高遠遙一
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「ただいま帰りました」
最近言うようになったこの文句。
本来ならば「おかえりなさい」と返してくれる相手がいるのだが、今日に限ってそれがない。
「凜華、いないのですか?」
そうは言いつつもいるのは分かっている。
不用心なことに鍵は開いてるし、凜華の靴もきちんと並べてある。
そこで高遠はリビングへと足を進める。が、リビングは真っ暗で人の気配はなかった。
「となると…」
残るは彼女の部屋。
「凜華、中にいますね?」
ドアをノックして呼びかけてみるが、中から返答はない。
「…開けますよ」
そう言って中に入ると、当の本人は机に突っ伏して眠っていた。
どうやら本を読んでいたらしく、読んでいたらしいページが開かれたままだ。
「全く、貴女という人は……。───凜華、起きてください。凜華」
そっと肩を揺すってみる。
「んー…?」
「こんな所で寝たら体を冷やしますよ。それに夕食の支度もしないでいるんですから、これから作らなくては」
「んー…」
「…仕方ないですね…」
返事がこれしかない時は熟睡している証拠。しばらくは起きないだろう。
高遠は自分の着ていた上着を凜華の背にかけると、頬に軽く唇を落としてそっと部屋を出た。
……遠くで規律のいい音が聞こえる。
これはいつも聞いてる音。
どうやら誰かが包丁を使っているらしい。
「……」
いい匂い。
これは…、味噌とあとは焼き魚、それもサンマかな。
「っ!」
そこでやっと覚醒した。
瞬間的に今まで自分が寝ていて、高遠が既に帰宅し夕食を作っていることを悟った。
「やばっ…!」
慌てて立ち上がると、凜華の肩から何かが滑り落ちた。
「遙一さんの上着…」
そうか。
寒くならないようにかけてくれたのか。
凜華はそっと拾い上げ、再び肩にかける。
その時、ふわりと高遠の香りがして、凜華の気持ちをくすぐった。
「…ちゃんとお礼言わなくちゃ」
そう呟いてから、ゆっくりとドアノブに手をかけ、キッチンで夕食を作っている高遠の元へ向かった。
あともう少しで夕食が完成する。
そうしたら、凜華を起こしに行こう。
「…おっと。おや、凜華起きたんですか」
背中に温もりを感じれば、そこにはこれから起こそうと考えていた凜華の姿があった。
「…ごめんなさい、遙一さん。すっかり寝過ごしちゃって…」
そっと、でも強く高遠の腰に腕を回して、後ろから抱きつく。
先程の上着と同じく、高遠の香りがする背中は温かくて安心した。
「…ふふ、いいですよ。たまには私も作って凜華にご馳走しなければ」
高遠はされるがままで優しく言った。
背中に感じる凜華の存在が愛おしくてたまらない。
「良かった…。───ねぇ、遙一さん?」
「はい」
「おそろいで買ったエプロン姿、すごく似合うね」
後ろ姿見ただけでドキドキしちゃった、と笑って話す凜華に、高遠は不意に振り返って口付けを交わした。
「遙一さっ…!」
「全く、貴女にはいつも敵わないですね。このまま今夜は凜華を食べてしまいましょうか…」
「遙一さんっ!」
「冗談ですよ」
「…もうっ!」
顔を真っ赤にして怒る凜華をよそに、高遠は再び夕食作りを始めた。
と言ってもあとは盛り付けだけ。
「さて、夕食の時間です」
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2013/10/13
15:35
2018/4/3
0:20一部修正
如月凜華