明智健悟
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「…先ほど連絡がありまして、今日ロス市警にいた頃のパートナーが来るようです」
朝食を取っているときに明智から言われた一言。
「パートナー?」
「えぇ。仕事の関係で警視庁へ急遽来ることになったそうで。休暇中ですが私が迎えに行くことになりましてね。…ん、今日のコーヒーの味は絶妙だ。上手くなりましたね、凜華」
カップを口に運び、感嘆のため息を漏らす。
「ありがとうございます。…で、女性ですか?パートナーってことは…」
「えぇ。凜華同様、仕事のできる素晴らしい方です。パトリシアと言うのですが、一緒に会っていただけますか?」
「…分かりました」
随分ほめるな、なんて言えず凜華は渋々頷いた。
「(せっかくの休暇だったのになぁ…)」
─────。
「健悟ーっ!」
空港で待機していると、どこからか女性の声。
二人の目の前に現れたのは、ロス市警にいる刑事とは思えない格好をしたパトリシア・オブライエンだった。
「あぁ、パット。お久しぶりですね。元気でしたか?」
「もちろんよ。健悟も元気そうで何よりだわ」
明智がすぐに近付き、挨拶を交わす。
会話がなされるが、全て英語のため、凜華は一部を聞き取るのがやっとだった。
「(恐るべしネイティヴ…)」
「あら、その子は?」
突然日本語に切り替えられたうえに、顔を覗き込まれたため、凜華はつい身をかたくしてしまった。
「は。申し遅れました、如月凜華と申します。警視からお話は伺っています、パトリシアさん」
気を取り直して敬礼し、挨拶をすると、パトリシアはにっこり笑って答えた。
「あぁ、健悟の部下ね。お迎えありがとう。パトリシア・オブライエンよ。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
その笑顔でほっとしたのも束の間で、次の瞬間パトリシアは明智の腕をとって歩き始めた。
「さあ健悟!今日はひたすら観光地巡りしましょ!」
それにはさすがの明智も驚いたらしい。
「パット、今回日本に来たのは警視庁へ行くためじゃなかったんですか?それに時差ぼけだってあるでしょう?」
「えぇ。確かに警視庁には行くけど、明日の予定なの。1日早く来て健悟と過ごそうと思ってね。時差ぼけなんて、睡眠調整と体力で何とかなってるわ」
パトリシアにとっては時差ぼけなんて大した障害にもなっていない様子。
仕事のできる人は違うなー、なんて思っていた時だった。
「あ、凜華!」
「は、はいっ!」
また突然名前を呼ばれ、返事をすると衝撃的な一言が。
「いきなりで悪いんだけど、ホテルに荷物運んでおいてもらえるかしら?」
「…えっ!?」
「よろしく!ホテルはこの紙に書いてあるから。貴女の上司借りるわねー!」
「ちょっ……!」
凜華と大量の荷物を置いて、パトリシアは珍しく躊躇う明智を連れて行ってしまった。
「……はぁ」
深くため息を吐き悩んだ挙げ句、タクシーで紙に書かれたホテルへと向かった。
「(絶ッ対健悟さんの彼女だって思われてない。てか健悟さんも何か言ってよ…)」
────。
ホテルへ荷物を運ぶ仕事を終え、行くあてのない凜華はふらりと帰路に着いた。
「あれ、凜華さん?」
不意に背後から声をかけられ、振り返るとそこにいたのは美雪とはじめだった。
「あら、七瀬さんと金田一君。こんにちは」
「こんにちは、凜華さん。今日は明智さんと一緒じゃないんですか?」
美雪の言葉に苦笑する凜華。
「久しぶりの休暇だったんだけどね、ロスからパトリシアさんが来てるから…」
「パトリシア?明智さんとは一時はラブラブで明智さんが絶賛してた人?」
次の瞬間美雪のこぶしがはじめの鳩尾に入った。
「ぐふっ……!」
「え…、そうなの?」
知らなかった。
そうだったんだ…だからあんなに……。
なんか聞いたら更に落ち込んできた。そんな人に私かなうはずないじゃん。
「違いますよ、凜華さん!というか、今は凜華さんと明智さんがラブラブじゃないですか!パトリシアさんとは仕事でのパートナー止まりですよ」
「だ、大丈夫よ、七瀬さん、分かってるから…。それより金田一君の方が…」
隠すように慌てて顔を作る。
鳩尾にダイレクトアタックされたはじめはあまりの激痛に、その場にしゃがみこんでいた。
「はじめちゃんは気にしなくていいです。後でシメ直します。…凜華さん、今明智さんの隣を歩いていいのは凜華さんだけなんです」
「……」
「明智さんはちゃんと説明して帰ってきますよ。明智さん凜華さんにぞっこんですもん!」
「──ありがとう、七瀬さん。私夕食作って健悟さん待ってようかな」
もやもや嫉妬やら何やらしてないで、健悟さんの帰りを待とう。
美雪は凜華の言葉を聞いて安心したのか、にっこり笑って「そうしてあげてください」と言った。
美雪たちと別れてから食材を買い込み、久しぶりにじっくりとたくさん料理を作った。
「…よし、我ながら力作のオンパレード」
あとは健悟さんが帰ってくるのを待つだけ。
…とは言ったものの、7時を過ぎても明智は帰ってこなかった。
「もしかして夕食も取ってくるのかな?あー…ちゃんと確認してから作るんだった…」
目の前の料理たちを目にしていると段々虚しくなってきて、凜華はフラフラと寝室へと向かった。
「お腹減ってないし…ちょっとだけ…寝ようかな…」
そう呟きながら、深い眠りへと引き込まれていった。
─────。
「───凜華……」
誰かが私を呼んでいるような声が聞こえる。
「凜華……起きてください、凜華……」
健悟、さん…?
会いたい気持ちから声が聞こえるのかな…。
「凜華、私です。帰りましたよ」
違う。ほんとに健悟さんが帰ってきたんだ。
とたんに頭が覚醒し、ゆっくりと起き上がる。
「健悟さん……」
「凜華…」
「─おかえりなさい、健悟さん」
チラ、と時計を見ると9時を回っていた。
ちょっとだけの筈が、かなり眠ってしまったらしい。
「すみません、貴女だけに押しつけて帰らせてしまって…」
「ううん…大丈夫。夕食作ったけど、食べてきちゃったよね」
「!夕食作ってくれてたんですか?連絡なしに本当にすみません…!」
なんか腹立つから、あからさまに料理作ったことを言って、ちょっと意地悪してみる。
明智は更に申し訳なさそうに謝る一方だった。
「……」
「凜華?」
「…ちゃんとパトリシアさんに説明して欲しかった」
「…はい」
「せっかくの休暇…仕方なかったよ?仕方なかったけどね、寂しかった」
ぽつりぽつりと抱えていた不満を明智へ伝える。
それを、彼は何も言わず受け止めてくれた。
「健悟さんのバカ…」
散々文句を言い、とどめにそう言い放った時、明智が凜華に手を伸ばし、体を抱き締めた。
「凜華……」
「そっ…んなことしたって、簡単には許さないんだからね」
「分かってます」
「…そうやって全ての女性に優しいのも、さすがに凹むわ」
「…そうですよね」
まだ凜華からは言葉が紡がれ、訳の分からない理由で明智に不満を呟く口は止まらなかった。
「…健悟さんは何か言いたい事は?」
ピタリと不満の嵐が止まり、凜華は明智に弁解の余地を与えていなかった事に気付いた。
とりあえず何かあれば聞こう、そう思い、明智の言葉を待った。
「いいえ。凜華の言う通りですから。……強いて言うとすれば、」
「?うん、」
「パトリシアには、凜華とちゃんと付き合ってること、凜華を愛していて、仕事とプライベートの一番のパートナーであることを伝えてきました」
パットと言わず、パトリシアと言い、凜華を一番だと言ってくれた。
それを聞き、明智の体温を感じられるだけで許してしまいたくなる自分は、明智に対して甘く、それだけ好きだという証明に十分だった。
「…ありがと」
「いいえ、当たり前のことを言ったまでです。…凜華に寂しい思いをさせてから言うなんて、私には至らない点ばかりで「ううん、もういいの」
そっと明智の唇に手を当てる。
「もう謝らないで?…健悟さんの中で私が一番でいるって改めて分かって安心したから」
「……凜華、貴女という人は…」
凜華の手をそっと外し、明智が微笑む。
「私も健悟さんを愛してる」
言葉1つで安心できる。
凜華はそれを実感し、素直に明智に対する思いを口にした。
「───凜華」
「はい?」
ふわり、明智の両手が凜華の髪を梳き、絡め取る。
何だかくすぐったくて身をよじると、明智は逃がすまいと凜華を壁まで追い込んだ。
「健悟さ…」
壁の冷たさが背中全体に伝わってくる。
「…凜華への愛、言葉以外で表現して差し上げます」
「んっ……」
キス以外はそんなに積極的ではない明智が、今夜だけはずっと、それも激しく凜華をせめたとか何とか…。
「けっ…健悟さんのばかあ!明日仕事なのにっ!」
「おやおや、そんな事を考えさせる余裕をまだ与えていたようですね。いいでしょう、何も分からなくなるくらい気持ち良くしてあげますから、覚悟なさい」
「ひっ……!」
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健悟さんのバカァ!
20120625→2013/10/13
01:28→14:30大幅訂正
如月凜華