高遠遙一
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あの赤尾先生が?
本当は高遠遙一って言う名前で。
殺人のコーディネーター?
いつも英語を教えてくれていたあの赤尾先生が、まさか───。
──────。
少し前から獄門塾に通っている凜華。
文系を選択していて、特に大学進学で大切な英語に力を入れていた。
それでもなかなか思うように伸びず、退塾させられる前に塾をやめようかどうか悩むようになった。
そんな時、英語の講師の担当が変わった。
それが、あの赤尾先生。
ゴムマスクをしていて一見近寄りがたい雰囲気もあったけど、凜華は先生の英語に心底惚れた。
────。
「はい、今日はここまで。次回の授業までに全部のパラグラフを訳してくること。以上!」
授業が終わって、次々と塾生が帰っていく。
「赤尾先生!」
そんな中、凜華だけが赤尾に近付いて話しかけた。
「おや、如月さん。どうしましたか?」
表情ははっきり見えないが、声と口許で優しさと微笑みが感じられた。
「このパラグラフなんですけど…」
凜華が質問をすると、赤尾はすぐにテキストに目を通し、「あぁ…これですね」と頷いた。
「これは……」
説明が始まると集中し、しっかりと頭に刻み込む。
赤尾の説明は凜華にとっては最高の説明で、それから短期間で一気に英語が伸びた。
「赤尾先生!先生のお陰で英語伸びました!学年トップです…!」
凜華が赤尾に駆け寄ると
「それは良かったです。でも、英語が伸びた本当の理由は凜華さん、貴女自身が努力したからですよ。よく頑張りました」
いつもの微笑み。
いつもの声。
凜華には堪らなく嬉しいものだった。
これからも頑張ろう、そう思えた。
なのに。
あれからの獄門塾はすっかり静かになった。
先生や生徒がいなくなったり亡くなったりしたため、急遽新しい先生が何人か就いた。
もちろん、赤尾一葉、…いや、高遠遙一が担当していた英語も。
…なぜか急に寂しくなった。
ぽっかりと穴があいたような、隙間のある感覚。
何だろう、これ。
あんなに頑張っていた英語も、あれからぷっつりとやる気が失せてしまった気がする。
赤尾先生がいなくなってから気が付いた。
英語が好きで、先生の流暢な英語、その授業に惚れたんじゃない。
流暢な英語を話す先生自身に惚れたんだ。
「(今更こんな気持ちに気づくなんてね…)」
そんな気持ちが広がって凜華を変に後悔させる。
しかし、それに今更気付いても後の祭。
何の解決策も見付からず、ただ毎日がだらだらと過ぎていった。
英語も次第に下がり気味の傾向が出始める。
「凜華さん。最近は点数が低迷気味ですね…。少し前の貴女ならできていた事ですよ。まだ間に合いますから、取り返していきましょう。いいですね?」
「……はい」
赤尾先生じゃなくなったから英語のやる気が一気に無くなりました、なんて口が裂けても言えない。
凜華は点数の良くないテストをしまって、ゆっくりと塾を出た。
自宅までの帰り道を無駄にゆっくりと歩く。
きっとこのままだと確実に退塾だ。
でも、そうなっても仕方がない。
そう思いながら。
「貴女らしくない顔をしていますね」
「え?…あっ」
ふと立ち止まる。
そこにいたのは、紛れもないあの高遠遙一だった。
「赤……高遠、さん…?」
分かってる。
本当はとても危険な人で、今は普通なら逃げなくちゃいけないんだって。
だが、凜華は動かなかった。
決して動けなかった訳じゃない。
「…どうして貴方がこんな所に、」
「貴女に会いに来ました。…そう、貴女に」
いつの間にか二人の距離は縮まっていて、高遠の手にはあの赤い薔薇が。
「私に…?」
私も氏家先生みたいに薔薇に塗られた毒で…って、殺される理由が分からない。
まさか顔を見たから、とか?
「凜華を殺す?まさか。そんな事をするために会いに来た訳じゃないですよ」
高遠の心を見透かしたような発言に驚く凜華。
「貴女に会いに来たのは、この手で……」
反射的に凜華は目を瞑った。
「……この手で貴女を抱き締めるためです」
体が高遠の温もりに包まれた。
ふわりと柔らかな香りが漂い、凜華を変に安心させる。
「どうして…」
「凜華、貴女の素直さが魅力的だったからですよ。塾講師にしては恵まれた生徒でした」
「……」
「ひたむきに頑張る姿を、もう見れなくなるのは…嫌で不愉快だったんです」
腕に力が篭る。
幸いここは人通りが少ない道のため、まだ誰にも見られていないだろう。
「高遠さん…それは…」
凜華は自分の体が熱くなるのが分かった。
体が熱くなるのは、期待している証拠。
「これからもたまにでいいですから、お会いしたいのですが」
凜華がみなまで言うのを遮り、そっと凜華から離れて言った。
指名手配犯の高遠遙一と関係を持つということは、それなりのリスクが伴う。
覚悟だって必要。
でも、それでも。
「…今度また英語、教えてくださいね」
高遠は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに
「Of course」
と答えた。
Fin?
───カフェテリアにて。
「じゃあこの英字新聞の記事を訳してください」
「…世界的に有名な魔術師が20日のショーの間に忽然と姿を消してしまった。…初めはマジックだと思っていた観客や関係者だったが…えーと…」
「いつまでも姿を現さないため、マジックではないと判断。ショーは中止となり警察が魔術師の行方を捜索しているが未だに見つかっていない」
「何でこの記事なんですか?なかなか難しいじゃないですか」
「私ですよ、これ」
「は!?」
慌ててどこで開催されたかを確認すると、USA、すなわちアメリカだった。
「アメリカでショーすっぽかしたんですか!?」
「突如凜華に会いたくなりまして。だったら抜け出して今から飛行機に乗ればあの日の夕方に間に合うと踏みました」
やることが大胆過ぎます、高遠さん…。
「さすが、としか言えないです…」
「誉め言葉ですか、光栄です」
誉めたつもりはないけど、本人が満足しているようなので凜華は何も言わず勉強を続けた。
二人の勉強はまだ続くようだ。
2013/10/14
12:57
2018/4/3
0:28一部修正
如月凜華