Portrait

「いやそれにしても驚きだよなあ」

向かいに座った相棒がコーヒーを啜りながら言う。

「何が?」
「まさかあんたに気を許す相手ができるとはな、と思ってさ」
「言ってくれるじゃない」

……と口ではそう言ったものの、実のところ私自身もそう思っている節がある。しかも相手が人ではないのだから尚更だ。その相手──商神ナルザルは手合わせした私のことを何故かいたく気に入った様子で、彼らに「私のことをもっとよく知りたい」と告白めいたことを言われたのだ。その時差し出された黄金色の大きな手を何故取ろうと思ったのか、今でも我がことながらよく分からなかったりするのだが、あの時の直感は多分間違ってはいないのだろうという確信も同時に抱いている。

「おや、噂をすれば何とやらだ」

彼が手を振る先を見れば、なるほど依代姿のかの神の姿が見えた。あちらも私たちの姿に気付いたらしく、こちらに向かって歩いてくる。人の姿の時は双子のナルザル神に笑いかけながら、私も同じように手を振った。
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