このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

あなたのところへ




待ってばかりの生活に疲れていたのかもしれない。長い間信じて待ち続けた心が、限界を感じていたのかもしれない。
私は、その手の暖かさに縋るように、六代目の胸に顔を埋めた。



サスケくんを待つ時間が苦しくなっていったのはいつからだろう。あの大戦後、サスケくんは旅に出た。私も連れて行って欲しいと願ったが、それは断られた。
だけど、やっとサスケくんが仲間として戻ってきた喜びでいっぱいだった。だから落ち込んだりせず、耐えれていたのだ。

だけど2年、3年と月日が経つとどんどん苦しくなっていった。
それは、大戦まではナルトやいのや仲間が居て、みんなでサスケくんを取り戻そうとしていた時とは違う苦しみだった。
今、ナルト達は大戦の影響で様々な問題を解決する任務で大変だったし、それぞれに道を見つけて歩んでいた。

かく言う私も毎日任務だけじゃ飽き足らず、あの人の事を考える時間が怖くて、この先、木の葉に必要になるであろう医療忍術の研究を積極的に行っていった。

睡眠時間が気持ちと反比例して擦り減っていた頃、急に目の前に光が見えたと思ったらぐにゃりと視界が揺れた。
睡眠不足と過労だった。



目を覚ますと、そこは私の部屋だった。真っ黒な部屋から夜だとわかった。視界が慣れてきて、今はいったい何日なんだろう、と身体を起こそうとすると、隣に気配を感じた。びくりとして目を凝らしてよく見てみるとそれが六代目、カカシ先生だと分かると余計びっくりした。 


「カ、カカシ先生?」
「んー…、あ、目が覚めた?」

カカシ先生も眠っていたのか、目を開けていつものように穏やかに笑った。

「サクラ、お前が頑張りやなのは知ってるが、頑張りすぎるのは良くないぞ」
「え、は、はい。あの、カカシ先生…じゃなくて六代目はなんでここに?」
「カカシ先生でいいよ」

ここに居るのは、私が倒れる瞬間たまたま鉢合わせたカカシ先生が、地面に倒れる前に私を支えてくれたかららしい。
そしてそのまま私の自室まで運んでくれたのだとか。

「それはそれは大変失礼しました」頭を下げてお礼も付け加える。

「いや、俺も仕事をほっぽりだす理由が出来たからお互い様ってことで」
「…仕事、ほっぽりだしてきたんですか…」

苦笑いで返すと、サクラ、とカカシ先生が呼んだ。少し、低い声だった。
そして、はっとするほど真剣な顔をしていた。


「サクラ、サスケのことか?」


言い当てられて、ドキリとした。


「えー?なんのことですか?」
笑顔を作ったつもりだが、先生は変わらず真剣だった。
そして、そっと目の下を指差した。クマできてる、と先生は言った。


「眠れてないのは仕事のせいだけか?違うだろ」
「先生、医療忍術ってほんとに膨大な知識と根性がいるんですよ」
「…分かってるつもりだよ」
「でしょ?医療忍術ってほんともう大変!でもこれで、未来の子ども達が安全に生きていけるの。頑張るのは当たり前よ!先生も、もう火影なんだから同じチームだったからって私なんか気にかけなくても大丈夫ですよ!」
「違う、そうじゃない」
「え?」
「俺は、サクラの事なら分かってるつもりだって言いたいんだよ」

先生の手が伸びてきて、そっと私の頬を触った。

「俺はナルトやサスケだけじゃない。いや、あいつら以上にサクラと一緒にいる時間は長かったからな。お前の考えてる事はなんとなく分かるよ」
「先生…」
「…サスケのことを考えないようにしてるだろ」


身体がビクリと震えた。

「何言って…先生っ!そもそも!私とサスケくん付き合ってるとかじゃないんですよっ!私が勝手に好きになって、勝手に待ってるだけで…」


サスケくんは私の気持ち知ってると思うけど……。最後の方は言うのも辛くて黙ってしまった。これ以上心を晒せば涙が零れ落ちそうだった。
先生の暖かい手が余計に泣きそうになる。
心配かけちゃ、ダメだ。
私は先生を見れなくて、俯いて言った。


「先生……ごめんなさい、帰って下さい」
「……」
「これ以上火影に迷惑かけちゃ、…余計情けなくなっちゃう」


はは…、となんとか笑顔をつくろうとしたその時、先生の顔が近づいてきた。

「ほんとにそう思ってる?」

先生がいつもしていたマスクを指で外し、そう聞いてきた。

「え、」

先生の素顔を見るのが初めてで、呆気にとられてそっちに集中していると先生の唇が近づいてそっと私のおでこに触れた。


「せんせ、え、え?」
「俺がほんとに元同じチームの先生で、今は火影で、大事な部下だからサクラの事分かるって、ほんとにそう思う?」
「先生?、」
「俺が下心なしでここにいるってほんとにそう思う?」

唇が今度は私の唇に触れた。


「先生、!やっ…!」

先生を突き放そうとしたら、それを簡単に絡め取られてしまった。
先生を見る。先生が更に真剣な表情しているのが分かって何も言えなくなった。


「…男だよ、俺は」
「、お、とこ…?」
「そう。俺は先生でも火影でもなく男としてここにいる」
「で、でも…!」
「俺はさ」

先生の唇が今度は耳に触れる。初めての経験で、全身が脈だつのが分かる。先生に掴まれている両手首が熱かった。


「女の子が弱っててそこにつけ込むような、こんな真似嫌いなんだ、ホントは」


耳元で囁かれて、先生の言ってる言葉の意味を理解するのが遅れる。

「だけどさ、もうサクラの辛い顔見たくないんだよ」
「…、なんで…、」

両手をようやく離されて、先生も私から離れた。
私達はお互いを見る。

「俺にしなよ、サクラ」
「!」
「サスケを想って悲しんでるサクラを俺はもう見たくない」

俺の気持ち、言わなくてもサクラは分かるだろ、とカカシ先生は続けた。


「…分かんないよ、」
「サクラ」
「サスケくんも、先生の気持ちも、私の気持ちも、全部っ!ぐちゃぐちゃで分かんないわよっ!」

言いながらボロボロ泣けてきた。身も心もすり減っているこんな時に、俺にしろだなんて言わないで。今までのサスケくんへの気持ちがなかったことになるじゃない。
それは私の大事な宝物だったのに、どうして今、それが砕けそうなぐらい重いんだろう。

「私、最低なの、先生…っ」
「…うん」

先生の手がまた伸びてきて、私の頭を撫でる。

「今、…寂しくって死にそうなの。だから先生に縋りつこうとしている自分がいるの」
「知ってる」
「せ、先生はこんな私でもいいの?だって私、先生を……っ」
「全部、俺のせいにすればいいから」


そう言って先生は私を引き寄せた。先生の暖かさと匂いに包まれて、ようやく息がつけるような、ほっとするような気がした。
そういえばこの人は私が忍者になった時からずっとそばに居てくれた。ずっと守ってくれてたな。先生、いつも強かった。先生、ありがとう、先生、先生、ごめんなさい…。


先生の唇がまた落ちてきて、軽く触れる。そして深くなっていく。絡み合うごとに頭がいっぱいになるようだった。

先生の左手が首筋から胸に流れるように触れる。先生の右手は私の頭を押さえている。口づけの合間で漏れる声が私じゃないような気がした。

「大丈夫、優しくするから」

先生が言いながら組み敷いてくる。


「先生、慣れてるのね…っ、ぁ、」
「サクラより年を重ねてるからね、そりゃ」
「せ、先生って彼女、とか」
「いたらここにいないよ。って、まだまだ余裕だねサクラ」

余裕じゃない。余裕が、無くなりそうだから一生懸命喋っているのだ。

先生の手が下に降りてくると、もっと余裕がなくなりそうだった。

「ゃ、ぁ、あ、…っ」
「んー…」
「あ、ぁ、や、だぁ」
「大丈夫、大丈夫」
「もぉ…や、はずか、し…っ」
「大丈夫、可愛いよ」

先生に顔を見られたくなくて、自分の手で必死に隠す。それをむりやり取られて、余計恥ずかしくなった。


「み、…見な、いで」
「大丈夫、可愛いから」
「そればっか、ぁあっ…ず、…っずるい」
「んー?」
「あ、あ、ぁっ、ああっ!」

指で激しく秘部を付かれたり、擦られたり、かと思えば優しく触られたりして、私は簡単に達していた。
初めてってイケないと聞いていたのに。

「は、ぁ、は…」
「イッちゃった?」

なかなか先生を見れる余裕がなくて、肩で息をしていると先生が私を覗き込んできた。

「サクラ、大丈夫?」

大丈夫じゃ、ない。こんな頭真っ白になりそうなのに、なのに。
先生の顔が、目が、もう余裕がなさそうで、こんなにも、欲しそうな目をしている先生は初めてで。

「先生、欲しい?」
「…、」
「私、のこと、欲しい…?」

先生は言葉なく噛み付くように私に口づけしてきた。
何度も何度も口づけして、そのまま私の初めては先生に奪われた。

「あ、あ、ぁっ」
「一体、どこでっ」
「ん、んんっ、ぁ」
「どこで、覚えてきたの、サクラ」
「や、ぁ、せんせっ…」


先生は私の鎖骨に印だけ残して達した。


身体も心も先生に縋りつこうと必死だった。でも先生の方が私に縋っているようにも見えた。暖かいような、冷たいような。生きてるような、死んでるような、そんな私の初体験は終わった。


先生の腕の中で私は目だけを開けていた。
先生も目を閉じていたものの、起きている。

「…ねぇ、先生」
「…んー?」
「私達、どうなるのかな?」
「…サクラは、どうなりたい?」
「正直、分からない。でも少し…心が生き返ったような気もするの」
「そっか」
「うん。」

ぎゅ、と先生が私を抱きしめた。それに答えるように私も力を入れようと思ったが、やめた。
今の私ではまだ先生を抱きしめ返す資格がないような気がした。

私は目を閉じて、その身を先生に任せて祈った。

待っててね、先生。
いつか、先生のところへ。





end
1/2ページ