cotton Candy
夢小説設定
この小説の夢小説設定夢主の設定
・20歳
・職業は芸能界関係、所謂アイドル。(ある理由で隠している)
・尚、芸能界ではMCnameを使っているので、本名は公開していない。
・控えめの性格。
・容姿については任せます。
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『お疲れ様でした〜』
夜9時過ぎ、ほぼ全てのスケジュールを終え関係者の皆さんに挨拶をしながら建物を出る。
今年で20歳になる私。しかしこの歳になっても未だに免許を持っていない私は家まで電車と徒歩で帰る他ない。
そろそろ免許を取ったほうがいいのだろうとは思う。合宿だと期間も短いしお金もそうかからないとは聞いているが、やっぱり運転するのは些か緊張してしまいそうで集中が出来なさそうなのだ。
『…雨降ってきそうだなあ…』
湿っぽい、雨の前触れのような香りを感じ空を見上げると案の定、空は暗い雲で一面覆われていた。
『降られないうちに帰れたらいいけど…』
冷んやりとした空気が頬をくすぐる。もうすぐ秋も終わりを迎えるのだ。今雨が降って濡れたらきっと風邪をひいてしまう。
降らないで。と、そんな思いも虚しく、ぽつりと頬に雨粒が当たる感覚。
やばい、降ってくると思った時にはもう遅く、ぽつぽつだった雨は一瞬で土砂降りの雨へと変化していった。
『うう…まさかこんなに降ってくるとは…』
運良く近くにあった建物で雨宿りができたはいいものの、雨は暫く止む様子が無い。
仕方がない、今日は歩いて帰ろう。
そう思った時、救世主は訪れた。
「あ、やっぱり凜さんじゃないですか。」
車が目の前で止まったかと思えば運転席側の窓が下がり、現れたのはよく見知った顔だった。
『一郎くん、お久しぶりだね』
「はは、奇遇ですね、こんなところで。今帰りですか?すごい雨ですし、送ってきますよ。」
『え、でも…いいの?私なんかが乗っちゃって…』
「たまたま通りかかったのも何かの縁なんで、大丈夫ですよ。」
『…じゃあ、お言葉に甘えようかな…?』
「じゃあ、隣空いてるんで乗ってください!」
人懐っこい年相応の笑顔に似合わず対応は大人だった。
ありがとう。と一言お礼を言ってシートベルトを閉めたのを確認すると、一郎くんはアクセルを踏み込む。
「そういえば、あんなとこで止まってたってことは、仕事帰りですか?」
ギク、
一郎くんの何気ない一言に私は少しだけ動揺してしまった。
…というのも、私の仕事は関係者以外には話していないのだ。
とてもじゃないかもしれないけれど人に言えるようなものではないから。
『う、うん!そう、仕事帰り…い、一郎くんも依頼終わったとこ?』
「そうっすね。それでついでに買い物もしてたらこんな時間で。一応弟達には飯作っといたんすけど…あいつら喧嘩してねえかな…」
そう良い、困ったように笑う彼の手元を見ると先程まで助手席に置いていたのであろう買い物袋が腕に掛かっていた。
急に私が乗ることになったから後ろに乗せる事が出来ずに仕方なく持っているのだろう。
申し訳ないと思い、信号で車が止まったところで私が持ちます…!と言っても大丈夫っすよ。と渡してくれない一郎くん。
お兄ちゃんを全面的に出してきてどっちが年上なのか分からなくなるのはこの人の良いところであり、悪いところだ。
「そういえば、また頼むこととかないですか?凜さんは常連さんなんで、いつでも引き受けますよ!」
『ありがとう、一郎くん。でも今は特にない…かな。』
「了解です。なんかあったらいつでも言ってくださいね。」
『うん。…一郎くんは頼もしいね。』
「そう…ですかね?まだ弟のこともあるんで、こんなんで頼もしいなんて思えないですけどね。」
一郎くんとは萬屋ヤマダで知り合った。
初めは緊急で依頼を頼んでいたのだけれど、なんでもやります!と言ってきたのでじゃあ、お言葉に甘えて…と、今では故障した用具や家具を直してもらったり帰りが遅い時にご飯を作ってもらったりと自分でも甘えすぎではないかと不安になるほど頼んでいる。
もちろん、毎回依頼料は払っているけれど、ほとんどが「このくらいのことで受け取れないですよ、」と受け取ってもらえない。
このくらいのこと、とはいえ私からしたらとても助かっているので、毎回受け取るか受け取らないかという話になるのだけど毎回うまく言いくるまれ、結局は受け取ってくれないというのが大概なのだ。
流石にいつかまとめてお返しをしなければとは思っている。
「…そういえば凜さんはお仕事何してるんですか?」
「え!?あ、うん、えっとね…」
避けていた話題を出されて動揺してしまう。
どうしようか、話題を変えるのは流石に不自然だ。かと言って本当のことをいうのは避けたい。
『えっ、と…』
「…答えたくなければ、答えなくても良いんですよ?プライベートですし。」
『い、いや、私は、その…か、会社員です!ただの、その…え、映像関係の、会社の…』
平然と、嘘をついてしまった。
でも、言えない。言えるわけがない。
20歳にもなって、芸能関係の…“アイドル”という仕事をしているだなんて。
偽名…WINという名前で活動し、なるべく正体を隠してはいるものの、顔は変えられないので、もし似てると言われてもそっくりさんと言うことで誤魔化してはいる。
でも、いつかはバレてしまう。
そんなことは分かっている。けれど、皆に…特に、この人にはバレたく無い。
『ほ、ほら、普通の会社員の私が一郎くんみたいな有名人の近くに居ていいのかなって不安になって…ね?』
「はは、そんなに心配しなくていいのに。凜さんは依頼人なんですから。」
『う、うん、そうだよね…あ、そうだ、送ってくれた依頼料…』
「いらないっす。これは俺がやりたいって思ってやってるだけなんで。…着きましたよ。」
財布から出した諭吉さんを受け取ることなく、一郎くんは私の住んでいるマンションの前に車を止める。
『ありがとう一郎くん。…また今度お礼させてね。』
「いや、大丈夫っすよ?」
『いや、私の気が済まないの。せめて、ご飯とかだけでもご馳走させて?』
「あー…じゃあ、凜さん手作りのご飯食いてえな…」
『そんなのでいいなら作ります!』
「え、マジですか?楽しみにしてますね!」
『うん。勿論弟くん達も連れてきていいからね。』
「…了解です。」
じゃあ。と一言言うと一郎くんは手を振って去っていった。
さてと、一郎くんの好きな食べ物のリサーチ…と、これから食べるご飯を作らなくては。