高遠遙一
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「では、一週間後に」
「…はい」
今縁談の取り決めが終了した。
一週間後、私はこの家に嫁ぐことになる。
「じゃあな、凜華」
彼の目に映る私は、一体何なのだろう。
少なくとも、私から彼への愛はない。
ただの政略結婚。
私の自由はいとも簡単に奪われた。
─────。
「凜華お嬢様、お食事の時間でございます」
部屋のドアがノックされ、執事が部屋に入ってきた。
「ごめんなさい、今日は体調がすぐれないからこっちに運んでもらいたいのだけど…」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
パタン、とドアが閉まったのを確認してから、ふう、と溜め息を吐いた。
体調がすぐれないなんてのは嘘。
ただ部屋から出たくない。
この遠くまで見渡せる綺麗な景色を見られるのは今しかないなら、ずっと見て目に焼き付けておきたいだけ。
「元気がないですね」
「…ぅえ!?」
窓の外から声が聞こえた。
ここは2階なのに、何故。
それに不抜けた情けない私の声。
「失礼しました。元気がない、そんな貴女にちょっとしたマジックをお見せしようと思って来ました、地獄の傀儡師です」
「マジック…?地獄の傀儡師…?」
不意に現れた仮面を付けた地獄の傀儡師と名乗る男性は、窓の近くの木に腰かけていた。
あぁ、この木に登って…と納得。
その間にも彼の手の中で、トランプが華麗に動いている。
「───さて、このトランプをこうやって左手に押し込めて3つ数えると、一体何に変わるでしょう?」
「えっと…何だろう?」
こんなとこからまさかハトは出ないだろうし…小鳥?それとも紙吹雪?なんて私は大真面目にセンスのない答えを堂々巡りしながら考えていた。
「では正解。」
次の瞬間、彼の手から顔を覗かせたのは紅い薔薇だった。
「わあ……!」
「血のように紅い薔薇を、可愛らしい貴女に」
「ありがとう…!」
お礼を言って、それを彼の手からもらう。
本当に血のように紅い薔薇だ。
「喜んでいただけて光栄です」
恭しく会釈をする彼。
突然の来客、しかも正式な訪問ではないが、いいものを見せてもらった。
「あの…地獄の傀儡師さんはどうしてここに…?あんなに厳重な警備の目を盗んで、よく来れましたね」
私はずっと気になっていたこと彼にを聞いてみた。
「貴女が悲しげな表情をしていたから来ただけです。それから…」
「それから?」
「貴女をここから連れ去ろうかと」
「……え?」
私を連れ去る?
随分と突拍子もない話。
それでも、地獄の傀儡師さんは余裕たっぷりの微笑みを口許にたたえて私を見ている。
「どうして私を…?」
「貴女のような人をあの家には嫁がせたくないものでして。それならば私が攫ってしまいたいと、そう思いました」
あっさりとそう言って、私に向かって手をさしのべる。
「さあ、後は凜華さん次第です。私に攫われてしまうか、残って嫁ぐ運命を辿るか…」
その時、部屋のドアがノックされた。
「お嬢様、お食事をお持ちしました」
「あっ…」
今頃来るなんて。
でも、もう私はこの二捨択一の状況にさほど困りはさなかった。
「…私を連れ去ってください」
何で私の名前を知ってるのかとか、何で私が嫁ぐことを知ってるのかとか、それは後でいくらでも聞けるだろう。
今はとにかくここから出たい。
彼がそれを叶えてくれるならば、私は彼について行こう。
「…よく決断しました。さて、そろそろ危険ですね。凜華さん、窓の縁に立ってこちらに向かって軽くジャンプしてください」
再び手をさしのべてくれる彼。
これにも躊躇している暇はなかった。
返事がないことを不審に思った執事が部屋に入って来たからだ。
「っお嬢様!?」
「さあ!」
彼の声に、私は間発入れずに立ち上がり、彼の手を取って飛び出した。
「きゃっ!」
私の体をしっかり支えてくれた彼は、そのままお姫様抱っこでその場を立ち去った。
「上手く飛べましたね」
そう褒められて、つい彼の服をぎゅっと掴んだ。
自室から執事の声が聞こえてくる。
波紋が広がり、次第に騒がしくなる屋敷内。
…ごめんなさい、でも私は自由がほしいです。
軽く目を閉じ、家族を思い浮かべる。
…でも、考えるのはこれでおしまいにしよう。
これからはこれからのことを考えなくちゃ、自由になった意味がなくなる。
少ししたところで、彼はタクシーを捕まえ、流暢な英語で行き先を指示した。
「急いで申し訳ないのですが、準備が整ったらすぐに日本へ向かいます」
仮面を取った彼は私にそう詫びた。
でも当の私は、初めて見る彼の顔につい見とれてしまっていた。
「あ…はい……」
変に高鳴る鼓動。
私はこれからこの人と過ごすのか。
何となく気恥ずかしくてうつむくいてしまった。
「───申し遅れました。私は地獄の傀儡師こと高遠遙一といいます」
高遠さんというのか。
「ご存じでしょうけど…私は如月凜華と言います」
「これからよろしくお願いします、凜華さん」
こうして高遠さんと私の逃亡生活が始まった。
*********************
御題はSeventh Heaven様より。ありがとうございます。
2013/10/13
15:07
2018/4/3
0:17一部修正
如月凜華
「…はい」
今縁談の取り決めが終了した。
一週間後、私はこの家に嫁ぐことになる。
「じゃあな、凜華」
彼の目に映る私は、一体何なのだろう。
少なくとも、私から彼への愛はない。
ただの政略結婚。
私の自由はいとも簡単に奪われた。
─────。
「凜華お嬢様、お食事の時間でございます」
部屋のドアがノックされ、執事が部屋に入ってきた。
「ごめんなさい、今日は体調がすぐれないからこっちに運んでもらいたいのだけど…」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
パタン、とドアが閉まったのを確認してから、ふう、と溜め息を吐いた。
体調がすぐれないなんてのは嘘。
ただ部屋から出たくない。
この遠くまで見渡せる綺麗な景色を見られるのは今しかないなら、ずっと見て目に焼き付けておきたいだけ。
「元気がないですね」
「…ぅえ!?」
窓の外から声が聞こえた。
ここは2階なのに、何故。
それに不抜けた情けない私の声。
「失礼しました。元気がない、そんな貴女にちょっとしたマジックをお見せしようと思って来ました、地獄の傀儡師です」
「マジック…?地獄の傀儡師…?」
不意に現れた仮面を付けた地獄の傀儡師と名乗る男性は、窓の近くの木に腰かけていた。
あぁ、この木に登って…と納得。
その間にも彼の手の中で、トランプが華麗に動いている。
「───さて、このトランプをこうやって左手に押し込めて3つ数えると、一体何に変わるでしょう?」
「えっと…何だろう?」
こんなとこからまさかハトは出ないだろうし…小鳥?それとも紙吹雪?なんて私は大真面目にセンスのない答えを堂々巡りしながら考えていた。
「では正解。」
次の瞬間、彼の手から顔を覗かせたのは紅い薔薇だった。
「わあ……!」
「血のように紅い薔薇を、可愛らしい貴女に」
「ありがとう…!」
お礼を言って、それを彼の手からもらう。
本当に血のように紅い薔薇だ。
「喜んでいただけて光栄です」
恭しく会釈をする彼。
突然の来客、しかも正式な訪問ではないが、いいものを見せてもらった。
「あの…地獄の傀儡師さんはどうしてここに…?あんなに厳重な警備の目を盗んで、よく来れましたね」
私はずっと気になっていたこと彼にを聞いてみた。
「貴女が悲しげな表情をしていたから来ただけです。それから…」
「それから?」
「貴女をここから連れ去ろうかと」
「……え?」
私を連れ去る?
随分と突拍子もない話。
それでも、地獄の傀儡師さんは余裕たっぷりの微笑みを口許にたたえて私を見ている。
「どうして私を…?」
「貴女のような人をあの家には嫁がせたくないものでして。それならば私が攫ってしまいたいと、そう思いました」
あっさりとそう言って、私に向かって手をさしのべる。
「さあ、後は凜華さん次第です。私に攫われてしまうか、残って嫁ぐ運命を辿るか…」
その時、部屋のドアがノックされた。
「お嬢様、お食事をお持ちしました」
「あっ…」
今頃来るなんて。
でも、もう私はこの二捨択一の状況にさほど困りはさなかった。
「…私を連れ去ってください」
何で私の名前を知ってるのかとか、何で私が嫁ぐことを知ってるのかとか、それは後でいくらでも聞けるだろう。
今はとにかくここから出たい。
彼がそれを叶えてくれるならば、私は彼について行こう。
「…よく決断しました。さて、そろそろ危険ですね。凜華さん、窓の縁に立ってこちらに向かって軽くジャンプしてください」
再び手をさしのべてくれる彼。
これにも躊躇している暇はなかった。
返事がないことを不審に思った執事が部屋に入って来たからだ。
「っお嬢様!?」
「さあ!」
彼の声に、私は間発入れずに立ち上がり、彼の手を取って飛び出した。
「きゃっ!」
私の体をしっかり支えてくれた彼は、そのままお姫様抱っこでその場を立ち去った。
「上手く飛べましたね」
そう褒められて、つい彼の服をぎゅっと掴んだ。
自室から執事の声が聞こえてくる。
波紋が広がり、次第に騒がしくなる屋敷内。
…ごめんなさい、でも私は自由がほしいです。
軽く目を閉じ、家族を思い浮かべる。
…でも、考えるのはこれでおしまいにしよう。
これからはこれからのことを考えなくちゃ、自由になった意味がなくなる。
少ししたところで、彼はタクシーを捕まえ、流暢な英語で行き先を指示した。
「急いで申し訳ないのですが、準備が整ったらすぐに日本へ向かいます」
仮面を取った彼は私にそう詫びた。
でも当の私は、初めて見る彼の顔につい見とれてしまっていた。
「あ…はい……」
変に高鳴る鼓動。
私はこれからこの人と過ごすのか。
何となく気恥ずかしくてうつむくいてしまった。
「───申し遅れました。私は地獄の傀儡師こと高遠遙一といいます」
高遠さんというのか。
「ご存じでしょうけど…私は如月凜華と言います」
「これからよろしくお願いします、凜華さん」
こうして高遠さんと私の逃亡生活が始まった。
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御題はSeventh Heaven様より。ありがとうございます。
2013/10/13
15:07
2018/4/3
0:17一部修正
如月凜華