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CLAP!

「愛してる」

高遠さんのその言葉を聞けば聞くほどに深みに嵌まる気がする。

「私は好きでもないし愛していないです」

はっきりと否定の言葉を伝えるのにも関わらず、彼は

「そうは言いながらもいつも聞いてくださいますねぇ」

にやりと笑みをたたえる。
その顔を見て、一気に身体中に血が巡る。

「じゃあ聞くのをやめます」

そう言って顔をそむければ。

「ふふ、貴女そうやってこの間も聞いてくださいましたよ」

「ちが…!もう、いい加減にしないと警察に通報しますよ…!」

「貴女にそれができるとは思えませんねぇ。貴女も私の事が気になっているでしょう?」

なぜこんなにもこの人は自信たっぷりに言えるんだろう。

「こんな風に言い返している私が高遠さんを気にしていると思いますか?」

「あぁ、今久しぶりに名前を呼んでくれましたよ」

つっけんどんに言い返しても、変なところで嬉しそうに話すから拍子抜けする事も度々ある。

「気にするところがそこって…。私なんかに名前を呼ばれて嬉しいですか?」

「もちろん。貴女に私個人を認識してもらえているという実感に繋がりますからね 」

いとも簡単な答えであると高遠さんは微笑む。

「はー……。どうしてそんなに私を構うんですか。あなたは他にやりたいことがあるんでしょ?」

一つため息をつき、今まで聞きたかった疑問を投げ掛けた。

「あるにはありますが、今は貴女を構いたいんですよ」

「なんで…」

なんで、私は構ってほしくなんかない。
鬱陶しいとさえ思ってしまっているのに。





「貴女が悲しそうな顔をしているから」






「そんな事ない…です」

「いいえ。顔に書いてありますよ、誰か側にいて、と」

そんな顔されたら、いや、されなくても側にいますよと言いながら、高遠さんはそっと手を握ってくれた。
この人はどこまでも優しい。
こんな人が指名手配犯だなんて、と思うこともあるくらいに。

「高遠さんは暇人なんですね…私なんかに構ってばっかり」

悔しいけどありがたいと思ってしまう自分もいる。
今は一人でいたくない。誰かにこの心の穴をうめてほしい。隙間なく満たしてほしい。
握られた手をそっと握り返せば、また少しだけ強く握り返してくれた。

「ええ、暇人です。貴女のために時間を作ること、費やすことに精一杯な私はとんでもない暇人ですね」






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カフェで話しているかもしれないし、町中を歩きながら話しているかもしれない。
どんな場所で話していたのかはみなさまのご想像にお任せします。

拍手ありがとうございます。
久々すぎて色々忘れていました。思い出さないと。
2017/9/13
如月

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