３２番街・風月

ジューーー

小狼「これって・・・」

黒鋼「【じーっ】」

正義「僕、ここのお好み焼きが一番好きだから！あの、あの。モダン焼きにしたんですけど、トン平焼きの方が良かったですか？」

ツバキ「どっちでも良いわ」

黒鋼「【じー】」

ファイ「『おこのみやき』っていうんだ、これー」

正義「えっ？お好み焼きは阪神共和国の主食だし、知らないってことは・・・・・・あ、外国から来たんですか？」

ファイ「んー、外と言えば外かなぁ」

正義「？？？」

黒鋼「【じーっ】」

ツバキ「【冷汗】・・・・・・そんなに珍しい？」

ファイ「いつも、あの人達はあそこで暴れたりするのー？帽子被った人達と、ゴーグル掛けた人達ー」

正義「あれは、ナワバリ争いなんです。チームを組んで、自分達の巧断の強さを競ってるんです」

ファイ「で、強い方が場所の権利を得る、と」

小狼「でも、あんな人が多い場所で戦ったら、他の人に迷惑が・・・」

ファイ「そうだねぇ」

ツバキ「本当よ！思い出しただけでムカついてくるわ！」

ファイ「あはは。ツバキちゃん、口調変わっちゃう程ムカついてるんだねぇ？」

ツバキ「あ・・・」

ファイ「気にしなくてもいいよ。そっちの口調の方が、なんからしいなぁって思えるから」

ツバキ「な、何よそれ・・・」

正義「あの・・・悪いチームもあるんですけど、いいチームもあるんです！自分のナワバリで不良とかが暴れないように見回ってくれたり、悪いことするヤツがいたらやっつけてくれたり」

小狼「自警団みたいなものなんですね」

ファイ「さっきのチームはどうなのかなぁ」

正義「帽子被ってた方は、悪いヤツらなんです！でも、あのゴーグル掛けてた方は違うんです！他のチームとの戦い（バトル）の時、ちょっと建物壊れたりするんで大人の人は怒るけど、それ以外の悪いことは絶対しないし、すごくカッコいいんです！特に、あのリーダーの笙悟さんの巧断は特級で、強くて大きくて、みんな憧れてて！」

ひとり熱く語っていた正義だったが、はっと我に返る

正義「す、すみません！」

ファイ「憧れの人なんだねぇー」

黒鋼「【じーっ】」

正義「は、はい！」

黒鋼「【じーっ】」

ツバキ〈モコナが楽しそうに黒鋼の頭上で見てるのはともかく、黒鋼がこうもじーっとお好み焼きを見てるのって・・・なんか可愛いかも〉

正義「でも小狼君とツバキさんにも憧れます」

小狼・ツバキ「え？」

正義「特級の巧断が憑いてるなんて、すごいことだから」

ツバキ「あ。それ、あいつも言ってたわね。えっと・・・浅黄笙悟、だっけ？その、特級ってなんなの？」

正義「巧断の『等級』です。四級が一番下で、三級、二級、一級と上がっていって、一番上が特級。巧断の等級付け制度は、ずっと昔に国によって廃止されてるんですけど。やっぱり、今も一般の人達は使ってます」

ファイ「じゃあ、あのリーダーの巧断ってすごく強いんだー」

正義「はい。小狼君とツバキさんもそうです。強い巧断、特に特級の巧断は、本当に心が強い人にしか憑かないんです。巧断は自分の心で操るもの。強い巧断を自由自在に操れるのは、強い証拠だから・・・憧れます。僕のは・・・一番下の四級だから」

小狼「正義君・・・」

ファイ「でも一体いつ小狼君とツバキちゃんに、巧断が憑いたんだろうねぇ」

黒鋼「【うずうずうず】」

小狼「そういえば。昨日の夜、夢を見たんです」

ファイ「んん？夢？」

黒鋼「【そろーっ】」

ツバキ「そういえば、私も変な－－」

男「待ったーーー！！！」

びくぅっ

スカー

ツバキ「ゆみゃっ！？」←「夢」と言いたかった

〈〈〈ゆみゃっ？〉〉〉

現れたのは、２人の男性店員だった

小狼「王様！？と、神官様！？」

ツバキ「・・・？」

小狼「お・・・王様！どうして、ここに！？」

ツバキ〈あ、名札・・・〉

木之本「誰かと間違ってませんか？俺はオウサマなんて名前じゃないですけど」

小狼「え？」

木之本「お客さん。こっちでひっくり返しますんで、そのままお待ち下さい」

黒鋼「お、おう！」

ひっくり返そうとしていた黒鋼に注意し、店員２人は仕事に戻った

ファイ「王様って、前いた国の？」

小狼「はい・・・」

ファイ「で、隣の人が神官様かー。次元の魔女が言ってた通りだねぇ。『知っている人、前の世界で会った人が、別の世界では全く違った人生を送っている』って」

黒鋼「なら、あの２人はガキの国の王と神官と同じってことか」

ファイ「同じだけど同じじゃない、かなぁ。小狼君の国にいた２人とは、全く別の人生をここで歩んでるんだから」

ツバキ「『根元』」

黒鋼「あ？」

ツバキ「きっと、『根元』は同じなのよ」

黒鋼「根元？」

ツバキ「命のおおもと、性質、心・・・色んな言い方があるわ」

黒鋼「『魂』ってことか」

ツバキ「まあ、そうとも言えるわね。ん？」

小狼「・・・・・・」

ツバキ「小狼」

小狼「【ハッ】」

ツバキ「どうしたの？ぼーっとして。なくなるよ」

小狼「あ、はい。すみません」

ツバキ「・・・心配？王と神官のこと」

小狼「え？」

ツバキ「そう言いた気な顔してるわ」

小狼「・・・・・・」

ツバキ「あんたがここで考えてても仕方ないわ。今はただ、信じるのみよ。ね？」

小狼「・・・・・・はい。ありがとうございます」