捧げ物
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……あの、」
「…黙っててください」
「、はい…」
先程からずっとこのまま。
ご飯ができたからと、高遠さんを呼びに行くとそのまま部屋に誘い込まれ、気が付いたらベッドの上で後ろから抱き締められていた。
部屋に灯りはついておらず、真っ暗な部屋で2人きり。
段々暗闇にも目が慣れてきて、部屋の中が分かるようになってきた。
「……はぁ…」
時々聞こえる、くぐもったため息が首筋に当たり、背中がぞくぞくする。
まるで私の存在を確かめるかのように何度も至る所に触れ、匂いをかいでくる。
「…っん……」
耐えきれず、彼の手を握り動きを制止しようとするも、その手をかいくぐりまた触れてくる。
「、高遠さん……!」
ようやく自身の体の上を滑る彼の手を捕まえる。
「一体どうしたんですか…。何かあったんですか?」
「……いえ、あった…というか、ふと思った事があるというか」
随分と歯切れの悪い答え。
「…私に話せますか?」
少しの沈黙の後、ゆっくりと高遠さんは口を開いた。
「…私は闇です。そして、凜華は光だ」
「闇と、光…?」
「えぇ」
突拍子もない話に、ついオウム返ししてしまう。
私が光で、高遠さんが闇…?
「光のような凜華と一緒にいてふと思ったんです。闇である私があなたに近付いてはいけないのではないかと」
「…」
「あなたは光のように暖かく、眩しすぎる。それに比べて私は外れた道を行く者です。この汚れた手で私が側に置いておくべき人ではないし、手を伸ばして良い筈がない。でも、愛したあなたを簡単には手放せないし、手放したくないんです」
再び後ろからぎゅ、と抱き締められる。
「どんどん光の中を歩いていく凜華を繋ぎとめたくて、こうやって抱き締めてみましたが…。今度は私の持つ闇が、あなたを包み込んで闇に染めてしまう気がした」
「……」
「私の持つ闇で染めたくはない。でも、そうしたらもう凜華を繋ぎとめておく方法が分からなくなってしまったんです」
「…分からなく、なった…」
「それだけ凜華のことを…私は……」
ちゅ、と首筋に軽く口付けられる。
「ん…」
つい漏れる声に、少し気を良くしたのか再び口付けられる。
存在を確かめるかのような、柔らかな口づけに意識が持って行かれそうになる。
「闇が光に恋をし、光を愛した。ただそれだけですが、それは許されないことであり、私たちは…光と闇は、交わってはいけない。側にいて欲しいと思いながらも、側にいてはいけないという葛藤でおかしくなりそうで……」
首筋からそっと離れ、苦しそうに高遠さんは呟いた。
「…すみません、今更こんな事を言って。不意に思ったら止まらなくなってしまった」
「………ねぇ、高遠さん」
「……はい」
彼の言うことは分かるけど、ここはちゃんと説明をしてあげないと。
「貴方のいう光と闇であっても、私は置いていかないですよ」
「……凜華」
「私だって、あなたを愛しているから」
くるりと振り返り、彼の目を見つめる。
暗がりでも彼と目が合っているのが分かる。
「遙一さん」
「…はい」
今度はそっと彼の名前を呼んで、背中に手を回す。
恥ずかしいから名前でなんて滅多に呼ばない。でも、大切な事だからちゃんと伝えたい。ちゃんと彼と向き合いたい。
それに応えるように、彼の腕も私の背中に回され、再び胸の中にすっぽりと閉じ込められた。
「ん…あなたは自分が思っているほど、闇のような部分を持っているわけではないと思います」
「……」
「遙一さんは自分のこと闇だとか私を染めてしまうとか思ってるみたいですけど…。私は遙一さんを闇だと思ったことはないし、仮に闇だとしても闇には染まりません」
「…ほう、随分な自信ですね?」
「はい。だって、闇じゃなくて………」
すぅ、と息を吸って思ったことを口に出す。
「私は遙一さんに染まっちゃってますから。誰よりもこんなに私の事を大切に思ってくれてる、あなたに」
そう言ってから、自分は何を言ってるんだろうと思った。
この部屋が暗くて良かった、きっと私の顔は恥ずかしさで真っ赤になってて、とても見れたものじゃないと思うから。
「だから、その…あなたが何と言おうと私離れる気全然ありません。家を出てくるときに、私どこまでもついて行くって決めましたし、遙一さんにも言ったでしょう?こんな優しくしてくれる人の側から、誰がいなくなるって言うんですか」
「…そうでしたね。そうでした」
「自分のことをそんなに卑下しないで。私は、あなただから一緒にいたいと思ったんです。あなただから愛した。遙一さん、は違いますか…?」
最後辺りの言葉は若干声が震えた。
泣きそうになったからじゃなくて、答えを聞くのが少し怖かったから。
私の思いと違っていたらと思うと、少し怖くなった。
胸の動悸がやけに激しくて、この音が高遠さんにも聞こえるんじゃないかってくらい自分には大きく聞こえた。
「──いえ、私も同じです。凜華だから一緒にいたい、凜華だから愛したんです」
その言葉を聞いて安心した。
昔から変わらず、私たちは同じ気持ちでいる。
「…なら、それでいいじゃないですか。私は今のままで十分満足してます。とても幸せです。だから光と闇だなんて、そんな言葉で私たちを区別しないで?」
今度は私から彼にそっと口づけをする。
「遙一さん、愛してます」
私からキスなんて滅多にしないから、彼は少し驚いた表情で私を見ていたが、すぐに口元に笑みをたたえて強く抱き締めてきた。
「あぁ……凜華、本当にあなたは私にはもったいないくらい素敵な女性です。ありがとうございます」
「…私こそ、愛してくれてありがとうございます、です」
「…もう、大丈夫です。凜華の言葉を聞いて安心しました。何で言われるまで気付かなかったんでしょうか…悩んでいたことが恥ずかしい」
「よかった…。たまには悩んでもいいじゃないですか、そうやって私たちはまたお互いを理解していけばいいんですから」
「そうですね…さすが私の凜華。───そう言えば夕食ができあがったんでしたっけ?」
その言葉を聞いて思い出した。
そうだ、私は彼を夕食だからと呼びに来たんだった。
きっともう温めたものはすべて冷え切っているだろう。また温め直さなければ。
「そうですよ、すっかり忘れてた…!もう冷えちゃってるなぁ…。でも、すぐに温め直せばいいから問題ないですけどね」
「……そうですね、私たちのように温め直せばいい」
「?」
高遠さんの言葉を瞬間的に理解できず、つい首を傾げる。
「分かり合うまで、こうやって触れて話せば、また元の温度に戻りますからって事ですよ」
ベッドからゆっくりと立ち上がり、高遠さんが私に向かって手をさしのべる。
その手を取り、私もベッドから立ち上がった。
「……そうですよ、冷えてきたら温め直しましょ。温めて元に戻るのなら、私何度でも温めます」
「ついでと言ってはなんですが、私の体自身もあたためていただけるとありがたいのですがねぇ」
「っ……ま、まだ夕方、です…」
「おやおや、夕方だからもう冷えているんですよ。凜華の体温があればすぐにあたたまりそうなんですが…」
「さぁって!ご飯ご飯!」
やらしいことを吹き込もうとする高遠さんを振り切って居間に戻る。
さて、まずはどの子から温め直そう?
そう考えてる後ろで、高遠さんがこれまた厭らしい微笑みをたたえて私を見ていたなんて、その時の私は知る由もなく。
「凜華」
「はい?」
「愛してます」
「私も、ですよ」
Fin
御題サイト「秋桜」さまよりタイトルお借りしています。
『闇の恋情』
**************
おおおおおお待たせしました~!
白鳥さま相互リク高遠さん夢です!
やらしい高遠さんが書きたくて頑張りました…オチを急遽変えましたが結果的にこっちの方が好きです。
今回はちょっとシリアスちっくに仕上げました。高遠さんが不安になればいいなぁなんて妄想が大変はかどってしまい、つい。
あぁ、甘くなくてすみません…!!甘くないどころかちょっとやらしい高遠さんしかいない…!
そんな中素敵な御題を見つけて、これだ!!!とビビっときてからは親指が瀕死。
最終的に推敲に推敲を重ねて仕上がりました。
受け取っていただけますと幸いでございます。
そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
*お持ち帰りは白鳥さまのみ!
如月凜華
23:46