序章
「リベッチオ」というリストランテ
そこに、クラゲのような髪型の銀髪を揺らしながら、ひとり入店して行った
気怠げに、深い青色の瞳が半分閉じられている
欠伸を噛み殺しながら、奥へ向かう
ギャング組織「パッショーネ」に所属するブローノ・ブチャラティという男が率いるチームがここにいる
パンナコッタ・フーゴ
レオーネ・アバッキオ
ナランチャ・ギルガ
グイード・ミスタ
そして今入って来たこの少女、ジャネットと呼ばれる彼女もメンバーだ
ナランチャ「あ、ジャネットじゃん!」
フーゴ「おやジャネット、珍しいですね。こんな遅くに来るなんて」
ジャネット「・・・・・・ブローノは?」
フーゴ「涙目のルカがやられました。それを探りに行ってますよ」
ジャネット「・・・そう」
ミスタ「おう、ジャネット!なんか食うか?」
ジャネット「要らない」
フーゴ「衣食住はちゃんとする事。以前から教えてますよね、ジャネット」
ジャネット「・・・」
不服そうにするジャネットだが、見かねたフーゴがリゾットを注文するのを見て席に着いた
すると、水が入ったグラスが静かに差し出された
隣のアバッキオだ
ジャネット「・・・ぁ、ありがとう」
アバッキオ「・・・」
ぎこちない言い方だったが、アバッキオは特に咎める事はない
周りのメンバーもだ
運ばれてきたリゾットをモソモソと食べていると、ひとりの男がテーブルにやって来た
ブローノ・ブチャラティだ
ジャネット「ブローノ」
彼の姿を見つけるなり、食べかけのリゾットとスプーンをテーブルに残し、ブチャラティに飛び付いた
ブチャラティ「っと」
危なげなく抱き留めると、頭に掌を乗せる
腰まで長さがある、クラゲのような髪型の銀髪をすくように撫でる
ブチャラティ「まだ食事の途中だろう?冷める前に済ませてしまえ」
ジャネット「・・・ん」
ブチャラティ「お前、目の下・・・また隈ができているな。眠れなかったのか?」
ジャネット「・・・ん」
ジャネットには甘いブチャラティが、優しい声色で話す
彼女がこんな風に、ブチャラティに不器用に甘える様子はいつもの事だった
そしてたまに、目の下に隈ができる事も
時折、彼女は眠れなくなる事があった
ブチャラティ「寝かしつけてくる。あとで話があるから、また戻る」
フーゴ「わかりました」
食事を終えたジャネットは満腹感からか、眠気で舟を漕ぎ始めた
その様子に気付いたブチャラティが立ち上がると、ジャネットを抱えて店を出た
ジャネット「・・・ブローノ、話ってなに?」
ブチャラティ「ああ。明日、新しい仲間が入る事になるだろう。お前にもきちんと紹介するから、頼むぞ」
ジャネット「・・・ん〜」
ブチャラティ「聞いてないな」
ジャネット「・・・きーてる」
ブチャラティの首に腕を回すと、眠気からか気怠そうな声で言う
苦笑した彼は一度ジャネットを見下ろすと、帰路を真っ直ぐ歩いて行く
こんな風な彼女は、独りで眠る事ができない
ブチャラティも彼らも、それは理解していた
不定期で起こる、不安定な精神状態の彼女だった
こうなると、完全に寝つくまで離れられない
ベッドに横にさせるも、眠そうにしている彼女はなかなか瞼を閉じない
16歳にもなって寝かしつけると彼が言ったのは、ジャネットが寝入るまで独りにしない事を意味していた
いつだったか、ブチャラティが誕生日にプレゼントしたうさぎのぬいぐるみを抱き締め、ようやく眠ったジャネットの頭を撫でる
ブチャラティ「
眠る彼女の額にキスを落とすと、彼はジャネットの部屋からそっと出て行った
ミスタ「お?ジャネット寝たか、お兄ちゃん?」
店に戻ると、やけにニヤニヤとした顔のミスタに聞かれる
ブチャラティ「ああ。って、なんだそのお兄ちゃんっていうのは?」
アバッキオ「まだ自覚ないのか、ブチャラティ?本物の兄妹以上にシスコンだぞ、お前」
ブチャラティ「ッ・・・」
アバッキオ「まああいつの甘え方もどうかと思うがな」
ナランチャ「ブチャラティってさぁ?ホントにジャネットとは付き合ってねぇの?兄妹っつーかさぁ、なんか恋人って感じに見えんだよなぁ」
ブチャラティ「付き合ってない」
フーゴ「まあ、そもそもジャネットには男女の駆け引きなんて無理でしょう。恋愛がどういったものかもわかってないしな、彼女・・・」
ため息混じりにフーゴが言う
フーゴ「そんな事より、ブチャラティ?先程の話というのは?」
ブチャラティ「ああ」
これは、ジョルノ・ジョバァーナがやって来る・・・前日の話だ--
1/1ページ