あの」
町長「君達は、カイル先生の所にいた・・・!」
ファイ「こんにちはー」
町長「これで、二十一人目だ」
ファイ「手掛かりになるようなものは何も?」
町長「残されていなかったよ。今回もね。数年前から気候が安定してなくて、ずっと凶作が続いているんだ。そうでなくとも皆、気が立っているのに、どんどん子供が消える。その上、三百年前の伝説まで・・・」
小狼「子供が最初にいなくなったのは?」
町長「二ヵ月前だよ。早朝、木の実を拾いに行って、そのまま帰らなかった。それから一人消えたり、三人一緒だったり。大人達は何度も、夜、外へ出てはいけない。知らぬ者について行ってはいけないと言い聞かせている」
ツバキ「なのに、いつも暴れた様子もなく、子供だけがその場から消えている」
町長「そうだ」
ツバキ〈そういうことか・・・〉
町長「三百年前の、この国について書かれた歴史書だ。エメロード姫についても伝わっている。話よりは詳しく書き記されている。わしも何度も読んだが、今回の件の手掛かりは見つけられなかった。読み終わったら、すぐに町を出なさい。取り返しのつかないことになる前に」
小狼「ありがとうございます。でも、やらなければならないことがあるんです」
町長から借りた歴史書を広げ読みながら、小狼は馬に乗っている
が、枝にぶつかることも、馬の足が幹に引っ掛かることもない
サクラはファイの馬に、ツバキは黒鋼の馬に乗っている
ファイ「ひゅー。すごいねぇ、前も見ずに」
黒鋼「人の服ん中で動きまわるな!」
モコナ「黒鋼、退屈そうだから。くすぐってあげたのーん♡えへへー」
ツバキ「ぷふっ」
小狼「この先です」
ファイ「あれが北の城かあ」
黒鋼「しかし、これでどうやって城まで行くんだよ」
モコナ「黒鋼、渡れない?」
黒鋼「無理だろう。特に、子供をつれてじゃあな」
ツバキ「流れが早過ぎる。自殺行為よ」
小狼「この川は、三百年前にもあったようですね」
ファイ「昔はどうやって城に入ってたんだろー」
小狼「ここに橋があったんでしょう」
ファイ「これ以外に、城に行ける方法は見当たらないねぇ」
黒鋼「じゃあ、やっぱり子供達を城へ連れ去るのは無理ってことか」
ツバキ「本当にそうかしら・・・」
黒鋼「あ?」
ツバキ「見えているものだけが、全てとは限らないわ」
小狼「・・・・・・」