デュエル・オブ・フォーチュンカップ編
私は、どこの誰なんだろう・・・?
どこへ向かえばいいのだろう・・・?
なにもわからない
なにも思い出せない
鏡を見ると、そこに映るのは私自身
そんな私にいつも、私はこう問い掛ける
“あなたはだれ--?”
ここは、ダイモンエリア--
不動遊星は氷室、矢薙、雑賀とここに来ていた
友人と来ていた少年・龍亞が遊星に気付く
セキュリティから追われていた遊星を、匿ってくれた少年が龍亞だ
双子の妹・龍可は家で留守番をしているらしい
話をしていると、遊星が右腕に痛みを感じた
辺りにいた多くのデュエリストや観客が、黒薔薇の魔女が出たと騒ぎ始める
黒い荊棘が、周囲を襲う
この時、遊星は視界の端に星を見た気がした
そちらに顔を向けると、ぼうっとした様子の少女が立っていた
彼女に荊棘が向かっていくのを見て、遊星は駆け出す
少女に向かって手を伸ばす
荊棘を避ける事はできたが、遊星は少女と共に地面に倒れ込んだ
キンッと小さな金属音が鳴ったが、遊星は気付かない
少女の無事を確かめる間もなく、体を起こした遊星は土煙に目を向ける
土煙の中には、ドラゴンの影があった--
遊星「ドラゴン・・・?ッ」
右腕の痛みに、グローブを外し袖を捲る
そこには、なかったはずの痣が浮かび上がっていた
矢薙「あんちゃん・・・」
氷室「おい、こんなのあったか?」
矢薙「これがシグナーの印だよ。竜の痣なんだ」
龍亞「竜の、痣・・・」
その時、眩い光が土煙の中から放たれた
そこに向かって駆け出す遊星に、龍亞もついて行く
黒いローブに身を包み、仮面で顔を隠した女がいた
遊星「魔女・・・」
龍亞「あれが、魔女・・・?」
思わず前に出ようとする龍亞を、遊星が片手で制した
そこに遅れて、氷室達も駆け寄る
雑賀「黒薔薇の魔女・・・本当にいたんだな」
矢薙「おったまげた・・・!」
魔女と呼ばれる彼女は、遊星の右腕に赤く光る痣を見つける
そして呟かれる「お前も・・・」という一言
これに反応したのは、遊星だ
遊星「お前も?」
魔女「忌むべき印だ!」
そう叫ぶと、魔法カードをデュエルディスクにセットした
途端に吹き荒ぶ強風に、全員が顔を庇って目を閉じる
風が止んで顔をあげた時、魔女はもうそこにはいなかった
氷室「いない・・・!?」
矢薙「今のなんだ?ソリッドビジョンなのになんで
全員が動揺する中でただひとり、遊星だけは冷静だった
雑賀「お前を見た魔女の反応・・・気になったが・・・」
遊星「・・・」
沈黙したまま、自身の右腕を見る遊星
だがそこには痣はない
また、消えてしまったのだ
龍亞「あ!消えてる!」
矢薙「なんで!?勿体無い!」
遊星「きっと、あの魔女にも痣がある。お前も、と・・・魔女は言ったんだ」
その言葉に呆然とするも、先に声をあげたのは雑賀だった
雑賀「そういや遊星?さっきお前が庇った子は・・・」
ハッとした遊星が振り返ると、あの少女はまだ倒れたままだ
すぐに駆け寄り、上体を抱き起こす
遊星「おい、大丈夫か?おい!」
だがいくら声をかけても、少女の目蓋が開く事はない
氷室「ダメだな、完全に気を失ってやがる」
よく見ると、腰まである長い髪は珍しい銀色だ
さっき見たと思った星は、この髪色と見間違えたのだろう
雑賀「見たところ、外傷は無さそうだな。ひとまず病院に、と言いたいところだが・・・この辺の病院はなぁ・・・」
龍亞「あ。遊星!これ、この人のかな?」
気付いた龍亞が手にしたのは、銀色のロケットペンダント
遊星が気付かなかった金属音は、このロケットペンダントが落ちた音だった
龍亞から受け取ったロケットペンダントを見つめると、裏返す
そこには「Lisha・Materials」という文字が刻まれていた
遊星「・・・リーシャ・マテリアル?」
氷室「この子の名前か?にしても、なんでこんな子供がここにいるんだ?」
ロケットペンダントを開くと、そこには何も入っていなかった
せめて家族写真でも入っていれば、彼女の身元がわかるかと思ったのだが
他に持ち物も見当たらないため、この少女の身元はわからない
そんな少女を、治安がいいとは言えないここの病院に連れて行くのも、という話になり
最終的に、少女を庇ったくせに放置していた自分の責任だと、遊星が引き受けた
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