明智健悟
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携帯電話の規則正しい音が部屋に響く。
「…………はい」
隣で不機嫌そうな声を出して健悟さんが電話を取る。
きっと仕事で何かあったんだろう。
おぼろげな意識の中でそれを感じ取る。
「はい…はい……………分かりました、支度次第すぐ向かいます」
その声に段々意識が覚醒する。
あぁ、緊急召集か。
そう思ったと同時に布団がめくりあがり、ひんやりとした風が体をかすめる。
暗がりの中で健悟さんがベッドから降りて荷物をまとめているようだ。
「…お仕事?」
「…えぇ、ちょっとありましてね……」
身を起こし、近くにある時計を見ると朝の4時。
この寒い時期だから外も白んではきているものの、まだ暗いままだった。
こんな時にかかってくる電話はまず良いことがないし、事態は深刻であることがほとんど。
「身支度手伝います」
「いえ、あなたも仕事でしょう。もう少し寝なさい」
「でも…」
「いつものものがどこにあるかは把握しています。凜華はちゃんとその場所に用意してくれていますからね。本当に助かります」
いつものもの、スーツやネクタイをかけている場所、洗濯したワイシャツ、セーター、靴下がどこにあるかちゃんと分かっているらしい。
「健悟さんのためだから…できるだけであって……」
「…ふ、さすが私の奥さんですね。本当に大丈夫ですよ?あなたは私のために明日の夕食の支度をしていてくれればそれでいいですから、ね?」
優しく頭を撫でられ、そっと目閉じる。が、健悟さんの言葉の意味に気づいてしまった。
「明日の夕食…ってことは今夜は帰って来れないということですか…」
「……」
健悟さんの頭を撫でる手が止まる。
どうやら彼自身私に対して墓穴を掘ったらしい、それだけ事態は重いということか。
「……この時間の呼び出しですからね…。しかし、早めに帰ることができるように頑張ってきますから。だから凜華…私のことをここで待っててくれませんか」
頭を撫でてくれていた手が私の背中にまわり、そのままぎゅっと抱き締められる。
離したくなくて、私も健悟さんの体を強く抱き締めた。
それに応えるように、更にきつく体を締め付けられる。ちょっと苦しいけど、今はこのくらいが心地良い。
「ん……待ってる。待ってるから、早く帰ってきてね…」
健悟さんがこういう時間に仕事で出て行くことは多くはないけれど、全くない訳じゃない。
召集がかかる度に彼の命が消えやしないかと不安になる。今まではちゃんと帰ってきてくれていたけど、それがいつどうなるかなんて分からない。
だから、本当は行って欲しくない。
付き合ってた頃からこういうことはあったけど、結婚してからは一人にされるのがとてつもなく怖くなってしまった。
…なんて、そんな事言えるわけもなく。
彼だって仕事だから行くしかない。だから私は待ってるとしか言えないし、言っちゃいけないと思う。
彼と結婚する時にだって、それを覚悟したはずなのに。
「…凜華」
「はい」
「そんなに震えた声を出して……私が凜華を置いていなくなるとでも?」
待ってると言った言葉が震えていたらしい。気持ちが声に出てしまったようだ。
「そうは…思いません、けど……」
「怖いですか?」
「……」
そうはっきり言われてしまっては否定もできない。無言で素直に頷いてみせる。
「────大丈夫、これでも私しぶといですから。私も…凜華と離れるのは嫌ですからね、今だってせっかく凜華を抱き締めて気持ちよく眠っていたというのに…」
またこの人はさらりとこっちが恥ずかしくなるようなことを言う。
「でもこれが…健悟さんの仕事ですもんね?」
「えぇ、同じ人間を相手にし、かつ危険な輩を探し出して捕まえる。それが仕事です。もしそいつが凜華を襲ったらと思うと…気が気じゃないですから。犯人を捕まえて凜華が安心して暮らせるようにしていきたいんです」
その言葉を聞いた後に、首筋がほんのりと温かくなったかと思えば痛みが走り、そのまま強く吸い上げられる。
「…んっ」
あんまり強いものだから、つい喉の奥で声が出た。
「……凜華は私の大切な奥さんです。常に隣で寄り添い、共に前を向いて歩いていきたい」
首筋から離れた健悟さんがようやく聞こえるくらいの声でそうつぶやく。
「だから、私も凜華もどちらも欠けるわけにはいかないんです。私は凜華を待たせてしまうかもしれませんが、必ずここに帰ってきますよ。約束します」
健悟さんの目が私をとらえ、私の目は健悟さんの目を捕らえて離さない。
「……ありがと、健悟さん」
そこまで言われたら、確かにちゃんと帰ってきてくれそうな気がした。
気持ちも幾分か楽になってる。
これならちゃんと彼を見送って帰りを待っていられる。
「行ってらっしゃい、健悟さん。お仕事頑張って。夕飯楽しみにしててね?」
「行ってきます、凜華。えぇ、もちろんです。貴女の作る食事はどのレストランよりも美味で私の心を奪ってしまいますからね」
ちゅ、と額に口付けられ、再び優しく頭を撫でられる。
安堵したからか、撫でられる心地よさからか忘れていた眠気が再びやってきた。
「さぁ、もう少しおやすみ」
「ん……おやすみなさい…健悟さん気をつけてね…」
「はい、気をつけて行ってきます」
その言葉を聞いてから、私はゆっくりと意識を手放した。
凜華が意識を手放したのを確認してから、私はそっと頭から手を離し、支度を済ませて仕事に向かった。
一刻も早く凜華の元へ帰ることができるように。
Fin
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ご無沙汰しております、如月です。
今回は夫婦設定でのお話です。
緊急召集され、見送る気持ちと見送られる気持ちがどんなものかを思ったら書くしかないと思い、明智さん夢書きました。
寝起きがとても悪い事で有名な彼ですが、緊急召集なので今回は比較的(かなり)寝起きが良いです、すみません…。
危険な仕事と分かっているのに、彼を見送らなければならない気持ちは耐え難いものがあると思います。
それでも明智さん好きだ!結婚しよう!!
御題サイトSeventh Heaven様より「いつでも傍に」
12/15/2014
13:49
如月凜華
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