出会い
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火影室の前で、私とマダラは待たされていた。
「なぁ、そういや、火影やら火影岩ってなんなんだ?」
マダラは窓から火影岩を見つめながら呟いた。
「火影は、木の葉の里を束ねる人で、火影岩は、歴代の火影の顔が彫られた顔岩よ」
「へぇ…じゃ、あれは歴代の里の偉い奴か」
「そう。今の三代目様以外は亡くなってるけどね。左から初代柱間様、二代目扉間様、三代目ヒルゼン様、四代目ミナト様」
「四代目は死んでるのか」
「うん、九尾襲来でね」
「九尾?」
「でかい狐の化け物だよ。そいつが里を襲ったの」
「狐の化け物か。平和な里かと思ってたが、そういうわけでもねぇんだな」
「まぁ、そんなに大きな事件は何度もないけどね。そうそう、九尾襲来は二度起きてるの。で、一回目の時に九尾を操っていたのがうちはマダラ。そして、マダラと戦って勝った私のひいおじい様が、初代火影の千手柱間様」
「へぇ、お前、お偉いさんの一族だったのか。だから家も立派だったわけだ」
「まぁね。それにしても、あんなに初めて見ました!感を出してる奴も初めて見たけどね」
「っせーな!…てかよ、マダラってこの里にとって悪者ってことだろ?そいつと同じ名前なのかよ、俺…」
マダラは拳を握って怒っていたが、ショックを受けたようでションボリとした。
感情の起伏が激しいな、マダラって。
「そうだね。マダラについては私みたいな子供でも教えられるくらいだから。正直、木の葉の里の人が名付けるのか、疑問を持ってる」
ママにも、マダラの名前は隠しておいた方が良かったのかもしれない。
反乱分子とか思われないかな…。
まぁ、そんなこと今更考えたって仕方ないけど。
「そうか」
ガチャリ
目の前の扉が開いた。
「入って良いぞ」
中から三代目の声がした。
「失礼します」
火影様は、こちらを見据えていた。
少し緊張しながら、部屋に入る。
「おう、ユヅキ。アカデミーは楽しいか?」
火影様は緊張を解すように穏やかに話しかけてくれた。アカデミーの入学式で見たことがあるが、火影様をこんなに間近で見たのは初めてだ。
「は、はい!」
ていうか、私の名前、覚えてるんだ。
いや、ママと話したからかな?
「そうか、それは良かった」
火影様は微笑んだ。
「…」
火影様は、いつもおだやかで優しい。
だが、今は独特の緊張感がある。
…マダラはどうなるんだろう。手に汗がこもる。
「して、お主がマダラじゃな。話はユヅリから聞いておる。記憶がないんじゃとな」
「あぁ…はい」
「マダラか…」
「…ユヅキから聞いたけど、うちはマダラはこの里を襲撃したみたいだな。だから、マダラという名はよく思われないとか」
「ちょっと!敬語!」
「ユヅキ。いいのじゃ。それに、お主はそんなこと気にせんで良い。本題に入ろう」
「…」
マダラは真剣な表情をしている。
「率直に言うと、お主の戸籍は見つからなかった。つまり、お主はこの里の者ではない」
「そんな!」
「…」
マダラは黙っている。
…どう思ってるんだろう。
マダラも期待してたのかな、この里の一族であることを。
「それで、問題はどうして里にいるのかということじゃ。一つの可能性として、記憶喪失を装ったスパイが…」
「ま、待ってください!マダラがスパイなわけないです!私は、マダラが倒れているところ見たんです!スパイであったとして、どうしてそんな危険なふりを!それに…」
「まぁまぁ、落ち着くのじゃ、ユヅキ。可能性があるというだけで、わしは、マダラがスパイだとは思っておらん」
「え…」
「…」
マダラは少し驚いた顔をした。
マダラもスパイとして疑われていると思っていたのだろう。
「…理由はいくつもあるが。分かりやすいのは、お主がわざわざマダラという名で目立つ意味がないってことかの」
うんうん、そうだよ。
「良かった。それじゃあ、マダラはどうなるんですか?」
一安心して息を吐く。
「…マダラよ、口を開けてみてくれ」
「口?……」
マダラは口を開いた。
火影様はマダラの口をじっと見た。
「…奥の方は生え変わっておらんの…8歳くらいか」
8歳なら、私と同い年か。ていうか。
「その距離から奥歯まで見えるんですか?なんかすごい」
「視力は良い方じゃからな」
そういう問題なのか…?
「でも何で年齢を…。あ!もしかして!」
「あぁ。マダラ、お主はアカデミーに通うと良い。試験は受けてもらうがの」
「ほ、ほんとっ!?良かったー!!」
思わずガッツポーズをする。
あ、マダラがなんだこいつって感じでこっちを見てくる。
「ほっほ…。普段感情をあまり出さぬユヅキが随分嬉しそうじゃの」
「えっ…べ、別にそんなことは…」
「アカデミーってなんだ?」
「マダラは、本当に里について知らんのじゃな。アカデミーは、忍の教育を受ける学校じゃよ」
「…へぇ、そりゃすげーな!」
マダラはなんだか嬉しそうな顔になった。
「あぁ。マダラも望んだ里の形じゃ…」
火影様はマダラを見つめた。
「ん?うちはマダラのことか?」
「そうじゃ」
「なんか良くわかんねーな、そいつ。里を襲ったんじゃなかったのか?」
「じゃが、柱間様と共に木の葉を創った忍でもあるのじゃ」
「自分で創った里を自分で壊すなんてアホだな」
「うちはマダラの真意は結局誰もわからなかったからの…」
「そうか」
マダラは何かを考えているようだった。
「…のう、マダラ。里で生活するにあたり、その名はぼかした方が良いぞ」
「偽名を名乗った方がいいってことですか?」
「あぁ。アカデミーにも、偽名を伝える。他の名前を考えてみんか?」
「まぁ、確かに。マダラ、なんなら私が一緒に…」
「いや。マダラって名前は、そのまま名乗る」
「なんで!?」
「良い名前じゃねぇことは分かってる。だけど、俺の唯一の手がかりなんだ。この名前が何かにつながるかもしんねぇ」
「それが…悪い方向だとしてもか?」
三代目は、マダラをじっと見た。
ピリピリとした緊張が伝わってくる。
「あぁ。それでもだ。どの方向に行こうが、その先が俺の道だ」
「マダラ…」
マダラは普通の少年じゃない。
火影様に気圧されずに、自分の意見をきちんと伝える。
それだけ自信があるのかもしれない。記憶がないというのに、その自信はどこから来ると言うんだろう。
マダラは、歳が同じでもずっと遠い存在な気がする。
「…そうか。ならばこれ以上は強いぬ。して、マダラ。最後に問いたい。お主…瞳力は?」
「瞳力?なんじゃそりゃ」
「そうか、知らぬか…。それで良い」
「…」
火影様は、まだ少しマダラについて何か疑念を持っているのかな。
「では、今日はもう帰るが良い。明日の朝、試験を受けてもらう。寝坊はするなよ」
火影様は、書類を差しだし、マダラはそれを受け取った。
「良かったじゃん!」
「おう」
マダラの肩をとんと叩いて、笑いかければ、マダラは頷いた。
「さぁ、帰りましょうか!火影様、失礼いたします」
ママが頭を下げたため、私も一応頭を下げておいた。
「頼んだぞ、ユヅリ」
「はい、それでは」
「あと、マダラ。一つ忠告じゃ。ダンゾウにはあまり近づかない方が良い」
「ダンゾウ?誰だか知らねーけどわかった」
ダンゾウ様?
あまり表に出てこない方だから良くわからない。けど、なんで近づかない方がいいんだろう?
だけど火影様が言うなら…私も少し警戒しておこうかな。