Portrait

「暑いわね……」
「そりゃ夏だからね」

私とニメーヤは私の家の軒先でアイスシャードをいくつも浮かべた水に足を浸しながら、夏特有の鮮やかな青い空と真っ白な雲を眺めている。……それにしても、日陰にいるにも関わらず日差しの暑さと眩しさがちっとも軽減されている気がしないのは何故だろう。ニメーヤも同じように思っているのか、いつものフードをより目深に被っているように見える。
私は毎年この熱気を感じる度にそろそろ紅蓮祭の季節だなあ、などと思うのだが隣に座る女神様は行きたがらないだろう。まだ面と向かって聞いた訳ではないが、多分そんな気がする。なんなら水着着てるところが想像できない。……ちょっと見てみたい気もするが。

「……何考えてるの」
「いや別にぃ」

そんなことを考えていたのがバレた訳ではないと思いたいが、星神が何か言いたそうな顔をして私を見つめていたので慌てて否定をしておく。危ない危ない。

「あ、そうだ、こういう時のために氷菓買ってきてたんだった。持ってくるね」
「……なんだかわざとらしいわね」

女神様はそう言うと、私にデコピンを食らわせてきた。大袈裟に痛がってみせると「そんなに強くなかったでしょ」と呆れられてしまったが、いいのである。えへへと笑いながら私は立ち上がり、氷菓を取りに部屋に戻った。
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