秘術の国
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秘妖「ところで、娘よ。これはお前のものではないのか」
ツバキ「え?」
そう言って見せられたのは、秘妖の人差し指にとまる1羽のアゲハ蝶
淡い紅の光を放つ、1羽のアゲハ蝶
ツバキ「それ、私の・・・!」
秘妖「・・・やはりか」
ファイ「ここにあったんだー、ツバキちゃんの蝶」
秘妖「いや、これだけではない」
黒鋼「あ?」
秘妖「あの
ツバキ「えっ?」
ファイ「つまりこの世界には、ツバキちゃんの蝶は2羽いた・・・ってことかな」
秘妖「・・・・・・ひとまずこれは、娘に返そう。さあ、帰るがいい」
優しく呟かれた言葉に従うように、アゲハ蝶は秘妖の人差し指から飛び立つ
フワ
パアアア
アゲハ蝶が戻り、眠ってしまったツバキを黒鋼が受け止める
秘妖「・・・・・・やはり、お前の言った通りになったな。ツバキ」
ファイ「え?」
黒鋼「てめぇ、まさか・・・」
秘妖「その娘・・・ツバキは、私の友だ。今の蝶は、秘妖の国に迷い込んできたものだ。すぐに蝶から感じる力が、ツバキのものだとわかってな。だから、私が預かることにした。ツバキに返せるその日が来るまで、私が預かっていた」
ファイ「ああ、なるほど。だからこの国にアゲハ蝶が2羽いたんですねー。この国に迷い込んできたアゲハ蝶と、秘妖さんが預かっていたアゲハ蝶」
秘妖「その通り。さあ、もう行け。ツバキを・・・私の友をどうか、よろしく頼む。記憶のない今はどうかわからぬが、元のツバキは自分より他人を優先し、無茶ばかりする。かなり困った娘だ。ツバキには心の支えが必要となるであろう。決して、道を違えさせるな」
黒鋼「どういうことだ?」
秘妖「いずれ分かるであろう。さあ、もう行け」
黒鋼・ファイ「「・・・・・・」」
秘妖「・・・・・・本当に、これでよかったのか?ツバキ」
ツバキ『・・・・・・次に会った時、きっと私はあんたのこと、覚えてないと思う。でもね、だからって悲しんだりしないでね?いつか、ちゃんと思い出すから』
秘妖『ツバキ・・・』
ツバキ『もし、私の力を持つ何かが秘妖の国に来たら・・・それを預かっててほしいの。私が来るその時まで。お願い』
秘妖『それは構わぬが・・・ツバキ、お前は一体・・・』
ツバキ『言えない。言って、何かが変わってしまったら・・・』
秘妖『・・・・・・そうか。何かを視たのだな』
ツバキ『・・・・・・あのね。私と一緒に旅をしている人達にも、会うと思うの。でも、その人達には何も言わないでほしいの。この会話のことも、今のお願いのことも。絶対に言わないで』
秘妖『ツバキ。独りと一人は違う。それをよく覚えておけ』
ツバキ『・・・ヘヘッ』
秘妖「お前はあの時、笑っただけだったな。独りで抱え込むなよ、ツバキ。でなければお前は、己自身を潰すことになる」
両目を細め、悲しそうにひとり呟く秘妖
記憶をなくした友を思いながら、守ることが正しいのか未だに判断できない約束を守ったことに、疑問を抱いた
だが何よりも彼女が思うのは、友の身と心の無事だった
ツバキ「・・・・・・ん・・・」
ファイ「あ。ツバキちゃん、起きたみたいだねー」
まだボーッとした意識の中、体が揺れていることくらいしか認識できていない
ツバキ「・・・・・・ファイ・・・?」
ファイ「うん、おはよー」
黒鋼「呑気に挨拶なんかしてる場合か」
頭上から声が聞こえたので見上げてみれば、そこには黒鋼の顔が・・・
黒鋼の、顔が・・・
ツバキ「・・・・・・え?・・・え、ちょっ、は?なんで黒さまの顔がドアップなわけ?」
黒鋼「あ?」
ファイ「黒さまがツバキちゃんを、お姫様抱っこしてるからなんだよー」
ツバキ「っ///!?ちょっ、ちょっ!降りる!」
黒鋼「うるせぇ。いいから大人しくしてろ」
ツバキ「やだ。降りる」
黒鋼「さっきまで寝てたんだ。どうせまだ足元フラつくだろ」
ツバキ「う・・・」
黒鋼「お前に合わせてるより、こっちの方が早ぇんだよ」
ツバキ「・・・・・・」
図星を突かれ、黙るしかなくなったツバキが大人しくなる
最初からそうしてろ、と言い出しそうな顔をして見下ろした黒鋼が前を向く
そんな様子の2人を見て、横を走っていたファイは微笑むと後ろに下がる
元々は黒鋼の後ろを走っていたのだ
やはりまだ眠気が残っているツバキは、黒鋼の胸板に頭を預ける
もたれ掛かってきたツバキに一瞬だけ視線を向けるがすぐに上げ、特に気にすることなく進んでいく
最上階へ向かって--